曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

68 / 77

感想・誤字報告・高評価ありがとうございます。



48.主張とは、食い違うもの

 

 ナギサ様、団長、シスターサクラコに先生を加えて始まったお茶会。そこに混ざって何故か俺も席に着いていた。トリニティの錚々たる顔触れ with 連邦生徒会の重鎮と肩書きを考慮すると、俺の場違い感が凄い。本当になんで居るの?

 

 開幕早々からエッジの効いたトークが繰り広げられていた様な気がするが気にしない。そんな所に無闇に突っ込んだら怪我するだろ。気にしないついでにクーラーが効いた様な空気である会場の着火を試みることにする。

 

 

「まああれですね。確かにナギサ様の選択はベストではなかったのかもしれません。ですが、少なくともベター以上の行動ではあったと俺は思っていますよ? ミネ団長の主義主張も理解はできますが」

 

「トマリさんは、何の罪もない生徒たちを退学させるのが、最悪の選択肢ではないとおっしゃるのですか……!?」

 

「誰かのヘイローが破壊されるよりかは、ですかね。えー……まあこの辺りの何を優先するかについては、全員が賛同できるものでもなければ、取り分け団長や先生は納得できないでしょうけど、それでいいと思っています。お互いを完全に理解するのは、不可能ですから。まあ真っ直ぐな思想と言うのは尊いものなのでしょうが」

 

「うーん……確かにトマリからしてみれば、理想主義的すぎると思うのかもしれないけどね。それでも、諦められないんだ。……あの、流石にこの場面で欠伸するのはだめじゃないかな……?」

 

「腹が膨れたので正直眠いです」

 

「情緒が赤ちゃんレベルだ……」

 

「突拍子もないことを言ったり、今までの議論を全部台無しにしたりするのが、トマリらしいと言えばそうなのですが……」

 

 

 キヴォトスにおいて、退学が重い意味を持つ事は知っているが、それでも死ぬよりはマシだとは思うぞ。仮に退学になったとしても、恐らく先生には拾って貰えるだろうから。まあ俺が学園に所属する生徒ではないからそう思うだけなのかもしれないが。

 

 結果だけで言えば、補習授業部が活躍してその邪魔をしたナギサ様と言う構図になるが、実際にアリウスからのスパイはトリニティに紛れ込んでいたから、強ち間違った行動をした訳でもないだろう。ただし、そのスパイは何故か突然改心したので、アリウス側の作戦を阻止する二重スパイになったものとする。

 

 何だこの超展開は? 分かる訳ねーよ。ミステリー小説の展開なら納得だが。ただでさえ命を狙われている様な危機的状況だったのに、そこで予想不可能な推理をさせられていたのだから、正直あまり責めないであげてほしいとは思う。団長の言いたい事も分からなくもないけどさぁ……。

 

 冷たい判断が出来るからと言って、その人の人格まで冷たい訳ではないだろう。誰だってそんな決断、しなくていいならしないのだから。その辺りを踏まえて、まあ誰か一人ぐらいは味方が居てもいいんじゃないか? ただし、役に立つかは別ではありますが。

 

 

「ふふ、眠気覚しには紅茶が一番です。トマリさん、こちらをどうぞ」

 

「朝から何杯も飲んでいるのでいらないです」

 

「トマリが飲食物を拒否するのは初めて見たかも……」

 

「……私の紅茶が飲めないと。貴方はそうおっしゃるのですか?」

 

「紅茶の飲み過ぎでお腹タプタプなんですよ。茶菓子より紅茶で腹が膨れているのですが」

 

「出されたものはきちんと頂くのが礼儀では?」

 

「水責めは拷問の一種ですが? おわかり?」

 

「おかわりですか? どうぞ」

 

「ナギサ様の耳には茶葉でも詰まっているんですか?」

 

 

 隙あらば紅茶を飲ませようとするの止めて貰えます? ナギサ様と違って、俺の身体は紅茶でできていないから。ここまで紅茶を飲む事を強要するのは最早ティーハラだろ。だが、これこそが本来のティーパーティーのあるべき姿なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「……この事件を紐解いていくと、全てアリウス分校に集約されます。エデン条約会場の襲撃、その実行犯であり黒幕だったのがアリウス分校でした。ゲヘナのマコト議長もミカさんも、アリウスの手に踊らされていただけとも言えます」

 

「嘘みたいでしょう? これがさっきまで聞き間違いしていた人の態度で、もがっ」

 

「物理的に黙らされてる……」

 

「……アリウスが背後で糸を引いているのなら、いくつかの疑問が残ります。一つ、アリウス分校はなぜエデン条約を妨害したのか」

 

「アリウス分校は長い間、トリニティとゲヘナの両校を憎んできたと聞き及んでいます。一度に両校を制圧するまたとない機会だったのでしょう」

 

 

 歴史的な確執があると言うのは、何処かでふわっと聞いた様な気はする。だから何が出来るかと言われれば、特に何もない訳だが。つまり俺が何か考えても無駄。イコールこの議題は聞いていなくても問題なしと。……あ、蝶々。

 

 

 

 

 

「──シスターフッドは元来秘密が多い集団です。情報の統制や秘匿、歪曲にも長けています。学園の中には、シスターフッドに対して不信を抱いている生徒が多くいることはご存知でしょうか?」

 

「──たとえば、あなたのように?」

 

 

 窓から見える花畑を眺めている間に、何故か団長とシスターサクラコが至近距離で見詰め合っていた。君達、本当に仲良いよな。ナギサ様から無言の催促があったので、取り敢えず知っている事を喋ってみる事にした。

 

 

「俺の出番ですか? えー……調査によると『修道服が可愛いから入部するか迷った』『悩みを相談してみたら気分が少し楽になった』『リーダーがちょっと怖い』『よく慈善活動しているのを見掛ける』『何となく胡散臭い』等の評判になっております」

 

「……」

 

「おっと、この調査結果はプライバシー保護のため、誰が言ったかは伏せさせて頂きます。なお、オフィシャルな調査ではないため、実際の声とは異なる可能性もございます事をご了承ください。総括すると、『シスターサクラコは胡散臭い』ですね!」

 

「ちょ、ちょっとその総評は飛躍しすぎでは!?」

 

「そもそもなぜトマリはそのような調査をしていたんですか……?」

 

「成り行きです」

 

 

 只今、シスターサクラコの評判改善計画は難儀中。まあ今はドタバタしていて時間が割けていないから、当然と言えば当然である。評判改善の動機が教会を訪ねる人々のためである点は、中々立派なシスターしているとは思うぞ。

 

 

「えっと、それじゃあ話を続けようか?」

 

「そうですね。それでは、トリニティの防護システムを無力化させたあの巡航ミサイルについては、分析はどうなっていますか?」

 

「分析を進めていますが、今のところ出所も構造も不明です。分かっていることはキヴォトスに存在する技術ではないという点だけです……」

 

「一応お聞きしますが、トマリさんは何かご存知ですか?」

 

「いやー、爆弾とかミサイルは門外漢ですので、技術的な面については何も。現地調査も空振りでしたし」

 

「そう言えば、初発のミサイルを防いだのはトマリさんだとお聞きしましたが……」

 

「セイアの治療と言い、普段の惚けた言動からは考えられない有能ムーブをしれっとしてくるよね」

 

「普段から有能ですが? 2発目が来ると分かっていればまだやりようはあるかも知れませんが、まあ無理でしたね」

 

 

 隙を生じぬ二段構えを初見で対応するのは無理があるぞ。むしろ初段だけでもどうにかしたのだから頑張った方である。いやまあセイアさんの予知夢は、どうにも俺が存在していない世界線の内容らしいから、ズレがあるのは仕方ないけど、それにしても酷くないか?

 

 

「二つ目の疑問は、アリウス分校は何を計画しているのか、です」

 

「……これについては、まだ何も判明していません。そして何よりも、私たちはアリウス自治区がどこにあるのかさえも知りません」

 

「ですが、この事件をきっかけにいくつかの糸口は掴めました。彼女たちは通功の古聖堂の地下にあるカタコンベから潜入しておりました。そしてこれまでの彼女たちの潜入ルートも、全てカタコンベが関連していることが判明しています」

 

「トリニティ自治区には地下遺跡が数多く存在しますので、全てを調査して、統制することは不可能です」

 

「その通りです。それに付け加えて、カタコンベは未だに規模が明らかになっていない迷宮です。そこからアリウス自治区を見つけるのは至難の業と言えるしょう。そしてセイアさん曰く、アリウス自治区は私たちが理解できない『とある力』で保護されているとのことです」

 

「また理解できない力の話ですか……」

 

「最近多いですよね。その手の話。何とかならないのですかね」

 

「歩く奇々怪々がなんか言ってる」

 

「褒めても紅茶ぐらいしか出ませんよ?」

 

「それはトマリが結局飲んでないやつでしょ。私の分は既にあるし、せっかくナギサが淹れてくれたんだから、後でちゃんと飲みなよ」

 

 

 先生は俺の気遣いを無碍にするのか? 人としてどうかと思うぞ。痛い痛い痛い! どさくさに紛れて太腿をつねらないで下さい、ナギサ様! 『私の手を掴んでいますが、どうかしましたか?』って顔してんじゃないんですよ。

 

 

「かつてアリウスに所属していたアズサさんの話によると、任務の度にカタコンベの出口が書かれた地図を渡されていたようです。地図の経路は毎回変化し、さらに暗号化までされていたとのことです」

 

「……その少女を取り調べたのですか?」

 

「えっ?」

 

「白洲アズサさんに……あの子にアリウスの情報を吐かせたんですか!? 彼女はもう十分な代償を払っています! 自分がいた自治区から裏切り者の烙印を押され、それでも私たちのために頑張ってくれました! やっと心の平穏を取り戻したであろう子を私たちの事情に巻き込んで、問い詰めるなんて……なんて残酷な……!」

 

「…………」

 

「ちょっと、ナギサ様? 存在感を消すのに忙しいので、この場面で俺の方に顔向けるの止めて貰えます?」

 

 

 団長の暴走に巻き込まれたくないのですけど……ああ、手遅れだった。既に団長からの視線が突き刺さって来てる。この修羅場をどうやって潜り抜けるかなぁ……。一旦現実から目を逸らしていると、先程から眺めていた蝶々が青い鳥の嘴に摘まれる瞬間を目撃した。

 

 

「ティーパーティーの権力を利用して、か弱い少女に無体を働いたに違い「蝶々さーん!?」……突然どうしたと言うのですか?」

 

「あ。……へへへ。いやー、ちょっと衝撃の瞬間を目撃してしまって、つい。どうぞ続けてください」

 

「絶対に余所見してただけでしょ」

 

「煩いですね。俺の方でも色々と考え込んでいたんですから。……所で、俺は何について考えていたんでしたっけ?」

 

「それはトマリ以外の誰にもわからないのでは?」

 

「記憶力が鳥以下……」

 

「うっせ」

 

 

 三歩どころか一歩も歩いていないからか? 喧しいわ。焦っている時とか、どうでもいい事考えている時は割とすぐ考えていた事とか忘れるだろ。つまり俺は、さっきまでどうでもいい事を考えていた?

 

 

「トマリもトマリです! 貴方がいながら、何故そんな事を……!」

 

「うわぁ、飛び火した!?」

 

「落ち着いてください、ミネ団長。そのような事実はありません」

 

「……違うのですか?」

 

「はい。ナギサさんが血も涙もない残酷な方なのは確かですが、今回は違います。アズサさんは無礼な待遇を受けていません。そしてトマリさんは、恐らく何も考えていません」

 

「おっ、同業者が言うと説得力が違いますね」

 

「ストップストップ。これ以上言うと収拾がつかなくなるから」

 

「まあそもそもの話、アズサさんへの聞き取りを担当したのは自分ですし」

 

 

 質問の内容が内容だったから、盗み聴きされない様に密室で一緒にカツ丼を食べながら喋っていた訳だが。もしかして、この対応が駄目だった説ある? 個人的には完璧な方法だったと思っているんだけど。全く、昨今の世論とは手厳しいものである。

 

 

 

 

 

「失礼しました。ナギサ様」

 

「えっ? 俺には?」

 

「あんまり調子に乗らないように、ね」

 

「……補習授業部の方々は、本来負うべき責任よりずっと多くの事を背負いました。彼女たちが背負ったものの中には、私が原因のものもあったでしょう。それに関して、私にも負うべき責と後悔があります……」

 

「ナギサ……」

 

「そのため、このような場にあの子たちが関与しないように努力して参ります……。こんな泥仕合は私たちの役目でなければ、あの子たちにこんな経験をさせてはならないのです……」

 

「……そうですね。ナギサ様、ご無礼をお許しください」

 

「……同感です。私たちだけで残った問題を解決すること。それが我々にできる最低限の礼儀なのでしょう」

 

「……あれ? もしかして、そのメンバーには自分も含まれてます……?」

 

「すぐそう言うこと言っちゃう」

 




マジカル……? ホンモノのマジカルってヤツを見せてあげますよ(誇大表現)


Q. なぜ団長は主人公を同志と呼ぶ?
A. 団長の救護の概念は単純な医療行為だけを指すのではなく、『環境の調和・平和を促進する行為』も含まれているため、場に出るとシリアス展開を破壊する主人公は救護活動を行っているのと同義である(団長的見解)
なお、団長はある程度意識的にシリアス展開を破壊していると捉えている

▼でも主人公はやる気のない発言も頻繁にしていますよね?
→だから私は悲しいのです!!

※ただの屁理屈です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。