曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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47.サイドトラック

 

「お越しくださりありがとうございます。暫くぶりのトリニティ訪問となりますね」

 

「またお会いしましたね、先生。先日はお世話になりました」

 

「こんにちは。ナギサ、サクラコ。そっちにいる子がミネかな?」

 

「はい、その通りです。はじめまして。救護騎士団の団長を務めております、ミネと申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

「うん、よろしくね。それにしても、えっと……あっちの方で何かやっているトマリについて、そろそろ触れてもいいかな……?」

 

「トマリさんはお腹の調子がすぐれないらしく、気分転換するとのことです」

 

「へぇ、ちょっと珍しいかも。……ねえ、どうにかして窓を開けて、脱走しようとしてるようにも見えるんだけど……」

 

「ご安心ください。この会議室の窓は全て、完全には開かないようになっていますので」

 

「うへぇ、見事に手の内が読まれてるねぇ……これは流石に工具がないとお手上げ」

 

「ふふ、そう言うことです。それではこちらの席に戻って来てくださいね」

 

「へーい……」

 

「ナギサの方が一枚上手だったね」

 

 

 昔はもう少し上手くいっていたが、時間が経つにつれて、ナギサ様に自分の行動が先読みされるようになって来ているんだよなぁ。どう言うカラクリで先回りしているかは分からないが、これは中々手強いぞ。最近では最早一周回って、アドリブで対応して来ているような雰囲気さえするし。

 

 

「それにしても、なんだか不思議な組み合わせだね。どこでも見かけるトマリはともかくとして」

 

「むしろ何処にでも現れるのは先生の方では?」

 

「まあ否定はしないよ」

 

「ふふ……不思議というか、ナギサさんを困らせる組み合わせと言いますか……」

 

「私はホストを困らせるつもりはないのですが。信念と誇りを掲げる尊き騎士団の一員として、道を誤った者を正すだけです。例えそれが、正義実現委員会やティーパーティーの生徒だったとしても変わりません」

 

「そのお言葉が、すでにナギサさんを困らせているようですが」

 

「困らせている自覚はあったのですね」

 

 

 シスターサクラコも含めてである。そもそも自覚があるなら、大人しくしておいて頂きたいものだが。団長の掲げる信念はいいとして、道を外れた人を正す方法が問題なんだな。いやまあ、確かにキヴォトスではそれが最適解のケースが多いのかもしれないが。

 

 こんな時でも優雅にお紅茶を嗜まれておられるナギサ様。余裕を感じさせる態度であるが、惜しむらくは手が震えていなければ完璧だったと言える。今日の揺れはまだ小さい方だが、話し合いはまだ始まってすらいないぞ。

 

 

 

 

 

「さて、雑談はここまでにしましょうか」

 

「何が始まるんです?」

 

「第三次大s……いや、私に聞かれてもね?」

 

「まあ確かに一歩間違えれば大惨事なのは否定しませんが」

 

「トマリさん、こちらにお茶菓子を用意してありますので、しばらくの間召し上がってはいかがでしょうか?」

 

「露骨に黙らせに来ましたね。当然その提案には乗りますが」

 

「それで静かになるのは、子どもだけのはずなんだけどなぁ……」

 

「だまらっしゃい」

 

 

 口に物入れたまま喋るなって教えられなかったのか? お里が知れますわよ! ただこの状況でよく分からないのが、俺を席に着かせた時点で話が脱線する事は予想できたのでは? と言う点。それでもレッドカードを出さないのには、何か意図があるのかもしれない。

 

 

「先生をお呼び立てした理由は、先日のエデン条約以降の顛末と事件の後始末について話し合うためでしたが……。シスターフッドと救護騎士団のリーダーも出席すると言って聞かず、このような形となってしまいました……」

 

「……シスターフッドも変わりましたので。今後はこういった席には積極的に参加するつもりです」

 

「私も『騎士団』団長としての責務を果たすべくここにいるだけです」

 

「えっと……つまり、二人はティーパーティーを牽制するために……?」

 

「いえ、純粋に興味があるだけです」

 

「私はそのような政治的な事はよくわかりません」

 

「必ず、かの邪智暴虐の桐藤ナギサを除かなければならぬと決意した?」

 

「ちょっと、トマリさん? 何てことをおっしゃるんですか??」

 

「いえ、そこまでは言いませんが……」

 

「トマリって文学作品も読むんだ……」

 

「漫画しか読まない先生と違って、ですね」

 

「……ちょっと否定できないかも」

 

「そこは否定してください」

 

 

 ミネには政治が分からぬ、と聞いたら誰だってイメージするだろ。救護に対して人一倍に敏感な部分も含めてピッタリだし。これ以上考えると口に出そうだから割愛。それと興味本位で首を突っ込みに来たシスターサクラコも大概だと思うぞ。

 

 

 

 

 

 仕様もない考えを巡らせていると、シスターサクラコが口を開いた。

 

 

「さて……エデン条約の騒動こそ収まりましたが、事後処理や状況分析は未だに終わっておりません。分析の一部はシスターフッドも担当していますので、決して他人事とは言えません。この席は、そういった情報の共有および事後処理の場であると思っていただければと」

 

「何故、ティーパーティーだけではなく、救護騎士団やシスターフッドも関わるのか? については私から説明します。それは今、ティーパーティーには外部の助けが必要だからです。……エデン条約の前後に、ティーパーティーの一員がホストを襲撃し、その結果、投獄されるという前代未聞の事態となりました。まさか、セイア様を攻撃するよう命じたのがミカ様だったとは……」

 

「本当ですよね……。ミカさんだったら、そんなまどろっこしい手段を使わずに、自分でカチコミに行く筈で、ヘブッ」

 

「すみません。こちらのことは気にせず、続けてください」

 

「あはは……」

 

 

 俺が話している途中でつばさでうつを繰り出すの止めろ。今はバトル中ではないんだぞ。そもそも選択肢に『襲撃』が入るのがおかしくないか? 仮に思い付いたとしても、常人なら実行に移さないだろ。

 

 

「セイア様の治療に当たったのは私と、そこに居るトマリです」

 

「えっ!? そうだったの!? あっ、だからセイアとも面識があったんだ……」

 

「私も初めて聞いたときは、本当に耳を疑いましたからね……」

 

「まあセイアさんの様に、薄ら顔見知りみたいな人は結構居ますから」

 

「ティーパーティーの皆様と知り合いになる方は中々珍しいとは思いますが」

 

 

 そう言えば、ティーパーティー三人組とはトリニティ自治区に来て初日で知り合っていたんだったか。まあその頃のセイアさんは病床に伏していたので、厳密に言えば異なるだろうが。それも随分前の出来事の様にも感じられる。

 

 

「ミカ様は結果的にアリウスに利用された形となりますが、だからと言ってご本人の罪が消えるわけではありません。そして、現ホストであるナギサ様はシャーレを利用して、無辜の生徒を退学に追い込もうとしました」

 

「無辜の生徒……?」

 

「トマリ、しーっ」

 

「……被害を受けた生徒たちに謝罪し、およそ丸く収まったとは聞いていますが、それでもナギサ様の行為がなかったことになるわけではありません。そして、セイア様は一時と比べて体調が良くなったとはいえ、まだまだ不安定な状態です」

 

 

 ナギサ様の行いは確かに最適解ではなかったのかも知れないが、為政者としては決して間違ってはいないと考えている。全体(トリニティ)を守るために疑わしい少数部分(補習授業部)を切り捨てる選択。酷な話だがその選択を採るしかなかったのだろうとは思う。他の選択肢もあったかも知れないが、少なくとも俺の頭では思い付かんぞ。まあ切り捨てられる少数側は堪ったものではないのもその通りである。

 

 

「そのため、現在のティーパーティーには外部の手助けが必要であるというのが私の判断です」

 

「……なるほど」

 

「……丁寧なご説明ありがとうございます」

 

「「「…………」」」

 

「……え? 何故皆さん何も話さないで居るのですか? さっさと話を戻しましょうよ」

 

「正論なんだけど……確かに、その通りなんだけど……。それをトマリに言われるのは、どうしても納得いかない……!」

 

「私も同感です……」

 

 

 失礼な。俺は話を脱線させるけど、きちんと戻してもいると言うのに。シスターサクラコも無言で頷いていないで話を進めればいいだろ。俺は既に何の話をしていたか覚えていないけど。

 

 

 




特殊交易部、全員コミカルな表情差分が多くて好き

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