ウマ娘の奇妙な物語   作:金糸雀^_^

1 / 3
副作用

 「モルモット君、これを飲んでくれたまえ」

 

 ある日担当のアグネスタキオンがいつものように怪しげな薬を渡された。俺はそれをいつものように飲み干し、効果について聞いた。

 

 「ああ、これは下剤だよ。この前便秘に悩む子がいてね」

 

 俺はその後1週間はトイレに篭った。

 

 そしてこの日俺は決意した。

 

 「絶対に後悔させてやる」

 

 

 

 

 「って事でカフェとカフェトレに来てもらいました」

 

 「誰に話してるんですか?」

 

 さっそく下痢が治った次の日、俺はマンハッタンカフェとそのトレーナーを捕まえた。

 

 「それで何をするんですか?」

 

 「とりあえずこの前下剤を飲まされたから復讐する」

 

 「うわぁ」

 

 「ご愁傷様です」

 

 哀れみの目を向けられた。

 

 俺は基本的にタキオンの実験には寛容だった。その俺が笑顔で復讐するというもんだから2人は何かを察していた。

 

 「復讐って言うけど具体的には?」

 

 カフェトレが問う。

 

 「もちろん考えてある。作戦としては次薬飲まされたら人形になるつもりだ」

 

 「は?」

 

 「その反応はまだ早い。まあ話を聞け」

 

 何言ってんだコイツっていうような目はやめてくれ。傷つくだろ。

 

 「まず薬を飲む。そしたら俺は人形になる。もちろん実際になるわけじゃないが、薬の予期せぬ副作用でなったと言い張る」

 

 そこまで言うと2人はまた馬鹿を見るかのような視線を向けてきた。

 

 「それ本当に上手くいくと思いますか?」

 

 最もな問いだ。確かにそう思うだろう。

 

 「もちろん普通なら上手くいくわけない。でもこのメンバーなら上手くいく」

 

 「?」

 

 「どういうことだ?」

 

 訳がわからないだろう。しかしこの話に興味が湧いてきたようだ。

 

 「それはな、カフェのおともだちに協力してもらうんだ。おともだちに人形に憑依してもらってその人気の身体を動かしてもらうんだよ。声はスピーカーなんかを中に入れておけばたぶん会話できるし」

 

 ようやくこの作戦の内容を理解し始めた2人は真面目か考え出す。

 

 「確かにそれならいけないこともないな」

 

 「だろ?ちなみにそのあとはだんだん俺じゃない何かに変化していって俺が消えるっていう設定」

 

 「うわ、悪趣味すぎます」

 

 まあ俺もそう思うわ。でもタキオンは普段人道に反する事やってるからええやろ。

 

 「まあ1週間程度やったらネタバラシするさ」

 

 「長くないですか?」

 

 「それにおともだちが素直に協力してくれるのか?」

 

 確かにこの作戦で1番ネックなのがその部分だろう。

 

 「もちろん大丈夫だ。なあカフェ」

 

 「はい?」

 

 俺はカフェの肩に手を回し耳元に囁きかける。わりかし嫌がってはいるがまあ気にしない。

 

 「なぁ、普段タキオンにどんな目に遭わされてるんだ?それと比べたら今回のドッキリなんて些細な事だとは思わないか?」

 

 俺の言葉にカフェは少し考える。

 

 「まあそうですけど」

 

 「だろ?ここらで一回きつく懲らしめておいた方が良くない?」

 

 「それは……そうかもしれませんね」

 

 よし良い感じだ。次は

 

 「おともだちも普段カフェがどうなるか分からない薬を飲まされたり迷惑掛けられてるのを見て何も思わないのか?」

 

 俺が虚空に向かって話しかける。おともだちがどこにいるか分からないけど多分きこえてるだろう。

 

 すると予想通り、話は聞こえているのか部屋の室温が1度下がった気がする。

 

 そして再びカフェに

 

 「大丈夫。全部冗談だ。それにこれを考えたのは俺だ。君たちは悪くない」

 

 「分かりました。おともだちも協力してくれるみたいです。今回だけですよ?」

 

 「ありがとう」

 

 はい協力者3人目確保ー!

 

 「お前詐欺師向いてるんじゃないか?」

 

 「うるさい」

 

 そうして俺達はこの作戦をせいこうさせるべく、決行日と必要なものなどを打ち合わせをして準備を進めていった。

 

 

 

 数日後

 

 「よしできた」

 

 俺は用意した手足が動かせるクマ人形に会話用のスピーカーと視界確保するためのカメラを仕込みが終わって一息つく。

 

 「お疲れ様でした。コーヒー飲みますか?」

 

 「ああ、もらうわ」

 

 人形を机に置いて差し出されたコーヒーを一口飲む。程よい苦味と酸味が口一杯に広がった。

 

 「ふぅ」

 

 一気に飲み干して空になったカップをソーサーに置く。それとほぼ同時に部屋のドアが開き、カフェトレが戻ってきた。

 

 「どうだ?カフェの入れたコーヒーは美味いだろ。カフェ俺のも頼んでいいか?」

 

 「コーヒーは飲めない事はないけど、俺は紅茶派だからなー。でも確かにカフェのなら飲めるわ」

 

 「その割にはあまり美味しそうに飲みませんよね」

 

 「苦いの苦手なんだよ」

 

 「なら飲むなよ。いや、これはコーヒーの良さを知ってもらういい機会になるのか?」

 

 「そんなことよりだ」

 

 このままだとコーヒー責めにあいそうな気がしたから強引に話題を切り替える。カフェトレはまだ話足りなそうな感じではあったが、話を聞く体勢をとった。

 

 「タキオンの薬の完成が明日になりそうだ。よって明日決行しようと思う。皆んな準備出来てるか?俺の方はさっき終わったところだ」

 

 「俺達の方も問題ない。お前のトレーナー室とタキオンの部屋などの数ヶ所に隠しカメラを仕掛けてある」

 

 「私は特に準備はありませんがいつでも大丈夫です」

 

 「おっけー。それなら大丈夫そうだな」

 

 あとはおともだちの確認だけか

 

 『俺の方もオッケー』

 

 唐突に机に置いてあった人形が1人でに腕を振りながら声を出した。おともだちの存在を知っていてもこれはびっくりする。

 

 「……なるほど、そんな感じに動けるのか。興味深いね」

 

 「びっくりしたのは分かるけど、なにもダッシュで壁際まで行かなくてもよくね?今までで1番早い動きだったぞ」

 

 仕方ないだろ。お前達のように慣れてないんだよ。

 

 『そんなに驚くなよー。とって喰ったりしねーからよ』

 

 「ははは……」

 

 いや、分かってはいるけどな。

 

 「人形の身体はどんな感じですか?」

 

 カフェが俺の代わりに確認してくれる。

 

 『問題なく動かせるよ。良い素材使ってるな』

 

 おともだちは机から飛び降りて走り回ったり飛び跳ねたりしている。俺の想像以上に動けている。

 

 「よし、全ての問題点は解決できてるな。それじゃ多分だけど明日俺が薬を飲んだら作戦開始だ!」

 

 「頑張りましょう」

 

 『頑張るぜ』

 

 「おう」

 

 こうして俺達はタキオンを懲らしめるべく次の日を迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 「モルモット君。ちょっとこの薬を飲んでくれないか」

 

 きた。

 

 全ての始まりを告げる一言に俺は思わず緊張してしまう。

 

 「そんなに身構えなくても怪しい薬じゃない。今までの薬を少し改変しただけさ」

 

 幸いこの緊張は普段の薬に対する警戒と捉えてくれたようで特に気にしていなかった。

 

 あとサラッと言ってるけど身体が光るのは怪しい薬だぞ?

 

 「……わかった。その代わり変なのだったら今日の晩飯抜きだからな?」

 

 「そんなことしたら私が死んでしまうではないか。それだけはやめてくれないか?」

 

 「薬次第だ」

 

 俺は薬の入った瓶の蓋をとり、一息に飲み干す。

 

 「今回のは自信作なんだよ。モルモット君にどんな反応が出るか楽しみだねぇ」

 

 「そうかい。せめて無事であってくれればそれでいいさ」

 

 暫くは効果は出ないから普通に過ごす必要があるな。なるべく普段通りに。効果が出るのは十数分後くらいか? 

 

 「んじゃトレーニングの準備するわ」

 

 「効果が出たら教えてくれたまえ」

 

 「はいはい」

 

 俺はトレーニングの準備を始める。まだ効果は現れない。

 

 薬を飲んで数分くらいしか時間経ってないからな。いやそんなに経ってないか?とりあえずまだ作戦を始めるには早い。薬の作用は出ていないはず。

 

 作業は止めずに注意深く身体の変化を探る。暫くするといつものように手が発光してきた。

 

 「……また光出したな」

 

 予想通り身体が発光してきた。そろそろいいかな?

 

 「今回は銀色に光ってるねぇ。これは興味深い」

 

 「毎回思うけどなんで光るんだ?……うっ、げほっ、げほっ」

 

 「おや?どうしたんだい?」

 

 明らかに様子がおかしくなった俺にタキオンは少し心配そうに近寄ってくる。

 

 「いや、なんか気分が……げほっ」

 

 「おかしいねぇ、そんな効果無かったはずだけど」

 

 「ちょっと休んでくるわ。タキオンはここでこの資料を読んでおいてくれ」

 

 俺は用意していたトレーニング用の資料を渡し、フラフラと部屋から出ていく。廊下に出てドアを閉め切ったら小走りでカフェトレの部屋に向かう。

 

 カフェトレの部屋に到着して中に入るとそこにはすでにカフェとカフェトレの2人がいた。

 

 「どうだ?」

 

 「問題ない。タキオンも少し心配そうだけど大人しくしてる」

 

 「よし、カフェ10分後に頼む」

 

 「はい」

 

 俺の指示にカフェは頷いて部屋から出ていく。

 

 俺はカメラでタキオンの様子を見てみる。そこには渡した資料そっちのけで何やらぶつぶつと呟いているタキオンの姿が映し出されていた。

 

 【あの薬に体調悪くなる効果はあったかな?いや、そんなはずはない。副作用もそこまで気にするものはなかったはずだ】

 

 「へぇ、あのタキオンでも効能とかは予想して比較的安全そうなのを飲ませてるんだね」

 

 「それでも人体実験は良くないだろ。今回のドッキリはいい薬だよ」

 

 「ははは、これが薬になるならもしかしたら予期だにしない副作用が出てきそうだな。今回のタキオンの薬みたいに」

 

 「どうだろうな」

 

 【タキオンさん!】

 

 どうやらトレーナー室にカフェが入ったらしい。急な来訪にタキオンは少し驚いたらしくビクッと体を揺らしていた。

 

 【さっきモルモットさんが倒れて運ばれて行きましたよ!】

 

 【なんだって⁉︎バカな‼︎さっきの薬の副作用か⁉︎】

 

 【なんのことかわかりませんが早く行ってあげて下さい。多分倒れた場所を考慮すると医務室よりモルモットさんの部屋の方が近かったから部屋に運ばれてると思います】

 

 【分かった】

 

 瞬く間に部屋を出ていったタキオン。それに遅れてカフェも追いかけて行く。

 

 「あいつ演技上手くね?」

 

 「意外な才能見つけたな」

 

 「それにしてもタキオン思ってた以上に心配してたな。さすがトレーナー愛されてるなぁ」

 

 「あの悪癖さえなければいい奴なんだけどな。おっ?来たぞ」

 

 俺の部屋を映すモニターにタキオンの姿が映った。さすがはウマ娘、めちゃくちゃ速い移動だ。慌てた様子のタキオンは俺を探しているのか辺りをキョロキョロしている。

 

 【カフェ!トレーナー君は⁉︎】

 

 【おかしいですね……。確かここに……】

 

 『タキオン?』

 

 【え?】

 

 突然部屋の真ん中にあった人形が動き出して驚く2人。あまりの非現実的な光景に固まってしまったようだ。

 

 人形はゆっくりと立ち上がる。

 

 『あれ?なんだこの身体は⁉︎」

 

 【モ……モルモット君?】

 

 【そんなまさか】

 

 タキオンにとってあまりに聞き慣れた声が人形から発せられる。

 

 『まさか、あの薬の効果なのか⁉︎』

 

 【そんなはずはない!君はトレーナー君ではないのだろう⁉︎そうだと言ってくれ!】

 

 『何を言ってるんだ?俺はお前のトレーナーだ。ついさっきお前に薬を飲まされて気分が悪くなって部屋に戻ろうとして、その後はどうしたんだっけ?』

 

 信じられない、あり得ないと思っているだろう。だけどあの場所にいたのはタキオンと俺の2人だけだった。だからこの話を知っているのは俺だけのはずだ。その情報を人形から語られてしまえば信じさるを得ない。

 

 まあ実際はカフェトレの部屋でいつものように発光しながらスピーカー越しに話してるだけだけどね。

 

 【くそ!こんな事ならもっとしっかり効果を確認しておけば‼︎】

 

 【落ち着いて下さい!薬でこうなったのであれば効果が切れて元に戻るかもしれません。それにもしダメならまたそれを治す薬を開発すればいいでしょう】

 

 取り乱すタキオンにカフェは実現可能な範囲での対策を提案する。それを聞いたタキオンはまだ元に戻せる可能性があることを思い出す。

 

 【そうか、そうだな。ありがとうカフェ。少し落ち着いたよ】

 

 『タキオン。あまり気にするなよ。今回は結構大事になったかもしれないけどいつものことだ』

 

 【待っててくれモルモット君。すぐにこの薬について調べる】

 

 

 

 

 その日の夜

 

 「いやー、思ってた以上に効果あったな」

 

 「あの光景は知っていたとしてもかなり不気味で怖かったですよ。私だったらメンタル崩壊してます」

 

 「俺もドン引きだったよ」

 

 3人がそれぞれ本日の感想を言い合う。3人に共通してる部分は引くほど怖かったという部分だ。

 

 ふとモニターに目を向ける。隠しカメラを仕掛けた部屋がそれぞれ映っている。そのうちの1つは自室で必死に何かを研究しているタキオン。もう1つは俺の部屋で動き回るおともだちの姿が映ってた。

 

 「あー、あー、おともだち?聞こえる?」

 

 『バッチリ』

 

 会話用のマイクに話掛けてみるとちゃんと聞こえてるらしく、おともだちから反応があった。

 

 「どんな感じ?」

 

 『いやー、最高だわ。人を脅かすのはコレだからやめられない』

 

 「そうっすか。満足してるならいいです。あしたもよろです」

 

 『了解。それじゃ明日までゆっくりしとくわ』

 

 その言葉を最後にまた部屋で走り回り出した人形。部屋のもの壊さないで欲しいな。

 

 「それで?今後はどうすんだ?」

 

 カフェトレはコーヒーを飲みながら今後について聞いてくる。

 

 「そうだな。とりあえず1週間って言ったけどやっぱり可哀想だから3日くらいにしようと思う」

 

 「それがいいですね。あの姿はちょっと可哀想でしたね」

 

 「それがいい」

 

 期間の短縮に賛同されると少しホッとした。お仕置きとはいえ、あそこまで反省されたらまあ許してやりたくもなる。しかしながらせっかく準備したしもう少しやりたい気持ちもある。2人もそう思ってるからこそ終わらせるのではなく短縮に賛同したんだろう。

 

 この後は今後の展開やどういったオチにするのかを話し合って解散した。

 

 カフェトレのトレーナー室から出てお仕置き期間中の泊まる場所であるカフェトレの部屋に向かう。

 

 しかし道中どうしても心配になり、少しタキオンの部屋に寄る。バレるわけにはいかないからコソッと様子を伺う。

 

 「この薬の効果はこの成分で構成されているからこの成分なら打ち消せるか?いや、相乗効果で悪化する場合も考えなくては……。ああ、もう!どうしてこんなに上手くいかないんだ!」

 

 部屋で試行錯誤しながら必死に研究を続けるタキオン。トレーナーとして止めさせたい気持ちはあるが、どうしようか。

 

 「トレーナーさん。私が代わりにやっておきます」

 

 「カフェか」

 

 どうやらカフェも心配だったらしく。様子を見に来てくれたらしい。

 

 「すまない。頼む」

 

 カフェは静かに頷いてタキオンの部屋に入っていった。

 

 俺はここにいてもやる事ないから明日に備えて寝ようとカフェトレの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 次の日早朝から昨日の話し合いの結果をおともだちに伝えて準備をさせる。今日は俺の自我が消えていって、別の何かに変わっていく過程を見せる日だ。

 

 「マジで悪趣味だよ」

 

 昨日から何度も悪趣味と言うカフェトレ。よっぽどこれは酷いものなんだろう。今度聞いてみるか?誰に聞いても同じような答えが返ってくるとは思うけど。

 

 「ドッキリだってバラしたらぶん殴られるぞ

 

 「本当だよ。俺なら間違いなく殴るわ」

 

 そう言いつつも昨日とは打って変わって楽しみになってきてる2人は嬉々としてモニターを監視する。

 

 モニターには朝早くから俺の部屋に来ていたタキオンが人形に話しかけている。

 

 【モルモット君気分はどうだい?】

 

 『あぁ、大丈夫だ』

 

 【それならいいんだ。何かあったら遠慮なく言ってくれたまえ】

 

 『……』

 

 【モルモット君?】

 

 『ああ、いや、ナンデモナイ』

 

 【⁉︎モルモット君かい?なんか声の質が変わってたような】

 

 突然俺の声とは違う低い声にタキオンは驚く。

 

 『なんか今日起きたら意識が遠のくような感覚が襲ってくる時があるんだよ』

 

 【大丈夫なのかい⁉︎】

 

 『ドウダロウ。ダイジョウブナノカナァ?』

 

 【ひぃ!】

 

 不気味なまでの低い男の声が響き渡る。よく映画なんかにありがちな展開だけど実際体験してる側としたらとんでもなく恐ろしいだろうな。

 

 「トラウマ確定だろ」

 

 「こんな事されたら寝れんわ」

 

 普段こんな怪奇現象に遭遇して慣れているであろうカフェトレですらこの反応だからな。やっぱり生で見るのは迫力が違う。

 

 【君は本当にモルモット君かい⁉︎】

 

 『ああ?誰がモルモットだよ』

 

 今度は先程の恐ろしい声ではなく、中年の男性の声だった。

 

 『あんまり舐めた口聞いてると呪うぞ』

 

 俺ではない誰かの声。そして人形がゆらゆら動いている姿。合わさると恐怖心が掻き立てられる。

 

 【モルモット君はどこへやった!答えろ!】

 

 【タキオンさん!】

 

 タイミング良く(打ち合わせ通り)カフェが来たらしく今にも飛びかかりそうなタキオンを抑えた。

 

 【カフェ?ちょうど良かった!あれはモルモット君なのかい?】

 

 【見てみますね。……いえ、違います。あれはモルモットさんではありません。危ないですから離れて下さい!】

 

 『そういうことみたいだな。残念だったな』

 

 【ふざけんなぁぁぁ!!】

 

 人形はもう俺ではない事、そして人形に煽られたタキオンは我を忘れてた激昂した。

 

 【返せ!モルモット君を返せ!】

 

 【タキオンさん⁉︎やめて下さい!】

 

 人形に掴みかかって暴れるタキオンとそれを止めようとするカフェ。どう見ても収集がついてない。

 

 「おい!止めにいくぞ!」

 

 「ああ!」

 

 俺たちは急いで俺の部屋に向かう。

 

 部屋に着くとそこは地獄のような光景だった。まず暴れるタキオンとそれを止めようとするカフェ。そして女の高笑いを響かせる人形。事情を知らない他の人が見たら卒倒するレベルで怖かった。

 

 『あはははははははははははははははははははははははははははははははは!』

 

 「モルモット君を返せええええええ!」

 

 「タキオンさん!これドッキリです!やめてくだい!おともだちももういいですから!」

 

 『あ、はい』

 

 「何事ですか⁉︎」

 

 騒ぎを聞きつけたのであろう。たづなさんが来てしまった。この後学園から怒られるだろうが今はこれを止めるのが先だ。

 

 「タキオン!落ち着け!俺はここだ!」

 

 「うわあああああ!………うわぁぁん……。グスッ、グスッ」

 

 「落ち着きましたか?」

 

 「モルモット君がいなくなっちゃったぁぁー」

 

 「俺はここにいるぞ」

 

 一向に泣き止まない。どうしたものか。

 

 こうして約1時間程慰め続けてどうにかタキオンの部屋に送り届けた。

 

 俺はその後理事長室に呼ばれてこっぴどく叱られた。事情が事情だけに罰は無いが、今後は無いようにと念を押された。

 

 「はぁ、マジでやり過ぎた」

 

 肩を落としてタキオンの部屋に戻る。帰ったら何されるんだろうな。自業自得とはいえ許してくれないかな。

 

 「タキオン結局ドッキリだったってちゃんと聞いてたかな?ずっと泣いてたけど」

 

 タキオン部屋の前に着く。中からは音が聞こえて来ず、思ってたより落ち着いてるのかなと思う。

 

 「タキオン?いるかー?」

 

 部屋をノックするも反応がない。

 

 「どっかいったか?タキオン入るぞー」

 

 反応が無かったがとりあえず中に入ってみる。しかし部屋の中には誰もいなかった。

 

 「どこいった?」

 

 なんとなく嫌な予感がする。何故だか確証は無いが焦りが出てくる。

 

 「俺の部屋か?」

 

 もしかしたら俺の部屋で帰りを待ってるのかもしれない。そう思って急いで俺の部屋に向かう。

 

 「タキオン!」

 

 部屋に入るとかなり荒れていた。しかし部屋の奥にあるナイトテーブルの周りだけ異様に綺麗だった。その上にはお仕置きに使用した人形と見覚えのない人形が2体置いてあった。

 

 「なんだこれ?」

 

 俺はその見覚えのない人形を持ち上げる。その人形はかなり見覚えのある栗毛のふわふわウルフボブに、頭頂部からはアホ毛が伸びている。

 

 「まさかな……」

 

 あまりにも見覚えのあるその人形を持って俺は最悪の予想をする。そんなはずはない。そう思おうとするも、嫌な予感は拭えない。

 

 「これも冗談だろ?」

 

 ふと人形と目が合った気がした。

 

 「タキオン?」

 

 人形が笑った気がした。

 

 あぁ、そういうことか。薬も過ぎれば毒になるってことわざがあったっけ。いや、この場合は

 

 「これは予想してなかったな」

 

 このお仕置きはタキオンの更生を目的としていた。ある意味それは成功した。しかしあまりにも効きすぎた。俺達の予想してない形の効果も伴ってしまったけどな。

 

 

 

 

 副作用

 医薬品等の薬物を服用、あるいは医療的処置に伴って生じた、治療者や患者が望んでいない主要な作用以外の2次作用を指す。

 




 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。