後半シリアス
結局、あの後いくつかロックシードを回収して森を出ることにした。アプリコットの鈴を鳴らしながら回収をしたのだが、箱などの入れ物を持っていないため、2ダースを超えたあたりで諦めた。
「あの白いライダー。一体何なんだ……滅茶苦茶強かったし……」
「……私、初めて負けた……ってことだよね?」
「えぁ? あ、えっと……気にすんな! あいつはビートライダーズじゃねぇんだからよ」
森から出ると、初瀬さんのアパートの近くだったため、そのままお邪魔している。
「そうだね、うん。そうだよ! 大丈夫、私、最強!」
「おいおい、いきなり調子乗ったな」
「あはは……分かってるよ。あのさ、初瀬さん」
そこまで言ってから一度黙る。初瀬さんは分かっているのかな? 今日がどういう日か。
「んだよ?」
「今日ってさ、その……クリスマスじゃん?」
「あ、あぁ。そうだな」
思っていた通りの反応に思わず相好を崩す。
「クリスマスをこんな可愛い女子高生と一緒に過ごしているんだよ? 何か言うことない?」
「は? ちょ、急に何だよ?」
「言ってみただけだよ、おにーちゃん?」
「それもよせって!!」
溜息を吐く初瀬さんは、
「家まで乗せてってやるよ。だからさっさと帰れ」
「……私がいたら、迷惑ですか?」
そそくさと玄関へ向かう初瀬さんの背中に問いかける。
「違うっての。……俺が変な気を起こしたら大変だろうが……」
「……え? 今、なんて?」
「うるせぇ。ほら、さっさとしろ」
言われるがままにロックビークルに乗り、家路を辿ることになった。
「ただいま」
「ふん、今帰ったか」
「父さん……家にいるなんて久しぶりだね」
「あぁ、たまの休みだ。家で過ごすのも悪くない。母さんはリビングだぞ」
そっかと返事をして自室へ向かおうとするのだが、後ろから声をかけられる。
「智音。随分と遅い帰りだな。まぁ、うちは呉島ほど厳しい家ではないが……あまり父さんと母さんを心配させるな」
「うん。……分かってる。ごめんなさい」
私の両親はユグドラシル社で福祉部門の重役として勤務している。もっとも、母は父の秘書のような扱いだが。そして、研究部門の主任をしているという呉島家の長男ともそれなりに面識があるらしい。自室に向かう足を止め、リビングへ向かう父に尋ねる。
「あのさ、父さん。呉島さんって……光実君のお兄さんってどんな人?」
父は一度息を零し、腕を組んでから口を開いた。
「彼、貴虎君は……自己犠牲の激しい人間だ。どんな実験を行っているか、畑違いの私には分からないが、自ら被験者になっているのか……それに、普段から重労働をこなしているのだろうか、随分と頬がこけた、いや、やつれたな……。凌馬も彼には随分と迷惑をかけているんじゃなかろうか。ふむ、それにしても何故、彼のことを?」
父に質問を返され、咄嗟には答えられなかった。
「え? いや、その。光実君と話す機会が増えたから……かな」
……ちょっと待って。呉島貴虎氏に叔父さんが迷惑をかけている……? そもそもユグドラシルの重役を輩出する小野寺家に嫁ぐ娘を擁する戦極家だ。そっちもユグドラシルに関係していてもおかしくはない……じゃあ、叔父さんはユグドラシルの人間ってこと……。つまり、ドライバーもロックシードも? まさか……。
「智音、顔色が悪いように見えるのだが? 健康管理くらいきちんと――」
「ごめんね父さん。月の障りは健康管理じゃどうしようもないの」
嘘を吐いて場を凌ぎ、自室へと急ぐ。……どうしよう? どうしよう?
「……分からない。でも、出来ることを探そう」
決意を胸に、聖夜は更けていく。でも私はまだ知らなかった。自分が手にした力によって、私も、私の周囲の人たちも、既に後戻りできない運命に導かれていたことを……。
前半は初瀬ちゃんの困惑
後半は智音の困惑
智音には比較的早い段階で全てがユグドラシルの手によるものって察知してもらいました。両親登場は……もうないかな? 母が出せなったけど。
次回から最大3話、オリジナルで戦闘回になると思います。