――それは、滅亡が約束された並行世界の1つ。
本来であれば、《
『……だから言ったのよ。たとえアリスの精神世界に侵入できたとしても、下手をすれば二度と戻ってこれなくなってしまう、と。……現実逃避の行き着く先としては相応しい末路ね』
ゲーム開発部は――先生は賭けに失敗する。この未来は避けられない。数十数百通りの未来を予知した結果、1つとしてその結末から逸れたものはない。
だから、天童アリスの精神世界にダイブした時点で、先生たちは敗北している。その未来を覆すことは絶対にできない。……けれど、1つだけ。たった1つだけ、その結末から逃れる方法がある。大人として、この並行世界を救うために蒼井ハルが選択した手段は――
ゲーム開発部の部室、シャーレの先生と対峙する調月リオは尋ねる。
「むしろ、貴方に聞きたいくらい。こういった事態に於いて、シャーレの先生、大人である貴方が真っ先に動くべきなのではなくて?」
「……それは、どういう?」
リオの質問の意図が読めず、先生は聞き返す。
「子供より感情に支配されず、冷静に状況を判断できる――そういった大人である貴方が動くべきだったのでは?」
「生徒を傷つけるなんて…………」
「――よくもまあ、そんな寝言を吐けたものだね」
第三者の声。先生の言葉を遮るように聞こえたのは、ゲーム開発部の部室に新たに入ってきた人物。その声の持ち主は――
「あなたは……?」
「――はじめまして、シャーレの先生。自分の名前は蒼井ハル。調月リオの『先生』だよ」
先生と同様に、ヘイローを持たない――キヴォトスの外から来たと思しき、大人の女性だった。
蒼井ハル(未来のすがた)
正史通り、アリスの精神世界へのダイブを実行すると絶対に失敗するという未来を予知し、『調月リオの先生』として『シャーレの先生』との敵対を選択した悪い大人の先生。
もちろん、この並行世界のアリスを殺害する気はないものの、『シャーレの先生』が歩んできた道のりには思うところもあり、「生徒を傷つけるなんて……」という先生の言葉は、割と本気で彼女の地雷を踏み抜く言葉だったりする。
調月リオ(並行世界のすがた)
感情論・理想論ばかりの『シャーレの先生』よりも合理的・現実的な判断の下で、可能な限りの最善を掴もうとする『自分の先生』に信頼を置く生徒。天童アリスの存在が滅亡の回避には必須と認めており、爆弾(プログラム)の解体を行うためにアリスの身柄をエリドゥに連れ去る。
何れにせよ、パヴァーヌ編2章の終了後はミレニアムを去るつもりであり、ハル先生の生徒として学園都市に迫る厄災に対峙するつもりでいる。