・クロスオーバー
・ブルアカの軌跡
部隊編成
・蒼井ハル
・聖園ミカ
・ユメ先輩
――破壊されたアビドス市街地*1
「2人とも、行くよ! 私が道を切り拓くから!」
突撃。前方の盾を突き出したユメが弾丸の雨を防ぎつつ、そのまま風紀委員会の展開する部隊へと突っ込んでいく。ユメの全身に容赦なく銃弾が浴びせかけられるが、彼女はまったく気にも留めない様子で弾丸の嵐を搔き分けながら突き進む。
その後ろを追いかけるのはハルとミカ。同型の
「ハルちゃん、チャンスだよ!」
「うん、行こう!!」
敵陣中央。全方位を敵に囲まれた状態であっても、彼女たちの表情には一切の緊張がない。それは、仲間を深く信頼しているからだ。
ユメを挟んで背中合わせになった2人は、視線を交わすことなく行動を開始する。
ミカは
「「――サザンクロス!!」」
流星の如く。放たれる弾丸の一発一発が迫撃砲並みの破壊力を誇る必殺の攻撃が風紀委員たちを襲う。その威力は凄まじく、防御用に展開された盾や遮蔽物をいとも簡単に貫通していく。
全方位を満遍なく薙ぎ払う銃弾の星雨は確実に風紀委員会の戦力を削っていく。サザンクロス。南十字星の名を冠するこの
「くそっ、なんだこいつら……!?」
「強すぎる……」
「狼狽えるな! 相手はたかが3人だぞ!!」
イオリの檄に気を取り直す風紀委員だが、それでも彼らの表情から余裕が消えたことは間違いない。それはそうだろう。こちらは一個中隊級の兵力だというのに、たった3人の生徒に一方的に押されているのだから。
「これ以上、アビドスの街を傷つけさせないよっ!」
対して、ハルたちは硝煙弾雨を掻い潜ると、そのまま風紀委員が構築していた3層からなる防衛線のうち第2防衛線を一気に突破する。その先には、迫撃砲を構える擲弾兵の姿。彼女たちは慌ててハルたちを照準に捉えようとするも……それを許すほど、ミカは甘くない。
「アビドスのために、祈るね」
その後方に立つのは、シンプルな外観の
「――神秘再現。コード『終幕:デストロイヤー』」
「なっ、その銃は……!?」
「どれくらい耐えられるか見物だね」
心より尊敬する風紀委員長。空崎ヒナの固有武器『終幕:デストロイヤー』を目の前にして呆然とするイオリに向かって、不敵な笑みとともにハルは引き金を引く。
周囲の大気を巻き込みながら、暴力的な弾丸の嵐が吹き荒れる。防御のために用意された遮蔽物はあっという間に破壊され、逃げる暇すらも与えないまま、無慈悲な破壊の嵐が容赦なくイオリたちを飲み込んだ。
◇ ◇ ◇*2
「ぐっ! くぅっ……!」
「ハル代理……こんな形でお目にかかるとは……。代理がいらっしゃることを知った瞬間、勝ち目はないと判断して後退するべきでした……私たちの失策です」
風紀委員会の最終防衛ライン。斬り込み隊長、銀鏡イオリは悔しさに奥歯を嚙み締めた。彼女のすぐ隣には、かつてシャーレ奪還の際に共闘した生徒の1人――火宮チナツの姿がある。
先ほどのハルの攻撃により、戦線は既に崩壊寸前まで追い込まれていた。これ以上の戦闘行為は無謀だと判断したチナツは、交渉を試みるため単身で前線に乗り込んできたのだ。
「ねえ、チナツちゃん。一体、いつの間に風紀委員会は人様の土地でこんな好き勝手できるほど偉くなったのかな? アビドス生徒会に許可は取ってるのかな?」
「それは……」
チナツは言葉に詰まる。許可なくアビドス自治区に侵入し、あまつさえアビドス側には何の連絡も入れていない状態での戦術的行動――そんな暴挙が許されるはずがない。チナツ自身も、それは重々承知している。だが、それでも彼女たちには成さねばならないことがあった。
そう考え、次の言葉を紡ごうとしたその瞬間、ハルたちの背後から聞き覚えのある声が響いた。
「ハル! ミカ!」
『ユメ先輩発見! ハル先輩とミカ先輩もご一緒のようです!』
「こちらも確認した、臨戦態勢の先輩たちを発見!」
アビドス生徒会の生徒4人と、シャーレの先生たる岸波ハクノ。アビドス高等学校を出発した5人が、ようやくハルたちの元に合流を果たした。
「先生……」
「久しぶり、チナツ」
明らかに敵意を剥き出しにしているアビドスの生徒たちに、チナツは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべたが――そんな彼女に対して、ハクノはにこりと微笑むだけだった。
『アビドス生徒会の奥空アヤネです。所属をお願いします』
『それは私から答えさせていただきます』
『通信……?』
返答に窮したチナツの言葉を遮るように、突如第三者の声が通信に割り込んできた。アヤネが怪訝な表情を浮かべていると、ドローンから1人の少女の姿が投影される。
「アコちゃん……?」
「アコ行政官……?」
『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、
大胆にも横乳が露出した服装に、手枷やカウベルといった変た……独創的なアクセサリーの数々を身に着けた彼女は、自らをゲヘナの行政官と名乗った。その自己紹介にアビドス生徒会が警戒を強める一方で、イオリとチナツの2人は直属の上司の登場に戸惑いを露わにする。
「アコちゃん……その……」
『イオリ。反省文のテンプレートは私の机の、左の引き出しにあります。ご存知ですよね?』
途端にイオリの体がピタリと硬直する。何か言い訳をしようとしていたようだったが、結局は大人しく口を閉ざした。アコはその様子を確認すると、仕切り直すように軽く咳払いをしてから、改めてアビドス生徒会の面々へと視線を向けた。
「ああ……ああ、みんな集まってます。……チャンスですね」
そして、その裏では、1人の少女が呪詛のように同じ言葉を何度も繰り返しながら、こっそりと影から三つの勢力を窺っていた。
「許さない……許さない……許さない……許さない……許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない 許さない……」
――キヴォトス・某所*3
「これはこれは。お待ちしておりましたよ、暁のホル……いや、ホシノさんでしたね。これは失礼」
同時刻。黒服に身を包んだ異形の男が、目の前の少女へと告げる。不機嫌を隠そうともしないその少女――小鳥遊ホシノは、不気味な男に鋭い視線を向けた。
「いやいや、キヴォトスにはまだ馴染めていなくて。こちらへどうぞ、ホシノさん」
「……黒服の人、今度は何の用なのさ?」
「……ふふ、状況が変わりましてね。今回は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をしようと思いまして」
「提案? ふざけるな!!! あの女の仲間を、この私が信じるとでも……!!」
ホシノが激昂する。しかし彼女の怒りを受け流すかのように、黒服は涼しい態度で口を開いた。
「まあまあ、落ち着いてください」
「……!?」
「……お気に入りの映画の台詞がありましてね。今回はそれを引用してみましょう」
トサッと椅子に腰を下ろし、肘を机に立て、両手を口元で組むと、黒服は意味深に続ける。
「あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ。興味深い提案だと思いますので、どうかご清聴ください。ククッ、クックックックッ……」
不穏な空気が漂い始める。黒服が提示する提案――それは、新たな波乱の予感をもたらす不吉な幕開けだった。斯くして、アビドス高等学校を巡る一連の問題は次の局面へと突き進んでいく。
TIPS:
ブルアカの軌跡。
『ブルーアーカイブ』と『軌跡シリーズ』のクロスオーバータグ。共にロールプレイングゲームという共通点があり、学園モノという点では『閃の軌跡』がそれに該当します。
また、ブルーアーカイブの作中では「英雄神話」と呼ばれる英雄伝説シリーズのパロディゲームが登場しています。