透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

42 / 67
 どうも、ゴールデンウィーク明けのHakone8510です。
 みなさんはGW楽しめたでしょうか。私は料理レパートリーを増やすためピザとかシチューを作っておりました。お金がないのでそんな幅広くは作れないけどね……。
 ちなみにうちの主人公の暁月レイさんは料理がヘタクソです。

 さて、今回の主人公は……ってあれ?


覚醒する力と度胸の話。

 数時間前、ミレニアムサイエンススクール東端、エンジニア部MS格納庫にて  

 

「こ、これを私が、ですか  ?」

 

 ユズとウタハの目の前には、眼下を見下ろすように佇む「アームズラムダ」がMSドックに繋がれていた。ウタハは怯え続ける彼女を見つめながら、その質問に答える。

 

「その通り。私達……いや()()君が、敵の牙城を穿つ銀の弾丸(シルヴァ・バレット)になりうると思っている」

 

「銀の……?」

 

「簡単に言えば、この作戦における要というわけさ」

 

「なるほど……?」

 

 いまいち分かっていないような、キョトンとした表情をするユズ。そんな様子に苦笑しながらウタハは続けた。

 

「さて、先ほどシュミレーション機を使って操縦方法はあらかた覚えられたかい?」

 

「あ、はい。ゲームのコントローラーをおっきくしたみたいでわかりやすかったです」

 

(いくら操縦桿の単純化が進んでいるとはいえ、電車なみに覚えることが多いのに……?やはり、彼女には……)

 

「合図があるまでコックピット内で待機してもらって、合図が来たらすぐに出撃してもらいたい」

 

「了解しましたあああっ」

 

「じゃあ、私は行ってくるよ」

 

 ><←こんな顔をしながらペコペコし続けるユズを尻目に自分の持ち場(せんじょう)へと向かうウタハ。ユズの方を向いていた時笑みを浮かべていたその顔が、振り向いた瞬間に何かを考え込むかのような険しい表情になる。その片手には、シュミレーション上における対戦結果が映されたタブレットがあった。

 

(あまりにも簡単そうに倒していくもんだから、意地になって設定上で最高難易度のAIを出してみたのだが……参ったな、()()()()1()()()()()()()とは)

 

 そうしてタブレットの画面が、その時のAI視点の動画に切り替わる。そこにはAI側の緻密に計算されたはずのビームの弾道を全て回避し、対して彼女の射撃はまるで回避した方向に()()()()いるかのように正確で、もはや手も足も出ないといった調子だった。

 その動画を何度も反芻して、思わず口角がぐいっと上がる。先ほどユズに向けたものよりも高い口角の、若干狂気のこもった笑みだ。

 

(……フフフ、今夜がとても楽しみだよ)

 

 

 

(やはり、あの時の私の直感は間違っていなかった……!)

 

 作戦に出る前に最後に浮かべた口角の高く上がった笑顔。そんな表情を浮かべながら空を見上げるウタハの胸中では、推測が確信に変わった喜びに震えていた。そしてその視線の先にはミレニアムの夜空を飛び回り、苛烈な射撃戦を繰り広げる二機の姿があった。

 

「く……このッ!」

 

「……」

 

 カリンの乗るアームズメイデンが、宙に浮かびあらゆる攻撃を弾くタレット  プラネイトディフェンサーを展開しながら、ユズの駆るアームズラムダ目掛け肩部のビームキャノンを放つ。1発でも当たれば即撃墜のその射撃を掻い潜りながら、ユズは右手のビームライフルを3発ずつ撃っていく。だがあちらも熟練のエージェントにしてパイロット、巧みな機動とプラネイトディフェンサーを用いて直撃を回避する。

 そんな調子でしばらく撃ち合いが続き、数分ほど経過し場が膠着してきた頃、ユズの方が仕掛けた。

 

「何っ!?」

 

 突然彼女のMSが後ろへ距離をとったかと思うと、全速力で真っ直ぐカリンの方へと突っこんできたのである。

 

「馬鹿な、死にたいのか!?」

 

 あまりにも唐突な突進だったが、この好機を逃す彼女でもない。

 

「舐めるなっ!!!」

 

 ビームキャノンから手を放し、腰にマウントされていたビームライフルとビームキャノンを連続して撃つ。アームズメイデンに内蔵されたコンピュータの計算とカリンの長年の経験によって、その射撃は今の相手の状況では()()()()()()()()()()()ような配置になっていた。

 

(さぁ、どう回避してみせる!)

 

 しかしユズは回避をせずそのまま直進し続け、自分に向かってきたビーム数発は、盾を前に構えることでダメージを最小限に抑えた。だが盾と盾を持っていた左腕はビームの威力に持っていかれ破壊されてしまう。

 だがこれこそが、彼女の狙いだった。それにカリンが気づくのはその場面を目撃してコンマ数秒が経過してからだった。

 

「……!しまったっ!!!」

 

(ビームを他方向に分散させすぎて、直進する方向がガラ空きに……まさか、彼女はこれを狙って!?)

 

「まずい、来るっ!」

 

 ビームライフルを定期的に撃ちながら、勢いのままこちらに真っ直ぐ向かってくるアームズラムダ。それをディフェンサーで防ぎつつ今度は狙いを定めて射撃するカリンだったが、当然読まれて回避される。しかも回避動作を最小限に抑えているためか、勢いが衰えることはない。

 そうして二機の距離がモビルスーツ三機分まで縮まった瞬間、ユズはビームライフルを投げ捨てた。

 

「!?」

 

 咄嗟の行動に反応しきれず、前に全機のディフェンサーを集中させていたためそれらとビームライフルが接触、反応して爆発を起こす。カリンの視界が爆煙で覆われ、思わず怯んだその一瞬のうちに、煙の中から片腕のMSが現れた。そしてその片手には、ビームサーベルが握られている。

 

「あ」

 

 なおも反応できずにいたカリンは、外界の正面を映す映像が真っ黒になったことで頭部(メインカメラ)をやられたことに気づく。続いて大きな衝撃と共に機体が右に傾いたことで、右腕と右肩のキャノンが同時に切り落とされたことを察した。

 

「うおおおおォォォォおおおお!!!」

 

 彼女の残った最後の矜持が彼女の身体と機体を突き動かし、腰の左キャビネットに格納されたビームサーベルを取り出すと、敵機目掛け渾身の突きを繰り出す。

 だが彼女の最後のチャンスすら、ユズは許しはしなかった。突き出されたビームサーベルを掻い潜り、お返しと言わんばかりに相手の胴体に蹴りを喰らわせる。蹴られた反動の勢いのままアームズメイデンは力なく落下していき、やがて誰もいない道路へと墜落した。

 

「おめでとう、君の勝ちだ」

 

 しばらくの間の後、ウタハが沈黙を破る。

 

「あ、はいっ。勝ちました……」

 

「ふふふ、だいぶ集中していたみたいだね。時間が許すならお疲れの君を労いたいんだけれども、そうは言っていられないようだ」

 

 そう言った彼女の視線は、膝立ち待機中のアームズラムダからミレニアムタワーの方へと移る。

 

「どうやら本隊の方が人手を必要としているらしい」

 

「本隊って、その、ゲーム開発部(みんな)のことですか?」

 

「そう。手伝ってあげてくれないか?」

 

「は、はいっ!」

 

 ウタハに背中を押されて、ユズはさっきよりも元気な返事をして仲間たちの元へ向かうのだった。

 


 

 時は流れてミレニアムタワー最上階、保管庫内にて。

 

「カリン先輩の射撃とかさっきの戦いの余波が若干こっちまで来てる。ガラスも割れてるし、棚もぐちゃぐちゃ……」

 

「とにかくさっさと『鏡』を持ち出して、ここから退散しちゃおう」

 

“そうだね。よし、みんなで手分けして探そう“

 

 そうして探し始めた一行だったが、最近没収されたものだたからか以外にもすぐにそれは見つかった。見た目はただのハードディスクだが、プラスチックの部分には油性ペンで『The Mirror』と書かれている。念のため先生が内容を見てヴェリタスにも確認をとってもらったところ、無事本物だと判明した。

 

「よーし!これさえあれば……」

 

「……?」

 

 すると突然アリスが振り返って、モモイの口を無理やり抑える。

 

「静かに。ミュートでお願いします」

 

「ん?」

 

「誰かがこちらに向かってきています。足音から考えて、おそらく人数は一人……」

 

「正直一人でも戦いたくはないけど……今の状況な無理やり突破しても……」

 

 小声でこしょこしょ話はじめるモモイ。確かに相手がどんな人であれ、ここは素早く脱出してしまうのが先決だ。

 

「ちょっと待って、ハレ先輩から連絡が来てる……『今すぐそこから逃げて?』」

 

「ええ……一体どういう……?」

 

 その時、一瞬であったが入り口側の光に照らされて、入ってきた人物のシルエットが顕になった。そしてその瞬間、俺は四人を急いで机の下に隠した。

 

「ちょっと、どうしたのレイ?」

 

「あれは……いや、あの人は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やつだ」

 

 そうしてしばらくじっとしていると、さっきまでシルエットだった者の姿が徐々に見えてきた。

 

(私たちと同じくらいの背丈、片側だけ編まれた髪、そして何より羽織っている龍のスカジャン……)

 

(ね、ネル先輩だ……!)

 

(な、なんで!?どうしてあの人がここに!?)

 

 絶対的な勝利の象徴、鬼神とも揶揄される彼女が、一歩づつ近づいてくる。その状況はどんはホラーゲームよりもホラーな展開と言って間違い無いだろう。

 

「ふーん……」

 

 しばらくして歩みをとめ、辺りを見回す様子を見せるネル。何かを感じ取ったのか、俺たちの隠れている机の方へ顔を向けた。

 

「確かに気配がするな……机の下か?」

 

 才羽姉妹の目が見開かれ、アリスがキュッと目を閉じ観念しようとしたその時  

 

「あ、あの!」

 

「あん?」

 

 遠慮がちな色の混じった声で、彼女に呼びかける者がいた。

 

「ね、ネル先輩!大変です!」

 

(ゆ、ユズちゃん!?)

 

「あんたは……?」

 

「せ、『セミナー』所属のユズキです。戦闘ロボットが暴走したせいで今、あちこちがメチャクチャで……」

 

「暴走だァ!?あれを差し押さえたのなんか随分前だってのに、まだ整備が終わってねぇやつがいたのか?」

 

「なにぶん大量でして……ネル先輩に応援を頼めればと……」

 

 はぁ、と明らかにめんどくさそうな態度をしながらも、腰の銃を手に返事をする。

 

「……はぁ、わかったよ。しゃあねーな」

 

「わ、私はここの整理をします……その、戦闘経験がなくて……」

 

「フッ、戦闘経験、か……」

 

 するとネルは面白いものでも見つけたような少し子供っぽい笑顔で、武器を持っていない手を握ってユズの胸にトン、と当てた。

 

「覚えときなあんた。戦闘で一番大事なのは、武器でも経験でもねぇ」

 

「……え?」

 

()()だ。その点で、あんたに素質が無いとは思えねェ……ま、頑張れよ。じゃ、どっかでまた会おうぜ」

 

「あ、は、はい!ありがとうございましゅっ!」

 

 そう言い残すと、ネルは保管庫から出ていった。

 しばらくして、「ふえぇ……」という鳴き声を漏らしながら、その場にへたり込むユズの姿があった。

 

「し、死んじゃうかと思った……」

 

「ユズうぅぅぅぅー!!!」

 

「ほんとにすごいよ、おかげで命拾いしたぁー!」

 

 モモイ、ミドリ、アリスがユズに集まってわちゃわちゃしている。彼女の咄嗟の機転で助かったのだから無理もない。そのままの様子でしばらく時間(といっても十数秒ぐらいだったけど)が経った後、ミドリが正気に戻ったみたいにハッとした顔になる。

 

「お祝いは後にして急がないと……ネル先輩が戻ってきたら一貫の終わりだよ!」

 

 その言葉に他の全員が即座に頷くと、敵がいないか厳重に警戒しながら、脱兎のごとくその場から立ち去るのだった。

 


 

「……なるほどな。それで手酷くやられたと」

 

「返す言葉もありません……」

 

「まぁいい。リオから言伝も預かってたところだしな」

 

「リオ……ミレニアムの元生徒会長か?」

 

「依頼は撤回。なかったことに、だとよ」

 

「なっ!?」

 

「それは一体、なぜ……?」

 

「知らねーよ。けどあいつも確かめてみたかったんじゃねぇのか」

 

「確かめる、とは……」

 

「んなもん決まってんだろ」

 

 

「あのアリスとかいう奴の力をな」

 


 

「お……お……お……」

 

「あ、ああ……」

 

 声にならない声をあげるモモイとミドリ。その間でユズが青ざめた顔をして涙を流しており、唯一アリスは「え?」とでも言いたげな困惑した顔をしている。

 

「ちょ、モモイ……」

 

「ふふっ、ふへへへへ、全部終わった!もうおしまいだぁ!!!」

 

「ええ……」

 

 ついに ゲーム開発部が こわれてしまった!




 というわけで、本人の視点がほとんどない回でした。

レイ「今回ばっかりはユズが主人公だな」
作者「操縦技術変態的すぎない?」

 感想・評価お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。