透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、お久しぶりのHakone8510です。
 長らくお待たせいたしました、対策委員会編のほんとのホントに最後です。

 今回の主人公は、ご褒美をもらいに行くみたいです。


後日談:美神からのご褒美

 2日後、アビドス高等学校の会議室。

 今後の活動における認識のすり合わせを行うべく、対策委員会の面々と先生がいつものように大きな長方形のテーブルを囲んでいた。

 

「というわけで、アビドス自治区については以上になります」

 

 アヤネが手に持った資料をテーブルに置くのを合図に会議は終わり、用事があるというセリカとノノミ、シロコは教室を出て、残ったのはホシノとアヤネ、そして先生であった。

 ホシノは会議が終わるなりすぐさまうつ伏せになって、やがて静かに寝息を立て始めてしまった。それを呆れつつも微笑ましげに見つめるアヤネは、はたと気付いたように先生の方を向く。

 

「そういえば先生、レイさんはどちらに?」

 

“今日はお休み。人と会う用事があるんだって“

 

「そうですか……少し、聞きたいことがあったのですが」

 

“もしよければ、私が聞いてこようか?多分明日には会うだろうし“

 

「いえ、急ぎの要件でもありませんし、また今度にしておきます」

 

 先日、戦いの渦中においてドローンにて辺り一帯を上空から偵察していたアヤネは、大量のカイザー兵と思われる人型ボットが大量に地に伏しているのを発見した。もしやレイの仕業なのではと思って高度を下げつつ探索を続けていると、動かない残骸の山の中で、()()()が機敏に動いているのを発見した。

 

(あれは……レイさん?)

 

 それには確かにアヤネもよく知る人物、ここ最近で新たにできた仲間である少女、暁月レイの面影があった。というか、顔も体つきも本人そのものだから、普通であれば彼女と即断定できるだろう……だが何かが違う。

 

(雰囲気……?いえ、彼女とはもっと根本的なものが……まるで()()()()()()()()()()()みたいな……)

 

 やがて彼女らしき人物はその場を飛び去ってしまったため、何も聞くことができなかった。勿論その後作戦が終了して全員が集合し、レイと会話する機会もあったが、その時の明るい雰囲気にそぐわないと憚られて、結局聞くことはなかった。

 

(あれは……本当にレイさんだったんでしょうか)

 

 消えることのない疑念が、アヤネの胸中でくすぶっていた。

 


 

 ある昼下がり。俺はとある場所に来ていた。

 トリニティ学園自治区内にひっそりと店を構える、知る人ぞ知るロールケーキカフェ「Pola(ポーラ)」。お嬢様学校のニーズに応えるために個室が備わっており、防音性も完璧なため部屋内の音の一切が外部に漏れることのない、まさに密談に適した場所として主にティーパーティの生徒から愛用されている……らしい。

 さて、一応ミレニアムの人間である俺が、どうしてこんな場所に来ているかというと……。

 

「あ、やっと来たぁ❤︎」

 

「……」

 

 初めてみる顔の筈なのに、初めて見た気がしない。MS戦における通信の声を頼りに想起した顔と、結構似ていたからだろうか。

 紫とも、黒とも言えない麗しい髪を膝下まで伸ばし、分からせたくなるようなメスガキ顔で、頬杖をつきニマニマしながらこちらを見つめてくる少女。彼女こそがあの時戦ったガンダムのパイロット、アフロディテ  なのだろうか。

 

「およ、あたしが本物かどうか疑ってるな〜?大丈夫、正真正銘本物のアフロディテお姉さんだよ❤︎」

 

「……………………」

 

「ん?どしたの?」

 

「まぁいい。ひとまずはアンタがアフロディテだと信じよう」

 

 エイミ推しというので分かってもらえているかもしれないが、俺の好みはおとなしめな性格のコだ。こうもグイグイくるタイプは……嫌いというよりも、話に付き合うのは苦手だ。正直早く要件を済ませてしまいたいが……。

 個室の扉が三回叩かれ、店員が注文されたものをトレーに乗せて入ってきた。定番のプレーンロールが二つとコーヒー、スムージーを丸テーブルに並べていく。こちらに一礼して店員が個室から出ていくと、俺はようやくアンティーク調の木製イスに腰かけ、眼前のメスガキ風美少女を睨み、その紅紫の瞳を見据えた。

 

「本題に入ろう。お前はオレの何を知っている?」

 

「んも~レイちゃんったらせっかち~♥」

 

「御託はいい。話を進めろ」

 

 ……やはり俺は、こういうタイプの人間は嫌いだ。

 常に飄々としていて感情の()()がつかめない人間は、俺の得意とする煽りが効かない  むしろ逆効果になる可能性だってある。

 それに、普段頼りない様子のヤツは大抵算段を打つのが早い傾向にある。対策委員会のホシノがそのいい例だ。能ある鷹は爪を巧妙に隠しているものだ、そしていつその爪がこちらに向くのを悟らせない。

 俺が警戒したまま彼女の返答を待っていると、アフロディテはそれまで細めていた目を少し見開く。

 

「んじゃあ早速なんだけどさ、レイちゃんは他の生徒のコとなんか違うなーって思ったことはない?」

 

「それは……」

 

 あるかないかで言えば、大いにある。

 

「それはこの……能力のことか?」

 

「そそ。あらゆるものを創造し、生成するチカラ……そんな大層な能力をなぜ自分が持っているのか、不思議に思ったことはない?」

 

「……」

 

 こちらが聞いているというのに、いつのまにかこっちが質問攻めにあっている。だがそれを指摘する余裕はこちらにはない。脳味噌がかき回されているような感覚に陥って、それどころではなかったのだ。

 

 俺のこの能力の起源は、一体どこにあるんだ?

 ()の記憶は、トリニティ郊外の空き地から始まった。起源はそこから前の記憶にあるはずだが、ほとんど思い出せていない。

 

『一緒に帰ろ!』

 

 前世で聞き覚えのない少女の声。あれはいったい誰だったのだろうか。

 周りの景色のピントが合わなくなり、ケーキとセットで運ばれてきた芳醇な焙煎豆の香りが消えかけたところで、アフロディテの声が響く。

 

「そんなに深刻に考えなくてもい~の。答えは単純なんだから」

 

 

「あなたは人と違う人種  タイタン()()()と同じ人の手によって造られた、決められた運命を歩む命なのよ」

 

 

 

 

 

 ケーキ屋を出ると、空は(くれない)に染まっていた。

 どうやら会計は先に出たアフロディテが既に済ませていたようで、てっきり彼女の性格的にタダ食いでもしていくのかと多めにお金を用意していたのに、何だか拍子抜けだった。

 結局、彼女の意図が俺には読めなかった。あちらに引き込もうとしていたのか、脅迫だったのか、あるいは彼女なりの対立宣言だったのか。彼女の話していた俺の出自についても、真偽の沙汰は不明だ。

 

 …だが、たとえ俺が彼女のいう通り、タイタンという造られた命だったとしても、決められた道を歩む運命にあるとしても。

 

(俺のやることは変わらない)

 

 俺は俺のやり方で、俺なりにできることをやる。ただそれだけだ。と、心機一転、決意を新たにして近くに停めておいたバイクの方へ歩きだす。

 

(……あれ、そういえばもうそろそろ、ミレニアムプライスが始まるんだっけ)

 

 そう、物語はまだ始まったばかりだ。

 


 

「どうだった、様子は」

 

「元気そうだったよ〜。自分の正体を聞いた時には動揺してたみたいだけど、あの性格ならどうってことないんじゃな〜い?」

 

「見たかぎりでは能力も鍛えられてきているみたいだな。会うのが楽しみだ」

 

「フフフ、元気そうでよかった」

 

 未だ誰も知らない、謎の場所。テーブルと思われる円形の板を囲んで話しているのは、4人の少女たち。うち3人はフードを深く被って顔を隠しているが、アフロディテは帰ってきたばかりだからか黄色い上着を着ているものの顔を出している。

 

「ってゆーか、なんでみんな室内なのにフード被ってんの?」

 

「……私も意味はないと思うが、二人が譲らなくてな……」

 

 四人の中で一番声の低い黒のフードを被った少女が、その対象を指差す代わりに赤と白の上着を着た二人の方を向く。

 

「馬鹿だな、こういうのは雰囲気が大事でしょうが」

 

「二人もかっこいいと思わない?」

 

「「……」」

 

 赤と白がこの調子なので、アフロディテと黒はひとまず無視することに決めた。

 

「ひとまずそれは置いといて、()()()の方はどう?順調に進んでる?」

 

「進捗は45%程だ。エネルギー変換機能に組み込まれた電力交信回路における132の誤作動が解消できていないし、何より関節部が4分足らずで稼働不可能なまでに陥ってしまうほど素材の耐久性に問題がある。正直、あまり芳しくない状況だ」

 

「ふ〜ん、つまり技術がちょっと足りないってカンジ?じゃあどうすんのさ」

 

「それはもう決まってる」

 

 

「餅は餅屋、なら技術は技術者から盗めばいい。簡単なことだ」

 

 

 

 

 

To Be Continued……




 と、いうわけで舞台は彼女の所属するミレニアムサイエンススクールへと移り、次回からパヴァーヌ編へと突入します。新たな出会い、新たな事件の予感……次章もどうぞご期待ください。

 次章更新は12月6日(金)を予定しています。
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