透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
さて、今回の主人公くんちゃんは、久しぶりにあの機体に乗るようです。
本日は週に1度の休暇。今日ばかりは先生の元を離れ、たっぷり惰眠を貪ったり買い物したりでもしようかなー、と思っていたのだが……。
「ごめんなさいね、折角の休日だというのに」
「いえ、問題ありません」
コーヒーの入ったマグカップを俺の手前に置き、連邦生徒会の会長代理にして主席行政官、リンちゃんこと七神リンはそう言った。
というわけで本日は彼女に呼び出されていた、のだが……俺なんか悪いことでもしただろうか……?怒った時によくやる「目を細めて微笑」んではいないので、お叱りではないと思いたいが……。
さて、と会長席に座ったリンはメガネを指で押して直し、此方に目を合わせる。
「今日あなたを呼んだのは他でもない連邦捜査部シャーレの顧問……先生の普段の様子を教えてもらうためです」
「先生の、普段の様子……?」
「いくら連邦生徒会長の推薦があったとはいえ、未だ信用に足る大人であるという確証は得られていません。ですから、今の所一番長く彼と接しているあなたに、意見をいただきたいと思いまして」
なるほど、そういうことか。
超法規的権限を持つシャーレ顧問という立場、それを
何せ今アビドスを脅かしているのも薄汚い大人たちなのだ、それゆえ無条件に警戒するのは至極当然と言える。
……けれど、断言しよう。
「彼はそんな人……いえ、
そう言った瞬間、彼女の目が少し見開いたような気がしたが、気にせず続ける。
「確かに時々浮ついたセリフで無自覚にたらし込んでいたり、趣味への過大出費を叱られて駄々をこねたりしてますが……」
「え?」
「親切な人ですよ、彼は。……強いていえば、
この機会に言い含めておかねばなるまい。
彼は大人の責務と豪語し、子どもに危機が迫れば自分を犠牲にすることも
原作では最後……というか「最終編」まで生き残ってはいるが、この世界線ではどうなるかわからない。そして彼がいなければ詰んでいたであろう場面や不条理がいくつもあった。
彼の存在はこの世界では必要不可欠だ。それを、この歓談と言う名の「掛け合い」で
「ッリン行政官!」
と、自分でもよくわからない覚悟を決めたタイミングで、部屋の扉がバーンと音をたてて開け放たれ、一瞬の静寂が辺りに満ちる。談話を遮った張本人は連邦生徒会の調停室長、
「ってレイさん、どうしてここに……!?」
「……ちょっと報告を聞いていたの。それで、そんなに慌ててどうしたのです、アユム」
「先生と同行中のアビドス高校の生徒が、ゲヘナ学園風紀委員会と交戦を開始しました」
「……?確かに戦力、というか物量差は圧倒的だけど、だからと言って報告するほどのものでは……」
「それが……風紀委員会がどこから出してきたのか大量のMSとともに『ガンダム』……“デスサイズヘル“も投入しました……!」
「「!?」」
そういえば正式出向の前に読まされた「生徒会条約」に、ガンダムの運用に関する項目があった。その内容は特例*1を除いて、ガンダムの運用には事前報告が必要であると言うもの。ゲヘナの行為は、それを踏み躙ることとなる。
まぁ、十中八九あのヨコチチのヤローの仕業だろうな……。
「幸い、急遽アビドスが出撃させた“サンドロック“とはまだ交戦していませんが……会敵するのも時間の問題でしょう」
「……わかりました。レイ、すみませんが」
「……その前に使用許可を」
「許可します。連邦生徒会長代行の名において」
「……任務、了解」
次に乗るのがこんなに早いとは……久々に腕がなるじゃあないか。
急いでシャーレの建物までバイクを走らせると、そこには本日の担当生徒であるノアが玄関口で出迎えてくれた。
「お話は生徒会長代行から聞いています。すぐに発進準備をお願いしますね」
「すぐに向かう」
建物の地下へエレベーターで降り、格納庫に設けられたタラップを駆け、コックピットに乗り込む。
すると丁度乗り込んだタイミングで、先ほど渡された通信機からノアの声が静かに響く。
『場所はアビドス地区南西部第24区画……レイさんには"柴関ラーメン"周辺と言った方が分かりやすいでしょう。現在風紀委員のMS部隊と対策委員会・便利屋とが交戦中です。レイさんは風紀委員会のMSを掃討し、先生たちを援護してください』
「任務了解」
……ウイングゼロ、発進シークエンスを開始します
動力部の稼働に問題なし、OSおよびインターフェースに損傷・異常は見られません
カタパルトオンライン、リニアボルテージを220に固定、射出口に障害物なし……
……進路クリアー。ウイングゼロ、発進どうぞ!
「ウイングゼロ、暁月レイ、
リニアカタパルトで地下格納庫の射出口から一気に飛び上がり、まだらに雲が散りばめられた青天の下、MSの背丈ほどある主翼をはためかせて加速する。
ウイングゼロの機動力は
アビドス自治区の方へ向かっていると、段々と行軍するMSの大群が見え始めた。あれがおそらく風紀委員の量産型MSだろう、アルが操っていたものと似ている気がするし、デスサイズの雰囲気もどことなく含んでいる感じがする。
「……オレも仕事を果たすとするか」
少しでもアビドスへ流れる戦力を削らなければな、すまんの。
上空から急降下して一気に接近し、背中の主翼からビームサーベルを展開、そのまま振り下ろす形で切り掛かる。相手はあまりにも急だったのか反応できず、ライフルを構える前に頭を腕を切り落とされた。
「残念だが、こちらも時間が惜しいんでな」
ビームライフルを撃たれる前に飛び上がって主翼に隠されたバスターライフルを展開。そしてトリガーを引きつつ機体を半回転させる。
一切のチャージをせずに放ったので威力は2割にも満たないだろうが、それでもMSを破壊するには十分だろう。たちまち敵は当たった場所から爆発を起こし、沈黙していった。
ま、こんなものでいいだろう。とにかく彼女たちの元へ向かわなくては。
打って変わってアビドス区域、アビドス高等学校周辺……。
『ん……!』
『ええいっ!』
シロコのサンドロックとアルの機体 ガンダムアウトローの見事な挟撃が黒塗りの羽織りを被ったような機体に襲いかかる。が……
『フン!』
『んッ!?』
『何ですって!?』
黒羽織の機体はヒートショーテルとビームサイズ、2人の攻撃を真上に飛び上がって回避し、手に持っていた棒状の武器をぶん回して2機を同時に吹っ飛ばした。
黒羽織……ガンダムデスサイズヘルは静かに着地したのち、吹っ飛ばされた2機を見据えるように立つ。
『全く……抵抗など無駄だというのに』
あまり高いとも言えない声で、デスサイズヘルのパイロットは軽蔑した口調で呟く。
『……その上から目線な性格は変わってないようね……』
『ん……知り合いなの?』
『まぁ色々と……とにかく分が悪いわ、すぐに撤退を……!』
『逃れられるとでも?』
咄嗟に反応したアルが半ば突き飛ばすようにサンドロックの前に出て、デスサイズヘルが振りかぶったビームサイズを自身のビームサイズで受け止める。しかしデスサイズヘルの方が出力が
『鬱陶しい。いい加減諦めたらどうです?』
『まだよ……まだ終わっては……』
『あなた方はそうでも、これ以上はあなた方のお仲間が無事ではすまないと言っているのですよ』
そう言われてシロコが左の方を向けば、シロコとアルを除いた対策委員会と便利屋のメンバーが苦悶の表情を浮かべつつなんとか戦闘を続けている様子が見えた。
『次の部隊がもう来ています!?』
「もうっ!本当にしつこいわね!!」
「ちょっと……厳しいかもしれませんね♣︎」
「……」
「あははっ、ちょっと笑えなくなってきちゃった〜」
「アル様のタメにぃ……まだマダアぁ!」
"……ッ"
それを後方で見守る先生も、心なしか苦しそうにしている。先生のサポートと、2つのチームの元々のポテンシャルが高いのもあってまだ均衡状態を保てているが、このままでは物量に押し切られてしまうだろう。
『精々風紀委員会MS部隊隊長であるこの私、
意識をそちらにそらされているうちに、デスサイズヘルのビームサイズがアウトローのビームサイズの基部を両断し、そのままコックピットに痛々しい傷が一筋刻まれる。
『くっ……!』
『あなたの悪運もここまでです……アル』
そしてそのままその凶刃が、コックピット目掛け振り下ろされて
届くことは、なかった。
天から降り注いだ無数の雷が、デスサイズヘルを後退させたのだった。そしてその雷は、デスサイズヘルに続いて攻め込もうとしていた無数の量産型MSを貫き、爆散させた。
そして天使の姿をしたガンダムが、雷が降ってきた方向からゆっくりと舞い降りてくる。
『……な、なにが起こっているのです……?』
ここまで2人を相手に有利に立ち回っていたアンも、この状況には流石に動揺を隠せない。
そして、オープンチャンネルで流れてきた声は、聞き覚えのある声だった。
『こちら連邦捜査部シャーレ特別出向生徒、暁月レイ。風紀委員会による生徒会条約の規定違反により、戦闘に強制介入する』
『レイ……!?』
天使の風貌をしたガンダム……ウイングゼロはサンドロックの隣に降り、デスサイズヘルを睨むように立つ。そして左手に持つ、降り注いだ無数の雷の正体であろうバスターライフルを羽に仕舞い、右手のビームサーベルの刃を再度展開させた。
『シャーレの、ガンダム……!』
そしてそれに伴うように、デスサイズヘルもビームサイズを再び構えて臨戦体制に入る。さすがレイと同じガンダムのパイロットというべきだろうか。
その場の全員が手を止め固唾を飲んで見守る中、2体のガンダムがそれぞれの剣を携えて相対する。天使と悪魔の決戦が、今まさに始まろうとしていたのだった。
便利屋のアルが乗っていたのがデスサイズっぽい見た目をしていたから察してたけど、やはりゲヘナのガンダムはデスサイズヘル……こいつもEW版だな。TV版も好きだけどこのいかにも悪魔然とした翼がいいよね……。
さて対面のデスサイズヘルに乗っているのはまっっっったく聞き覚えのない声の人だった。俺の記憶が正しければ原作には出てこなかったと思うが……。
ガンダムに乗っている時点で優秀なパイロットであることは間違いないだろう。ここは慎重にいかないといけないかもな……。
ま、こっちも仕事だから言うことは言わせてもらうけど。
「この場にいる風紀委員会各位に、連邦生徒会からの命令を通達する……直ちに戦闘を停止し、アビドス区域外へ撤退せよ」
『……これは正当な理由の行軍です。連邦生徒会が介入するなど……』
「先生の身柄を確保し、超法規的権限を我が物とすることが正当な理由か?」
『!!!』
この反応を察するにやはりにこんなやり方を考えたのはあのゲヘナヨコチチハミデヤン*2だろうな。まさかガンダムを無断で持ち出すほどの本気度とは思わなかったが……。
『……ッそれでも、ヒナ委員長が喜んでくださるのなら、私は……ッ!』
……どうあっても引き下がるつもりはないようだ。
いいだろう、丁度腕が鈍っていたところなんだ、まとめて相手してやろう*3。
「シロコ、アル、2人は先生達の援護に回れ。ここはオレが纏めて相手にする」
『!?』
『なッ!?』
デスサイズヘル相手はちと厳しいかもしれないが、量産機相手ならバスターライフルでまとめて
俺の身よりも原作キャラがこんなところでタヒんでしまうことの方が損失だ。それを防げるんだったらこの身一つくらい、なんてことはないさ……*4。
「早くいけ、間に合わなくなるぞ」
『……ん』
『ちょ、ま、もうッ、タヒなないでよッ!?』
俺に半ば無理矢理押し切られて、結局先生達の方へ向かっていく。それでいいんや、それで。
2人を見送ったところで、デスヘルの方へ向き直る。
「……待たせたな、やるか」
『そんな軽いノリで始めるものですか普通?……まぁいいですけど……』
「その前に一つだけ言っておこう」
『……?』
「死ぬなよ?」
『貴女こそ』
……よし、キマったな!
はい、てなわけで今回は、今作オリキャラ2人目がぬるっと登場しました。設定などは今後掘り下げるかもですので、乞うご期待。
そして次回、「新機動戦記ガンダムW」では無かったウイングゼロとデスサイズヘルの戦闘です。原作では無かったようなマッチを作るのめちゃくちゃ好きなんですよね……解釈違いやもしれんけど許してくれや。
レイ「別シリーズの機体同士が戦うのもいいよね……」
作者「わかる」