透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうもこんにちは、Hakone8510です。
 クリスマスが近づいてきていますが、みなさんご予定は埋まっていますでしょうか?私ですか?私は勿論ナイデス。

 さて、今回の主人公は理不尽にも吹き飛んでしまうようです。


ク◯ゲー漬けで言葉覚えさせるとか正気の沙汰じゃないって話。

 さて、素っ裸の少女を男含む四人で囲んでいるという、字面だけだと変態のそれにしか見えない状況になってから既に数分が経過。俺たちはどうしたものかと頭を悩ませているところだった。

 

「さっきから反応がないけど……この子、眠ってるのかな?」

 

「う〜ん、でもなんか眠っているというよりかは、なんというか……」

 

 モモイの言わんとしていることはなんとなく察しがついたが、憚られて、特に言及はしなかった。

 二人が彼女の身体のあちこちを調べていると、モモイが何かを見つけたように「あっ」と声をあげる。

 

「ミドリ、ここ……」

 

 モモイが指を刺したところにはアルファベットで「AL-IS」という文字が刻まれているように見える。だがよく目を凝らすと「I」の文字の頂点が屋根のように曲がっているのが分かる。

 

「なんて読むんだろ……あ、ある、いす……アリス?」

 

「ん?お姉ちゃん、ここよく見ると『AL-IS』じゃなくて『AL-1S』じゃない?」

 

「え?あ、本当だ。じゃあ本当になんて呼べば……」

 

「……二人とも、そろそろその子に何かしら着せてやってくれないか。先生がずっと顔面を手で覆い隠したままなんだが」

 

 サムズアップした右手を後ろの方へしきりに指さした先には、全力で大人としての責務を全うする先生の姿があった。ひとまずミドリが替えで持ってきたという下着を彼女に履かせ、上着を羽織らせてひとまず身体を隠した。

 すると……

 

ピピッ、ピピピピッ……

 

「ん?」

 

「な、何この音!?」

 

 服を着せる時かなり彼女の肌に接触したからか、電話の着信音のような音が部屋に響く。その音はどうも、()()()()()()()流れているように聞こえた。

 

『状態の変化及び接触許可対象を感知……休眠状態(スリープモード)を解除します』

 

 完全に脱力した状態から起き、さらに立ち上がって目を開く。空色に澄んだ瞳が日の光をたたえているが、どこか無機質な様相を呈している。

 ともかく彼女は今、完全に目覚めた。そして、合成音声じみた声で話し始めた。

 

「……状況を把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか」

 

「え、えっ?せ、説明?一体何の……」

 

 突然の質問に困惑するミドリ。

 

「本機の自我及び記憶情報が消失しており、現在データがない状態です。現在位置と時代情報の共有をお願いします」

 

 目の前の少女は終始無表情のまま情報を求めてくる。それでもなお呆然としたままのミドリをよそに、隣のモモイは今まで一緒にいた中で一番に興奮していた。

 

「本機……機械みたいだなとは思ったけど、本当にロボットだったの!?!?」

 

「ロボットの市民はキヴォトスでも見かけるけど……これだけ人と似たロボットはそういないんじゃ……ロールプレイって可能性も」

 

「いいじゃん!もしロープレでもこーゆー設定ってロマンがあるでしょ!?」

 

「いやまぁ……気持ちはわかるけど……」

 

 モモイのいうことには一理ある。機械少女っていう属性そのものが色々な意味でロマンがあるし、尚且つ今の彼女のように機械的に正確な譲歩を喋ってくれるとさらに良い。個人的に癖に刺さる*1

 

「レイはどう思う?ロボ少女とかアンドロイドとかの設定好き?」

 

 あっ、モモイが話題振ってくれた!

 自分の癖の話ができるこのチャンスは逃さないッ!えーとえーとっ

 

「……まぁ、そこそこ?」

 

「なんで疑問形?」

 

 できるわけがなかったよ。ヒイロ・ユイも言葉足らずな一面があったから、ある意味キャラは守ったと言える。だがここまで来ると流石に度が過ぎている。あんな親切なパスもらったのにオウンゴール決めに行くようなものじゃねぇか。

 もはやこのキャラ性を貫かないと生きていけないみたいな呪いにもかかっているのか?明日にでもお祓い行こっかな……。

 

「……先生、どうしましょう?」

 

“う〜ん、ここに放っていくわけにもいかないし……“

 

「……あっ」

 

 俺が会話のキャッチボールができなくて凹んでいる中、モモイが何かを思いついたように声を漏らす。

 

「三人共、聞いて……わたし、良いこと思いついちゃった♩」

 

「「?」」

 

「……はぁ」

 

 そう言って栗みたいな口からは到底想像できないほどに可愛くない笑い声を鳴らすモモイの顔は、世界征服を企み計略を巡らす魔王が如く、邪悪に満ちていた……*2

 

 

 

 数時間後、ゲーム開発部の部室にて……。

 特に何の収穫物もなく、俺たちは部室に戻ってきた。特に状況も好転していない、何も変わらない部室がそこにはあった……。

 

「?」

 

 唯一頭に?マークを浮かべ、きょとんと辺りを見回している機械少女を除けば。

 

「ねぇ、ちょっと!?この子を部室まで連れてきて、一体どうするの!?」

 

「ちょ、落ち着、いて……く、首が、絞まっているから……!」

 

 もう我慢あらなかったのか、ミドリはモモイの制服の襟を思い切り掴むと、襟元の部分が丁度モモイの首を締め上げる形となって襲ってきたのだ。いくらキヴォトス人とはいえ、そう耐え切れるものではないだろう。

 ひとまず某『◯ュラ◯ックパーク』の、小型恐竜二匹を手で諌める男のネットミーム画像ように、先生とともに2人を宥め、交戦を停止させる。

 

「し、仕方ないじゃん。そもそもあんなに怖いロボットが沢山いる場所においていくわけにもいかないでしょ!」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「……モグ、モグ」

 

 モモイがミドリに文句にも似た言葉を垂れるとほぼ同時に、隣から咀嚼音が聞こえてきた。二人が音のあった方を見やれば、メロンソーダ色で棒状のゲームコントローラーを口に咥えている機械少女の姿があった。

 それを見たミドリが、慌てて少女に駆け寄る。

 

「ああっ私のWeeリモコンを口に入れないで!ペッして!ペッて!」

 

「……やっぱり、放っておくわけにはいかないでしょ」

 

 うーん、完全に赤ちゃんだな。

 

「……で、モモイの言う『良いこと思いついた』というのは、何なんだ?」

 

「ああそうだった……とりあえずその前に名前を決めなきゃ。折角だし『アリス』って呼ぼうかな」

 

 すると少女は咥えていたリモコンを吐き出すと、こちらの方を向く。軟質素材性のカバーからその口にかけて、水の糸がつながっていた。

 

「……本機の名称、『アリス』。確認をお願いします。」

 

「ちょ、ちょっと待って!それお姉ちゃんが勝手に呼んだ奴じゃ……」

 

「どう、アリス?気に入った?」

 

「……」

 

 ミドリに甲斐甲斐しく口を拭かれながら、アリスと呼ばれた機械少女は目を輝かせる。

 

「肯定。本機、アリス……当機の名称は、アリスです」

 

 こうしてミレニアム、いやキヴォトスに、また新たな生徒が誕生したのである。

 

 

 

「よし、じゃ次のステップへ  

 

「おい、結局何をするのか聞いてないぞ」

 

「そうだよ!子猫を拾ってきたとかいうレベルじゃないんだからね!?」

 

 彼女もとうとう堪忍袋の尾が切れたのか、俺に続いてミドリが再びモモイに詰め寄る。

 

「まぁ二人とも落ち着きなって……そもそも、私たちが危険を冒してまで『G-Bible』を探してた理由はなんだったっけ?」

 

「それは……良いゲームを作って部活を廃部にさせないためでしょ?」

 

「一番大事なのはそう、ミレニアムプライスに入賞することだね。だけど、部活の維持のためにはもう1つ、部員の補充も大事でしょ?」

 

「そうだね……ってお姉ちゃん、まさか……!」

 

「ふふふ……そのまさかだよ」

 

 モモイは得意げな表情で腕を組んでフンッと鼻息を鳴らし、満足そうに笑みを浮かべるアリスのほうへ向き直って手を差し伸べた。

 

「アリス!私たち、ゲーム開発部の仲間になってよ!」

 

「?」

 

「本人意味わかってなさそうだけど……?」

 

「よし、じゃあ私はこの子のために学生証作ってくるから、お世話はよろしくねー!あ、言葉遣いも今のままだと不安だからそれもよろしく、それじゃ!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 と、こちらの同意も得ずに走り去ってしまった。

 わかっていたことだが、実際にこの身で現場を味わうと、結構行動力があるな……と一周回って感心するほどに呆然としていた。

 

「はぁ……まったく」

 

 彼女にとってはこれが日常茶飯事なのか、突飛なモモイの行動をため息一つで済ませるミドリ。ここまでくると俺がおかしいのかと思えてくるが、後ろで様子を見守っている先生も苦笑といった様子で安心した。

 

「確かに怪しまれないためにはロボっぽい口調をどうにかしたほうがいいかも……言語学習プログラムなんてあったかな……」

 

「……?」

 

 ミドリが手元のスマホで調べているとアリスがまた何かを見つけたのか、床に無造作に転がっている平べったいケースのようなものを手に取った。そこには派手派手しいカラーで「テイルズ・サガ・クロニクル」と記されている。

 前々から思ってたけど、いろいろ危なくないかこの名前?

 

「あ、それは私たちの作ったゲームだよ。まぁ、ネットでは酷評されちゃって『ク○ゲー○ブザ

○ヤー』にまでなっちゃったけどね……」

 

 そういってミドリが自嘲気味にソフトのカバーを見つめていると、なにかを思いついたのか再びアリスのほうへ顔を向ける。

 

「そうだ、折角だからこのゲームやってみない?『会話』しながら進めるから言葉の勉強になるかも……どうかな?」

 

「……」

 

 自分の中で言葉を飲み込みきれないかのように、アリスはしばらく口を引き結んでうつむいていた。

 

「ここまでの言動の意図……それを完璧には把握できません。しかし……」

 

 だが次に顔を上げた時、その表情には決意が見て取れた。

 

「肯定。アリスはゲームをします」

 

「ほ、本当!?ち、ちょっと待ってて、今セッティングするから!」

 

 本当にやってもらえると思っていなかったのか、半分驚き半分喜びの表情でいそいそと作業を始めた。

 その間座ったまま律儀にじっと待ち続けるアリスを見て何を思ったのか自分でも分からなかったが、俺は彼女の横に片膝を立てて座る。

 

「……」

 

「……」

 

 が、特段話題も持ち合わせていないので、しばし沈黙の時間が流れる。おそらく30秒ほどの出来事ではあったが、体感では何倍にも膨張され、永遠(とわ)のように長く感じた。

 

「ようし、準備できたよー」

 

 セッティングを終えたミドリがコントローラーをアリスに手渡すと、アリスを挟んで俺とは対岸の位置に腰を下ろす。どうやら横で見守りたいようだ。

 この世界ではもはやレトロを通り越してアンティークなブラウン管テレビに、真っ黒なベタを背景にタイトルと「GAME START」の文字が映し出される。

 

「では……アリス、ゲームを開始します」

 

 そして ぼうけんが はじまった!

 

~~~~~~

 

『Bボタンで武器を装備しましょう』

 

「Bボタン……これですね!」ポチッ

 

ドゴーン!!!

 

『GAME OVER』

 

「あー、そこはテキスト通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないんだよね」

 

「チュートリアルなのにこんな不親切なのか……」

 

「り、理解不能……」

 

 

 

『ここから先は、入国の証がなければ通さん!』

 

「進行不可……特定イベントの未回収……ですが一体どこにヒントが……」

 

「これヒントないんだよねー。お姉ちゃんが『人に聞いて分かる情報なんて、実はそれほど役に立たないんだよ!』っていうから……」

 

「なんで妙なところで現実的なんだ……」

 

 

 

『GAME OVER』 

 

『ふふふ、この魔王幹部ザコザコスライムを倒そうなど、百万年早い』

 

「攻略難易度の急上昇を確認。適正レベル計算中……計算結果、レベル50以上……???」

 

「色々とツッコミどころあるけど、さっきまでレベル30とかだったのに、いきなり跳ね上がり過ぎじゃないか?」

 

「ここら辺まで来ると戦闘も単調になってくるから、どうせなら一気に上げちゃおうって、お姉ちゃんが……」

 

「新技を導入するとかなかったのか……?」

 

「あとここら辺まで来ると納期が迫ってきてて……」

 

「事を急きすぎだろ」

 

~~~~~~

 

 そして、ゲーム開始から数時間後……。

 

「理解不能!理解不能!」

 

 アリス、バグっちゃった……。

*1
あくまでも性癖の話ではありません

*2
Fatarity……




作者「やったことのあるクソゲーってある?」
レイ「GBA版の遊◯王……あれは苦行みたいなもんだった……」

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