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先生から送られて来た地点を目指して早半時間。なるべく急いで欲しいと言う我儘な指示に応えるべく、既に結構な距離を走っていた。俺が遅いんじゃない。自治区が無駄に広いのが悪いんだ。
外れの方へと向かって突き進んでいるので、徐々に人気が少なくなって来ているのは自然な流れである。ただ先ほどから、非常に気になる点が一つあった。
「えー、次 『ブー!』 右に曲が 『ブー!』 は 『ブー!』 角 『ブー!』 うるせぇー! 『ブーッ! ブーッ! ブーッ!』」
幾ら何でもしつこ過ぎるだろ! 店を出てから着信か通知が鳴りっぱなしだぞ!? 遂に頭がおかしくなったか? 何が奴をそこまで駆り立てているんだ? 諦めて電話に出る事にした。
「お電 『あっ! もー、やっと繋がった! こんなに待たせるなんて酷くない!?』 繋がらないのであれば、暫く時間置いてから掛け直してくださいよ」
『でも最初に掛けてから結構時間経ってるよ?』
「この短時間で3桁超えの通知を寄越すのは、常軌を逸しているとしか言えないかと」
ミカさんがかまってちゃんなのは分かってはいたが、いい加減にターゲットを変えて頂きたい。もう一層の事、アコちゃんとかとぶつけて対消滅を狙うか? 関係ない自分の方へ集中砲火になりそうな気がするので無理だった。何なら被害が二乗になりそう。
『そんなことよりさぁ、ちょっと今すぐに会いに来てよ? トマリならもちろん来れるよね?』
「今日は無理なので明日……いや、明後日でいいですか?」
『今のは普通、譲歩する流れだったよね…? 何で遅くなってるの…? まあいっか。……ねぇ、さっきから風切音がうるさいんだけど、そんなに急いでどこに行く予定なの?』
「少し遠くにお仕事へ、ですね」
『私が聞きたいのは具体的な場所なんだけど?』
「言うつもりがないからぼかしているんですが?」
『ふーん、そう。トマリは私に隠し事するんだ。そっか、そっかぁ』
何処か含みのある言い方だな……。また良からぬ事を企んでそうな雰囲気だ。この人も中々理解不能な行動をしでかすから不穏と言えば不穏である。
『一応、ウソつかないだけいい方なのかな』
「用件は以上ですか? それなら忙しいので電話切りますよ」
『まあ意味ないんだけど。だって私たち位置情報共有してるじゃん』
「えっ」
『あっ、これ言ってなかったっけ?』
「知らん…何それ…怖…」
なんということをしてくれたのでしょう。ホラー映画より恐怖を感じた瞬間である。俺のプライバシーは何処へ? 少なくとも無断でやっていい所業じゃないだろ。何が目的でそんな横暴ばかりしているの? どうしよう。取り敢えずこの端末は壊した方がいい?
『私がこーんなにたくさんお願いしてるのに、トマリは来てくれないんだ?』
「待ってください。それより位置情報の件に関してもう少し詳細を」
『とにかくっ! トマリは私よりもお仕事を選ぶんだね』
「いえ、違います。どちらもいらないです」
『あっそう。じゃあもう切るから』
「は? うわ、本当に切れた」
面倒くせぇー! これ絶対対応ミスったパターンだろ。何が言いたいのか丸で分からんかったぞ。そもそも俺に女心なんて分かる訳ないじゃないですか。そう言う事は先生にでも任してどうぞ。えっ、後のフォローも俺が担当するんですか? 繊細なアプローチが必要な場合は、マジで別の誰かに任せた方がいいですよ? これは自信を持って主張しましょう。
未来の事は未来の自分に託す事に決めた。頑張れ明後日の俺! ……何とかして先生辺りにこの件を押し付けられないものかねぇ。
一方で先生は、アリウススクワッドのサオリに嘆願され、アリウス・バシリカに囚われたアツコを助けるべく既に行動を開始していた。そのために、まずは散り散りになっていたスクワッドのメンバーを集めることになった。そうしてヒヨリを仲間に加えた先生達。そのまま順調にミサキも見つかったが、そこで一悶着あった。
「もし仮にアツコを救い出せたとして、何の意味があるの? 『
「黙れ、ミサキ。……それで? そんな脅迫が通用すると、本気で思っているのか?お前がそうやって脅そうと、私はお前を生かしてみせる。 ──今まで何度やっても失敗したのに、今回は成功するとでも思っているのか?」
「…………まあ、自信はないかな」
サオリの熱い説得? により、ミサキは無事に橋からの飛び降りを諦めたのであった。
「……で、結局姫を助けるんだね。わかったよ。最後までお供するよ、リーダー」
「……ああ、頼んだ」
「はあ〜〜……なんとかなってよかったです……」
「本当ですね。……あれ? チーズバーガーってこんなサイズだったっけ……」
「そうと決まったら早く行こう。0時までには入口にたどり着かないと」
「残り時間はあと一時間半か……説明は向かいながらする。急ごう」
「わかった。……って、ちょっと待って。トマリ、いつの間に来たの?」
「さあ……ほんの5分ぐらい前ですよ?」
「割と前から居たんですね……」
事情はよく分からないが、何か揉めていたので大人しく待っていたが。まあ俺は先生と違って、空気が読めるし待つ事もできる男だから。
「どうも皆さん初めまして。そちらの先生にどうしてもとお願いされたので手伝いに来ました」
「トマリ、この子達がアリウススクワッドだよ。だから初対面ではないよ」
「ん? ……あ、そっちの矢鱈大きい荷物持っている子は見覚えありますね。他は知りません」
「えぇ!? なんで私だけ!?」
「嘘でしょ…? ……あ、そうだ。サオリ、ミサキ。ちょっとマスクをしてみてくれるかな?」
「……いいけど、それで何が変わるの?」
「はっ!? 先生、この人達スクワッドですよ! スクワッド!」
「……私たちのことをマスクで判別しているのか?」
「以前、アリウスはマスクがどうとかって言ってた気がするから、もしかしたらとは思ったんだ。それにしても、このガバガバ記憶力……」
「ああ、だからマスクをしていないヒヨリのことだけ頭に残っていたんだね。それにしたって意味がわからないけど……」
「そ、そう言うことでしたか……」
最初に会った時は煙が酷かったから、顔を覚えていなくても仕方ないだろう。手配書とかで顔を確認していないのかって? まあ俺には関係ないと思ったから、スルーしていましたとも、ええ。
「そう言えば、アリウススクワッドは四人居ませんでしたか?」
「それについては後で事情を説明しよう。それよりも、いいのか? その、私たちはトリニティを襲撃した実行犯だぞ…?」
「ああ。それはまあ、俺は別に気にしませんよ? 昨日の味方は今日の敵ですし」
「それ逆だよ……」
「逆もまた然りです。それに何か責任問題とか追求されそうになったら、全部シャーレに投げますから無問題」
「なんか、すごい堂々と責任逃れしようとしてくるね……」
俺の判断だけで行動してもいいなら、今すぐゴーホームして、そのまま夢の世界へ冒険に出掛けるぞ。詳細までは知らないが、今から無茶な進攻するんだろ? 危ない橋渡る手助けしてあげると言っているのに、ケチな事言ってんじゃねーよ。むしろ平伏して拝んでもいいレベルでは?
「それで、今から出発するのになんでハンバーガー食べ始めたの?」
「遅めの晩御飯です。……そんなに欲しいですか?」
「えへへ……食べたことないものだから、つい……」
「良ければ一つ、差し上げますよ?」
「い、いいんですかぁ!? えへへ……ありがとうございます!」
「これがヒヨリの最後の晩餐になるとは、誰も予想できなかったのであった……」
「え、ええぇっ!? わ、私はもう終わりなんですか!? でも、それが人生なんですよね……」
「トマリも適当なこと言わないの」
「ちなみに明日の最後の晩餐は叙々◯です。もちろん先生の奢りで」
「はいはい。ほら、サオリたちを待たせているから、早く行こうね。時間もないみたいだし」
「何を呑気にハンバーガー食っているんですかヒヨリ。さっさと出発しますよ」
「わ、私が悪いんですか!?」
「相変わらず、意味のわからない変なヤツ……」
主人公:橋の端の方でずっとスタンバってました。