モーメントのステージで私がバロン、黒影、グリドンに勝利して以来、モーメントはとうとうチーム・蒼天を抜き三位に浮上した。それと同時に、チーム・レイドワイルドの初瀬さんが、しばしばステージで踊っている私のところに来ては、
「俺に稽古をつけてくれ」
と言うのだ。なんでも、戦闘スタイルが似ている私に戦い方を教えてほしいそうだ。私はどちらかというとインテリ顔の男性が好みなのだが。まぁ、人の頼みを自分の好みで断るのも、どうかと思うが。
ちなみに、稽古をつけてくれと初めて言われた日から一週間弱経過している。最初は、考えさせてと言っていた。なにせ、ライバルチームのライダーを育てるのだ。普通ならお断りだ。とはいえ、ここまで熱心に頼まれては仕方ない。なにか理由があるのだろう。
「もぅ……仕方ないわね。でも、強いロックシードを使うのがベストだと思うけど……」
「確かにそうだが、黒影って名乗っちまった以上、このアームズで戦うしかないんだよ」
……理由が名前だなんて……。
「それじゃ、どんなに頑張っても強くなれないでしょうが。取り敢えず、このアームズを紹介しておこうかな」
『イチジク!』
そう言って私が取り出したロックシードはイチジクロックシード。一応、持っているロックシードを全部使って変身をしてみた。まぁ個人的にはリンゴが一番だけどね。そしてこのイチジク、クラスB+のロックシードで、変身した時の武器が……。
『ロック・オン! ソイヤ! イチジクアームズ 連撃! フォー・ザ・ライトニング!!』
薙刀や長槍と同じく長物ジャンルの錫杖だ。槍ほど強力な刺突はできないが、少しだけ短いので取り回しは簡単だ。ちなみに、このアームズは僧をイメージしているためか、袈裟のようなデザインになっている。当然、色は黒だ。ただし武器は白と金が基調になっている。でもまぁ、これなら初瀬さんも妥協するだろう。
「色も黒系だし、マツボックリよりは総合的には強いと思うよ?」
「うぅ……大人しくワイルドとか名乗っておくべきだった……」
まだ名前の話かよ!!
「まぁいいや。そのイチジクを一度、使わせてくれないか?」
「いいよ。ほら」
イチジクのロックシードを受け取り、変身する。アーマードライダー黒影・イチジクアームズだね。
「あれ? なんかさっき見た姿と違うよな?」
腕や足元を見る初瀬さん……もとい黒影。まぁ、アンダースーツが私と違って黒いのと、袴みたいな飾り布がないこと。あとアームズ自体が少し薄い色になった気がする。私のアンダーが白っぽいから、黒く見えていただけかもしれないね。まぁドライバーのイニシャライズに関係しているのだろう。同じアームズでも少しずつ姿がちがうのは。
「これなら……まぁいいかもな」
「じゃあ、稽古を始めましょう」
『アップル! ロック・オン ソイヤ! アップルアームズ 進め! grow up!!』
薙刀を構えて相対する私と黒影。頭まですっぽりとアームズに覆われているため、視線フェイントが使えないというのは痛手だ。あれ、私の得意分野だったのに……。
「せりゃあ!!」
そんなことを考えていると、黒影が勢いよく突っ込んできた。フェイントではないだろう。
「それ!」
私は薙刀を上へと振り上げ錫杖を弾き飛ばす。そのまま両手首を返して刃を黒影の首筋へ付ける。
「ま、参った」
早いよ……。二分も戦っていない。これじゃあ、稽古として成立しているのだろうか……。
「はいはい、錫杖を取ってくる! まだ続けるよ!」
「うっす。師匠!!」
え!? 師匠!? まぁ、初瀬さんは熱血で体育会系なタイプだが、まさか私を師匠と呼ぶなんて。初瀬さん、私より何歳年上なんだろう?
そもそも、女子高生を師匠って呼ぶ時点でおかしいだろう!?
「おりゃ!」
そんなことを考えつつも、体はきちんと錫杖の攻撃を受け流す。ただ振り下ろすだけでなく、時間差を使ったフェイントも駆使するようになってきた。まぁ、頭突きを交えてくる辺りは、ヤンキーっぽいが。
「はい、そこまで!」
脇下を狙ってきた錫杖を、薙刀を一回転させることで弾き、そのまま頭に刃を乗せる。普通の試合なら、このまま面に極まって一本先取だね。
「強いな……本当に。それじゃ、明日もよろしくな!」
「ちょっと! 明日は学校なんですけど!」
そう言ってイチジクロックシードを投げ返しながら去っていく初瀬さんを呼び止めて、ロックシードを投げ返す。
「午後六時半から、ここで。それは入門祝い。明日からはもっと厳しいからね!」
年上にこんな強気に発言したことって、あんまりないなぁ。初瀬さんだし大丈夫かな。