透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうもみなさんこんにちは、Hakone8510です。一週間更新遅れました、スミマセン。
 ま、まぁ気を取り直して遂にアビドス編(1、2章)最終回。まぁこれで作品自体が終わるわけではないので一種の区切り程度のものですが。ぜひ最後までお楽しみいただけると幸いです。
 さて、今回の主人公は、修行の成果を見せるそうです。


砂漠のまんなかで残された夢の話。

「全員、無事か」

 

 コックピットハッチを解放し、数時間ぶりに外の空気を浴びてストレスを回復させつつ、俺は味方の状態をアヤネに確認する。

 

「残り弾薬はもう僅かですが……目的地までは、なんとか」

 

「……そうか」

 

“……!みんな、敵の増援が来るよ!”

 

 先生の注意喚起に皆が一斉に一方向へ向く。その視線の先には、大量の歩兵と装甲車の群れが。

 

「MS、および相当兵器の反応なし……残りはあの部隊だけのようです」

 

「つまり、あの集団で最後……!」

 

『ん、私も降りて参加する』

 

 どうやらMSはもう役には立たないらしい。まぁMSを人間大だとするなら、人はテニスボール程度の大きさしかない。殺すのは簡単かもしれないが、地上の皆の方にも被害が出かねない。

 つーわけで、俺も降りて地上戦に参加するとしようか。小脇の収納スペースに格納しておいた拳銃と剣を取り出し、装備すると、膝立ちさせたウイングゼロの胸あたりからバッと飛び降りた。シロコとアルも同様に、俺と同様にコックピットから外へ綺麗に着地した。

 

『MSのお守りは任せて頂戴。あなたたちは彼女を』

 

「分かりました……ご武運を!」

 

『そちらもね』

 

 さて、モビルスーツは便利屋に任せたからいいものの、実は今回大した数の弾は持ってきていないのだ。もちろん俺には弾を消費しない剣「フラガラッハ」があり、殲滅戦用の爆発属性付与を使えばそこそこに戦えるだろう。しかし、「フラガラッハ」だけではかなりの時間がかかってしまうだろう。さて、どうするべきか……。

 

「!」

 

 そう思案しているうちに、先頭に立っていたシロコとセリカが敵兵たちとぶつかる。

 

「んっ……!」

 

「勢いが強い……ノノミ先輩っ!」

 

「はい、了解です⭐︎」

 

 煤汚れた顔に笑顔を浮かべ、ノノミがその到底少女が抱えられぬであろうガトリング・ガンを軽々と持ち上げ、銃口を扇状に往復させながら全弾を発射する。俺がまだ初心者先生だった頃お世話になった、ノノミのEXスキルだ。目の前の敵が、わずか数秒にしてまるで殺虫剤をかけられた羽虫の大群のように地面へとその体を落としていく。

 だが最後の波はその程度の攻撃で止まることはない。これが最後の戦力だからか、あちら側の指揮も相当に上がっている。たとえ便利屋がここに加勢したとしても、今のままではここを突破できないだろう。俺も思考の海から抜け出して彼女たちに加勢するも、俺一人加わったところで大した意味はなく、一瞬にして囲まれてしまった。

 

「くっ……ここまでなの!?」

 

「ん……まだ、終わってない……」

 

「私たちは……まだ、諦められません……!」

 

“くぅ……ッ“

 

(そこまで懲りないか……PMC理事め!)

 

 駄目だ、我慢ならない。

 今回の作戦では俺はMS戦メインで、白兵戦はしないつもりだった。だから一応持ってきた()()の出番はないと思っていたが……どうやら、お披露目の機会が早くも巡ってきたらしい。

 

「この()()()()()……使う時が来たようだな」

 

 そう言って懐から取り出したのは、普通の弾とは色どころか形状も違う、特殊な弾薬。

 「フラガラッハ」はエンジニア部の作ってくれた切り札……つまり正確には俺の切り札じゃあない。だがコイツは、俺がエイミとの戦闘訓練の中で偶然、収集間前に発現したモノ……!

 

「これが俺の、真の切り札だ」

 

 フラガラッハの弾倉は6発。通常属性モードと合わせて5つのモードがあるフラガラッハには、一つ余りがある。何かに使えると思ってエンジニア部が残してくれていたこの空きスロットに、先述した特殊弾薬を装填する。

 そして、あとはスロットを照準に合わせ、トリガーを引きながら大きく振るだけ。

 

「フンッ!」

 

 その瞬間、振りかぶった切先で描かれた軌道から、空間の裂け目のようなものが発生して自分の体が()()に包まれる。

 

「レイさん!?」

 

“!?“

 

 仲間の驚く声が聞こえたが、構ってるヒマはない。

 闇、というよりは混沌とした景色が眼前に広がる。寒いような暖かいような不思議な感覚を味わいながらも、抵抗することなく()()を受け入れた。

 そして、視界が暗転する。

 

 

 

 

 

「また来たか」

 

 再び視界が開けると、目の前に立っていたのは一人の()()だった。俺と同じ緑のタンクトップを着て黒いピチピチのハーフパンツを履き、モスグリーンの髪を靡かせている。

 周りを見渡すと、先ほど俺を包み込んだモノと同じような色柄が空に広がっており、セメントの地面  所々に横断歩道や中央分離帯、信号や標識が見える  を照らしている。

 

「……いやぁ、今日来るつもりはなかったんだけどねぇ」

 

 感情を感じられない低音ボイスでそう言われるモノだから、なんか責められてる気がして俺はつい後頭部を掻いながらそう言う。だが彼はそう言った様子を一切気にすることなく話を続ける。

 

「本題に入ろう。この力は無償で使えるものではなく、お前の命を代償とする……指標としては一分あたり一ヶ月ほど寿命が縮むと思ってもらえればいい」

 

「十二分で……一年か」

 

「コレでもお前本来の力の、ほんの一部に過ぎない。そう考えれば決して軽い代償ではないだろう」

 

()()で一部だったって言うのか」

 

 初めて使った時  それはさっきも言った通り数週間前のエイミとの戦闘演習中に偶然起きたこと。

 ユウカの配慮で俺たち専用の演習場は校舎敷地から隔離され、山奥に特設された訓練施設で行っていたのだが、この力を使った瞬間施設の天井と壁が吹き飛び、周りの木々が根本から折れてあたり一体が更地と化した。

 運よくエイミは避け切ったようで無事だったが、ご本人から「訓練中はソレ、禁止」というありがたい言葉をいただいたため、それ以降使用は控えていたのだ。

 

「それでは、今一度問う。お前に力を手にする覚悟はあるか」

 

「勿論だ」

 

 俺はノータイムで答えた。

 

「……フ、いいだろう。では使え、俺の翼を」

 

 少年はこちらへと手を伸ばすと、その手のひらから白い光が放たれる。俺は某映画の記憶を消すペンライトを思い出しながら、意識を手放した。

 

 

 

 

 

「きゃあ!?」

 

 目が覚めて最初に聞こえてきたのは、セリカの可愛い叫び声だった。そういえばさっきまで一番近くにいたのは彼女だったな……やはり不憫  いや今回は不憫とは違うな、普通に俺のせいだわ。

 腕や足、それから胸あたりにまるで鉄の鎧を着たような窮屈さを感じるものの、不思議と重みはない。月並みな言葉だがむしろ羽のように体が軽い。こんな感覚は、初めてエイミと対人で戦った時以来だ。

 

「レイ、その姿は一体……?」

 

 横にいたシロコにそう言われて、自身の身体を見下ろす。

 まず最初に目に入ったのは、およそ人とは思えない造形をした腕だった。だが見慣れぬ容貌ではない。

 これは、MSの……ウイングゼロの腕だ。それに胸や足も同様にウイングゼロの装甲で覆われている。だが所々の装甲部分が赤と黄色で、俺の乗っているウイングゼロとは少々カラーリングが違うような気がする。

 おそらくこれは……。

 

”レイ、大丈夫!?”

 

「ああ、作戦に支障はない」(cv.緑〇光)

 

「「「!?!?」」」

 

 あれ、声がイケボだ。だがよくよく耳をすませばその背後に俺自身の声も微かに聞こえる。これは一体……。

 まぁいい、そんなことは微々たる差でしかない。今は眼前の敵を排除することが最優先目標だ。

 

「今から俺が()(ひら)く。その隙にお前たちはホシノのもとへ」

 

「そんな、隙なんて言ってもたった一人じゃあ……」

 

 だが、アヤネの心配の言葉は、俺が取り出したあるモノを見て遮られることになる。

 

「それは……」

 

「今はいい。ひとまず()()を」

 

 取り出した二挺の長身の銃を平行に接続し、よく見た構えで照準を定める。

 

「ターゲット、ロックオン」

 

 そして、ツインバスターライフルのトリガーを引く。

 

グオオオォォォオオオン!!!

 

 銃口から放たれた光の束が、押し寄せる雑兵の波を押し返し、肉壁に隙間ができる。

 

「今だ!」

 

 俺の合図とともに、皆が一斉に走り出す。俺の牽制と援護によってなんとか包囲網を突破し、目標地点に全速力で向かっていく彼女たちの背中を尻目に、じりじりと迫ってくるロボット兵たちに向き直る。

 正味勝てるかどうかは知らん、というか生き残れるかどうかもわからない。だが、俺は、俺の役割を果たさなくてはならない。

 

「命なんて安いものだ、特にオレのはな……」

 

 思ってもいないような()の台詞を吐きながら、とうとう俺はカイザーPMC兵の大群と対峙した。

 


 

 夢を見ていた。

 自分がまだ未熟で、先輩に迷惑ばかりかけてしまっていた、あの頃の夢を。

 

「ねぇ、ホシノちゃん。私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、コレは夢なんじゃないかと思って、何度も頬をつねったの」

 

 毛先の跳ねまくった水色の髪で、母性的で発育の良い体をした女性  最後のアビドス生徒会会長が、恥ずかしそうにはにかむ。当時は急にそんなこと言うもんだから、つられて顔の温度が急上昇してしまったけれど。

 ひどく懐かしくて、同時に胸の締め付けられる光景。私に胸の中に残り続ける、永遠の悔恨。

 守れなかった、夢。

 

「ねぇ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんいも可愛い後輩ができたら、その時は  

 

 その時は……何だったんだろう。

 今でも、その先の言葉が思い出せない。

 

 

 

ドカアアアアァァァァン!!!

 

 遠くの方で爆発音が聞こえる……外で何かあったのだろうか。

 

「せ………すぐ…………………です!」

 

 この声は……アヤネちゃん?

 

「ん、………………ちど………」

 

「……ね……………………て………!?」

 

「もうっ、今はともかくこれをどかさないと!!!」

 

 シロコちゃんにノノミちゃん、やけにはっきり聞こえるその声は……セリカちゃんかな?

 みんな、来てくれたんだ……。

 

 

 一体、どうして……どうして私なんかを……。

 私を助けても、意味なんてないのに……。

 迷惑をかけてばっかりなのに……どうして……。

 

 いつの間にか体が自由になって、真っ暗だった視界が一気に開けて、思わず目を細める。

 光に目が慣れて来て、徐々に先の景色がはっきりしてくる。

 

「「「「ホシノ先輩!!!」」」」

 

 外に出た瞬間、一斉に自分の名前を呼ぶ4人の声。

 一番最初に目に飛び込んできたのは、ずっと可愛がってきた後輩たちの姿だった。

 

 みんなが、こちらに手を伸ばしてくれている。

 制服は所々が破け、顔は砂まみれでボロボロお世辞にも綺麗な状態とは言えないけど、夕日を背に笑うみんなは、どんなお宝よりも輝いて見えた。

 

(ああ、私は……孤独(ひとり)じゃなかったんだ)

 

 紆余曲折を経て、ようやく思い出せた。自然と言葉が口をついで出る。

 

「ただいま」

 

 それは、長い間ずっと曇りだった私の空に、ようやく一筋の光が差し込んだ瞬間だった。

 


 

「……あちらはうまく行ったみたいだな」

 

 繋がりっぱなしだったアヤネの通信を介して、()()の決着を聞き届けた俺は、左耳につけた通信機を外して地面に座り込む。そしてその数秒後には、達成感と安堵感が胸の内を満たす。

 ひとまず、本筋と近い形で着地できて良かった。

 

(にしても……ここにきて新キャラ登場とは)

 

 アフロディテ……前世の記憶をひっくり返してみても、そんな名前もしくは二つ名を持つ生徒なんて聞いたことがない。俺のタヒんだ後に登場した生徒だろうか。

 そうだとしても、本人ですら知らない俺の過去について、アイツは知っているような様子で話していた。それにあのMS操縦技術は、決して生半可な訓練で身につけられるようなものではない。確実に1つや2つ死線をくぐってきたものだった。

 一体、やつの正体は……?

 

「ま、今はいいか」

 

 本人のいない今ウジウジ考えていたってしょうがない。ひとまず俺もアイツらと便利屋に合流しなくては。

 俺は立ち上がって、基地の施設がある方へ走り出す。

 

 

 

 あたり一帯の地面を埋め尽くすように倒れる無数の機械兵士の体を、器用に避けながら。




 はい、と言うわけでアビドス編はひとまず「完」と言う感じです。まぁこの後は後日談が控えてるんで正確には最後じゃないんですけど……こんな終わり方はあまりにも消化不良ですしおすし。
 とまぁそんな感じで、主人公は新たなチカラに目覚めました。詳しくは後日談で話すのでぜひ来週もお楽しみに……。

レイ「あのチカラ、名前とかないのか?」
作者「実は全然決めてなくてね……良さげなのが思いつかなくって」
レイ「ええ……(呆)」
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