透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
次回更新は一体いつなのか。まぁ十中八九ハフバだとは思うのですが、6thPVのフルアーマーアリス(仮)と超合体デカグラマトン(仮)に脳を焼かれております。火をつけろ……燃え残った全てに……。
さて、今回の主人公は、ついにあの人と会うようです。
数時間前に話を戻そう。「鏡」を手に入れ無事エンジニア部に届けた翌日の昼、マキがゲーム開発部へとやってきたのだ。理由はもちろん、
「やっほー、ゲーム開発部のみんな!マキちゃんからプレゼントのお届けだよ!」
「おお、遂に!」
彼女の手には解析済み「G.Bible」の入ったゲーム機がある。そういえば探しに行った時ダウンロードができる機器を持っていなくて、たまたま持ってきていたニ◯テ◯ドース◯ッチもどきに入れたんだっけか。
試しに電源を起動してみると、久しぶりに聞いたあの電子音声が流れてくる。
『G.Bible.exe……実行準備完了。』
無事に起動していることを確認すると、マキは安堵した表情で話し始めた。
「遅れちゃってごめんね〜。『鏡』をセミナーに返すことになって、その件でちょっとバタバタしちゃってさ」
「あれっ『鏡』返しちゃたの、なんで!?」
てっきりそのままにするつもりかと思った、とモモイは驚く。だがマキは依然として落ち着いた様子でそれに答える。
「実はうちの部長……いや元部長のヒマリ先輩は最初から全部知ってたみたいでさ。『それくらいあげてもいいから、これからはあんまり無理しないで』って……」
(「全部知っていた」か……)
セミナーの保有する強固なサーバーを、一瞬とはいえダウンさせられるほど優秀なハッカー集団であるヴェリタス。だがその中でも飛び抜けたハッキング能力を持つのが、ヴェリタスの「元部長」こと明星ヒマリである。
そして別に大した隠蔽はしていなかったが、作戦を煮詰める際は電子上でのやりとりを極力控えていたはずだ。だがマキの話では両者の作戦や動向も全て把握されていたらしい。その証拠にあの事件の後部室に備えられた大画面モニターをハッキングされ、その場で作戦立案や実際の作戦遂行における反省会が行われたそうな。
「あ、ちゃんと労いとして大量の『妖怪MAX』ももらったよ!」
別にそこを心配しているわけではないのだが。ちなみに『妖怪MAX』はエナジードリンクである。
「あ、それでね、『G.Bible』を開いた時にこの、〈Key〉ってファイルを見つけたんだよね。心当たりない?」
そう言ってマキはゲーム機の画面を操作して、その〈Key〉と読んだファイルを表示させた。そこにはファイル名が「Key」とのみ記された不思議なファイルが表示されており、ロックがかかっているのかそのファイルを開くことはおろか拡大表示にもできない。彼女いわく、どんなに解析しようとしてもできなかったそうだ。
モモイとミドリの二人はそのファイルにどうやら心あたりがあるようだったが、マキは気づかずに座布団から立つ。
「じゃ、渡すものは渡したから。またね〜!」
自分の役目を果たした彼女は、ステップ気味な足取りで部室を出て行った。
「と、とにかくこの『G.Bible』見てみよっ!」
気を取り直して皆を集め、ゲーム機を食い入るように見始める俺たち。
「よし。じゃあアリス、お願い!」
「わかりました……『G.Bible』 」
緊張した面持ちで指先を震わせながら、アリスは画面に表示された『G.Bible』のファイルめがけ腕を振り下ろした。
「 起動!」
画面がタップされてファイルが開かれ、文字が次々と表示されていく。
『最高のゲームを作る秘訣、それはたった一つです。
そしてこのG.Bibleには、その真理が秘められています』
『最高のゲームを作るたった一つの真理、秘密の方法……
それを今こそお教えしましょう。』
「来るっ……!」
皆が息を呑んで画面を見つめ続ける。文字はしばらくの無言を貫いた後、一つの答えを提示した。
『……ゲームを愛しなさい。』
「えっ、これだけ?」
長い、あまりに長い沈黙。一向に動かない画面を見てあまりの衝撃に固まる一同。一番最初に「しょうきにもどった」モモイが、設定の間違いを疑ってゲーム機に触れようとする。だがそれすら予測されていたのか『設定ミスや機械の故障なのでは、と思ったことでしょうがそれらの類ではありません。ゲームを愛しなさい!』と繰り返されることで現実を叩きつけられたゲーム開発部の面々。
そうして、現在に至るというわけだ。
「知ってたよ……そんな簡単な方法がないことぐらい……でもちょっとは期待しちゃうじゃんそんなの……」
モモイが何やっても上手くいかなーいとでも言いたげに手足を投げ出し、部室の床に寝っ転がるモモイ。絶望にひしがれその場に力無く座り込んだミドリが、その隣でぼやく。
「ごめんねアリスちゃん……『G.Bible』が無いと、私たちは……」
明かされた『G.Bible』を見てから目を瞑り、二人の言葉をじっと聞いていたアリスはミドリのその言葉に目を見開く。
「……いいえ。アリスはその言葉を否定します」
「えっ?」
「アリスは『テイルズ・サガ・クロニクル』をやるたびに思います あのゲームは、面白いです。……モモイが、ミドリが、ユズが、このゲームをどれだけ愛しているのかを、このゲームから感じられますから」
「 !」
「このゲームは仲間と共に旅をする中で、私に夢を見るとはどういうことなのか、その感覚をアリスに教えてくれました。だから待望のエンディングに近づくほど、『このままずっと覚めないでほしい』と……そう、思ってしまうのです」
「「……!」」
彼女たちの一番近くにいた、一番のファンの言葉。それが、モモイとミドリの瞳に再び光を取り戻させる。それはずっと後ろで三人の様子を見守っていたユズも同じだった。
「……作ろう、『テイルズ・サガ・クロニクル2』を」
その表情にもはや挫折の色はなかった。あるのは、満ち満ちた決意だけだ。
「私の夢は、私が作ったゲームを、みんなに面白いって言ってもらうこと。でも初めて作った『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプについたのは、数千件を超える低評価のコメントで……」
そう言って彼女の視線が落ちる。その先には、剣を頭上に掲げる勇者の映った『テイルズ・サガ・クロニクル』のパッケージがあった。
「それが辛くて部室に引きこもってた時……二人が、尋ねてきてくれた。そしてこう言ってくれたんだ、『“テイルズ・サガ・クロニクル“、すっごく面白かったです!』『プレイしてる時、すっごいワクワクして……続き、とっても気になってるんです!』って……」
「うっ……」
「なんか恥ずかしい……」
「それで二人が部に来てくれて、途中だった『TSC』*1を完成させた。そのゲームは、今年のクソゲー◯ブザイヤーの大賞になっちゃったけど……」
いまだ赤面している二人に負けないくらい照れながらも、ユズは今まで見た中で一番の笑顔を見せた。
「アリスちゃんが来て、このゲームを面白いって言ってくれて……それで私の夢は叶ったの。仲間たちと一緒にゲームを作って、それを面白いって言ってもらう……ずっと一人で思い描いているだけだった、その夢が」
「ユズちゃん……」
「だから、これ以上は欲張りかもしれないけど……叶うなら、私はこの夢がこの先も、永遠に終わらないでほしい。だから……」
そう言いかけて、言葉に詰まる。その代わりにモモイが顔を上げた。その瞳にもう、迷いはない。
「……ミレニアムプライスまで、後時間どれくらい残ってる?」
「あと、6日と4時間38分です。ということは、モモイ……」
「十分だね。それじゃあ、ゲーム開発部一同!」
そう言って彼女は勢いよく立ち上がり、皆の視線が一つに集まる。
「『テイルズ・サガ・クロニクル2』、開発開始ぃーーっ!!!」
「「「おーーっ!!!」」」
それから、一週間。邪魔しちゃ悪いと俺は部室に行くことはなかったが、先生の話ではゲーム開発部のみんながみんな鬼気迫る表情と気迫で制作に取り組んでいたそうな。
そして、発起から一週間後の今日。本来ならプライスに作品を提出する瞬間を先生と見守る予定だったのだが、急遽俺たち特異現象捜査部の部長(予定)から連絡が来て、顔合わせを行おうという申し入れがあった。それを先生に話したところ、“そっちを優先して“とのことだったのでエイミと一緒に渋々部室に向かった。
「あら、見覚えのある顔がありますね」
真っ白の機械式の車椅子に腰掛け、真っ白なコートにその身を包み、真っ白な長髪を背もたれの後ろに流す、幸薄そうな美少女がそこにいた。
名前は散々聞いていたが、顔を合わすのは初めてだな。
「初めまして。私は超天才清楚系病弱美少女ハッカーであり、ヴェリタスの元部長にして、あなた方特異現象捜査部の現部長、
なぜか何回も見たことがあるような気がする挨拶をかまされ、困惑する俺。隣のエイミも同様に驚きと呆れの入り混じったような表情をしている。その様子で固まったままの俺とエイミをよそに、ヒマリは一人で話を続ける。
「さて、早速ですが自己紹介をしていただけますか?一応名前とお顔はこちらで控えているのですが、あなた方の人となりを知っておきたいのです」
(なんか新学期のクラスと先生みたいになってきたな……)
するとエイミがスッと前に出てきて、ムッとした表情(怒っているわけではなさそう)で自己紹介を始めた。気合い入ってるのかな?
「私の名前は和泉元エイミ。一年生、特異現象捜査部所属。好きなものは扇風機と涼しいトコロ、嫌いなものは暑いトコロ」
エイミが紹介してしまったので、仕方なしに俺もそれに続く。
「暁月レイ。一年生で同じく特異現象捜査部。好きなものは武器で、嫌いなものは……出勤、とか?」
「ふふふ、とても個性的なメンバーになりましたね」
それは自虐か?とツッコミそうになるのを必死に抑え、冷静に言葉を選んでいく。
「で?今回集めさせられたのは、何も入部祝いみたいなことをするのが目的じゃないだろ?」
「あら、そちらも結構重要ですよ?組織において風通しが良いというのは、作戦遂行をスムーズにしてくれますから」
そう言って上品に笑い続けるヒマリ。一通り笑い終わると、彼女はどこからともなくミレニアムの校章が入ったノートパソコンを取り出した。
「ですが確かに……あなた方を呼んだのは、ある重要事項を二人にお伝えしたかったからです。そしてそのためには、特に貴女 レイの助力が必要不可欠なのです」
「オレの助力?なんでだ」
「それも含めてお話ししましょう。ではまず 」
そうして、ようやく本題が始まろうとしたその時、俺の携帯電話がズボンのポケットの中で着信音を鳴らし始め、それが部室一体に響く。俺は一応目線で彼女に許可をとると、ポケットからスマホを取り出し、その電話に出る。
相手は……先生だ。
「もしもし。何かあったか?」
“ごめん、今すぐ私のいる所に来てくれない!?“
「別に構わないが……何があった?」
“誰かがゲーム開発部の部室に攻撃を……ここにいるメンバーだけじゃ人手が……!“
「なんだと!?」
少しわざとらしいが俺らしからぬ声を上げる。今から色々話そうとしてくれているヒマリには申し訳ないが、明らかにこっちの方が優先だ。
「わかった、部長に言ってすぐにそちらへ向かう。それまで何とか持ち堪えてくれ」
“ありがとう……!“
先生が会話を結んで電話を切る。ヒマリの方に目を向けると、彼女の膝の上に乗せられていたノートパソコンは畳んで机の上に置かれ、いつの間に用意したホットコーヒーを優雅に楽しんでいた。
「行っても構いませんよ」
マグカップ片手にヒマリはそう告げる。彼女は既に俺たちの状況をある程度把握しているようだった。
「私の用事は火急の事態というほど深刻なものではありません。あの愚鈍から言い渡された期間はたっぷり残されていますし」
そう言ってコーヒーを一口啜ると、ヒマリは部室の奥の方へと入っていった。それを見届けた後、エイミが俺の方に振り向く。
「だってさ。私もここで待ってるから、気にせず行ってきて」
「わかった。一応だが部室と部長を頼む」
俺は壁に立てかけたフラガラッハを腰に巻くと、いち早く先生とゲーム開発部を援護すべく部室を飛び出していった。
レイ「そういえばヒマリ持ってないんだっけ?」
作者「限定と周年ガチャしか回さないからなかなか出ないんだよねー」
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