透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、今年始まってもうすぐ1年の4分の1が過ぎたと言うことに恐怖しているHakone8510です。
 えっもう新年度?早くない?まだ2月の中旬くらいだと思ってたよ……時間の流れは早いなあ……。

 さて、今回の主人公は、スニーキングミッションを開始するようです。


ステルスゲーはいつまで経っても慣れないって話。

 ステルスゲーム。別名『スパイアクション』とも称されるそれは、敵から隠れることを主軸にしたゲームジャンルである。敵に見つからず、痕跡も残さず、誰にも気付かれることなく目標を達成するというのが基本的なシステムだ。

 勿論のこと、本職の工作員に関わる機会というのは一般人には滅多にないため、スパイや潜入任務に対して間違った知識を持っていることが多く、その大半はそういったゲームやアニメに引っ張られている。俺も前世では何でもない学生だったので、その大半の一人であった。

 だが……

 

「ひゃっはーっ!!!」

 

「「……」」

 

『結局こうなるのか……』

 

 テンション爆発しもはや誰にも止められないアルティメットネル先輩。何も言葉が出てこない一年生二人組。そして通信越しにため息まじりの嘆きを漏らすカリン。

 どうしてこんなことになってしまったのか。話は約一時間前にまで遡る……。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 学園敷地から車に揺られること約30分、ようやく目標となる建物周辺に到着。早速ネル、エイミ、俺の三人とカリンで別れた後建物に接近した俺たちは、人一人が通るほどの大きさがある通気孔を発見。難なく侵入に成功した。その後建物の館内表示などを見て大まかな構造を把握しつつ、事前に用意された麻酔弾を駆使して建物内の敵を次々と排除していったのである。

 この時までは今まで想像していたスパイのイメージに合致していた。だが、十数分程度で中層階まで進んだあたりで、ハプニングに見舞われることになる。

 

ビーッ、ビーッ!!!

 

 突然、備え付けられたであろうブザーが甲高く鳴ったのだ。

 当然ながらネルはおろか、エイミも何かトラップに引っかかった様子はない。もしかして俺かとも思ったが、二人の驚いた様子からどうやら俺でもないらしい。

 とすれば他の侵入者か?とカリンに急ぎ確認を取ったが、『周辺から確認していた限りではいない』そうだ。

 

「つまり、何らかの方法でこちらの存在がバレた?」

 

「でも全員、罠に引っかかった覚えはない……これは一体どういうことだ」

 

 未だブザーがなり続ける中混乱する二人をよそに、ネルがように大きい舌打ちを鳴らした。

 

「どうやら随分警戒してたみてーだな」

 

「……どういうことだ」

 

「さっきまで中にいた団員っぽい奴らを眠らせながら進んできただろ?」

 

「うん。ってまさか……」

 

「大方、定期的に本部に連絡するよう徹底してたんだろ。素人と思ってアタシも油断してたが、コイツは相当……」

 

『三人ともッ、敵が上がってきている。急いで上へ!』

 

 何かを言いかけるネルであったが、それはカリンの通信によって打ち切られ、同時に俺たちのいる廊下に大量の雑兵がなだれ込んできた。

 

「チッ!」

 

 いの一番に反応したのはネルだった。1秒にも満たない間に構えをとると、彼女の愛銃(ツイン・ドラゴン)が火を吹き敵を焼き尽くしていく。

 それに遅れて反応するかのように、俺たちも武器を構え応戦する。

 

「ひゃっはーッ!今日の獲物がノコノコ出てきやがったぜーッ!!!」

 

()()の御前に、侵入者共の血肉を捧げよッ  !」

 

 世紀末のヤンキーかな?

 にしても「社長」とな?今の所社長と言われて思い浮かぶネームドは便利屋のアル社長かカイザーのプレジデント*1ぐらいだが、二人ともこんなところにいるわけないしな……いや前者の方に関してはなきにもしもあらずといった感じだが。

 戦闘を続けながら次の階へ向かう階段へ移動していると、その方からも大人数が階段を降りてこちらに銃を構える。

 

「クソッ、囲まれたか……!」

 

 あっという間に、ネルが事前情報で危惧していた通り、挟み撃ちの状態になってしまった。

 

「ヘッ、噂のC&Cもこんなもんか」

 

「しかも、あのダブルオー(約束された勝利)と来たぜェ?大したことねェな」

 

 ぎゃはははは、という笑い声がオフィスビルの廊下にこだまする。その度に、後ろから僅かに覗かせるネルの額に血管のような筋が浮かび上がってくるのが見えた。

 

(ま、まずい……ユウカやノアも大抵怖いが、彼女のは特別ッ……!)

 

「……ンだって?よく聞こえねェな」

 

 既に声にドスが効いているが、伝わらなかったのか先ほどまで笑っていた者たちの一人が呑気に答える。

 

「ああ?そりゃあ腑抜けちまったアンタなんかより、私たちの方がダブルオーに相応しいってこt……」

 

ダダダダァン!!!

 

 彼女が最後まで言い終えることはなかった。あまりにも突然の銃声に、この場にいる全員の目が見開かれる。それすなわち、彼女以外全ての人間が、彼女が手をぶら下げた状態から右手を上げ、照準を定めトリガーを引く……という一連の動作を認識できなかったからに他ならない。

 チンピラ共一人一人の強さは大したことはないので反応できないのもわかるが、俺とエイミ……特に後者は俺よりも遥かに実践経験を積んでいて、何より模擬戦で拳銃とはいえ弾を避けまくっていた実績もある。

 にも関わらず、それほどの者でも追いつけない圧倒的反射速度!!!

 

「てめぇら全員()()()なら覚悟しな……生憎こちとらァ……」

 

 俯いていたネルの顔が上がる。その顔を一言で表現するならまさに、そうまさに……。

 

「他人に譲る気はさらさらねェがなァ!!!」

 

 紛れもなく、般若の形相であった。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 あとは冒頭の通りである。ネルは数的不利をものともせず敵を薙ぎ倒していき、もはや潜入任務とはなんなのか自分に問いかけたいほどのゴリ押しで階を進んで行った。カリンからの支援もあって制圧は順調に進んでいき、ついに最上階手前の階段まで辿り着いた。ここまでくると流石にネルも怒りが収まってきたのか、眉間の皺の数は少なくなっていた……それでもまだ怒っているようだが。

 だがここに来るまでに一つ、気になることがある。

 

「少しいいか?」

 

「あン?なんだ」

 

「気づいているかもしれないが、さっきの包囲網を(くぐ)り抜けたあたりから極端に敵が減ってきている。これは……」

 

 続きを言い始める前にネルの目線に止められ、俯く彼女の横顔を俺は僅かに覗き込む。

 

「お前ェの言わんとしてることは分かった」

 

「……ああ」

 

「頭ァ冷えたわ。あんがとな」

 

 うわぁッ突然のイケメンにっこりフェイスッッッッッ

 心臓に悪いわこの低身長イケメン先輩め!!!前世夢女子じゃなかった俺ですら惚れかけたわ、いやーまじアブねー。ひーひー、ふー。

 

「要するに、ボスのいるこの上に戦力を集めてるんじゃねーかって話だろ?その想定が正しいなら、多分アタシがブチ切れた瞬間に最上階に撤退させたんだろう。だとしたら、その社長って言われてたやつは相当頭が切れるってことだ」

 

 あ、一応あいつらの言葉は聞こえてたのネ。

 ネルの言う通りあの状況を見て即時撤退を選べる判断力とそれを即座に実行させる統率能力(リーダーシップ)は、確かに組織の上に立つ者として十二分な格を有している。そんなヤツと残る敵を片付け、尚且つ証拠も探さなくてはならないと考えると、なんとも骨が折れるというか頭が痛いというか……。

 

「ま、今ここであれこれ考えてもしょうがねェ。一層注意しながら進むぞ」

 

「了解」

 

「カリン先輩も、サポートよろしく」

 

『分かった、できる限り援護する。そっちも気をつけろよ』

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

 ネルの合図とともに俺たちは動き出し、ネルは前を、俺は左右を、エイミは後ろを警戒しながら目の前にある階段を一段ずつ慎重に登っていく。

 敵に加えてトラップもてんこ盛りだったこの建物だが、この最後の階段には見たところ仕掛けられている様子はない。勿論こちらが認識できていない罠があるのかもしれないが、音の反響が不自然である様子も床が妙に柔らかいことも微かな光に反射する糸もない。それがかえって不気味で、こちらの警戒心をさらに刺激していた。

 忍足でも数分とかからないたった十数段を登り切り、建物内で唯一窓のない両開きの扉の前までたどり着いた。近づいたことで気がついたが、戦闘経験が二人よりも劣る俺であっても、扉の先に何十人という人の気配をひしひしと感じた。おそらくあちらはこの後に及んで気配など隠さなくてもこちらに勝てるという自信と算段があるのだろう。

 すると次の瞬間、漂っていた空気を吹き飛ばすかのように、ネルは苛立たしげに扉を蹴破ったのである。

 

「頼も  ッ!!!」

 

 彼女の脚力にドアの耐久力が敵う筈もなく、衝撃で湾曲した扉が部屋の中央あたりまで吹っ飛んで行った。うわ〜豪快〜!(小並感)

 いきなりの出来事に脳が追いついていないのか、気配のしていた約三十人ほどのチンピラは銃を構えかかったような姿勢で停まっており、全員が再び凍りつく。

 数秒後、沈黙した空気を打ち破ったのは、丁度明かりついておらずよく見えない部屋の最奥の玉座に腰かける者の方だった。

 

「ようこそ侵入者諸君。我々ながらの歓待、いかがだったかな?」

 

「ああ?……まー、チンピラにしちゃあ悪くなかったんじゃねェの?」

 

「それは結構、お気に召して頂いたようで何よりだ」

 

 女というには肩の張った、男というには独特のとっかかりがなくそれでいて色気のある声。その主は優雅な動作でゆったりと立ち上がると、羽織ったコートを翻し照明のさす方へと歩みを進める。

 

「だが今宵の宴はこれからだ。この程度で満足してもらっては、我らがガーデン・オブ・ガーベラの名に傷をつけることになる」

 

 徐々にその体から影が取り除かれていき、ついにその姿が顕になる。

 ウルフカットのブロンドヘアーに(あお)の瞳、そして彼の全身を包む黒に赤い裏地で見たこともないスタイルのスーツ。立ち振る舞いやその姿だけでは完全に男性だが、その声と頭に浮かぶヘイローが()()()()()()()裏付ける決定的な証拠であった。

 

「名乗り遅れて申し訳ない。私の名前は奉天テウ……()()代行会社『ガーデン・オブ・ガーベラ』の代表取締役社長だ」

 

 そう言うと目の前の男装の麗人は、指先まで丁寧な姿勢でこちらに会釈した。

 またもや聞いたことのない名前だ。俺の記憶している生徒の中で、こういうタイプはあまりいなかったから新鮮だ。

 

「かような辺境にお嬢様方三人とは……してどのようなご用件で?」

 

「ハッ、なにボケたようなマネしてんだ。アタシたちの素性も目的も、とっくに知ってんだろ?ま、どっちにしろ教えてやるつもりなんざ微塵もねーがな」

 

「おやおや、これは失敬。では重ねて失礼ながら諸君にお願いを一つ……ここはどうか手を引いてはいただけないだろうか」

 

 ん?突然の提案だな。

 

「あ?どーゆーことだ?」

 

「今この状況は君たちにとってあまりにも分が悪い。この人数差、そして私という圧倒的な存在……これを目の前にして無事に帰った者は一人としていなかった……この意味がわかるか?」

 

「……」

 

「つまり、これは君たちに対する温情なのだよ。実力と未来のある君たちだからこそ、私はその未来を想って……」

 

「……ごちゃごちゃうるせーな」

 

 再びネルの声に怒りが宿る。だが今度は激しく燃え盛る炎のような、激情的怒りではない。静かで底知れぬ、だが確かに沸々と湧き上がる静寂の怒りだ。だが激しくないが故に、逆にその怒りの度はいつもより大きいように感じた。

 

「アタシが舐められるのはまだいい。この身長と体格で煽られることなんざ、いくらでもあったからな」

 

 彼女がテウの方へ歩き出す。ギリッという音の方を見やれば、銃を握る彼女の手の甲に血管が浮かび上がっていた。

 

「だがこいつらを……アタシの後輩を下に見るなら話は別だ。だから今、アタシの中でテメェらをぶっ潰すことが決定した!!!」

 

「……オレも賛成だ。ここまで来て引き返すなんて、都合が良すぎる」

 

「任務は任務。わざわざ変更する必要はない」

 

 三人とも、既に心は決まっている。

 

「どうやら、交渉は決裂したようだ……」

 

 テウはそう言うと、腰に背負った細身の銃を手に取る。なんとも不思議な形をした、珍しい型式の武器だ。

 

「ではこれより、開演といこう  なんとも救いようのないTragedy(悲劇)を!!!」

*1
原作における最終編にて登場するカイザー社のトップ。何かと先生方のヘイトを買いがち




レイ「そういえばなんでステルスゲーム苦手なんだ?」
作者「スカウォの雫集め……」
レイ「あっ」

 皆さんのゲームのトラウマはなんでしょうか?ある方は感想欄にコメントをぜひ。評価もしてくださると嬉しいです。
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