透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
といってもこれを執筆しているのは一週間前の私なので普通に学校があるわけなのですが、ゴールデンウィーク中ばっかりはちゃんと休みたい所存です。……休めるかな、これ。
さて、今回の主人公は、勇者の力を目にするようです。
つい数時間ほど前に飛行機型のデバイスで捕まえ、できる限り遠くまで飛ばしたはずの彼女 一之瀬アスナは息一つすら上がっておらず、蠱惑的に舌をペロっと出して銃をこちらに構えていた。
「ちょっとレイ、アスナ先輩は間に合わないって話じゃ……!」
モモイの当然ともいえる糾弾にはぐうの音も出ない。なぜならミレニアムタワー前で交わされた情報交換において、アスナを実質的無力化したような言い方をしてしまったからである。
「すまん、彼女を甘く見ていた……少なくとも100
「えへへ、降ろされたところに丁度バスが停まってて、乗り継ぎする時にも降りたタイミングで来るから、結構スムーズに来れたよ♩……まぁ、それだけ運賃はかかっちゃったけどね」
なんて直感と幸運*1の持ち主。一回ならまだ納得できたが、ここに来るまで少なくとも四回は乗り継ぎしなきゃいけないにも関わらずその全てがジャストタイミングとなれば、天が味方しているとしか考えられない。
とにかく、今現状で最も面倒な相手と相対してしまった訳だ。それに今ここにいるのはそこそこに狭い幅の一本道で、誰か一人が身代わりに立とうにも他のメンバーを先に進めさせることが非常に難しい。また俺たちの位置も悪く、一本道のちょうど真ん中あたりで完全に袋のネズミ状態。挟み撃ちされたらほぼ詰みである。
(何か……何か手はないのか!?)
だが相手は策を弄する時間すら与えてはくれない。
不意にその場を飛び出したアスナは、引き連れた大量の警備ロボと共に「面」の弾幕を張る。対して俺たちは思考を一時放棄してそれに対応せざるを得ない。それが彼女の作戦通りであると知っていながら。
「くうッ!」
後方へのダメージを最小限に抑えるため、文字通り矢面に立って剣で銃弾を弾き続けた。さながら『ル◯ン三世』の石川五ェ門の如く剣を正確に振り回し、およそ常人の眼では捉えられない銃弾を薙いでいく。が、何もかも彼のようにいくわけではなく既に大量に後ろに流してしまっているし、何発かは対応しきれず体に受けてしまっている。モモイとミドリも後方から撃ってくれてはいるものの、彼女の背後に潜むロボットですら中々に倒せず、時間だけがただただ流れていってしまっていた。
コールサイン
(全く……シャレになんねーっての)
弾幕の圧に押されて後退しながらふとそんなことを思う。そうこうしている内に増援がわらわらと集まって来て、狭い通路を埋め尽くしていく。
そしてついに、ギュピッ、ギュピッという伝説の超サ◯ヤ人みたいな足音が背後から聞こえてきた。
「ようやく追いつけた!四人とも、覚悟してもらうわよ!!!」
ミレニアムオオフトモモ*2、ヌッ*3、イシヘンジン*4……そして冷酷な算術使いである、早瀬ユウカが声高に堂々とそう叫んだ。
「ちょっとそこ!変な想像してないでしょうね!?」
おっと、なんでバレたんだ。
「あら、随分先まで進んでいらっしゃったのですね」
「あ、アカネ先輩!?どうやってここに……」
閉じ込めたはずじゃ、と続こうとしていたモモイの言葉に彼女は人差し指を唇に当てて止める。
「私の得意分野をお忘れですか?ただ邪魔な障壁を爆h……
「今爆破って言いかけなかった?」
うん、まぁ……なんか非常にお顔がツヤツヤしているような気がするのでマジで爆発したんだな……。
マキとコトリによる囮で隔壁に閉じ込めていたはずだが、おそらく半ば自爆のようなもので強引に突破したのだろう。エレベーターで上がっていく時に聞こえたあの爆発音は彼女のものだったようだ。
「さて、そろそろ観念してもらうわよ二人とも……」
「ヒイッ!?」
「や、やっぱり怒られる……?」
「当然でしょ!……そっぽ向いてる後ろの二人も、今回の襲撃はいくら何でもシャーレの活動範疇を超えています!後で正式に訴状を送らせてもらいますからね!!!」
“……*5“
にしても、まずい状況になったな……。前方にアスナと大量のロボット、後方には最強タンクと爆弾魔の挟み撃ち。この三人の人となりを知るものであれば、誰しもが厄介極まりない状況であると悟るだろう。
(どうしたものか……)
「「「 !」」」
窮地の折に立たされた四人は突然、一斉に張り詰めた表情を浮かべる。すぐに俺は彼らの方に振り向いて目配せすると、四人は言葉を交わすことなく互いの意図を即座に理解し、同意する。
あまりに一瞬の出来事。アカネは何かに気づいたように反応したが、その時すでに四人全員が動き出していた。
俺は即座にフラガラッハのモードを「神秘」に変え、扇形の斬撃をアスナめがけ飛ばす。銃弾に比べてゆっくり進むため、当然のことながら避けられるが、別に当てる必要はない。彼女が避け終わって体勢を立て直した時には俺の背中が彼女の目に映っているだろうから。
「あっ!?」
彼女が気づいた頃にはすでに遅く四人が四人身を翻し、ユウカとアカネの方へと足を向けていた。
「一体何のつもり……!?」
「ユウカ、私が前に!」
少々混乱するユウカをよそに、爆薬の類が入ったスーツケース(?)突っ込んでくるアカネ。俺たちの位置関係からして必然的に彼女を相手するのはモモイとミドリになる。
だが。
「ほっ!」
「はぁッ!」
「!?」
まともに相手なんてしてやらない。中央を陣取ったアカネの横を、互いに牽制しながらすり抜け、そのままユウカも通り過ぎていく。
「なっ、逃げ……!?」
「ちょっと、待ちな……!」
意識が己の後ろへと逸らされ、一瞬ではあったが隙が生まれる。その間に先生の腰を掴んで抱え上げると、同様にアカネへ向かって走っていく。
「舌噛むなよ……!」
それに対して何かを返そうとしているみたいだったが、それを待たずに地面を蹴る。
「跳んだ!?!?」
走り幅跳びの要領で、大人一人を抱えたまんま二人の頭上を飛び越える。即興でやってみたが案外うまくいくもんだな。
跳んでる途中で横抱きからお姫様抱っこに変え、シュタッと綺麗に着地して才羽姉妹と合流する。これで、挟み撃ちの状況は脱したわけだ。もちろん目的地から遠ざかってしまったが、今は
「今だ、一斉射撃!!!」
今度はこちらが弾幕を張る番だ。モモイとミドリの連続射撃が二人を襲う。
「フっ……!」
「く、こんな程度の攻撃で……!」
アカネは爆薬ケースで、ユウカは二丁のサブマシンガンを交差させて入るもののほとんど身体で銃弾を受け切っている。前者はまだわかる(爆弾入ってるのに盾にしてもいいのかとツッコミたいが)としても、後者は生身。やっぱおかしいよこの人……。
だがこれも、ダメージを与えることが目的ではない。一瞬でも怯ませることが重要だ。
あと必要なのは……
「フンッ!!!」
切先が下になるように剣を構え、さながら「ス◯ブラ」のマルスの上必殺技の如く、そのまま軽く飛び上がって天井に向かって振り上げる。
「きゃあっ!?」
無論フラガラッハのモードはそのままなため、先ほどアスナに向けて撃ったものよりも厚みのある「飛ぶ斬撃」が、有無を言わさず二人を巻き込んで奥の方へと吹っ飛ばした。
“今だ !“
“ アリス!!!“
この場にはいない、もう一人のゲーム開発部 機械少女の名前を、先生は大声で叫ぶ。その瞬間三人の顔に驚愕と困惑の気配が一瞬見えたが、一瞬のうちにその表情は真下からやってきた光の柱に呑み込まれた。
光が徐々に細くなっていくと、その後ろで各々の性格に合った倒れ方で三人が地に伏していた。
「これは……アリスちゃんの……?」
三人の中でかろうじて動けるユウカも、生まれたての子鹿のように足を震わせ、なかなか立つことができずにいた。
そんなことをしているうちに、いつの間にかアリスは開けた穴から覗く階をステップにして、アリスが俺たちの前に戻ってきた。全く、一体全体この小さい体のどこにそんなパワーがあるのやら。
「モモイ、ミドリ!レイも!」
「アリスちゃん!」
モモイとアリスが思い切り抱き合う尊い光景が目の前で繰り広げられるが、アリスの方が力が強いため勢い余ってモモイが若干仰向けに倒れかけている。……ゆうて君たちが離れてたの数時間ぐらいだよね、というのは野暮だろう。
「二人とも、感動の再会のところ悪いが、今は保管庫の方へ急ごう」
「そうだね、皆のもの全速ぜんしーん!」
その掛け声と共に俺は再び先生を小脇に抱えると、アリスが今しがた開けた穴を飛び越えて先へ進む。目的地は、もう目前だ。
アリス渾身の砲撃から少し前、ミレニアムタワーの外。カリンvsウタハ、ヒビキペアの戦いは、終局を迎えようとしていた。
カリンの勝利として。
「まさか……君がここまでするとは思わなかったね」
「自分の発明品にやられる気分はどうだ……マイスター?」
満ちた月を背に、地面にへたり込むウタハを見下ろすカリン。すると彼女が背に受けていた光が、何かによって遮られた。
「モビルスーツ……しかも
「『アームズメイデン』……だったか。様々な任務で重宝している、こんな状況にも対応できるのだからな」
カリンの背後で膝立ちする巨人はところどころに原型機の『ヘビーアームズ』の意匠を感じさせるが、シルエットにはもはやその面影一つすら感じさせない。背中には比較的シンプルなバックパックが装備され、そこからコードで繋がって肩上に抱えられた長い砲身を手にしている。まさに射撃戦用のモビルスーツといった感じだ。
「自動換装機能に自動環境適応、そして自動操縦機能……浪漫の方向性を模索していた頃の産物が、私たちを苦しめることになるとは……」
「安心しろ。ビルを一棟破壊したが彼女に直撃させてはいないし、威力も大分弱めた。だが無力化するには十分だろう」
ウタハの手元のタブレットには周囲を監視する複数ドローンによる映像が映されており、崩壊した上階の瓦礫の山の上でぐるぐる目になり気絶したヒビキの姿もあった。二人がカリンを止められていたのは、ひとえにウタハとヒビキのコンビネーションあってのもの。その均衡が崩れた今、ウタハに有効な手段はもはや残されていなかった。
カリンの対物ライフル、「ホークアイ」の銃口がウタハの眼前に向けられる。だが彼女とてマイスター、怯える様子を見せるどころか、むしろ笑みを浮かべていた。
「不思議なものだ……まだこの状況でまだ
「知らなかったかい?技術者というのは大抵諦めが悪いものだよ」
「そんなことを言っていられるのも 」
ピギュウン!!!
その時だった。ピンク色の光の一閃が、アームズメイデンの肩をかすめたのは。
「ッ!?」
即座に反応し、発射位置の方を見上げるカリン。そこには平べったいマンボウのような形をした乗り物に膝立ちで乗るモビルスーツが一機。サイレンの赤い光に照らされたそれは、アームズメイデンと同じ原型を思わせる角張った肩アーマーとゴツめの各種ハードポイントが見受けられる。が、より扱いやすさと汎用性を重視したビームライフル、ビームサーベル、シールドといった各種武装とスラッとしたフォルムで分かる軽量化の跡は、同じ系譜でありながら異なる設計思想を歩んでいることが容易に理解できた。
「あれは一体……」
突然の出来事に目を見開くことしかできないカリンを傍目に、「ふははははははッ」と声をあげて笑い始めるウタハ。
「何が可笑しい!?」
「いや、元々見込みがあるとは思っていたが、ここまで早く身につけるとは思っていなかったよ……」
「さぁ君の力を見せてくれ、ユズ いや、
「……」
答えはない。だがその直後に放ったビームライフルの追撃が、どんな言葉よりも彼女の意思を物語っていた。
「クソッ」
目にもとまらぬ速さでコクピットに上がったカリンは、起動させるや否や自らもフライトユニットを呼び出し、彼女と射撃戦を繰り広げる。
新たなパイロット、花岡ユズ。彼女の力が覚醒しつつあるのを、この場にいる誰もが知るよしもなかった。
[ユズの機体について]
彼女が乗っている機体は先行量産型のアームズ系統最新鋭MS「アームズラムダ」。単独での飛行能力を有する第四世代に相当するモビルスーツであり、その実証機としての役割も持つ。ただ今回は念のためということでフライトユニットに乗っている。
装備している武装はビームライフル、ビームサーベル、頭部バルカン砲、そしてシールドと比較的シンプル。だがそれぞれの威力はあのガンダムの持つものに匹敵するレベルまで上がっており、対ガンダム戦闘において効果が期待されている。各部ハードポイントによって追加で装備を設けることも可能だが、今回オプション装備は全てオミットしているようだ。
レイ「あいつ、もしかしたら俺以上の適性があるのかもしれないな」
作者「6thPVのユズに脳を焼かれたのでね……」
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