透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 みなさんお久しぶりです、Hakone8510です。
 新年度始まって早々環境の変化などを理由に、二ヶ月もの間休載してしまいました。今後通常通りの連載ができるかどうかわかりませんが、なるべくできるよう努めますのでどうかよろしくお願いします。

 いつの間にかアニメは今書いてる部分を越してしまいましたね。
 ホシノの脳溶けボイスが気持ちいいんじゃあ〜〜。これからどうなるのかワクドキが止まらんナァ!

 さて今回の主人公くんちゃんは、開き直って煽り厨と化すようです。

!注意!
 今回のお話は、既存キャラクターの独自解釈・考察を含みます。


天使と悪魔は相容れない話。

 私はあの頃から、いつも二番手だった。

 

 高等部に上がったばかりの私は中等生時代から憧れていた風紀委員会に入った。それなりにやりがいもあったし、友人や尊敬する上司も沢山できた。けど1つだけ不満だったのは……一番尊敬する先輩のお気に入りが、よりによって()()()だったと言うこと。

 MS戦のシュミレーションでは私のことなど眼中もないように打ち負かし、先輩に気に入られていることもなんとも思っていない様子でいつも飄々としている。何故先輩がアイツなんかを気にかけるのかが全く理解できないくらい、アイツの何もかもが気に入らなかった。そのせいで委員からいじめを受けていたと聞いた私が、憐れむどころかザマァ見ろと思ってしまっていたのを今でも覚えている。

 でもアイツを越えられないのが悔しくて、それから毎日必死に訓練に励んだ。……実はあまり覚えていないが当時の私は、絶対アイツに目にモノ見せてやると言う()()に近いものに取り憑かれていたようだったと、からかい上手な友人から聞いた。忙しない毎日、けれど今思えば退屈のない毎日だったんだと思う。

 しかしそんな日々は()()()()を境に変わった、変わってしまった。一方的に敵視していたあの子と私の友人……そしてたった1人の上司が風紀委員会を辞めた。委員会を牛耳っていたあの人も姿を消し、尊敬する先輩はあまり笑顔を見せなくなった。そう、私を取り巻く何もかもが……いや私自身も気づかないところでどこか変わったのかもしれない。あの日々にいた「私」は、もうどこにもいなかった。

 

 本来の「1番」が消えたことで、私は繰り上がって今の「1番」になった。それを、みんなが讃えて、褒めてくれる。けれど、違う。この機体は、この「ガンダム」は本来彼女のモノ。私が乗る資格なんて、ない。

 でも、誰かが乗らねばなるまい。今では委員長となった先輩の期待を裏切ることなんてできない。

 

 

 

 責任からは、逃げたくないから。

 


 

 2対の刃が交錯し、背筋を振るわせるような音と共に、子供時代によくやったであろう蛍光色の強い手持ち花火の如き火花があたりに飛び散る。ビームサイズの方が出力が上のはずだが、不思議なことに両者の一撃は長い時間拮抗し続けている。ジェネレーター直結型のビームソードを受け止めていたのだから、これぐらいはやってもらわないと困る、というのはあるが……。

 

『フッ!』

 

「!」

 

 だが相手はそれに耐えかねたのか、ウイングゼロを早々に両断せんと今まで以上の力をビームサイズに乗せてくる。

 これ以上このままの状態でいればそのまま押し切られるのは間違いないが、ここで相手が簡単に距離を取らせてくれるとも思えない。ここで適当に弾いたところで、すぐに斬りかかられるのがオチだ。

 

 まぁそれは普通のMSなら、の話だけど。

 

ブオオォン!!!

 

『!』

 

「ウイングゼロの機動力なら……!」

 

 ビームサーベルの力を弱め、あえてビームサイズを引き込んでから急速上昇を行う。こうすれば力任せに押し付けていた勢いで簡単に体勢を崩すことができる。ウイングゼロのもつ規格外の機動力だからこそできる芸当だ。

 

 十分な距離をとりつつ、互いに離れたタイミングを見計って次々と襲いかかってくる雑兵達を、ビームサーベルを駆使して次々と撃墜していく。もちろん彼のデスサイズの存在も念頭に置くことも忘れずに。

 だが、どうにもデスサイズに向いている注意が散漫になってしまうのは否めない。まぁ相手側もそれが狙いだろうが、雑兵と一口に言っても当然ながらチンピラどもの練度とは比にならない強さのため中々に厄介だ。そしてこうしている間にも相手はこちらに攻撃するタイミングを伺っている。このままではジリ貧は必死だろう。

 

「……仕方がない」

 

 翼に収納しておいたバスターライフルのロックを外して手元に収まるように落下させ、照準を合わせぬままトリガーを引く。放たれたビームは今まさに襲い掛かろうとしていた2体の量産機の頭を見事に撃ち抜き、行動不能に陥らせる。そして右手のビームサーベルをランスの如く突き出し、3機目も爆散させた。

 そしてその影を縫うようにうごめく、光が変に屈折して歪んだ()()が見えた。

 おそらくあれがデスサイズの特殊能力、ハイパージャマー*1だろう。それにゼロシステムの反応も俺がその姿を捉えた方向に反応を示していた。……こう考えるとゼロシステムって中々にチートだよな……。

 

 そして一気に距離を詰めてきた瞬間、ギリギリまで引きつけてから振り向きざまにビームサーベルを切り上げる。

 

「ハッ!」

 

『ッ!?』

 

 俺が勘づいていたことに驚いたのかやや反応が遅れたものの、しっかり相手も構え直して俺の一撃を受け止める。

 

『馬鹿な……カメラ越しでは視認できないはず……!?』

 

「透明化程度で目眩しになるかっ!」

 

 しばしの鍔迫り合いののち、デスサイズヘルがたまらず弾くことで互いの間に再度距離ができる。

 流石はガンダム同士といったところか、中々決着はつかないな。

 

『鬱陶しい……我々の道を遮る石ころ程度の分際でッ……!』

 

「……そういえば、気になったのだが」

 

 俺は、性能差がほぼないとはいえ俺と渡り合えているコイツの名前も素性も知らない。だが今までの言動を見るに、先ほどから名前が出ている風紀委員会の委員長  空崎(そらさき)ヒナを崇拝していると見た。実際この計略を(くわだ)てたであろうアコも彼女を崇め(たてまつ)っていることから、委員会内にもそういう層は一定数存在するだろう。

 ならば、そんな彼女達にとって何が1番(こた)えるのか?それは……

 

「本当にそのヒナ委員長?ってのは、こんな強引な手で先生を引き込むことを望んでいるのか?」

 

『……!』

 

「だとしたらそいつは随分と程度の低いヤツなんだな。仮にも学園組織のトップなら、“連邦捜査部シャーレの先生“という存在がどういう意味を持つのか、知らぬ筈はあるまい」

 

『ッ!貴様、ヒナ委員長を侮辱するのか!?!?』

 

 そう、ヒナの名前を使って煽ることである。

 

 初めてエイミと会った時に学んだこと。それは、俺は説得役には向かないということだ。

 交渉して解決しようとしても、どうやら俺はいつのまにか相手の地雷を踏みにいってしまうらしい。俺が考えなしなのかそういう体質なのかは置いておいて、この癖は今のところ直せていないのだ。

 

 ならばいっそのこと地雷源でタップダンスを踊って相手を怒らせ、冷静な判断力を鈍らせた方がこっちのトクってもんだろう。

 ああ、一応誤解のないようにいっておくが、俺はヒナのことを程度が低いだなんて思ったことは一度もないぞ。むしろ彼女以上に“ゲヘナ風紀委員会委員長“の座に相応しい人はいないと思っている。……果たして誉めれているんだろうか、これは? 

 

「ああ、もしかして聞こえていなかったのか?お前の崇める委員長など所詮その程度ってことだ」

 

『黙れ黙れ黙れ黙れェ!河辺の石ころの価値にも満たない痴れ者が、ヒナ委員長の名を恐れ多くも口にするばかりか、あまつさえ貶し蔑むとは!!貴様の罪はたった今100回打首に晒しても足らぬものとなった!!!この私が直々にその腐った首を地面に叩き落としてやるゥ!!!!』

 

 案の定相手は俺の煽りに乗せられて怒りのままにまっすぐ向かってくる。これからは煽り芸人として食っていくよ、俺の心の中のイマジナリーエイミ……*2

 さっきまでも一瞬しか使ってなかったけど、今となってはもはやゼロシステムを使う必要はない。ただ相手の攻撃を受け流す、簡単なお仕事だ*3

 

 直線的なビームサイズの猛攻を紙一重でかわしつつ、受け止めやすい攻撃……つまり相手が特に警戒している胸部や頭部の近くを執拗に狙ってビームサーベルを振り続ける。

 当然相手はビームサイズで受け止めるだろう。しかし……

 

『貴様はァ……貴様だけはァ!』

 

 怒りに身を任せた時点で、お前の負けだ。

 

ズバァン!!!

 

 重厚感のある切断音と金属の悲鳴と共に、ビームサイズを掴んでいた両腕が宙を舞い、回転しながら遥か後方のコンクリートに突き刺さった。

 

『な……バカな……』

 

 コイツは勢いにかまけて、ただでさえビームサイズは大振りになりがちなのにさらにダイナミックなモーションで振ってくるもんだから、体勢を崩させるのにそう時間はかからなかった。後は、そうしてできた隙にビームサーベルをあてがえば腕無しモビルスーツのかんせ〜い。

 

「今度から、怒る時はもっと冷静に怒るんだな」

 

『くッ……!』

 

 さて、そろそろ撤退してくれるとこちらとしてもありがたいんだが……。

 武装は無力化したから一応このまま戦闘が続いてもなんともないけど、流石にこれ以上相手にするのは精神的に疲れるからな。

 

『つ、通信?一体誰が……ッて!?』

 

 そんなことを思っていたところで、彼女の方にちょうど通信が入ってきたようだ。通信相手の話していることはまったくもって分からんが、通信をオープンのままにしたせいか(急な入電で焦ったのだろうが)彼女の声だけは聞こえていた。

 

『……なッ、ですが私は……ッ!』

 

 口調からして、通信の相手は十中八九ヒナだろう。そして、何か言われて反論している。話している内容こそわからないものの、電話先のヒナがなにを言っているのかはおおかた想像がつく。

 

「頃合いか」

 

  人を纏めると言うのは大変なんだなぁと他人事のように憐れみながら、ビームサーベルの電源を切る。相手も通信が終わったようで、崩れていた機体の体勢を直してこちらを向かせた。

 

『……今回のところはここまでだ』

 

「そうか」

 

『だが覚えておけ……この雪辱は必ず、必ず果たしてやる……!』

 

 そう言うと漆黒の羽を大きく広げると、終始こちらを睨んだままその場を去った。てかめちゃくちゃ定番の捨て台詞だな……昔のアニメの敵キャラでもそんな風には言わないと思うぞ。

 さて、通信が入ったってことはアビドスとの和解も済んでるってことだろうし、こっちの仕事は終わったからひとまずシャーレに帰るとするか。

 


 

「想像以上ですね」

 

 とあるオフィスビルの一室。

 ガラス窓に映る星空を背景に、1人の男がモニタを眺めて言う。そこに写っていたのはヘルメットを片手にぶら下げ、アビドスメンバーと先生に合流するレイの姿があった。その表情はキヴォトスに来た頃に比べれば大分和やかになっていたが、男はそんな様子に目もくれず、どこか別の方に視線を向けていた。

 

「本人は気づいていないようですが、『暁のホルス』と同等……もしくはそれ以上の神秘をその身に秘めている。これは実に、ええ実に興味深い()()()()だ」

 

 クックック、と奇怪な笑い声をあげ、黒い合皮の椅子にもたれかかる男。その様子は実に楽しそうで、さながら新しい玩具を見つけた子供のようであった。

 いや、この男相手ならばまだ子供の方がマシであろう。何せ彼は、子供たちをていのいい道具か、自身の実験に使える被験体だとしか思っていないのだから。

 

「さて、問題はどうやってこちらに引き込むかですが……」

 

 興奮冷めやらぬまま机に両肘を立てて口元で指を組み、男は努めて冷静に思考する。

 だがとうに、彼の取る手段は決まりきっていた。()()を引き込んだ手法と同じ手を使えば、どうせ簡単に落ちる。自身のお気に入りである“先生“の顰蹙(ひんしゅく)を買うことにはなるだろうが関係ない。

 

 目的達成のために手段は選ばぬ。それが彼のモットーだからだ。

 

「レイさん、あなたと(まみ)えるのが今から楽しみで仕方がない」

 

 その男  黒服の独特な笑い声は、夜闇に響いて消えていった。

 

*1
カメラやレーダー等の電子機器を無効化する、ステルス技術を応用した電波妨害装置。これにより対MS戦において相手はデスサイズヘルを視認できなくなる。

*2
エイミ「私関係なくない?」

*3
個人の感想です。常人からすれば至難の業です。




作者「独白と変態パートに半分持ってかれたァ……!?」
レイ「こっちの黒服は、中にヒフミTシャツ着込んでたりしないよな?」

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