透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

24 / 67
 どーも、Hakone8510です。
 ガンダムブレイカー4、発売されましたねぇ。昨日から夢中になりすぎて寝不足になっておりましたが、何とかこっちも間に合ってよかったよかった。
 さて、今回の主人公は、本当の大人の戦いを見るようです。


大人の戦いの話。

「た、助けてくれぇ〜〜〜っ!!!」

 

「騒ぐな」

 

「あひぃっ!?」

 

 情けない声で助けを求める男  カイザー理事を黙らせるため、俺は軽めに彼の頭部へチョップをかました。

 ここは先ほどからたった数分後のD.U。瓦礫と未だ動けずにいるPMC兵士が散乱し、ところどころからは火の手も上がっている。ただ火事といっても小火(ぼや)程度のため、そこまで大事には至らないだろう。それに、比較的無事な兵士たちが片付けをしているので、もしそうなったとしても彼らが対処するだろう。

 さて、一際大きな瓦礫  ゴリアテだったもの付近ではどこから持ってきたのか知れぬ丸太にカイザー理事が縛り付けられており、その真下にはこれまたどこから調達してきたのか大量の(たきぎ)が敷かれ、静かなる怒りを帯びたセリカの手にはライターが握られている……魔女裁判かな?

 

「さて、あんたには色々と教えてもらうわよ」

 

「な、何を……貴様らに教えることなど」

 

カチッ(ライターを点火する音)

 

「ひ、ひいいいぃぃぃ分かりました持ってる情報全部吐きますからそれだけはぁ!」

 

 火のついたライターを掲げる彼女の顔は笑ってこそいたが、それは溌剌とした笑顔ではなく目元口元をわずかに緩ませた微笑み。俺には、彼女の顔上半分に影がかかっているように見えた。

 ちなみに、他7名の生徒の反応は以下のとおりである。

 

「セリカちゃん……凄くお顔が怖いです……⭐︎」

「ん、セリカ、その意気」

『ちょっと、シロコ先輩!?』

 

「凄いわ、敵の首領相手にあんな強気に……流石、私が認めたアウトロー集団ね!」

「アルちゃん、まーた感動してるー」

「あ、アル様、ご命令とあらば私もあれくらい……」

「……対抗心燃やすのやめて、ハルカ」

 

 そして、先生はというと。

 

“まぁ、聞きたいこともあったから、今は止めなくて良いかな……“

 

 とりあえず静観に徹することにしたらしい。

 俺も彼女の普段は案じられない雰囲気に少々怯えてはいたものの、先生と同意見だ。この時点でホシノの居場所をつきとめておけば、結構なアドバンテージになりうるだろう。

 そうしているうちに、セリカのほぼ拷問みたいな取り調べが始まったのだった……。

 

 

 

 

 

 そして数時間後、久方ぶりのシャーレオフィスに俺たちは帰ってきていた。

 結論として、アイツからは大した情報は得られなかった。どうやらホシノの身柄を運んでいた兵士といつの間にか連絡がつかなくなっていたようで、アビドス砂漠の方へ向かっていたということぐらいしか分からなかったという。

 そして今回の襲撃はアビドスの自治権を奪取する他に、万が一ホシノが脱走しアビドスに戻っていることを危惧し、それを確認する目的もあったようだ。まぁ、そちらに関しては骨折り損だったようだが。

 というわけで決戦前の休息とホシノ救出の手立てとその居場所の情報収集のため、一旦各々の居場所へと帰ることにしたのだ。

 俺も本当はミレニアムに帰るべきだろうが、()()()()()()()()()()俺は先生についていくと決めていた。彼には、個人的にも色々と聞かなきゃいけないことがあるからな。

 

 さて、もはや見慣れた資料山積みのオフィスに迎えられて、二人して哀愁に浸っていると……

 

「……ん?」

 

 デスクの上の、幾千ものプリントの山を押し除け、辛うじて設けられた作業用に開けられたスペース。その一番目がつきそうな場所に、黒地に稲妻の模様があしらわれた、珍しい便箋が置かれていたのである。

 俺が反応を示すと、隣の先生もすぐに反応し、その手紙を手に取る。表の面には、筆記体で「Dear Teacher」と記されている。

 

“差出人の名前は書いてないね……出し間違いでもなさそうだし“

 

 宛先が自分であることを確認すると、先生は何の迷いもなく封を切る。中に入っていたのは、折り畳まれた黒地の紙であった。一応の心配なのか、生徒である俺には見せないように、彼は目で文字を追っていく。

 差出人は十中八九アイツであろうが、そのことを先生には言わなかった。否、正確には()()()()()()、と言うのが正しい。唐突で、言うタイミングを見失ったと言うのもあった。だから、手紙を読んでいる最中に黒服のことを話そうと思ったのだが……。

 その手紙を読む先生の表情が……般若の形相の如く険しくなっていくのを見て、なぜだか分からないが「今言ってはいけない」と確信した。恐怖か、遠慮か、はたまた苦痛か……そのどれでもあって、どれでもない感情が、俺の喉を閉め切っていたのだった。

 

“行かなきゃいけない場所がある……行こう“

 

 手紙をそっとジャケットの内ポケットに仕舞い込み、眉間を少しばかり緩めた先生にそう言われて意識を取り戻した俺は、「あ、ああ」と隠しきれぬ動揺を誤魔化しながら返事をし、いつもより歩幅を広く歩く彼を小走りで追いかけた。

 

 

 

 

 とあるオフィスビル、その最上階。エレベーターのドアが開くと、すぐ目の前が社長室らしき部屋の前であった。そして扉を開けると、社長の座と思しきポジションにて、手紙の差出人にして先生の怒りの矛先たる男は、そこの一番上等な椅子に腰掛け静かに彼を待ち構えていた。

 

「……お待ちしておりました、先生。そして、その護衛の方も」

 

“……“

 

「……」

 

「先生、あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話ししてみたかったのですよ」

 

 そう言って黒服は指を組み、それで口の辺りを隠すようにあて、「クックック」と笑う。余程嬉しかったのか、前回会った時よりも増して笑い声が長い気がした。

 

“……随分と、ご機嫌のようだね“

 

「連邦生徒会長に呼び出された不可解な存在にして、あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生……それがあなただ。興味を持つなと言う方が難しいでしょう?」

 

“……“

 

「……さて、まずはっきりさせておきましょう。私たちは、あなたがたと敵対するつもりはありません。むしろ、協力したいと考えています。

私たちの計画において、一番の障害になりうるのはあなたたちだと考えているのです」

 

()()()()()?俺も脅威だと思われているのか)

 

“あなたたちは、一体何者?“

 

「おっと、そういえば自己紹介をしていませんでしたか?私たちはあなた……先生と同じ、キヴォトスの外部の者……ですが、あなたとはまた違った領域の存在です  かつてキヴォトスにあった組織の名前を拝借して、『ゲマトリア』と名乗っています」

 

 ゲマトリア……それはキヴォトスの神秘や多様な分野において研究を行う組織。この時点では共通の目的こそ不明だが、メインストーリーの端々で先生や特定の学校の生徒たちと敵対する。

 だが彼らのうちの大半のメンバーは先生に好意的であるのも有名。存在そのものだったり、理解者として、あるいはメタファーとして等々、理由はそれぞれだが、ある一人*1を除いて先生を引き入れたいと考えている連中なのである。

 

「そして、私のことは『黒服』とでも。……あなたと同じ、『不可解な存在』だと考えていただいて問題ございません」

 

“ゲマトリア、黒服……“

 

「一応お聞きしますが、ゲマトリア(私たち)と協力するつもりはありませんか?」

 

“無い“

 

「……左様ですか」

 

 途端に、黒服のテンションが下がった、と思う。人の感情に疎い俺ですらも、先生が自分の提案を断って心底残念がっているのがわかった。面倒臭い彼氏か何かか、お前は。

 

“私の要件は一つだけだ、黒服。ホシノを返してもらうよ“

 

「……クックック。あなたの行動に正当性が無いことにお気づきですか、先生?退部届けを出したホシノはもはやアビドスの生徒ではありません、確認されませんでしたか?」

 

 確かに、黒服の言う通りだ。

 前回俺にした要求は言ってしまえば決定権が「俺」に委ねられており、当人である俺が拒否したため事なきを得た。だが、今回に限ってはいくら理不尽な理由とはいえ契約の決定権は「ホシノ」にあり、当人はすでに届け出にサインしてしまっている。本来であれば、俺たちにはどうしようもない案件のはずだ。

 だけど、この「契約」には穴がある。

 

“……まだだよ。“

 

「……は」

 

“その届け出には、「顧問」である私のサインがまだない“

 

 大分強引……というか、暴論もいいとこである。確かに退部届けには顧問のサインが必要な場所があるが、この世界である部活の顧問を担う大人の存在は、少なくともミレニアムでは見かけなかった。このことから推測するに、昔顧問がいた時代の書式が形骸化されて今も残っているだけだと思われる。

 だが退部届けも一種の正当な契約書。その書面に書かれていることが全てである。先生も黒服も、それは変えられない事実。だからこそ先生はその超法規的権限をもって、あくまでも正当性のある道を選んだのだ。

 

 “だからホシノはまだ対策委員会の一員だし、まだアビドスの副生徒会長だし……今でも私の生徒だよ“

 

「……担当生徒の入退には『先生(あなた)』のサインが必要、と言うわけですか……なるほど、『先生』と『生徒』と言う概念、実に厄介ですね」

 

 そう黒服は興味深そうに言う。それでいて全く悪びれた様子はない。結局のところそういう大人なのだ、こいつは。

 

“あなたたちはあの子達を騙し、心を踏みにじり、その苦しみを利用した“

 

「ええ、確かに私たちは彼女たちを己が利益のために利用しました。ですがこれは、ルールの範疇で起こったこと」

 

“……“

 

「アビドスで起こったあの災害は、私たちが起こしたわけではありません。一定の確率で起こりうるれっきとした自然現象で、私たちはその機会を利用しただけ……必然にしろ偶然にしろヒエラルキーから転落した弱者に、社会的強者が施し、支配する。ありふれた搾取構造の一つにすぎません」

 

 

「それを知っていて、それでもアビドスから手を引かないのですか?」

 

“勿論“

 

「ホシノを諦めれば、他の生徒はどうにかあの学校で過ごせるのです。カイザーPMCについてもたしたちの方で解決しましょう。これは、何よりもあのホシノさんが望んでいることなのですよ。いかがですか?」

 

“断る“

 

 いつもはそこそこに口数の多い先生の言葉がめちゃくちゃ端的になってきていて、返事もめちゃくちゃ短い。彼が本気で怒っているのが分かる。

 そして、そんな返事をする先生に、納得がいっていないご様子の黒服。

 

「どうして?

どうあっても、私たちと敵対すると……結局はあなたのあずかり知らぬこと、放っておけばいいでしょうに!」

 

“私は、生徒たちを放ってはおけないからね“

 

「なぜ?

なぜなぜなぜなぜなぜなぜっ、なぜ!?

理解できません、なぜ断るのですか?一体何のために、あなたに何のメリットがあると言うのです?」

 

 やっぱりメンヘラ彼氏だろ、お前。

 

“あの子達の苦しみに対して責任を取る大人が誰もいなかったから……きっと、言っても理解できないと思うけど“

 

「……これ以上、争議の余地はなさそうですね。良いでしょう、交渉は決裂です、先生。私はあなたのことを気に入っていたのですが……仕方ありませんね。

 

ホシノは、アビドス砂漠のPMC基地の中央……実験室にいます。微力ながら幸運を祈っていますよ」

 

“……行こうか、レイ“

 

 話が終わるや否や、帰ろうとする先生。余程嫌いになってるな、こりゃ。

 

「ああ、先生。一つだけ。

そこの生徒……暁月レイには、あまり信頼を置かない方がよろしいかと。彼女は、いずれあなたに牙をむけますよ

 

 黒服が言葉を言い終わる前に、社長室の扉は先生によって乱暴に閉められた。

*1
この時点では、彼女はゲマトリアにもう一人のメンバーがいることを知らない。




 黒服の「警告」  その真意とは一体?

作者「なんか犯罪でもした?」
レイ「深夜にカップ焼きそば二つ食べたことぐらい?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。