透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
つい先日のニンテンドーダイレクト(ソフトメーカーラインナップ)で「ガンダムブレイカー4」が発表されましたね。私はかつて配信されていたソシャゲ「ガンダムブレイカーモバイル」のプレイヤーだったのですが、ガンダム初心者でも非常に楽しく遊べたゲームでサービス終了まで遊んでいました。なのでちょっとでもガンダム、ガンプラに興味がある方は是非やってみてください!
さて、今回の主人公くんちゃんは、セリカのバイト先にお邪魔するようです。
セリカと仲良くなろうと決意を新たに先生と共にシャーレに帰ったその翌日。
俺と先生は早速アビドス自治区へと来ていたのだが…。
「「あ」」
「げ」
学生鞄の他に大きな巾着袋を背負ったセリカがそこにいた。というか人の顔見て「げ」とはなんだ。
そんな態度を半ば無視して、先生はセリカに声をかけた。
"おはよう"
「な、何が『おはよう』よ、なれなれしくしないでくれる!?私、まだ先生のこと認めてないから!」
お、おお…めちゃくちゃツンケンやな。振り返れば、心なしか先生も微妙な表情をしている。
「横についてるあんた共々、朝っぱらからのんびりうろついちゃって。いいご身分だこと」
“セリカちゃんは、これから学校?”
う〜ん、これは仲良くなれる気がしないな…。というかストーリーを見返して改めて思うがすごいメンタルしてるな先生、ここまで険悪な雰囲気でなお話を続けようとしている。
「な、何よ!なんでちゃん付けで呼んでんのよ!」
狼狽えたように目を泳がせ、ビシッと此方に指を刺す。
そんな様子にん?と違和感を覚えて、頬に
「さてはお前、照れているな?」
「んなッ!?」
その反応を見るに図星だなぁ?やはり彼女はツンケンではなくツンデレだったか。
隣の先生も先ほどの苦笑とは打って変わって、新しい玩具を見つけた子供のような笑顔をしていた。もしやこいつ
「な、何笑ってんのよあんたら!ふざけないで!」
「……ッフフフ、すまん」
これが笑わずにいられるか。
ああ、誤解なきように言っておくが、これは決して嘲りからではなく、見慣れた彼女を見つけたというちょっとした安堵感からのものだった。
「…ゴホン、で、あんたらは私に何の用?こう見えても私、忙しいんだけど?」
“セリカも学校行くなら一緒に行こうかなって、声をかけたんだけど…“
「はぁ?なんで私があんたと仲良く学校に行かなきゃならないわけ?」
“いやまぁ、折角だし…”
「それに悪いけど今日は自由登校日だから、学校に行かなくてもいいんだけど?」
“そうなんだ。じゃあセリカはどこに行くつもり?”
「そっ、そんなの言えるわけないでしょ!とにかくそういうことだから、それじゃ!」
そう言ってセリカは砂埃を立てながら、俺たちの来た方へ一瞬で走り去ってしまった。
「…先生、どうする」
その光景にしばし唖然としながらも、返答のわかりきっている質問をあえて投げかけた。
“決まってるよ”
そして横目で見る彼は、いかにも凛々げな顔でこう続けた。
“セリカを追跡しよう!!!”
…それは、あまりにも白々しい
「ひゃあっ!?ちょっと、なんでついてくるの!?」
"ついていけばどこに行くかわかるかなって…"
「何言ってんの!?あっち行ってよ、ストーカーじゃないのっ!!」
うむむ、こればっかりは彼女に同意せざるを得ない。今の先生の発言は、完全にストーカーのそれだ。
と言うわけで、俺たちはただいま絶賛ストーキング中である。まぁ、彼女の行き先がバイト先の柴関ラーメンだと言うことはわかりきっているのだが、状況が中々に面白いことになっているので口を挟もうとはしなかった。
「わかった。わかったってば!行き先を教えればいいんでしょ?」
コンビニ前の交差点でようやく止まったセリカは、振り返りつつこちらに怒鳴ってくる。
「…バイトよ。私はあんたみたいにのんびりしてられないの」
"……そっか"
「とっ、とにかく!こっちは少しでも稼がなきゃいけないの、だからもう帰って!」
もはや用もないと言わんばかりに、彼女は再度走り出す。当然ながら先生もそれに合わせて再度追いかけ始めた。
「うう…しつこい!ああもう意味わかんない、あっち行ってよ!」
"バイト先がどこか気になっちゃって…"
「このダメ大人…っ!そこの暁月だっけ、あんたも何か言ってやりなさいよ!」
「…私は先生の指示に従う、それだけだ」
「こんのぉ…とにかく帰って、それじゃ!!」
そう言うと、先ほどまでは温存していたのかわからないが、より大きい粉塵を巻き上げ一瞬で彼方へ走り去ってしまった。
「……見失いましたね」
"…見失ったね"
「どうしましょうか」
"どうしようか"
…彼女の行き先はわかっていると半ばイキッた発言をしたが、俺は柴関ラーメンの場所を知らない。どうやら結構ツウなお店らしく、端末のナビアプリで試しに検索してみたのだが、検索結果に出てこなかったのだ。
と言うわけでなんとも情けない話だが、男(?)2人して迷ってしまったわけだ。
それから数時間後。ただでさえ迷いやすいアビドス自治区で土地勘のない人間が現地民に敵うはずも無く、結局セリカの行方は分からずじまいで当てもなく彷徨い、アビドス高等学校まで来てしまった。
"う〜ん、どうしよっか。とりあえず街の人に聞き込みでも…"
ぐ〜
「……あ」
自分の真下からなんとも情けない音が鳴ったかと思うと、その音が何なのかを理解した瞬間首の下から一気に熱が込み上げてきた。
"…先にどこかで昼食、済ましちゃおうか"
「…すまん」
彼の気遣いが、今は尚更骨身に沁みた。
男だった時は別段腹の音を他人に聞かれても特になんともなかったのに、女である今聞かれるとどこかむず痒いような、そわそわするような感覚を覚えた。…これがメス堕ち…ってコト!?*1
「あ、先生〜⭐︎」
ふんわりとした声に振り向くと、そこにはノノミを先頭とするアビドスメンバーの一団がいた。が、そこにセリカの姿はない。
「おやや、先生とレイちゃんじゃん〜奇遇だねぇ」
"あれ?みんな、今日は自由登校なんじゃ…"
「お、よく知ってるね先生〜けど今日はね、おひるご飯がてら
…どうやらこの世にもご都合主義というものがあるらしい。
確かにメインストーリーではいつの間にか先生とアビドス組が合流していたが、その経緯は謎に包まれたままだった。このような形で明かされるのは中々に面白いというか、
「ん、お腹すいた」
「先生も一緒にいかがですか?昼食がまだ済んでいなければの話ですけど…」
"私も丁度お腹が空いてたところなんだ、一緒に行こうか"
「それじゃあ、れっつご〜⭐︎」
底抜けに明るいノノミの掛け声と共に、一同はアビドス編の憩いの場「柴関ラーメン」へと向かうのだった。
ガラララッ……
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…ってわわっ!?」
「あの〜⭐︎6人なんですけど〜!」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」
「お疲れ」
「み、みんな……どうしてここを……!?」
どうやらセリカ本人はアビドスメンバーがここに来ることを知らなかったようで、ほんの少し体を捩らせながら顔を真っ赤に染めていた。
「うへ〜やっぱここだと思った」
"どうも"
「ここにいたのか」
「先生に、暁月まで…!やっぱストーカー!?」
うむ、否定できんな。
「うへ、先生とレイちゃんは悪くないよぉ〜。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ……!!ううっ……!」
その言葉と共に、次第に涙目になるセリカ。なんだか、そろそろ可哀想になってきたな……。
するとカウンター席の方から二足歩行した柴犬が、法被を着込んで腕組み仁王立ちで出てきた。この店の店長、柴大将だ。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
すでにライフは0なセリカに連れられて、5〜6人くらいは普通に座れそうな席に通された。するとアビドスの4人は、長時間彷徨ったおかげで疲労困憊な先生と俺を追い越してさっさと席についていた。
「はい、先生はこちらへ!私の隣、空いてます⭐︎」
「……ん、私の隣も空いてる」
お、やはり来たか。ノノミとシロコ、どちらの隣に座るかを選択する分岐イベント*2。さて、先生はどちらを選ぶのカナ?
"……じゃあ、私はシロコの隣に座ろっかな"
ストン……
「ふむ……」
そう言って先生は、シロコの傍の空きスペースに腰掛けた。やはりシロコがメインヒロインか…*3。
スリスリ……
"ちょっっ、シロコ!?"
そしてシロコに自然と身体をすり寄せられた先生は、流石にこたえたのかちょっと頬を染めて狼狽えている。あら〜^^
「あら、じゃあレイちゃんは私の隣ですね〜⭐︎」
と、不意に手首を掴んで引き寄せられたかと思ったら、ノノミが俺を軽く抱擁する形で席に座らせたのだった。その瞬間、右腕の上腕二頭筋にずっしりとした大胸筋の重みがッッッ…!?
まさに
「狭すぎ!2人とも、そんなにくっついてたら先生と暁月が窮屈でしょ!もっとこっちに寄って!」
そんなセリカの怒りの声によって、思考停止状態からハッと我に帰った。あぶねーまた道半ばでタヒぬところだったZE…。
「いや、私は平気。ね、先生?」
"いやぁ、うん。まぁ……"
「なんでそこで遠慮するの!?空いてる席たくさんあるじゃん!ちゃんと座ってよ!」
「わ、分かった……」
そうしてシロコは渋々といった調子で間隔をあける。いかにキヴォトスで1、2位を争う図太さを持つ彼女でも、セリカの圧には耐えられなかったようだ。
「とにかく!ご注文はっ!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょー?セリカちゃ〜ん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃ〜?」
「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……」
やっぱり絡み方がおじさんみたいだなホシノ。片手にビール持ってたら完全に居酒屋の酔っ払いのそれだ。
ともかく、早く注文しないと流石の柴大将でも耐えられないので、俺たちは一斉に注文し始めた。
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩」
「えっと……私は味噌で……」
「おじさんは特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピングで!先生も遠慮しないで、じゃんじゃん頼んでね〜!」
"え、えっと……"
「…ところで、みんなお金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ⭐︎このカードなら、限度額までまだ余裕ありますし」
そう言ってノノミは首から下げた金色に輝くクレジットカードを取り出し、にこりと微笑む。が、彼女の
「またご馳走になるわけにはいかないよぉ〜。きっと先生が奢ってくれるよ、ねぇ先生?」
"……それ初耳なんだけど、ホシノ"
「うへへ、今聞いたからいいでしょ!」
瞬間、音速を超えるスピードで席から立ちあがった先生は、「そうはさせないよぉ〜」と緩んだ声に見合わない光速を超えるスピードで手を伸ばしたホシノに捕まってしまった。
ご愁傷様、ついでにご馳走様です、先生。
その後、なんやかんや先生は奢ってくれ、俺も塩ラーメンを頂いた。
ラーメンのお味は、鼻から舌を通って喉まで抜ける塩の香りが麺と程よく絡んで、非常に絶品だった。また食べにこようかな。
「〜っもう絶対来ないでよね!バカっ!!」
「あはは、元気そうで何よりだぁ〜」
ちょっとした悶着がありつつも、その場は非常に学生らしく賑やかな解散となった。
昼食を済ませた後特に用事もなかったのでそのままシャーレオフィスまで帰り、日が暮れるまで書類作業を手伝っているとホシノから電話がかかってきた。
『セリカちゃんがバイト先から帰ってこないんだ、知らない?』
"バイトが長引いてるとかは?"
『大将に連絡したけど、もう定時で店は出たって言ってたよ』
"そう……"
セリカの誘拐イベントか。
実は、この事件に関しては特に止めようとは思っていなかった。先生と対策委員会の距離を縮める重要なイベントだからだ。まぁ、強いていうなら初めてアビドスにきた時に戦力を削げれば御の字かなというぐらいだ。
ちょっとした時間もままならないのか、少し焦った様子でホシノは続ける。
『それで悪いんだけどさ、なんとか連邦生徒会の権限を使って、セリカちゃんの端末の行方を追えないかな?』
「……」
今ホシノが先生に訴えたのは、ずいぶん無茶な要求である。
いくら超法規的権限を持つシャーレの顧問たる先生といえど、他人に渡ればより生徒を危険に晒す可能性のある位置情報を易々と渡せるわけがない。渡せるにしても超絶面倒な手続きを踏まなければならず、どれだけ少なく見積もっても2日はかかるだろう。そして時間が惜しい今、そんなことに足を取られている場合ではない。つまりは無断で、キヴォトス中の生徒情報が集う連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスしろ、と言うのだ。
もし連邦生徒会の誰か1人にでも露見すれば、先生さえもなんらかの懲罰が下される可能性がある。正直言って先生には、なんのメリットもない交渉だ。
…だが、彼がどう答えるかなんて、すでに分かりきっていた。
"分かった、すぐに調べてみるね"
彼にとっては同じなのだ。5人分のラーメンを奢ることも、何のリターンもないのにリスクを負ってまでデータベースから無断で生徒情報を奪取することも。
子どもの切なる願いを叶えるのが大人だと、本当に信じている人なんだ、この人は。
"レイも手伝ってくれる?"
「……ああ」
ゲームでもこの世界線でも何度繰り返しても彼はきっと同じ選択をするのだろうと、今はその座を空けた連邦生徒会長の言葉を心に馳せながら、彼の悪巧みの手伝いを始めた。
何とかバレずに情報を得たので、俺のバイクに先生を乗せアビドスまで急ぐ。校門でホシノに出迎えられ昇降口にバイクを止め共に部室に向かうと、そこには既にシロコ、ノノミ、アヤネの姿があった。
"ただいま、みんな"
「どうだった、先輩?」
「先生に連邦生徒会の生徒情報データベースにアクセスしてもらったんだけど…連絡が途絶える直前のセリカちゃんの端末の場所、ここだったよ〜」
そう言ってホシノは、先生から渡されたタブレット端末に映る地図を指差す。
「ここは…砂漠化が進んでいる市街地の端ですね?不良たちの溜まり場になっているとか…」
「このエリア、以前の分析でカタカタヘルメット団の主力が集まっていると確認できた場所です。ということはやはり、カタカタヘルメット団の仕業……!」
「帰宅途中のセリカをあらかじめ狙って…人質をとって脅迫しようってとこかな」
「考えていても仕方ありません!急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」
「ちょっと待ってくれ」
特に気にかけていた後輩が攫われて気が気でないノノミを、俺は言葉で制した。
「あいつらの戦力も把握しておくべきだと思って、密かにドローンをその位置に放ってみたんだが…」
そう言って俺は、ギャラリーアプリを開いて一員に見せるようにタブレット端末を机に置く。そこに映っていたのは…
「これは…モビルスーツ!?」
アヤネの言葉通り、リーオー数機が横一列になって並んでいたのだ。いくらリーオーとはいえ対人では天と地ほどの戦力差がある、生身で相対するのは愚策と言っていいだろう。
「先生、至急ウイングゼロの使用許可を。今から取りに行っても……」
「ん、待ってレイ」
十分間に合うと言おうとしたところで遮ってきたのは、シロコだった。
「……まさかシロコちゃん、
「うちにあるMSで使えるのはあの機体くらい。それに、ずっと放っておくのも勿体無い」
「…もしかして、アビドスにMSがあるのか……?」
「ん。それも、ただのモビルスーツじゃないよ」
ただのモビルスーツじゃ……ッまさか!?
「ガンダムサンドロック。ようやくあれを使う時が来た」
そう静かに呟くシロコの瞳は、興奮冷めやらぬ猟犬のそれだった。
遂に2体目のガンダム、サンドロックの存在が明らかに!一体パイロットはダレナンダロナー。
サンドロックはアビドスだろうと構想段階から考えていたのですが、どうやって落とし込もうかというのは結構悩みの種だったので、綺麗な形で判明させることができて本当に良かったです。展開的にはだいぶ駆け足になりましたが、サンドロック君の次回の活躍にもご期待ください。
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