ドライバーを貰ってからも、平穏な毎日だった。挑んでくるのはドライバーを持たないチームの人だけだったため、変身する機会がなかったのだ。
そもそも、私がアーマードライダーであることを知っている人が少ないのだと思う。そんな平穏を崩す空気の読めない青年…まぁ、彼しかいないだろう。
「チーム・モーメントに告ぐ。バロンの傘下にならないか?」
ダンスに使っているステージに現れたのは、チーム・バロンの駆紋さんだった。用件は、最近ホットラインでも話題に取り上げられたバロン連合へのお誘いだった。だが、
「お断りです。むさくるしい」
私は…私たちモーメントは、その誘いを蹴った。バロンの傘下はレイドワイルド、インヴィット、レッドホットだったはず。インヴィットは例外だが、男ばかりのチームと踊るのは真っ平ごめんだ。これはチーム共通の考え。そこで駆紋さんが取り出したのは…ロックシードだった。
「ならば力で存在価値を示してみろ」
『バナナ!』
駆紋さんがバナナロックシードを開錠しベルトに嵌めると、高らかなファンファーレと共にバナナが現れ、カッティングブレードを倒すと鎧が展開された。
『ロック・オン! カモン! バナナアームズ ナイト・オブ・スピアー!!』
赤と銀、バナナの黄色が鮮やかな中世の騎士が現れた。片手槍を構え、臨戦態勢だ。
「智音!」
メンバーの一人が焦った声を上げるが、問題ない。まだ変身してから人と戦ったことはなが、対人戦の基礎は分かっている。
『アップル!』
落ち着いて変身のための過程を踏む。
『ロック・オン! ソイヤ! アップルアームズ 進め! grow up!!』
薙刀型の武器を構え対峙する。バロンの持つ武器は西洋槍のような形だが、レイピアとしての用途もあるため長さはない。対してこちらは完全に長物装備なので、こちらから距離を詰めることをしない。
「さぁ、かかってこい!」
余裕のつもりか挑発のつもりか知らないが、バロンは仕掛けようとしない。さて、どうしたものか…。
「はぁ!!」
取り敢えず牽制の意味も兼ねて、薙刀を横に振るい、そこから突きを繰り出し攻撃する。
「ふん!」
バロンは攻撃を武器でいなすが、リーチの問題で攻撃を仕掛けてくる素振をしてこない。かと思いきや、
『カモン! バナナオーレ!』
バロンがカッティングブレードを二度倒すと、槍にバナナのオーラが纏わりリーチが伸びた。それで私に突きを放つが、薙刀で手元を揺さぶり不発に終わらせる。
「やるな!」
そう言いながらバロンはブレードを今度は三回倒した。慌てて私も三回倒す。今度の技は、相殺しないと危ないと思ったからだ。
『カモン! バナナスパーキング』
『ソイヤ! アップルスパーキング』
槍から生まれた無数のバナナのエナジーを、薙刀にチャージしたアップルエナジーで相殺する。だが、余剰の衝撃で私もバロンも後方に倒れる。
「うぐ…」
薙刀を支えに立ち上がるが、転倒した私と異なりバロンは片膝を付く程度だった。これが防御力の差ということか。
「玲奈ちゃん! なんかクラスAロックシードない?」
私は後ろにいるチームメイトの地紋玲奈ちゃんに、声を張って尋ねる。スピード系のこの武装だと分が悪い。
「これは!?」
投げられたロックシードを確認すると、レモンロックシードだった。取り敢えず試してみよう!
『レモン! ロック・オン! ソイヤ! レモンアームズ 打撃・デストラクション!!』
変身してみると、一気に身体が重くなった気はするが、その分だけ装甲が硬いということだろう。武器はハンドメイスだろうか。1メートルもない棒の先端にレモンみたいな塊がついている。鈍器として戦うんだろう。
「姿を変えようが俺の勝利は変わらない!」
バロンの強気な発言に大人気なさを感じつつ、リーチというアドバンテージを失った今の戦い方を模索する。