「おぉ……」
オグリキャップは、目の前に出された大きなハンバーガーを見つめて、嬉しそうに声をあげた。
オグリキャップの頭と比べて一回りか二回りほど大きなハンバーガーだ。
それは、とても美味しそうな匂いを漂わせている。その匂いが、オグリキャップのお腹を刺激した。
――グゥウ~。
お腹が空いていることをアピールするように、可愛らしい音が鳴り響く。
「む……」
自身のお腹を撫でるオグリキャップ。お腹が空いてるのは確かだが、今鳴ったのは自身のお腹の音ではない。別の場所から聞こえてきた。
――ぐううぅーー。
空腹を主張する音が、もう一度鳴った。今度はオグリキャップの隣からだ。
そちらの方を見ると、ピンク色の球体がいた。オグリキャップと同じく、大きなハンバーガーをたいらげたくて仕方がないといった表情をしている。
「…………!」
オグリキャップは、戦慄した。このピンク色の球体の食に対する姿勢は「同じタイプの輩」であると、ウマ娘の直感として勘付いたのだ。
オグリキャップとピンク色の球体はハンバーガーをじっと見つめている。
互いに無言のまま、視線だけで牽制し合っていた。
(これは、いわば『刹那の見切り』。おそらく勝負は一瞬で決まる……)
そして、12時30分になった事を報せる鐘の音が一つ鳴る。その音が号砲の合図とばかりに身を乗り出し、二人(?)は目の前にあるハンバーガーを喰らいに行った。
「……うーん」
昼休み。タマモクロスがエントランスをきょろきょろと探し回っていた。
「あれ、タマモクロスさん? どうしたんです?」
そんな彼女に話しかけたのは、スマートファルコンだった。
タマモクロスはすぐに気まずそうな顔になって、頭を掻きながら話し始めた。
「オグリのヤツをな、探しとって……どこおるんやろか、アイツ」
スマートファルコンも一応周囲を見渡す。しかし、オグリキャップの姿は見当たらない。
「この時間帯なら食堂やその帰りとか……?」
「おらんかった。食堂に集まっとった子達に聞き込みしても『ハンバーガー食べてたはずがいつの間にか居なくなってた』って、口を揃えて言いよるし……」
困り果てた様子を見せるタマモクロスを見て、スマートファルコンはなんとなく……思った事を言った。
「何かオグリキャップさんとあったんですか?」
ぎくり、とタマモクロスの身体が跳ね上がった。図星を突かれたように焦っている。
「……いや、な。今朝、冷蔵庫でお茶のペットボトル取り出した時にな。皿に大事そうに乗っかってるケーキ、ひっくり返してん。ウチのやないから、たぶんオグリの」
タマモクロスの話を聞いて、スマートファルコンは「なるほど」と納得した。食べ物の恨みは恐ろしいとは聞くが。
「それで『すまん、ひっくり返してもうたわ。新しいの買ってくるさかい、明日同じの買ってくるけどええか?』と、提案したわけなんやけど……」
タマモクロスは、肩を落とした。その時を思い出したのか、悲しそうな顔でいじけている。
「……オグリのヤツ、不満もなんも言わんで、犬がしょげたみたいにいじけたまま、口も利いてくれんねん……」
ため息を吐くタマモクロス。心底落ち込んでいる様子だった。
スマートファルコンは、それを見て少し考えた後。思い当たった事を一つ言ってみようとタマモクロスに問いかけようとした。
そんなところで、見覚えのある特徴的な髪色と、髪飾りがひょこひょこと揺れ動いているのが二階通路の手すり越しに見えた。
「あ、あれ。オグリさんじゃないですか?」
スマートファルコンが指を差した先を、タマモクロスが見る。
確かに。オグリキャップの髪の毛と髪飾りが見えた。……頭だけ。
「あー、あんなところにおったんか。…………なんか頭の位置的にウチくらいに縮んどらんか? それとも腰屈めて歩いとるんか」
なんにしたって、ようやく見つけたのだ。タマモクロスはオグリにもう一度謝ろうと彼女に近づいて行った。
そしてタマモクロスがオグリキャップに話しかけようとした瞬間。
「おー、タマじゃないか。ちょっと気になるモノ拾ってよ」
イナリワンがいた。頭にはオグリキャップのカツラを乗せ……いや、違う。オグリキャップのカツラを被った、某かの球体を搭載して……。
「ほっほっひっふー!!」