透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どーもお久しぶりです、Hakone8510です。
 もう今年も数週間で終わりかぁ……やっぱりそこそこ忙しいと一年が早く感じるのでしょうか。
 そういえばこのシリーズももうすぐ1周年。そう聞くと何だか感慨深いような、更新速度が遅くて不甲斐ないような……1周年を記念して何かやりたいなーとも思っていますので、そちらもぜひお楽しみに。

 さて、今回の主人公は、ある部活の手助けをするようです。


3:才華の園でパヴァーヌを
まさかダブルブッキングするとは思わなかった話。


 誰かのために生きていた。

 顔も知らない大勢にその役割を背負わされ、その期待に応ようとしていた。

 わがままなど、言えるはずもなかった。

 でも、耐え切れなかった。

 だから、私はもう一人の私をつくった。

 周りから聞こえる声にうんざりして、身代わりを作ってしまったのだ。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい  

 

 後悔に苛まれ、何度ももう一人の自分に謝った。

 

「大丈夫です。あなたのためなら私は  

 

 やさしい声が聞こえた。

 

「だから安心してください。私の、大切な……」

 

 そのさきの言葉を、私は覚えていない。

 

 

 

 

 

 ミレニアム・サイエンス・スクール。

 その起源はキヴォトスの超常的技術力を持ってしても解明できない課題「千年難題」を解明すべく随一の科学者が集まったのに由来する。その成り立ちゆえか、キヴォトスにおける最新技術はミレニアムから端を発したものがほとんどであり、比較的歴史が浅いにもかかわらずトリニティ・ゲヘナと並ぶ三大学園に名を連ねている。研究によれば学園の規模が急激に拡大した時期には、第11代生徒会長である佐渡ミノルの貢献が……

 

「って、何やってんのよ」

 

 唐突にユウカの声が隣から飛んできて意識が戻る。ふと辺りを見渡すと、周りで作業していたセミナーの生徒たちは既に撤収しており、部屋に残っていたのは数人の古代研究部の部員とユウカ、そして俺だけだった。

 

「すまない、資料を読むのに夢中になってしまって」

 

「『ミレニアム建学史』?随分マニアックな本ね」

 

「……こういうのは授業では扱ってくれないからな。こういう知識を得られる機会があるのは存外悪くない」

 

「まぁ、学校の方針とそもそも違う内容だからね」

 

 先述した通りミレニアムは他の大規模な学園と比較しても歴史が浅いというのに加えて、キヴォトスの最先端技術を目指すという学園の性質上、反面歴史や古い物について研究するのは珍しく、この古代研究部もミレニアムにしては「珍しい」部活の一つだ。

 俺はユウカからの依頼で、部費支給資格が全ての部活にあるかを確かめるべくその調査作業を手伝っている。そして今、百数もの部活を見終えて、ついに最後の部活へ向かうというところであった。

 

「次が今日最後の調査だけど……ある意味、一番厄介な相手とも言えるわね。一体どれだけ借用書をあの子たちの代わりに作ったと……!」

 

「……もしかしなくてもゲーム開発部、ですか」

 

「なんで敬語なの?」

 

 いやだって怖えんだもん。目つきが完全に人間のソレじゃなかったんだもん。目元に影が降りて額に青筋が見えたんだもん。さすが先生の正妻にして恐妻といったところか(?)。

 

「ゴホン。無意識かもしれないが、お前の会計作業手伝ってる時、ことあるごとにゲーム開発部の名前を恨めがましく口にしていたものでな……」

 

「……まぁ、あの子たちが憎いわけじゃないんだけどね……なんというか、あるでしょ?どんなに可愛い子でもウザく見えちゃう時が……」

 

「あぁ〜〜……」

 

 もうママじゃん。完全に子育てに悩む母親じゃん。それともやっぱりユウカろりk(ry

 

「ところでなんだけど」

 

「なんだ」

 

「今日は先生もミレニアムに来てるって聞いたけど……どこにいるのかしら」

 

ギクゥ!!!

 

 驚きすぎて、山のように積み上げた資料を丸ごと落っことしそうになった。

 

「ねぇ、聞いてる?」

 

「あ、ああ聞いている。だが、先生が今日ここにいること自体初耳だし、当然どこにいるかも分からん」

 

「ふ〜ん?」

 

「……(アセアセ)」

 

「先生の専属助手なら知ってると思ってたけど……あなたが知らないなら、しょうがないわね」

 

 あ、あびね〜。どうやらバレてはいないみたいだな。

 そう、俺はミレニアムに先生が来ていることを知っている。そして、()()()()()()も当然知っている。その理由は、数日前までに遡る。

 


 

 いつものようにシャーレに舞い込む任務を手伝っていると、ふと先生が思い出したようにパソコンに映されたメールを見せてきた。その差出人を見て、全てを察したのだ。

 

「またシャーレに依頼?」

 

“うん。今度はミレニアムのゲーム開発部ってとこみたい”

 

 ミレニアムか……そういえばアビドスでの記憶が濃厚すぎて、次の章のことをすっかり忘れていた。

 アビドスはブルーアーカイブを進める上でなくてはならないファクターだが、俗に言うパヴァーヌ編とその次も、先生の望むエンディングに辿り着くには必須だ。協力しない謂れはない。

 だが、実はその日にちょうどユウカからも、依頼日当日の部活監査をお願いされていて、予定が被ってしまっていた。当然契約上はシャーレの仕事を優先すべきだが、先生は何かを察したのか機会が来るまでスパイ(別に転覆とか企んではないけど)としてセミナー側においておいた方がいいと判断し、ユウカの頼みを断らぬよう言われたのだ。

 


 

 先生はユウカがきたら上手く隠れるとか言っていたけど……大丈夫なんだろうか。

 そんなことを考えていると、いつの間にかゲーム開発部の部室前まで来ていた。扉にはどこか見覚えのあるゲームキャラのシールがところどころに貼られており、表札にはギリギリ読める字で部の名前が記されている。

 

「さてと……」

 

 これから来るであろう苦労に眉を顰めつつ、ユウカはそのドアを開けた。

 

「入るわよー……ってあれ?」

 

 部室というにはあまりにも狭い上に見覚えのあるゲーム機やゲームソフトが所狭しと棚に置かれ溢れんばかり、というかたあに乗り切らないものは床に散乱しており、まさにゲーム廃人の部屋である。

 その部屋の中央あたりの床に腰を据え、有線で悦族されたコントローラを手にしながらこちらをみている3人の少女の姿が見えた。

 3人のうちの一人、ピンクの猫耳ヘッドフォンとしっぽをつけた金髪少女が、こちらに気づいたのか振り向いた。

 

「あ、ユウカ!」

 

「ちょ、モモイ、何この散らかりよう……もうすこし片づけなさいよ」

 

「ダメだよ!下手に片付けたらどこにあるかわからなくなっちゃうじゃん!」

 

「片付けないほうが探しにくくない……?」

 

 モモイ、とユウカ呼ばれたその少女の反発に呆れるユウカ。栗口と先生方に呼ばれる口が特徴の明るく溌剌とした少女である。

 まぁ、モモイの気持ちも分からんくはないけど、掃除する時大変だから片付けておいた方がいいぞモモイ。

 

「おねーちゃんに賛成。というか、私たちにとってこの状態が片付いている状態なの」

 

「そーだよ、ミドリのいう通り!」

 

 そう言うモモイに抱きつかれているモモイによく似た少女は才羽ミドリで、モモイの双子の妹。姉とは色違いの猫耳ヘッドフォンとしっぽをつけた、飄々とした性格の金髪少女である。

 

「あら、ユズも今日出てきてるのね」

 

「あ、きょ、今日は3人以上必要なゲームやりたいからって、ロッカーから引っ張り出されて……」

 

 怯え切った態度とは裏腹に恐ろしい速度でボタンを連打しているのは花岡ユズ。赤髪を一部編んだロングヘアーに、オーバーサイズの上着を着て膝下までを包んでいる。オドオドした態度が庇護欲をそそる少女だ。……一応同学年のはずなのだが。

 

「ところでなんだけどさ、ユウカ」

 

「何?」

 

 すると、モモイがこっちを指さしてくる。

 

「この人、誰?」

 

「……」

 

 そういえば彼女たちとは入学以来顔を合わせなていなかった。クラスが違ったのか教室で会うことはなかったし、自分から積極的に会いに行かなかったこともあって認知されていなかったのだ。

 自業自得とはいえ、ちょっとした寂寥(せきりょう)を感じずにはいられない。

 

「この娘は今日の手伝い。あなたたちと同学年よ」

 

「ふ〜ん、どうも同い年には見えないや。そうだ、あなたも一緒にゲームする?」

 

「お手伝いって言ったでしょうが!いつまで経っても始まらないから、早速監査を始めるわよ」

 

 ということでユウカは強引に監査を始めた。

 その内容は昨今の予算膨張による部活動維持条件の改正、具体的には部員数が4人以上であること、大会で結果を残すなどの実績があること。ゲーム開発部はこの二つを満たしていないとのことだった。そしてそれを撤回するためには、ミレニアム・プライス当日までに人数を集め、そこで何らかの賞を取らなくてはならない、というのも。

 もちろん、当の彼女たちから抗議の嵐。

 

「無理に決まってんじゃん!この鬼、悪魔、オオフトモモ!」

 

「ちょ、お姉ちゃん……!」

 

「う、ううううう……!」

 

 反応こそ三者三様だが、ユウカに反対しているのは明らかである。

 

「ふ、ふーんだっ!そこまで言うなら、条件全部達成して、ギャフンと言わせてやる!」

 

「へぇ〜、随分自信があるのね?」

 

「当たり前でしょ!こっちにはシャーレの先生が  

 

 その瞬間、普段ユズが入り浸っていると思われるロッカーがガタンと揺れた気がした。

 

「?」

 

「あ、ちょっとま  

 

 そんな異変を、彼女が見逃すはずもなく。

 3人が止める前にユウカはロッカーの取手に手をかけ、ゆっくりとその戸を開く。すると、そこにいたのは  

 

“……や、やぁ、久しぶりだね、ユウカ“

 

「……何してるんですか、先生」

 

 そう、ロッカーの中で体育座りしていたのはまごうことなき、我らがシャーレの先生であった。

 全員が唖然とする中、恐ろしい速度でこちらに振り向いたユウカは、鬼の如き形相で肩を掴んできた。肩を掴む指一本一本が食い込んできて若干痛い。

 

「……今日先生がここにいるって、知ってたでしょ」

 

「……いや、俺は知らn」

 

「知ってた、でしょ?」

 

「……ああ」

 

 一体どっからそんなドスの効いた声が出るんだ。これがミレニアムの恐母かぁ……。

 

「おおかた、困りに困って先生を呼んだんでしょうけど……全く」

 

「ユウカ……」

 

「まぁいいでしょう。手伝うのはいいですけど、ほどほどにしてくださいね先生?」

 

“う、うん……”

 

「それじゃ。私は仕事に戻るわ、報酬は後で渡しとくから〜」

 

 言いたいことは全部言ったのか、どこか満足げな表情でユウカは部室を去っていった。俺たちはそれを見届けた後、しばらく黙って閉じた扉を見つめるしかなかった……。

 

 

 

 というわけで、しばらくして正気に戻った皆と軽く自己紹介し、部の存続のため早速行動に移ったのだが……。

 

「もーっ、一体どこにあるのさ『G-Bible』!」

 

“いや、それより気にするところがあるよね!?“

 

 俺たちは、キヴォトス随一の科学力を持つこの学園をもってしても詳細の知れぬ機械がうじゃうじゃいる場所、ミレニアム郊外の遺跡にやってきていたのだった。




作者「ユウカのママみってなんかこう……リアリティがあるよね」
レイ「もしヴァル、ここに変質者がいまーす」

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