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先生からどう考えても不要なお姫様の護衛を仰せつかったので、自分だけこの場に留まる事になったが。ミカさんの方は心配要らないのは間違いない。あの程度なら、かすり傷にもならないだろう。むしろ戦力的には自分の方が危機的状況である。ミカさんの足止めを目的とした判断なら、先生は相当の策士なんじゃないか?
まあ一応、支援や妨害工作が得意な自分の戦術的な使い方としては、割と正しい配置ではあるんだな。色々と相性が良かったとは言え、対魔王戦では側近の足止めも任されていたぐらいには由緒正しい戦術ではある。それを先生が把握していたかは知らないが。
「えー……では、この辺りで解散と言う事で」
「待て! そこを動くな! 貴様は『彼女』から捕縛するように命令が下っている。痛い目に遭いたくなければ、私たちの指示に従え」
「おっと、俺を誘拐しようものなら、トリニティの上層部が黙っていませんよ? 『正義』執行される事間違いなしですよ? 本当にいいんですか?」
「下らん戯言だな。アリウスは既にトリニティから目を付けられているんだから、今と状況は何も変わらないだろう。……それにしても、貴様にプライドはないのか…?」
「へへへ。……今から土下座すれば見逃して貰えます?」
「……無様な姿だな。今さら命乞いか?」
「はい!」
「そんなに元気よく返事する場面だったか…?」
「よいしょっと。……では、これにて失礼しますね!」
頭を下げるだけで見逃して貰えるなら、下げた方がお得だろ。着いて行ったらよく分からん儀式の生贄にされそうだから普通に選択肢としてはあり得ない。ついでに、何故か未だに目を回しているミカさんを背負う。実はミカさんの存在を忘れかけていたなんて事実はない。
「待て待て待て!?」
「はぁ、何でしょうか? 今は少し手が離せないので後にして貰えます?」
「貴様を見逃すとは言っていないぞ!?」
「あっ! 上からコインが!」
「そんな古典的な罠に引っかからな……痛っ!? ……くそっ! 奴が逃げた! 追うぞ!」
この後、目を覚ましたミカさんが敵を一掃するまで鬼ごっこは続いた。
アリウスの数十人規模の援軍をいとも容易く壊滅させたミカさん。ついさっき不意打ち程度で目を回していたのは本当に何だったのか? まあそんな事はさておき、ミカさんは今現在、リーダー格のアリウス生を物理的に締め上げて情報を吐かせていた。確かに有効な手段だが、やり口が脳筋過ぎるだろ。これがトリニティの模範となるお嬢様のお姿であっていいのか?
「それで、アツコを……『彼女』の命令で……バシ、リカに……」
「それで? 他に知ってることはないかな?」
「な、ない! 私たちが、知っているのは……それだけで……」
「そっか。じゃあもういいや。あなたはちょっと寝ててね」
その時、俺は思い出したのだ。ここは『暴』が全ての世界、キヴォトスであると。……いや、怖えぇよ。動作が手慣れているし、何かもうずっと目が据わっていて恐ろしいぞ。
「それで、ミカさん。 ──何人ヤったんですか?」
「……それは何の話なの?」
「そんなの決まってます。その目付き。……何人その拳でお星様にしたのです?」
「はぁ? そんなアホな事ばかり言うトマリを一番星にしてあげてもいいけど?」
「へへへ、冗談が上手いですね! ……本当に冗談ですよね?」
「ん〜、それはこれからのトマリの行動次第かな?」
「へへへ……」
マジだ。この女、目がマジだぞ。ヤると言ったら確実にヤる。そう言う凄みを感じる顔だ。少なくとも、一介のお嬢様が出していい雰囲気ではない。平常運転の軽い口調なのに、こっちをガン見しているの本当に怖過ぎる。
「そもそもさぁ、トマリって私の護衛、謂わばナイトってワケでしょ? 一応、曲がりなりにもね。それなのに逃げてばかりって言うのもどうなの?」
「ミカさん。何を勘違いしてるのか分かりませんが、俺の役職は守勢に長けた
「その辺はまあ何でもいいけど。盾とか持ってたじゃん。ああ言うのはどこいったの?」
「お荷物で両手が塞がっていたのに、盾とか持てる訳ないじゃないですか。……あ痛っ!? 何故足を踏んだのですかっ!?」
「……荷物って扱いが、なーんか気に食わなかったから」
もっと優しく運べと言う事か? 無茶を言いよる。この前ナギサ様を運んだ時なんて、小脇に抱えて走っていたぞ。両手を使ってすらいない。それに比べれば丁寧な方では?
「はぁ、何はともあれ、ひとまずトリニティに帰りましょうか。後の事は先生達が何とかするでしょうし」
「何を言っているの? 一緒にアリウススクワッドを追うんだよ? 追いかけて、復讐する」
「…………」
「そこ、露骨に面倒くさいって顔しないでくれる? だって、トマリは私の味方なんでしょ? そう言う約束だったよね? もし裏切ったら、絶対に許さないんだから」
「えぇ……」
「私はアリウススクワッドに対して──たとえ魔女と呼ばれ続けたとしても、地の果てまで追いかけてでも復讐しないとダメなの」
何がミカさんをそこまで復讐に駆り立てているのかは分からない。他人の心の内、況してやミカさんみたいな面倒くさいタイプなら余計に内心を想像できないが。ただそれでも一つだけ、言わせて貰おう。
「ミカさんは魔女じゃないですよ」
「……え?」
「ミカさんは魔女じゃないです。魔女はもっと残忍非道で、かつ狡猾で……何より脳筋じゃないでsホァッ!? 「次は当てるからね?」 ウッス……」
「こーんなにかわいい女の子に言っていい言葉じゃないよ。全く、もう……」
「ガワはともかく中身は……」
「……なにか文句あるの?」
「ヒュー! パーフェクト美少女ー!」
お、おっかねえ……。拳の風圧だけで頬の皮膚が切れたぞ……。協力しなかったら、この人の形をした兵器みたいな奴が地の果てまで追い掛けて来るってマジ? この世界に神などいない。もし居たとすれば生粋のサディストに違いない。人の心とか……は、まあ神なら持ってないわな。
「気を取り直して……仮にミカさんが魔女なら、俺なんて魔王を超えて大魔王ですよ?」
「……なにそれ」
「世界は広いのです。下にはさらに下がいます」
「……なに? 今さら同情するの?」
「いえ、純然たる事実です。少なくともミカさんの尺度ではそうだと思います」
「……ふーん、そう。…………まあ、上辺だけの励ましだったとしても、今はちょっと嬉しいよ。ありがとね、大魔王」
「魔女なら大魔王に従うべき。と言う訳で俺は帰る」
当然の道理である。後は放置すれば勝手に解決するだろうに、何故態々首を突っ込む必要があるのか。あっ、嘘ですすみませんだからその手を下ろして頂けますと幸いで、ホワァー!?
エデン4章で何故かミカ側?にいる系主人公です