作者のラブコメリハビリみたいになっていて、本当にすみません。
初瀬さんの家へと向かう道中、初瀬さんと一緒に私の大きめのタブレットでホットラインを見ていた。
『ハロー、沢芽シティ! さっきもお届けした新たなライダー! 名前の案も沢山頂いているぜ。ナイトやショコラ、フレンチ。どれもいいが、俺はこう呼びたい。アーマードライダー・ブラーボ、と。どうだい? ってまぁ、ライダーの名前は本人が名乗らない限り俺の独断で決めているからな、ブラーボで決定にしちまうか。さぁ、このブラーボ。初戦はVSグリドン&黒影。モーメント戦よりも連携する姿は見られたものの、ブラーボの華麗な勝利に終わった。そして連戦でVSモーメント。こちらはブラーボの都合からか、ドローという結果に終わった。未だ黒星のないモーメントに勝利できるライダーはいるのか!? おっと、時間だ。今回はここまで。また会おう!!』
いつものように放送時間の分からない番組だ。それに、何処から放送しているのやら。タブレットを鞄に戻す私に初瀬さんが尋ねてくる。
「師匠、黒星なしって本当か?」
「そう、ね。確かに、負けたことはまだないかも。あ、でもね、鎧武の葛葉さんと戦ったことないの。戦ったら……勝てるかな?」
「葛葉か……。アイツが最初のライダーだよな。それに、アイツもまだ黒星ないじゃないか? まぁ、チョコのおっさんが喧嘩を吹っかけているかもしれないからな。お、着いたぞ。見た目はぼろいが、中はそうでもないんだ」
そう言いながら部屋の鍵を開ける初瀬さん。アパート一階の最奥、104号室は初瀬さんの住まいだ。
「お邪魔しまーす」
玄関に入るとすぐ隣が洗面所だった。我が家と比べてはいけないと思いつつ、ちょっと衝撃的。
「ま、適当に座ってくれ。腹減ってるか? 何か作るけど」
「え、初瀬さんが作るの? 意外かも」
「そいつは失礼だな。見返してやるよ、俺の最強チャーハンでな」
「ふふ、じゃあ期待して待ってます」
ジャケットを脱いでエプロンをつけた初瀬さんがキッチンに立って料理を始める。人は見かけによらないと、思わず再確認してしまう光景だ。
なんだろう、よくよく見れば見るほど初瀬さんってかっこいいのでは、なんて思ってしまう。ワイルドという表現は確かにしっくりくるが、前に桃井ちゃんは言っていたような野蛮さというものを感じたことはない。暑苦しさを感じたことはあったが、あれも度を超えた礼儀正しさともとれる。それに部屋もきちんと片付いている……。
そう思って部屋をぐるりと見渡す。畳張りの六畳間と四畳半の2DKといった間取りだろうか。座卓と座布団、襖に押入れ、基本的に和風な部屋で、たんすの上にはレイドワイルドの人たちが写った写真や城乃内さんとの写真等々が飾られている。そうこうしているうちに、キッチンの方から食欲をそそる匂いが漂ってきた。どうやら、チャーハンが出来上がったらしい。
「飲み物も出さなくて悪かったな。普通のお茶でいいか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ういよ」
座卓に置かれたチャーハンはいたってシンプルな見た目で、餡かけになっているとかエビだのカニだのが入っているものではない。見た目よりも味だよねと思いつつスプーンで一口。
「おぉ、美味しい!」
なんて表現すればいいのか分からなかった。でも、すごく美味しい。家庭的というか、優しい味がする。それに驚くほどパラパラだ。一口目を頬張った時は心なしか塩気が弱いと思ったけれど、二口目で中にベーコンが入っていることに気付いた。あ、これで丁度よくなるんだ。
「すごいよ、すごいよ初瀬さん!」
「はは、凄いだろう。なんか、師匠を見ているとよ、こんな妹がいたら幸せだなって、思うときもあるんだ」
「ほえ? 私が妹、ですか?」
「嫌か?」
ちょっと意外だった。あ、でも初瀬さんって兄貴気質なのかもしれない。一人っ子の私には分からないけど。ただ、レイドワイルドの人たちには慕われているみたいだし。
「じゃあ、お兄ちゃんって呼ばないと、だね? 私一人っ子だから新鮮な感じ」
「ふっ、いいよ別に呼ばなくて」
「なんでぇ~、いいでしょお兄ちゃん」
「キャラ変えんな」
「ふふ、私の口調は七変化するんだよ」
ちょっと呆れたような顔をした初瀬さんだが、思い出したように表情を切り替えると私に問いかけてきた。
「お前、明日のロックシード争奪戦には参加するのか?」
「え、何ですかそれ。私聞いてませんよ? お兄ちゃんはどこからそれを?」
「お兄ちゃん呼ぶな、恥ずかしくなってきたっつの。鎧武が主催するバトルでな、森に入ってロックシードを取りまくるバトルなんだ」
「森? ロックシードをどこから取るの?」
「そうか、鎧武の連中から説明を受けないと謎のままだよな。葛葉と駆紋の持ってるバイクを覚えているか? ロックビークルっているんだが、あれを使って暫らくすると、ヘルヘイムっていう森に飛ぶらしい。そこの木の実がロックシードなんだとさ、すげぇ簡単な説明だけど」
「なんか……色々と大丈夫なの、それ?」
「さぁな。分からん。まぁ、気楽にいこうぜ。で、師匠は参加するのか?」
「そもそも、私ロックビークルを持っていない上に持っていてもバイクを運転できませんから」
私はそう言ってからチャーハンの最後の一口を口に運ぶ。
「それもそうか。おっと、そろそろ暗いな。送ってくよ、さっき言ったロックビークルでな。いや、バイクが欲しかったから丁度よかったぜ。鎧武の連中が融通を利かせたみたいで、タダだったんだぜ、コレ」
そう言って初瀬さんが見せてくれたのは桜を模った少し大きいロックシード。あ、それよりも、
「ご馳走様でした」
「おう、お粗末様」
食べ終わったら挨拶をしないと。
「食ってすぐだけど、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫ですよ。多分」
「多分かよ」
苦笑を浮かべながら外へと向かう初瀬さん。私も学校の鞄を持って着いていく。初瀬さんの部屋をでると、もう確かに空は群青色だった。桜のロックシードが開錠されると、変形ロボットみたいにバイクが現れた。
「あ、ヘルメットまで出てくるの?」
ロックシードから出てきたヘルメットを私に被せた初瀬さんは、玄関に置いてあった普通のヘルメットを被りバイクに跨る。えっと私、学校のスカートを穿いた状況でバイクに跨るのか。まぁ、運転手からスカートの中身が見えることは確実にないだろうけど。
「動くぞ?」
「大丈夫、いつでもいいよ」
言い回しがちょっと卑猥な気がするけど気にしない。邪念を振り払って初瀬さんにしがみつく。さっきのチャーハンの匂いが残ってる。そんなことを思っている内に走り出すバイク。あれ、そういえば?
「初瀬さん! これって森に行くものじゃ?」
声を張って叫ぶ。聞えたようで初瀬さんも大きな声で返してくる。
「時速50キロまでなら平気らしい!」
たしかに思っていた以上に安全運転といった感じだ。カーブでの重心移動を何となく察し、しばらく道案内していると。
「ここです!!」
徒歩通学可能な圏内にある私の家と通学路に近い初瀬さんの家、近いとは思ったが、思った以上にすぐ到着した。
「でかい家だなぁ。やっぱり師匠はお嬢様なのか?」
「そんなでもないですって。とにかく今日はありがとうございました、お兄ちゃん?」
「まだ言うか。もういい好きに呼んでくれ。じゃあな」
「はい! ありがとうございました!」
初瀬さんを見送り、私は自宅の扉を開ける。
「ただいま♪」
普段以上に声が弾んでいたと思うけど、なんでだろうね。
智音が意外に鈍い。女子力低い? あと、初期設定だと智音は思考回路がややエロの残念系美少女でした。多分、今回だけでなく言動の端々に名残があるかと。
ちなみに、この裏では鎧武がコウモリインベスと戦闘をしたり斬月が森の実を焼かせている現場を目撃したりシドさんとロックシード争奪戦の打ち合わせをしたりとしています。次回、蒼天ライダーも登場して争奪戦へ移ろうと思います。ちなみに、本作では法律に則ってミッチはバイクに乗りません。紘汰さんが乗せてくれます。これでミッチが使うロックビークルを蒼天ライダーが使えるという算段です。