透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
どうも、二ヶ月ぶりのHakone8510です。いやもう本当に大変お待たせしました、ヤル気が湧かなくってェ……。
皆さん、GQuuuuuuX(ジークアクス)もう見ましたでしょうか。いやぁ冗談抜きで凄かった。ここでのネタバレは控えますが、とりあえずマチュのマチュ(意味深)が5倍以上のエネルギーゲインを持っていたと言うことだけはお伝えさせていただきます(オイ)。
さて、今回の主人公は、勇者誕生の瞬間を目撃するようです。
その後アリスは根気強くクs、じゃなくて高難易度ゲームに挑み続けた。日が地平線に沈み、門限で帰らなければならなくなって寮に帰る道すがら部室を何度も振り返ったが、ゲーム開発部の部室の明かりはずっと点いたままだった。
翌日の早朝、寝落ちしてしまっていないかと部室に様子を見にいくと、扉の奥からかすかに打鍵音に似た音が聞こえてくる。
まさかな……?
「あっ、レイ!」
扉を開けた瞬間そう言って出迎えてくれたのは、昨日と全く同じ体勢でコントローラーを握るアリスであった。多少厨二チックではあるが昨日のカタコトから一変、ずいぶん受け答えがスムーズにできている。一方他の部員はというとユズの姿は見えず(おそらくロッカーにいると思われる)、モモイとミドリはヨダレを垂らしながらアリスの傍らで寝落ちをかましていた。
俺は彼女たちを起こさぬようそっと腰を下ろし、
(徹夜ゲームは俺も何度かやったことがあるが……こんなに平然としていられるものなのか?)
「で、どこまで進んだ?」
「丁度ボスの前まで来ました。このボスを倒せばゲームクリア……の筈です」
「確信ないんだな……」
まぁモモイによるゲームプロデュースという時点でお察しではあったけどネ……。ク◯ゲーオブザイヤーを受賞するのも納得と言える。
アナログテレビの画面に焦点を戻すと、アリスの操作する勇者が玉座に座るラスボスと
「それでは……
アリス、行きます!」
そう言って少し強めにAボタンを押すアリスの
それから約一時間後。
流石に才羽姉妹も起きる頃、画面には黒無地を背景にエンドロールが流れていた。
「すごーい!まさか10時間ちょっとでクリアできるとは思わなかったよー!」
「フ……もっと褒め称えるが良い……」
「大分ゲームに語彙が寄っちゃったけど……ま、昨日の機械口調よりはマシかぁ」
お互いの妙な緊張も大分解けたようで、和気藹々と会話できている。これなら、ミレニアムの生徒として紛れても目立ちはするだろうが、素性がバレることはないだろう。
「あれ、そういえばレイはなんでいるの?」
「ああ、今回はアリスに渡すものがあってな」
そう言って俺が懐から取り出したのは、輪っか状の紐に括り付けられた小さなプラカード。その中心には見慣れたミレニアムの校章がくっきり刻まれている。
「お!頼んでたのができたんだね!」
「ハレから連絡があってな。『早めに作り終わってメッセージ送ったんだけど深夜だったからか返信なくて、代わりに届けてくれない?』だそうだ」
「ハレ……ってヴェリタスの?お姉ちゃん、まさか……」
「し、仕方ないじゃん。入部させるにはまずミレニアムの生徒じゃないとダメなんだから!」
ヴェリタス、それはミレニアムの誇るハッカー集団。その名と手腕は有名で、スマホのパスワードから超大手銀行のセキュリティシステムでさえ容易に侵入できるという。
彼女たちにかかれば、学校のサーバーデータにアクセスして、学籍情報を改変するなどまさに朝飯前なのだろう。たった一夜でその作業を終わらせ、今俺の手にある
まぁセミナーにほぼ全ての学内情報を暗記している不安要素がいるが……口を出すのも野暮ってもんだろう。
「とにかく、これでアリスの身分は
「……武器?」
「キヴォトスの生徒は皆銃を持っているんだ。だから、アリスも武器を見繕ってもらおう」
「となると手っ取り早いのは 」
「エンジニア部、だろうな。実際オレの武器も、彼女達がつくってくれたものだ」
「よし、じゃあ早速エンジニア部へ、しゅっぱーつ!」
「ということで、こいつに合う武器を見つけてやって欲しいんだ」
「ずいぶん唐突だね」
ウタハはため息を吐きながらそう言った。
まぁ事前に連絡を入れていないので無理もない。だがそんな様子でも、彼女はどこか楽しそうだった。
「まぁいいだろう、物置きに試作品が色々置いてあるから、好きなのを持っていくといい。ヒビキ、案内してあげてくれ」
「りょーかい。じゃあ、私が見繕ってあげるよ」
そう言うとヒビキはアリスと才羽姉妹を連れて物置き(と言っても、非常に整頓されていて一種の倉庫のようだったが)へと歩いて行った。ちなみにユズはまた留守番である。
……なんか、後ろ姿が親鳥についていくアヒルの子みたいに見えるのは俺だけだろうか。
「おや、君はついて行かないのかい?」
「オレは別に武器に詳しいわけじゃないからな。第一オレが使っている武器が参考にならなさすぎて、アドバイスが難しい」
「そういえばそうだったね。まったく、そんな特殊な武器を持たせるなんて、作った奴の顔が見てみたい」
「ツッコミ待ちか?」
再度物置の方へ視線を向ければ、ヒビキがプラスチック製のハンドガン片手に何かを熱弁して二人を呆れさせている。だが何度もここに通っているからなのか、聞くのには慣れているようだ。
アリスは早々に興味が尽きたのか、コトリに案内されながら別のものを見ている。ふと何かが目に止まったようで、小走りでその方へと向かっていった。
「む、あっちには 」
思い当たることがあったのかウタハがアリスの向かった先へ歩き出し、俺もそれに続く。
アリスが輝いた瞳を向けた先には、人の身長ほどはあろうかと思われる巨大な物体があった。
「あれコトリちゃんだ、このでっかいの何?……見たところ『大砲』のようだけど」
ようやくヒビキから解放されたミドリとモモイも集まって、大量のコードに繋がれた大砲と思われる機械を見つめる。
「フッフッフ……よくぞ聞いてくれました。これはエンジニア部下半期の予算、そのうちの約20%近くをかけて建造された 」
「……ねぇ、今さらっと怖いこと言わなかった?」
「……お姉ちゃん、ちょっと黙ってて」
「エンジニア部会心の一作、宇宙戦艦搭載用レールガン……その名も『光の剣:スーパーノヴァ』!」
「……!」
コトリがその名を口にしたとほぼ同時に、横のアリスの目がより一層輝くのを俺は見逃さなかった。無理もない、なぜなら昨日一夜漬けまでしてやり込んだゲームは王道ファンタジー……言うなれば、勇者が魔王を倒すような物語だ。「光」と「剣」というキーワードを聞いて心惹かれるのは至極当然といえよう。
これについて何か説明は?とでも言うように、俺はウタハに視線を送ると、やれやれといった調子で答えてくれた。
「今年の我々の目標として、宇宙戦艦の建造というのがあってね。その第一段階としてレールガン、もといビーム砲から作って行こうと考えたのだが……」
「さっきコトリが言ったように既に来期の二割くらいの予算を注ぎ込んじゃったからね。ここからモビルスーツを作るならなんとかなるけど、戦艦ともなればこの何百倍の予算がいるのかって話で……」
「途中で頓挫してしまい、このレールガンだけが残ったというわけです……」
「「「でも仕方がないじゃないか、浪漫なのだから!!!」」」
「ええ……」
これをユウカが知ったらと思うと……いかん、寒気がしてきた。
「ロマン……」
「あ、アリスちゃん?」
「これ……これが欲しいです!」
「グフッ!?」
まるで親におもちゃをねだる子供のように、巨大なレールガンを指差して満面の笑みをうかべるアリス。そこから放たれる純然たる光のオーラに、心が何かにやられそうになる。そうか、これが母性か……。*1
一方、ウタハはどこか迷いながらそれに答える。
「うーむ、欲しいといってくれるのは大変ありがたいのだが……一つ懸念があってだね」
「懸念?好きなの持ってってもいいっていったじゃん!」
いつも通りモモイが文句を言うが、ウタハは態度を変えはしない。
「それはもちろん守るとも。だが問題なのは見ただけでも分かるとおり、こいつはその大きさに見合う重量があるんだ。コトリ」
「了解です!実はコチラ、基本重量だけでも140kg以上!さらに光学機器とバッテリーを搭載した場合、発射時の反動は200kgを超えます!」
「言うなれば、自動車が正面からぶつかって来るような衝撃だ。元々戦艦に搭載する前提だから、威力は凄まじいが人が到底扱えるものではないのだよ……ゆえに、欲しいといってくれたのは嬉しいが 」
だがウタハが申し訳なさそうにするのとは裏腹に、アリスは再び笑顔を見せていた。
「なるほど……汝の言葉に偽りはないと誓うか?」
「ん?それはどういう……」
ウタハの言葉を半ば無視して、アリスは横たえられたレールガンに近づき、その端を両手で掴む。
「其の剣を抜くもの、やがて……」
「テイルズ・サガ・クロニクル」で登場する故国の王が放つ宣言と共に、彼女の腕に力が込められる。
「闇を滅ぼす勇者となるであろう!」
台座から聖剣を引き抜くがごとく、彼女の宣言と共に「光の剣」はゆっくりと持ち上げられたのである。それはまさに、己の剣を手にした勇者の姿そのものであった。
「嘘、信じられない……」
誰もがその光景に絶句する中、ヒビキが思わず言葉を溢す。
そんな中、アリスはついに手に入れた自分の武器に興味深々のようだ。持ち上げた武器の至る所を見回している。
「えっと、このボタンは……」
「あ、ちょっとそこは 」
いち早く反応したヒビキの制止も虚しく、アリスは下部のトリガーと思われる部分を押してしまった。その瞬間、
ドカアアァァァァン!!!
銃口から光の束が一気に放出され、3階あるエンジニア部部室の天井を全てぶち抜いたのである。なるほど、この威力であればMSですら破壊は容易であろう、艦載兵器として申し分ない。
「フフフフフ……あはははは!」
またもや皆唖然とする中、ウタハが肩を揺らしながら笑い出した。皆の注目が彼女に集まる。
「いいだろう、持っていくといい。今からそれが君の武器だ」
「ちょ、ウタハ先輩これ持ってって大丈夫なんですか!?」
ミドリが心配そうにいうが、ウタハは心底嬉しそうに笑っている。
「構わない、どうせ彼女以外は使えないだろうしね……ただ確かめたいことがあってね」
「確かめたいこと?」
「その『資格』があるのか、だよ」
すると不意に肩を掴まれ、グイッとウタハの方へと引き寄せられる。なんだよ急に。
「彼女が途中入学した生徒だと言うことは、君たちも知っているだろう?」
「え、うん。なかなかないことだから凄いなーって思うけど、それがどうかした?」
「では、彼女がなぜ途中入学したのか……いや、キヴォトス三大校と名高いミレニアムに
「え?」
ウタハのその言葉に何かを感じ取ったのか、モモイが心配を帯びた表情を浮かべる。
こいつ、まさか……。
「今から君たちには協力して、この超実力派エリートである暁月レイと模擬戦を行ってもらう」
「「ええーーーっ!?」」
「おい、オレは了承するなんて言ってないぞ」
恨めしさも込めてウタハを睨むが、流石マイスターと言ったところか全く意に介さず続ける。
「丁度いい機会だから、『フラガラッハ』の実戦も取ろうと思ってね。君も最近任務が少ないと聞くし、鈍っているんじゃないのか?」
「……」
なんで彼女が人の任務状況を把握しているのかは置いておいて、ウタハの指摘は紛れもない事実だ。VRシュミレーション室を借りて毎日欠かさず訓練しているとはいえ、最近は実践はおろか対人での戦闘訓練も満足にできていない状況だ。ゆえにこの提案はオレにとって僥倖であることは間違いない。
だが……
「ふむ、彼女たち相手に本気は出せない、という顔をしているな」
「……」
マイスターのくせに読心術でも収めているのか、こいつは。
「では発想を変えよう。今君は、自分の力を持て余していると見える。ならこう考えればいい。今回の模擬戦は、自分の力をコントロールする訓練だと」
なるほど、それであれば是非もない。
「……分かった。模擬戦のアレ、借りるぞ」
「アレ?ああ、もぎくんのことか。訓練場にあるから」
「と言うことだ。三人とも、ついてこい」
いかにもヒェ〜と言いたげな顔をした才羽姉妹と、キョトンとしたアリスをにそう言うと、俺たちはウタハと共に併設されている訓練場へと向かった。
「ほ、本当にやるんですか?レイさんと、わたしたちで?」
「あのウタハのことだ、簡単には引き下がってくれないだろう。それにあいつの言うとおり、久々に人と
自分の武器たちの状態を軽く見つつ俺は、ミドリの言葉にそう返すとモモイとミドリは顔を強張らせる。
「安心しろ、本気は出さない」
「ぜ、全然安心出来なんだけど……」
「そうか?君たちならそんなに心配はいらないと思うが」
それに、だ。
アリス……やがて物語の根幹を担うと記憶している彼女の力は未知数だ。何がきっかけでそのタガが外れるかも分からない。
その危険性に警戒しつつ、一対多数の戦闘を想定した訓練……両方やらなくちゃあいけないってのが、特異現象捜査部の辛い所……いや語感悪いなこれ。
ふと横を見ると、ウタハが準備完了のグーサインをこちらに示しているところだった。
「では始めようか……ああその前に一つ」
「?」
「オレは本気は出さないと言ったが……手加減はしないぞ」
「「「!!!」」」
ビーーーーッ!!!
両者が一斉に武器を構えると同時に、ゴング代わりの電子ホイッスルが、朝方の訓練室に鳴り響いた。
作者「長らくお休みをいただきましたので、今週から頑張らせていただきます」
レイ「オレもきちんと見張っといてやるからな❤︎」
作者「え?」
評価・感想お待ちしております。