曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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ゲーム開発……ゲーム開発かこれ?



#2 時計じかけの花のパヴァーヌ編 1.レトロチック・ロマン
1.夏休みの宿題と納期


 

 

「ねえこのキャラの武器は刀じゃなかった!?なんでシャベルで戦ってるの!?」

 

「そのシーンはたまたま近くに落ちてたシャベルで戦うシーンだから!」

 

「でも機械系のステージだよ!?シャベルよりもっと違う工具とかの方がいいんじゃない!?」

 

「ゾンビといったらシャベルでしょ!?」

 

「バールのようなものでいいんじゃないかな…?」

 

「ナイス、ユズ!それで行こう!」

 

「うわーん!ボスが強すぎて何回やっても勝てないです!」

 

 

 先生に依頼と称して案内されたのは正しく修羅場だった。物が散乱したあまり広くない部屋、叫ぶように行われる討論とも呼べない会話、画面に齧り付いてゲームをしている少女。心なしか全員、精気がないように見える。よく見かける修羅場ですね、これは。俺にこの地獄へ飛び込めと?

 

 

「ちなみになんですが、納期は如何に…?」

 

「ミレニアムプライスの受付期間だから確か……3日後?」

 

「3日と6時間11分です」

 

「進捗どうですか?ここに書いてある?どれどれ…?あっ」

 

 

 駄目みたいですね。デスマーチ確定です。ありがとうございました。どうして無茶なスケジュールを組んでしまうのですか?

 

 

「あっ!あなたが先生の言っていた助っ人ですか!?」

 

「え?うわっ!?いつの間にそこに!?」

 

「珍しい、外の人?」

 

「どんな紹介をされたかは知らないですけど、多分その通りです。トマリです」

 

 

 今は時間もないっぽいのでメンバーに簡単な自己紹介をしてもらい、そのまま作業を再開することになった。自分にはゲーム制作のノウハウとか特にないので、手が足りていないらしいデバッグ作業を担当することになった。専門的なことは何一つ分からねえ。

 

 

「このステージだけ敵エンカ率高すぎ問題。エンカ率はともかく、敵の初手行動が大体即死で運ゲーになってるけど。もしかしてバグ?攻略法は日頃の善行と神社へのお参り?」

 

「えっと、そこの敵は即死を無効化する装備つけないと突破が難しい設定にしてるの」

 

「そういうことか。で、肝心の攻略用の装備はどれだ?」

 

「装備一覧を開いてみて?…あれ?二章前の町広場の噴水の裏にいる旅人に話しかけてないの?」

 

「そんなのいたっけ?いや、そもそも攻略必至級の装備がメインストーリーで手に入らないのは時代に逆行してるのでは?」

 

「どこに役立つフラグがあるかわからないから、メインストーリーを進めるだけでは攻略できないってこと!やっぱりNPC全員に話しかけてから、次の町に行かないとね!レトロRPGの醍醐味ってやつ!」

 

「その分、考えるテキストの量も増えるから大変だけどね」

 

「新しい世界で住民と交流、思いがけないクエストが発生するかもしれないワクワク感。あの感覚は素晴らしいものです!」

 

「言いたい事はまあ分からんでもないが、装備取得フラグを2章も前にする必要あった?」

 

 

 物語の進行のバグというより、昔のゲームのリスペクト(不親切設計)だった。そんなところ真似しなくていいから。必須級の道具ならもっとわかりやすいようにするべきだろ。…え?これでわかりやすい方?大丈夫?(開発者目線で)わかりやすいって話じゃないか?しかも、噴水って確かイベント以外で出番なかった場所だったような。

 

 

「カジノのコインがお安く買えてしまうバグ…交換ラインナップがしょっぱすぎて役に立たねえ」

 

「カジノはまあ本筋じゃないからね」

 

「遊技場で遊んでるだけで救えるほど世界は甘くないんだよ!」

 

「正論の筈なんだけど、世知辛い世の中だな」

 

 

 しかもコインの所持枚数限界を考えると、店に売れるアイテムと交換しても増やせる所持金も雀の涙ほどだ。いや、溢れる分を考慮するとマイナスになるか?これなら経験値稼ぎも兼ねられる戦闘の方が余程効率がいい。対策しているのはいいが、バグの方直したら?838861は流石にネタが古い。と言うより最早ネタをぶち込むための仕様になってやがる。

 

 

「うーん……どうしよう」

 

「どうしたのミドリ?」

 

「なかなかいいBGMが見つからなくて。ついでに言うとSEもなんだかしょぼいし…」

 

「なければ作ればいいんだよ!」

 

「そんな時間ないのわかってるでしょ。それに誰も作ったことないし」

 

「トマリ、出番だよ。確か前に横笛吹いてたよね」

 

「怖、なんで知ってるんですか?しかも音楽の知識なんて俺もないです」

 

「気にしない気にしない!」

 

「よし、トマリをサウンドクリエイターに任命する!」

 

「じゃあよろしくー」

 

「無茶言ってんじゃねーよ」

 

 

 遂に過労で頭がやられたか?新曲開発なんて締め切り間近にすることじゃないんだよなあ。笛が吹けるだけのズブの素人に任せるような案件じゃないだろどう考えても。

 

 

「専門的なことは知らないけど、音楽制作用のアプリとかあるのか?」

 

「そこは大丈夫。このパソコンに録音機能も付いてるからマイクに向けて演奏してほしい」

 

「トマリの腕に期待だね!」

 

「大丈夫!メチャクチャ上手だから!」

 

「ハードル上げるの止めていただけます?」

 

「そうなんですね!アリス、楽しみです!」

 

「あーあ、俺知ーらない」

 

 

 ハードルが高いなら潜ればいいじゃない。実際は下を潜ると失格になるらしいけど。個人的には、ハードルを薙ぎ倒して突破していく奴等を見ている方がいっそ清々しくて好き。それに巻き込まれることさえないならば。

 

 現実逃避はここまでにして演奏を「待って!?どこからその笛出てきたの!?」

 

「え?あれ??」

 

「トマリも中々おかしいよね…」

 

「おかしいのは今の状況では?」

 

 

 何故納期ギリギリのゲーム開発中に笛を演奏することになるのか。コレガワカラナイ。どう考えても今はそれどころではないだろ。

 

 

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「素晴らしい演奏でした!この曲なら『テイルズ・サガ・クロニクル2』の世界に彩りを与えてくれると確信します!」

 

「いいじゃんいいじゃん!冒険に相応しい曲だし、オープニング曲に採用で!」

 

「ちなみにこの曲のタイトルは?」

 

「さあ…元は吟遊詩人が弾いてた英雄譚だったとは思うけど。よかったら、みんなでタイトル考えてあげて?」

 

 

 俺は知っていた曲の中でそれっぽいものを提供しただけで、この子達がメインでゲームを制作しているのだ。別に自分が考えても構わないが、曲の顔とも言えるタイトルについては、俺が考えるよりもこの作品に懸けているゲーム開発部の方で決めてあげて欲しい。決して考えるのが面倒だったから投げた訳ではない。

 

 まあ所々忘れかけている部分があったので、割と適当に吹いているところもある。譜面とか残してなかったから仕方ない。本当は歌詞もあるのだが、固有名詞とかを今開発中のゲームに合わせるのも面倒くさ…空覚えなので敢えて言わない。

 

 ちなみに、歌に出てくる勇者は清廉潔白で人格者で〜と讃頌されてはいるが、実際はまあうん。※実物とは異なる場合があります。プロパガンダとか国の権威として使い易いから想定はしていたが、実際にこの歌を聞いた時に思わず爆笑してしまった俺は悪くないはずだ。耳触りもいいし、記憶に残り易いフレーズ、それでいて都合の悪い所は誤魔化しているのはプロの技を感じる。

 

 

「これのアレンジをラスボス戦で使おう!」

 

「うん、定番だけど悪くない」

 

「この中で音楽に一番詳しいのはトマリだろうし、お願い」

 

「知らんぞ?後で文句言っても受け付けないぞ?」

 

 

 音楽理論とか全然知らないが?最近のゲームから(強制的に)離れていた俺より、ゲーム開発部メンバーの方が詳しいから寧ろ適さない人選だと思うが。

 

 結局、編曲も担当することになったが編集ソフトが優秀過ぎたので思っていたより簡単に終わった。ミレニアムの力ってすげー!

 

 

 





下手に弄るとextremeぐらいになりそうだったので結構すっ飛ばしました。
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