透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

37 / 67
 !注意!
 今回のお話は原作既存のキャラクターまたは組織の歴史改変・独自解釈が含まれます。改変対象は以下のとおりです。
 ・白石ウタハ
 ・エンジニア部
 苦手な方はブラウザバックすることを推奨いたします。

 どうも、Hakone8510です。ついに4月を迎え、新年度を迎えましたがいかがお過ごしでしょうか。
 ついにSwitch2の情報が出ましたね。新しい機能と様々なソフトが発表されましたが、特に何の情報が気になりましたか?いつかガンダム関連の情報も出ないかな……。
 加えて、『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』30周年おめでとうございます!いきなりですけどFTアニメ化ください(切望)。

 さて、今回の主人公は、記憶と過去について考えるようです。


記憶と過去と因縁の話。

 爆炎と爆煙が引いた頃、そこに立っていたのは既に人の形を失ったテウの姿であった。そして次に天井と壁が吹き飛んだ周囲が目につき、周りを囲むビル群が丸見えになってしまっていた。

 

『何だ、何が起こった!?』

 

「敵が急に巨大化した……オレたちも何が起こっているのか……」

 

 カリンの通信が再び入ってきて、すぐさま何か返そうと言葉を紡ぐ。だがその途中で、化け物と化したテウがこちらへ一歩ずつこちらに近づいてきた。

 

「まずい、こっちに来るよ!」

 

「もはや証拠もクソも無ェ、このまま倒し切るぞ!カリン、引き続き援護を頼む!!!」

 

 どんどん加速して近づいてくる巨体に向かってネルが叫ぶ。そのわずか約1秒後、猛々しく太く発達した腕が振り下ろされた。全員がそれに反応して即座に避けると、その力の赴くままに拳が床に叩きつけられ、衝撃でフロアの床がごっそり全部崩れ落ちていく。

 すぐさま抜刀しながら着地場所を見つけ臨戦体制に入ると、その化け物は傷ひとつ無いままにこちらを振り向いていた。俺の横にはエイミ、巨体を挟んで向こう側にはネルがいる。

 すぐ隣のエイミはその経験から身体はすぐに反応できたものの、思考がまだ追いついていないというか、納得がいっていないような顔をしていた。

 

「あれは一体どういう変化なの……!?」

 

「オレにも分からん。おそらく幻覚を生み出す能力は彼女のものだったんだろうが、それが強化された結果がこれなのか?にしては、方向性が違いすぎるような気もするが……」

 

 もはや精神攻撃とは対極に位置するような身体強化で、真っ先に思い浮かんだのは◯ーベルシリーズのハ◯ク。もはやそれが思い浮かぶ時点で相当の変化なのだが、

 それにあの注射器()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「おい、チンタラ話し合ってる場合か!!!」

 

 ネルの怒号が飛んできた瞬間、先ほど床を破壊したゴツい腕が今度は横薙ぎで迫ってきた。俺たち二人は直上に飛び上がってそれを避けると、牽制のためハンドガンで数発巨体に撃ち込む。だが神秘というよりは身体の構造そのものが変わったからなのか、ハンドガンの弾とはいえ身体に着弾した瞬間傷どころか次々と弾丸を弾いていく。

 

(もはや進化というよりは別の生物に成り変わったという方が正しいような気がしてきたな……)

 

「ならばッ」

 

 フラガラッハのチャンネルを「振動」に切り替え、飛び上がり後の自由落下を利用してかの頭部目掛け剣をまっすぐ振り下ろす。するとあちらも横に振り切った腕をすぐに頭の上まで持ってきてガードし、刃とぶつかって「キィン」という金属音が響くと、その衝撃そのままに跳ね返されてしまった。

 

「何ッ!?」

 

 デフォルトでゴリアテ(アイザー製のデカいロボ)の装甲すら容易く真っ二つにできるほどの切れ味を持つフラガラッハ、そこからさらに切断力を強化した「振動」モードでも切れるどころか弾かれただと!?

 まずい、奴の腕がまたこちらに迫ってきた。このままじゃ追撃を喰らう……!

 

ドキュウゥゥゥウン!!!

 

 その瞬間、こちらに拳を振りかぶっていたテウの頭部が、真横から飛んできた弾丸に当たって衝撃で変な方向へ曲がった。

 

『このデカブツめ……容赦はしないぞ!』

 

「カリン先輩、また助けられたな」

 

 彼女のおかげで隙ができ、何とか安全に着地することができた。

 だが現状は苦しいままである。特に俺は持っている武器のうち二つを試してどちらも効かなかったため、今は役に立てない可能性が高い。だが()()()を今すぐに使ってしまえば、関係の無いビルや人を巻き込みかねない。

 

「一体どうすれば……」

 

『おや、お困りかね?』

 

 すると、誰かが通信に割り込んできたである。この声は……。

 

「ウタハ……どうしてここに」

 

『カリンの要請を受けてね。いつもの二人もいるよ』

 

『エンジニア部!』

 

『参上、です!!!』

 

 比較的低めの声とダウナーな声、そして元気いっぱいな声が入ってきて一気に通信がうるさくなる。だがそんなの関係なしに化け物は俺たちに襲いかかってくる。その攻撃を難なくかわしながらネルが無線機に向かって怒鳴った。

 

「うるせぇ!やるんならとっととしやがれ!!」

 

『フフフ、こういうのは勿体ぶるのが雰囲気というものだよ。まぁそこまで言うならとりあえず()()してしまおうか』

 

 ん?今コイツ発射って言ったか?

 慌てて周囲を見回すと、カリンの隣に新たに三人の人影を見つけた。そしてその傍には、いかにも発射台らしき装置にミサイルの形状をしたものが装填されているところまで見えた。

 

(あっ)

 

『三人とも、即時その場から離れることをお勧めしよう』

 

「は?」

 

「え?」

 

 二人が呆けている間にぬるっと二人に合流。目の前に立って無言でエンジニア部のいる方向を指差すと、お二人ともようやく理解したようでネルは呆れの極みのような、エイミは「またいつもの……」とでも言いたげな表情をしていた。

 するとそのミサイルの尾に光が灯り、煙が上がり始めた。それを見るや否や、ネルが軽々と俺たち二人を横に抱えて持ち上げる。

 

「うわッ」

 

「ネル先輩!?」

 

 だが俺たちの言葉に耳を貸すことも、それに応えることもせず、そのままビルの外へと走っていく。

 

「ちょっと、それは  

 

「いくら何でも  

 

 彼女の突然の行動に困惑する俺たち。だが困惑も一瞬で消え去り、全てを悟り、理解し、今日一番の青い顔を浮かべるしかない俺たちをよそに、ネルは今日一番に喜びのこもった笑顔を浮かべて  

 

「ひゃっほーーーう!!!」

 

 大きくジャンプして、ビルから飛び降りたのだ!

 

「ぎゃああああァァァァぁぁぁぁアアアア!?!?」

 

(ホントに何考えてんだこの人おおおおォォォォ!?!?)

 

 いくら俺たちに神秘が宿っていて、常人(≒先生)よりも高い身体能力が備わってるとはいえこの高さから飛び降りたら普通に死ぬだろうし、だからといって別に飛べるわけでも無いのに紐なし(誇張抜き)バンジー敢行するなんてイカれてんのか!?急いで脱出しなきゃいけないにしたって絶対もっと別の方法あったって!だいたいあのまxt……

 そんな感じで俺の脳内でぐるぐると文言が回っている、この間約1秒未満。そして「あのマッドマイスターも自分で雰囲気とか言っておいてこっちのタイミングも知らないで……」ともはや文句と化した思考がウタハに飛び火しようというまさにその瞬間、

 

ドカアアアアァァァァアアアアン!!!

 

 ビルの頂上にも火がついたようで、盛大な光と音、そして衝撃波を伴って爆心から大分離れたこちらにもそれが伝わってきた。

 その間にネルはビルの壁面を踏んで別のビルの壁へと次々に飛び移りながら、徐々に落下高度を下げていく。そして地面に着地しようという頃には落下速度は大分落ちていて、安全に着地に成功した。

 ようやく彼女の腕ロックが解除されると俺とエイミは耐えきれず、息切れしながら床でへたり込んだ。ほんの僅かに開いた瞼ごしに遠くを見上げると、遠くでひとりでに崩れていく先ほどのビルが見えた。どうやら他のビルへの被害はなさそうで安心した……エンジニア部が上手く調整したのだろう。

 

「どうよ、高層ビルから飛び降りていく感覚は。中々悪くなかっただろ?」

 

「はぁ、はぁ、もう二度と、御免被る……」

 

「おいおい、こんなんでへばってるようじゃ、エージェントとしてやってけねーぞ?」

 

 だめだ……やっぱり俺たちとは感覚が全然ズレてやがる……。

 というか、エージェントにいろんなもの求めすぎじゃないか?ってか俺たちエージェントっぽい部活だけど、厳密にはエージェントじゃねぇし……。

 

『おーい、聞こえるかそこの三人』

 

 そんな会話を交わしていると、ウタハからの入電だ。

 

『さっきのビルにヘリ呼んでるから、君たちも早く来てくれー』

 

「それお前たちが乗ってきたやつだろ?オレたちは乗ってきた車で帰るから……」

 

『このヘリは案外中が広くてね、私たちと君たち四人乗せても十二分くらいの余裕がある。から遠慮する必要はないよ』

 

「だが……」

 

『……それに、いくつか君たちに話しておきたいこともあるしね』

 

「……?」

 

『まぁそれはいい、とりあえず早く登ってきてくれると助かるよ』

 

 

 

「おや、そんなにかからなかったね」

 

 屋上でガイナ立ちして待っていたのは、先ほどやりやがったマイスターウタハである。

 

「いやエレベーターあったからな……というか、あんなにすんなりビルに入れてくれるもんなのか」

 

「まぁそもそもここら一帯はミレニアムからMSを買ってるとこが多いからね。セミナーから言われれば快く快諾してくれるとこがほとんどさ」

 

「なるほどな」

 

 そんな話をしながらポートに停まっているヘリに近づいていくと、すでに乗り込んでいるヒビキ、コトリ、カリンの他に、人がひとり機内で横たわっているのが見えた。あれはまさか……。

 

「あれはテウだ。さっきの衝撃で薬の効果が切れて、もとのサイズまで戻ったんだ」

 

「そうか……って、なぜ彼女の名前を?」

 

「それも含めて、出発したら話すよ」

 

 そう言うと今はこれ以上何も言えないとばかりにヘリへと足を進めるウタハ。俺たちもその後に続いてヘリへと乗り込むと、ヒビキの操縦でヘリの扉が閉まり、その後すぐに離陸する。

 だんだんと離れていく現場のビルをヘリの窓越しに眺めていると、ウタハが「さて、」と話を切り出しその感傷行為は中断された。

 

「皆……特にエイミとレイは何が何だかで気になっていることも多いと思うが……何から話したものか……」

 

 うーん、と多少困った様子で悩む仕草を見せたウタハだったが、逆にそう言った様子からもう話すことはとっくに決まっているようにも見えた。

 

「ま、変に端折るとかえって面倒だし、最初から話すけど……」

 


 

 まだ私がミレニアムに入りたての頃、同じエンジニア部かつ同学年で一人の友人がいたんだ。名を浅間テウという。

 正確に言えば私と彼女は友人というよりはライバル、しょっちゅう色々なコンペ*1大会で一位二位を争っていたような関係性だったんだが、少なくとも私は彼女を友人だと思っていた。

 私たちの実力としてはどちらも五分五分だった。強いて言えば私はロマン……いや、兵器やロボット、MS工学に長けていて、彼女は生活家電などの日常的に使う電化製品の製造に長けていたんだ。好きなジャンルは全く違うし、得意な開発も正反対みたいなものだったが、私は私と違って「人の役に立つ製品を作りたい」と願い開発に励む彼女に憧れと尊敬の念を抱いていたものだ。

 だがそんな日常は突如として音を立てて崩れた。

 

 ちょうど私たちが2年に上がった頃、私は自身のMS工学や兵器開発の技術を買われてミレニアムのMS事業に誘われるようになった。新たな量産型やそれに持たせる武器の開発、そしてヘビーアームズの調整……それにプラス今までのエンジニア部での活動が評価されて、私は正式にマイスターとして認められた。

 だがテウは違った。今の風潮の影響でMS事業やそれに関連する類の工業ばかりが注目されていたばっかりに、彼女の功績は徐々に人々から忘れられていった。彼女の開発したものはどれも革新的で、従来の生活レベルを数段階引き上げられるほどの発明ばかりだったにも関わらず、コンペではいつも上位に兵器関連が入ってしまって入賞もできなかった。元々人の役に立つためにエンジニア部に入った人だったから功績を追い求めるような性格ではなかったのだが、その頃からコンペ受賞に異常な執着を見せるようになり、私と話すこともほとんどなくなっていった。

 

 そして、私がマイスターとなってから数日後。ヘビーアームズの関節部に爆弾が仕掛けられているのが見つかった。発見当初は私やヘビーアームズの整備にあたっていた部員が疑われていたのだが、監視カメラを確認したところ犯人はすぐに分かった。

 爆弾を仕掛けたのはテウだった。すぐさま勾留され事情聴取が行われたがどれだけ詰められても本人は黙秘を続けたため、結局理由は分からずじまい。これは私の推測に過ぎないが、その動機はきっと彼女の障壁となったMSと、それに携わり彼女から離れていった私を憎んでいたからだろう。彼女なら監視カメラがついてることなんて理解しているだろう、にも関わらず犯行に及んだのは、あの女が相当追い詰められていて正常な判断ができなかったか、たとえ道連れにしてでも自身を破滅させた存在に逆襲したかったのだと思う。

 他のMSや施設であればまだマシだったものを、ミレニアムのガンダムであるヘビーアームズに仕掛けてしまったばかりに事態は大ごとになり、彼女の身柄はヴァルキューレに送られた。

 ……その後、彼女の動向を私は知らない。

 


 

「キヴォトスのどこかにある刑務所に収監されていたことだけは知っていたが……まさか脱獄していたとはな」

 

 一通り話し終えたウタハは、寂寥とも悲しみとも取れる色を帯びた瞳をしてそう締め括った。誰も話そうとはしない。無神経に彼女の心に踏み込んで傷つけることを皆恐れているのだ。正直ノンデリの自負がある俺も、この空気の中では非常に聞きづらい。

 だが、俺にはどうしても一つ聞かなければならないことがあった。

 

「……なぁ、一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

「そのテウって奴との戦闘中、オレとエイミは幻覚を見せられた。そしてオレは、その幻覚がテウに備わっていた特殊な能力によるものだと思っているんだが……ウタハは彼女が特殊能力を持ってるって知っていたか?」

 

「いや?それこそ君のような能力者……っていうのかい?をこの目で見たのは君が初めてだったし。もしかしたら元々持っていて私が知らなかっただけかもしれないけど、少なくとも私の前で使った、使われたことは一度もないかな」

 

「そうか……」

 

 確かにウタハのいう通り人前で使わないようにしてたってことも考えられるが、彼女はその能力を持て余しているように見えた……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それに首筋に投与していたあの薬……やっぱりどこかで見た覚えがある。だがいつどこで、どんな状況で見たのかは全く思い出せない。

 

(まぁこういうパターンは大体誰の仕業か決まっている)

 

 アフロディテがいう“仲間“  ソイツらが関係しているのだろうか?

 重い空気とは裏腹に空を白く照らし始めた太陽が、ミレニアムタワーから顔を覗かせていた。

*1
コンペティション(Competition)の略。一般的に、企業内で従業員がアイデアやスキルを競い合うイベントのことを指す。




 というわけで、ウタハの過去を深掘りしたところで出張編は終わりです。正直今回はミサイルのシーンを書きたかっただけ(笑)。

レイ「全然攻撃が通らないもんだから本当に焦ったわ」
作者「肌に刃が当たった音にしては明らかに高音だったからね……」

 感想・評価もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。