透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、Hakone8510です。
 先週の土曜日、ブルアカライブミニで百花繚乱編第二章開幕が発表され、今週の水曜に前半が実装。そして来週の水曜に後半が実装されるようですね。皆さんはもう前半、読まれましたでしょうか?
 先々週のでこのままデカグラマトン編続けるのかと思っていましたが、それらの更新は夏頃になりそうですねー。いやー、まじて楽しくなってきたぞブルーアーカイブ。

 さて、今回の主人公は、また新たな力に目覚めるようです。


未来を切り開く力の話。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

 視界の横を流れていく景色、埋めたてのセメントの匂い、そして心臓の鼓動と息切れした呼吸音。己の感覚器官のうち、人が外界を把握する上で重要な三つがそれらで支配されていた。

 先生からの電話があった時、自分としては落ち着いて話ができているつもりだった。だが実際は懸命に頭を回してどうすべきかを考えていたのですぐに動けなかったのだ。幸いにもヒマリとエイミのフォローによって我に返り、早期に部室から飛び出すことができたのだが……胸中に燻っているモヤモヤを完全に払拭することは、どうやらできていなかったらしい。

 走るペースを保ちながら片手に持ったスマホを開き、あらかじめ共有されている先生の現在位置を表示する。どうやら彼らは旧校舎の方へ向かっているようだった。確かにあそこなら人気(ひとけ)もないし、被害も抑えられると考えたのだろう。

 

「先生らしいな」

 

 素直な感想を溢していると、100mほど前方に立法体の形をした戦闘ロボットの大群が、ある一方向に向かって全速力で行軍しているのが見えた。

 そいつらが俺を視認するや否や、二手に分かれたのち一方の集団がこちらに銃口を向けながら近づいてきたのである。

 

「ちぃっ、面倒だ!」

 

 その様子を見るなり足を止めて剣を抜き、両手で持って正面に構え敵がくるのを待つ。堪え切れず飛び上がり襲いかかってきた奴らを、俺は片端から切り刻んで行った。

 

「こいつら……オレの足止めを……!」

 

 あらかじめそうプログラムされているかのように、俺が向かおうとしている方向の、もっと正確に言えばロボットたちも向かおうとしている方に行かせまいと、嫌なところに的確に配置されていく。そして何ぶん大量であるため、倒しても倒しても敵が湧いてくる。

 

(早く四人のもとに行かなきゃならないってのに……!)

 

 いつまでたっても振り切れないことに苛立ち、徐々に剣の振りが甘くなっていく。そうしていくうちにいつしか俺が斬った敵機の数よりも、新たに参戦してくるロボットの数が上回っていき、遂には完全に囲まれてしまった。

 

(ここで()()()を使うか?いやしかし  

 

 ウイングゼロのアーマーを纏ったところで、ツインバスターライフルをこんな近距離にいる敵に撃てばかえって自分が大ダメージを喰らってしまうし、その他の武装もビームサーベルにマシンキャノンと一対多の掃討戦には向かないものばかりだ。できれば使いたくない。かといって今の自分ではどうにも限界がある。

 ならどうするか?

 

「しょうがねぇ……」

 

 フラガラッハの弾倉部分を回転させ、唯一の空きスロットに入っていた特殊弾薬を抜く。そして懐から、抜いた弾薬とは違う色  緑色をしたものを同じ場所に挿し、照準を合わせる。そしてトリガーを弾きながら大きく横に振る。

 あの時と同じように切先の軌道から空間の裂け目が現れ、俺の意識と身体はそこへと呑みこまれていった。

 

 

 

 

 

 目が覚め意識がはっきりしてくると、眼前に広がっていたのは荒野だった。だがただの荒野ではなく、銃口を下にして地面に突き刺さるアサルトライフルが、規則正しく視界一面に並んでいる。その排夾口には6枚の花弁からなる美しい黄色い花が一輪挿してあり、それがらなおさらそれらの銃が墓標であることを際立たせていた。

 

「お前がレイか」

 

 あたりを見回して景色を一通り観察していると声をかけられ、そこで自分の目の前に一人の男が立っていることに気づく。麦色の肌にツンツンした黒い髪、そして焦げたような茶色の瞳をもつ青年。

 彼は俺をまっすぐ見つめ、何かを見定めようとしているようだった。

 

「お前も、ガンダムになろうとしているのか」

 

 ガンダム。それは彼にとって、様々な意味を持つ。救世主、英雄、確固たる意思、そして人々を繋ぐ存在。彼の人生を(かんが)みれば、その名前にある思いを知りたいと思うのは、至極当然であった。

 

「……どうだろう、今はよくわからない」

 

 それが正直な感想だ。そもそもこの世界で嘘偽りはできない。

 

「けど、アンタの……いや、あんたたちの望んだ世界は、着実にこのキヴォトスにも近づいてきている。俺は、その助けになりたい」

 

「……」

 

「それに、俺たち(神秘を持つものたち)に限った話だが……楽しい戦いっていうのも、あるものだ」

 

「……!」

 

 彼らにとって戦い  もっといえば戦争・紛争とは残酷なものであり、二度と繰り返してはならない惨事であろう。でもキヴォトスでは、そうとも限らない。拳を交えることだって、立派な交流、()()なのだから。

 

「だからあんたの力を貸してくれ。この状況を切り抜け、彼女(美甘ネル)と対話するための力を  !」

 

 だから俺は願う。オレが信じる、俺の神(先駆者たち)に。

 彼は俺の言葉に驚いていたが、その答えに満足したのかほんの僅かに口角を上げた。

 

「わかった。ならば使え、お前の理想を叶えるために!」

 

 青年はこちらへと手を伸ばすと、その手のひらから白い光が放たれる。そのあたたかさに微睡(まどろ)みを覚えながら、俺は意識を手放した。

 


 

 一方その頃、ミレニアム旧校舎。旧校舎といっても定期的に清掃されているのか建物内は綺麗で、それでいて全面ガラスの廊下やコンクリートの壁、シンプルにコーディネイトされた色調など近未来的なデザインの内装になっている。

 そんな立派な建物は今、戦場の舞台となっていた。

 

「くっ……」

 

「オラオラ、そんなもんかぁ!?」

 

 廊下の一本道で繰り広げられる、一対一の決闘。一方は、ミレニアム最強のエージェントこと美甘ネル。もう一方は、ゲーム開発部のパワー系機械少女の天童アリス。そしてその周りには戦いを見守るゲーム開発部とC&C、そして先生の姿があった。

 さながら勇者と魔王の決戦のように、二人は攻撃と防御、反撃の応酬を繰り返していた。側から見れば互角に思えるその戦いであったが、当の二人だけはこの戦況を一番理解していた。

 

(確かに力はつええし持ってる武器の威力はとんでもねぇ代物だ。アタシ含め人がそのちっちぇえ弾でさえ何発か喰らったらひとたまりもないだろう……だが、そんだけだ)

 

 アリスの身体能力は、確かにネルよりも優れている。ほとんどの生徒は彼女に単純な力で勝つことはできないだろう。しかしアリスを遥かに凌駕する彼女の技量と経験値によって、総合的に見れば戦況はネルに傾いていた。

 撃ち合いの末距離を詰め、二人の武器が火花を散らしながらかち合う。戦いはアリスがやや劣勢のまま、膠着状態にもつれ込んでいた。

 

「アリスは……っ」

 

「?」

 

「アリスは負けません……アリスの、みんなの居場所を守るために……!」

 

 そう言うとアリスは銃口を下に向けたままレールガンのトリガーを引く。

 

「ッテメェ、まさか……!」

 

 すぐに意図に気づいてその場から飛び退くネル。その瞬間、ドッという僅かな音と共に、まばゆい光の束が建物の床をいとも容易く貫通する。

 光が収まると、既にその場にアリスはおらず、先生に抱えられてゲーム開発部のメンバーと共に逃げる彼女の姿があった。

 

「リーダー!」

 

 カリンの急かすような、逆に自分が焦っているような声でネルを呼ぶ。呼ばれた彼女は瓦礫を軽々と持ち上げひょっこり出てくると、きょろきょろと辺りを見回して状況をあらかた把握する。

 

「おそらく彼女たちは保健室に向かったかと。いくら敷地内に二十以上あるとはいえ、すぐに見つけられるはずです」

 

「……そうだな」

 

 ネルが言葉を続けようとしたその時、彼女の動向がカッと見開かれる。

 

「全員、後ろに跳べ!」

 

「「「!!!」」」

 

ドカアアアァァァアアアン!!!

 

 先ほどアリスのはなった光とは異なる、真っ赤な光が天井から柱となって落ちてくる。幸い誰にも当たることはなく、徐々に光は細くなっていったが、四人はいまだに警戒を解かない。

 ほぼ円形に貫かれた天井からキィィイインという奇怪な音と共にゆっくり降りてくるのは、虫の羽のような二基のバインダーを両肩に携え、腕と足にアーマーを装備した少女の姿であった。

 

「まさか……彼女(暁月レイ)だというのか」

 

 カリンの言葉に彼女は答えない。人ともわからぬそれはバインダーと背中からは正体不明のオレンジ色をした大量の粒子を撒き散らしながら、音もなく地面に着地する。

 

ドゴッ!

 

「「「!?」」」

 

「カハッ……」

 

 それは、あまりにも一瞬の出来事だった。

 ゲーム開発部を追おうといち早く動いたアカネが、レイと思われる少女の一回り大きくなった脚で腹目掛け蹴りを入れてきた。アカネは咄嗟に空になった爆薬庫でガードしたためダメージを軽減できたものの、その衝撃までは抑えきれず吹っ飛び、壁にぶつかって気絶してしまった。

 

(確信した……こいつはアイツであって、アイツじゃねぇ!)

 

 アカネを蹴る時にネルが見た少女の瞳は、確かにレイの瞳にそっくりであったが、目つきは別人そのものだった。具体的に言えば、あらゆる死を目の当たりにしたかのような悲しみと、既に芯の通った確固たる意志を併せ持つ、まるで人生の答えを既に見つけたかのような目。同行した任務で見た、大きな挫折もまだなく、ただまっすぐ前を見据えるレイの瞳とは似ても似つかない、老兵の目だったのだ。

 

(あんな目ェする奴、卒業した先輩の中でも見たことが無ェ……)

 

 ネルは瞼を閉じて一つ、今年一番のため息をはぁーっとつくと、まともに動けずにいる後ろの二人の方を振り返る。

 

「カリン、アカネ連れて逃げな」

 

「なっ、リーダー!?」

 

「雰囲気で分かる。アイツはアタシと同類……近距離戦において絶対の自信を持ってる。お前ェの距離(間合い)じゃ敵わない」

 

「……クッ」

 

「……こいつはアタシとアスナが相手する。行くぞ、アスナ」

 

「りょーかい!」

 

 アカネの肩を担ぐカリンを守るように、前に立つネルとアスナ。背に抱え、カリンが後ろを振り向いた瞬間、二人と一体が正面から衝突した。

 


 

「ふーっ、なんとか切り抜けられたか」

 

 俺が今いるのは、ミレニアム上空。ロボの大群を何とか振り切り、現在旧校舎へと向かうところであった。

 

(さっき大きな爆発音が旧校舎の方で聞こえた……大丈夫だろうか)

 

 すると向かっている方向、すなわち近づいてきた旧校舎から、再び大きな爆発が起きた。それは先ほど戦闘ロボットを蹴散らす中で聞いたものよりも、一際大きく聞こえた。

 

(やばいな、これ以上は  

 

 するとピピピピッ、というアラームと共に、常備していた無線機から通信が入ってくる。相手は先生のようだ。

 

『“レイ、聞こえる?“』

 

「ああ、聞こえている。すまない、ロボットの相手に手こずって遅れてしまった。今旧校舎に着くところだ」

 

『“ああ、それなんだけど……既にそこからは脱出して、今は保健室にいるんだ“』

 

「えっ?」

 

『“せっかく来てくれたのに、ごめんね。今私たちの位置を送るから、よかったら……“』

 

「ちょっと待て、じゃあたった今旧校舎で起きた爆発は一体?」

 

『“えっ、そうなの?一体何が……”』

 

 あの爆発は、先生とゲーム開発部とは無関係。その事実が、俺の中に嫌な予感を想起させる。この感覚……先日のホシノ奪還作戦でアフロディテと対峙する前に感じた、あの感覚と似ている。

 

「すまない、少し切らせてもらう」

 

『“ええ!?ちょっと待っ  “』

 

 何かまずいことが、あそこで起きている気がする。そんな自分の直感に従い、全速力をもって現場へと直行するのであった。




レイ「この直感……これも、タイタンってやつの恩恵なのか……?」

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