曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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ケイ実装はアツすぎるだろ



53.一夜の夢

 

 今回の目標は、『マダム』と呼ばれている大人に囚われているアリウススクワッドの仲間の救出。曰く、何かの儀式の生贄にされそうになっているとの事。タイムリミットは明日の夜明けと、まあ実質的には半日にも満たない短い期限である。それまでにアリウス自治区内にある『アリウス・バシリカ』に辿り着く必要があると。

 

 

「アリウス自治区に行くには、トリニティ地下のカタコンベを通過しないとけないんだけど、その入り口は判明しているだけでも300か所ある」

 

「おお、白色の種類より多いですね」

 

「トマリはちょっと黙っててね」

 

「えっと、そのほとんどの入り口は偽物で、間違えるとずっと迷子になってしまいます……」

 

「だから私たちは正しい入り口と、そこからアリウス自治区に通じるカタコンベの内部ルートを暗号で伝えている。カタコンベの内部は一定周期で変化するからな」

 

「内部が変化する…?」

 

「あれ? 俺が以前から提出しているカタコンベに関する調査報告書って、先生は目を通していませんでしたっけ?」

 

「うん。その辺の資料に関しては全く」

 

「そもそも先生に資料を渡してないのでしたか。まあ先生の馴染み深い表現をするなら、不思議のダンジョン……いや、どちらかと言えば、曜日クエストみたいなものでしょうかね」

 

「……なるほど。なんとなくだけど理解できたかも」

 

 

 アズサさんが言うには、足を踏み入れる度に変化していると言うよりも、正確には変化のパターン自体が複数あるのだとか。まだ調査の試行回数が足りていないので、どのぐらいのパターン数があるかは断定できないが、相当数のパターンが存在しているのは判明している。

 

 

「……まあ、先生が理解できたならなんでもいいけどね」

 

「えっと、それで私たちはもう暗号を教えてもらっていないので、正しい入り口がどこなのかわからないんです」

 

「逃げ出した猟犬に帰り道を教える必要はないからな」

 

「それなんだけど……トマリはアリウス自治区に行く道順を知っているんでしょ?」

 

「まあ1パターンだけですが、心当たりがない事もないですね」

 

「……なんだと?」

 

 

 先生がこの場に無関係な俺を呼んだのは、これが主な理由だろう。まあ俺がアリウス自治区らしきエリアに辿り着いた事は、先生も把握していただろうし呼び出したのは妥当な判断だと言える。分からない事を解決するなら、知っていそうな人を頼るのが手っ取り早いから。

 

 

「流石は先生。先見の明はあるご様子です」

 

「それじゃあ、早速だけど案内をお願いできるかな?」

 

「それは構いませんが……。現在地から先生の足ならまあ……早くて5時間ぐらいかかると思われますがよろしいですか?」

 

「何もよろしくないね……」

 

 

 丁度俺が来た道と反対方向だから結構距離が遠い。ちなみに、手段を選ばず自分一人だけと言う前提条件ならば、運要素込みではあるが上手く行けば一、二時間ぐらいで着けるかもしれないが。まあだから何だと言う話ではある。

 

 

「……だったら当初の予定通り、まだ使える入り口が一つだけあるからそれで行こう。ただ、そこも後一時間もすれば閉ざされてしまうから、そうなったらもう……」

 

「アリウス自治区へ戻れなくなるだろう。仮に戻れたとしても、明日の朝には間に合わないから姫を助けることはできない」

 

「…………」

 

「おっと、恐らく誰かいるので警戒を。進行方向より0時と9時の方向です」

 

「確かにすごいんだけど……なんでわかるの?」

 

「色々です」

 

「まあ、今はそれを聞いてる時間はないか」

 

 

 種も仕掛けもあるが説明が面倒なので割愛。そもそも不意打ちされて運が悪ければ、一発でゲームオーバーになる可能性があるのに警戒していない訳ないだろ。

 

 

「迂回します?」

 

「……いや、このルート以外だとちょっと時間がかかりすぎるかな」

 

「そういうことだ。総員、戦闘準備」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからは、殆ど一方的とも言っていい戦闘だった。仕掛けるタイミングを自由に選べた事や、スクワッドがアリウス生徒の中でも指折りの実力を持っていた事、先生のバックアップなど様々な要因が重なり、特に大きな消耗もなく無事に切り抜ける事に成功した。

 

 そして現在はと言えば、スクワッドが先行して状況を連絡してくれるとの事で、精鋭部隊に待ち伏せされている可能性が高いらしい通路から少し離れて、先生と一緒に待機中である。この辺りの地理に詳しい三人に斥候を任せるのが適任だろう。だから今現在は待機と銘打ったサボリ……ではなく、マスコット枠たる先生のおもりの真っ最中と言う訳である。

 

 

「スクワッドの子たちは大丈夫かな……」

 

「まあ、精鋭チームらしいですし、この程度なら平気なんじゃないですか?」

 

「そうだといいけど……いつの間に紅茶なんて淹れたの?」

 

「紳士とは、何時いかなる時でも紅茶を嗜んで泰然と構えているものらしいですよ? まさしく俺に相応しい称号ですね」

 

「この状況で考えるなら、敵地で突然紅茶を飲み出す変人の方が正しい評価じゃないかな」

 

「おっと、そんな無礼な発言してもいいのですか? 早い内にナギサ様に謝罪する事をお勧めしておきますよ?」

 

「なんでそこでナギサが出てくるの…?」

 

 

 そう言っていたのがナギサ様だからに決まっているだろ。ちなみに、今使っている携帯用ティーセットもナギサ様から頂いたものである。ナギサ様が愛用しているメーカー品らしく、使ってみれば良さが分かるからと問答無用で手渡されたと言う経緯がある。なお、特に深い意味はないが値段は調べていない。調べてしまうと手軽に使えなくなるなんて思ってもいない。

 

 紅茶を一服したその時、大きめの爆発音が辺りに響いた。

 

 

「今の爆発は……」

 

「何でしょう? 近くで花火でもしているのですかね?」

 

「惚けてないで、急いであの子たちを追いかけるよっ」

 

「へーい」

 

 

 そうして爆発音の音源、スクワッドが先行しているエリアへと向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 緊急事態だと考えられるので、一足先に向かって欲しいと言う先生からのリクエストを受けて先に来たが。そこで見たのは衝撃的な景色であった。目を回して倒れているヒヨリ、冷や汗を流しているサオリさん、そしてミカさんに捕まっているミサキさん。ああ、真夜中に走り回っているものだから、俺は悪夢でも見ているのかもしれない……。

 

 

「だからさぁ。スクワッドの、特にサオリ。あなた達も同じ痛みを受けなきゃね。──そうじゃないと、不公平でしょ?」

 

「くっ!」

 

「大変ですね。アンタら」

 

「トマリは私と道連れだから」

 

「ゴホッ、ゴホッ!? ……な、何故っ!?」

 

「うわっ、汚っ。ちょっと、紅茶を吐かないでくれる? ……そもそもなんで今、呑気に紅茶を飲んでるのか意味わかんないけどさ」

 

 

 衝撃的過ぎる発言で思わず咽せてしまった。さっきまでスクワッドにどうこうするって話してたじゃないですか。俺は微塵も関係ないじゃないですか。勝手に道連れにしないで貰えます?

 

 

「だってさぁ、トマリって別世界のことだけど、人殺しには変わりないでしょ? だったら、人殺しになりかけた私と同じところにいるべきじゃん。それに……トマリがナギちゃん達や先生と一緒の側っていうのも、ちょっと気に食わないし」

 

「まあ確かに俺は、ミカさんと同じで汚ねぇ部分がある事は否めませんが……」

 

「……その言い方はちょっとムカつくけど、まあそういうこと。トマリはこっち側の人間なんだし、私の味方であるべきだよね」

 

「結論が飛躍している様な気が……」

 

「ちょっと待って! ミカ、ここで何をしているの?」

 

「先生っ!? わ、私は…………。それより、どうして……先生がスクワッドと一緒にいるの…? どうして……こんな、よりによってこんな姿を……」

 

 

 先生の登場により、ミカさんは茫然自失になっていた。俺が話に入った時は何のリアクションもなかったので、ミカさんにとって先生はそこまで大きい存在と言う事だろう。それならば、先生の説得で何とかなるんじゃないか、と思い始めた所でミカさんの背後が突然爆発した。

 

 

「スクワッドを発見!」

 

「聖園ミカもいるぞ! 撃て!」

 

「うっ……痛ったぁ……」

 

「ミカっ!?」

 

「先生、急がないと……時間がない」

 

「ミカっ! トリニティで待ってて! 必ず後で説明するから!」

 

「総員、走れ!!」

 

「あっちに行ったぞ! 追え!」

 

「トマリはミカを守ってあげて!」

 

「えっ。どう考えても必要な「行ってあげてっ!!」 人使いが荒過ぎる……」

 

 




ミカ:独りぼっちは、寂しいもんね……だから主人公を道連れにします。それはそれとして、アリスクはボコボコにします。

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