透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうもHakone8510です。
 今週火曜のガンダムGQuuuuuuX、皆様ご覧になられたでしょうか。遂に宇宙世紀ではお馴染み『あのキャラクター』が出てきて考察厨の方々がざわついておるのをひしひしと感じております。本当に後三話でまとまるかこれ?

 さて、今回の主人公は、追加の真実をお出しされるようです。


嵐の後の静けさの話。

「それ以上の詮索は……少なくとも、ここではやめてもらおっかなー。()()()()()()もいることだし?」

 

 相変わらず飄々とした態度の、だが果たして同年代なのか怪しくなるほど大人びた雰囲気を纏った少女はそう言って、テュポーンの首根っこを掴む。対してテュポーンの方は、特に抵抗する様子もなく、ただアフロディテのなすがままになっている。

 当然、諸先輩方が逃亡をみすみす許すはずもなく、俺と二人を頂点とする三角形になるように二人を囲み、退路を塞いだ。

 

「てめぇ、どっから出てきたかは知らねーけど、このまま無事に帰れると思ったら大間違いだかンな?」

 

「あははっ、ちょっとお話し聞くだけだからねー!」

 

 そんな恐喝をされても、彼女が焦ったりする様子は見られない。力の差か、あるいは何か作戦があるのか、そんな余裕を含んだ笑顔を崩すことなく、アフロディテはただ俺と先生の方を見ていた。

 

「あなたが、先生?」

 

“うん。私が連邦捜査部シャーレの先生だよ“

 

「ふぅ〜ん、なるほどね?中々面白そうな()()してるし、二番目のお気に入りにしてあげてもいいよ❤︎」

 

 それでは一体誰が一番目なのか、というのにはツッコマないでおく。話がややこしくなるし、聞いても大して意味はない。それにどうせ……

 

「あれれ〜、一番は誰か聞いてくれないの、レイちゃん?」

 

 ほら、こんな感じで心を読んで聞いてくるのだ。会話するのも鬱陶しい。

 

「寂しいな〜。あたしはレイちゃんとお話しするの、大大大だぁ〜い好き❤︎なんだけどなぁ〜」

 

「……お前なぁ」

 

 こんなある意味高度なやり取りをしているもんだから、目の前でその様子を見ていた他三人は困惑して固まっている。そりゃそうなるよな……。

 それを隙と見たのか、アフロディテは右手に持ったテュポーンを腹の高さあたりまで持ち上げると、入ってきた窓の穴の方へと歩みを進める。

 

「おい、ちょっと待……」

 

 一番最初に反応できたネルが、その歩みを止めるべく彼女の肩に手を伸ばす。

 だが、彼女の指が、襲撃者の肩に届くことはなかった。

 

ギュオオオオォォォォン!

 

 突如月の光が巨大な人型で遮られたかと思うと、人間の眼の如きマゼンタ色のツインアイが闇夜に光る。

 そのシルエットには見覚えがあった。おそらくアビドス砂漠におけるホルス奪還作戦*1で、最後に俺のウイングゼロと交戦した黒いモビルスーツであろう。しかし、あのモビルスーツのパイロットは目の前のアフロディテのはず……誰かが代わりに乗っているのか?

 すかさず後退し様子を見るネルとアスナ、怯む先生をよそに、彼女は俺の目の前を横切る。

 

「そんな顔しないでよ。また後で()()()あげるからさ」

 

「!」

 

「じゃあレイちゃんと先生、機会があったらまた会お〜ね〜」

 

「おまっ、待ちやがれ!」

 

 一番最初に正気を取り戻したネルが慌てて再度手を伸ばすが、その時にはすでに上に向けられたMSの手のひらに乗っかって飛び立ち、夜の帷へと消えていった。

 

“……嵐のような二人だったね“

 

 ほぼ同じような感想を先生が代弁してくれる。俺たちは彼のぼやきを聞き流しながら、二人の去っていった方向をただ見つめることしかできなかった。

 

 

 

 一週間後。ついにミレニアムプライスが開催され、学園内はいつも以上に活気に満ちていて、多くの人でごった返していた。未来の科学の卵誕生の瞬間を拝見できるとなれば、注目が集まるのも当然と言えば当然である。

 そして、この日にはここ数週間面倒を見てきたゲーム開発部の存続もかかっている。そちらには先生がついているから、精神的なバックアップは大丈夫だろうが、多少心配の方が勝っている。

 

(気を落とさないでくれているといいが……)

 

 さて、そんなことを言っている俺は今どこにいるのかというと……。

 

「ねぇ見て見て!こんなに背の高いパフェ見たの初めて!すっごく美味しそ〜!」

 

 指先から二の腕くらいの高さはあろうかというチョコレートフルーツパフェを抱えるように持って対面に座ってきたのは、他でもない丁度一週間前の夜、テュポーンを回収していった張本人ことアフロディテである。

 ここは学園敷地内の一角、遠くに多くの取材陣のカメラで囲まれた発表ステージが見える位置の、プライスに合わせて外に備えられたイートインスペース、その四人用テーブルを贅沢に二人で使っている状況だ。目の前の彼女は一応ネルやアスナに顔が割れており、見つかったら大変なことになるにも関わらず、変装もせずに眼前に聳えるスイーツの山にぱくついていた。そのことについて聞くと、「ああ、周囲の認識を阻害する術を周りに貼ってるから大丈夫」とのことだ。……そういう問題なのだろうか。

 

「……ところで、なんだが」

 

「ん、ふぁに、ふぇいちゃん?」

 

 スプーンを頬張りながら答える蠱惑的な少女。せめて口の中のモン飲み込んでから喋りなさい。

 すると心を読んでいたのか、すぐさまごっくんという音が聞こえるほど勢いよく飲み込んだ。そんなに気を使わなくても良いのだが……。

 

「それで、どうかしたの、レイちゃん?」

 

「いや、その制服……もしかしてお前元々ミレニアム生だったのか?」

 

 ミレニアムの制服……黒と白を基調とした、白衣をモチーフにしたかのような大きめのジャージ。少しくたびれてはいたが、彼女もしっかりとその上着をオシャレに着こなしており、袖の裾がチャーミングな萌え袖になるよう改造されていたり、ところどころにラメっぽいデコレーションがなされていたりした。

 

「いんや、流石にこれは中古品だよ。いくら認識阻害があっても、雰囲気というのは大事だからね〜」

 

 そういうものなのだろうか。……まぁ話がつかえるからこの話題はこのくらいにしておくとしよう。

 

「それで、お前のいう()()()とやらは何だ?また俺の出自に関することか何かか?」

 

「ふふふっ、そんなに焦らないでよもー。ミレニアムプライスの受賞作発表までまだ時間あるんだからさー」

 

 いつの間にかパフェの上半分を食べ終わり、まるでどんぶりの底に残った米粒なり具材なりをかき込むように残りを一気に飲み込んだ。白いジャージや机には幸い飛び散っていなかったが、口の周りはチョコとクリームがたっぷりついてしまっていた。美人が台無しだ。

 

「そういうお前が一番焦ってるじゃないか……」

 

 仕方なしに俺は椅子から立ち上がると手持ちのハンカチで、やや力任せに彼女の唇の端に押し当て、台ふきんで机を拭く要領で汚れを(ぬぐ)っていく。机を乗り上げるようにして彼女との顔の距離が縮まったからか、彼女の瞳や口や鼻といった細部に目がいく。どれも均整がとれていて美しかったが、心なしか耳が赤くなっているような気がした。熱でもあるのだろうか。

 そうして口周りが綺麗になると、やや満足げな表情をしたアフロディテはグラスを片づけて再び席に戻ってくると、至極真面目な顔をして真正面からこちらを見てきた。

 

「で、ご褒美の話に戻るんだけど……君の話というよりかは、今度は私たちの話をしようかと思っていてね」

 

 なるほど、そう来たか。……まぁ色々と、気になってることはたくさんある。例えば、先週の()()のこととかな。

 

「ま、それも含めて色々と教えてあげるよ。じゃ、いくね……」

 

 そこから語られたのは、俺にとって衝撃的な内容の数々だった。

 

 

 

 世界が赤く染まるころ、俺はようやっと彼女から解放されて遠くからミレニアムプライスの発表を見ていた。6位まで順に発表されているところだが、今の所ゲーム開発部作「テイルズ・サガ・クロニクル2」の名前は呼ばれていない。

 だが、俺には確信があった。きっとあの作品は入賞するはずだ、と。プライスに提出したと同時に、複数のコミュニティにも投稿したのだ。その反応は案外っ悪くなかったどころか、前作によって妙なMっ気に目覚めてしまった者たちが共有・拡散をしてくれたおかげで閲覧数やコメントを徐々に伸ばしていったのだ。多くの人に、というのは難しかったかもしれないが、彼女たちのゲームが、確かに「誰か」に届いていた確たる証拠である。

 そんなことを考えているうちに、発表はついにベスト3にまで差し掛かった。今回の発表を務めるエンジニア部のコトリが、その作品について一つ一つ懇切丁寧に説明している。

 そんな折、誰かが俺の隣に立ってきた。

 

(……!)

 

 黒いコートを着ていて、そのフードの隙間から焦げたような茶髪にほぼ黒に近い藤の瞳が見える少女。ただ右腕から左肩と左足にそれぞれ包帯が巻かれており、左脇には松葉杖が挟まっている。纏う雰囲気は陰鬱そのものだったが、背丈含めてその姿は俺に非常によく似ていた。

 

「テュポーン、だったか」

 

「フッ、よく覚えていたなガイア」

 

 やはり、似たような声である。それは注意して聞いていなければ、自分の声なのか目の前の少女の声なのか、俺ですら判別がつかなくなるくらいに。

 俺がそんなふうなことを頭の中で逡巡(しゅんじゅん)させていると、今度はあっちから話題を振ってきた。

 

「あの女に色々吹き込まれた顔をしているな」

 

(……いやどんな顔だよ)

 

 いや本当にどんな顔?もしかしてあなたも読心術の類?

 

「半目になりそうになってるし、口の端が引き攣っている。大方あいつに話された情報の波に飲まれて、精神的疲労を催しているんだろう」

 

(なんかもはや心理療法師の診断結果みたいになってないか?)

 

「というか、あいつがここに来て『ご褒美』とやらを渡すのは知っていたからな。私はそれについてきただけだ」

 

「……なるほど」

 

 俺は相槌がわりにそういうと、しばらく沈黙の間が置かれる。今はプライス受賞作2位が発表されていた。

 

「オレと彼女の会話も、聞いていたのか?」

 

「というか聞こえていた。基本あいつの使う認識阻害の術は話している内容もぼかす効果があるが、私はその能力の対象から外れていた……というか、意図的に外されていた」

 

()()()()()()()

 

「推測でしかないが、アフロディテは自分が話した時のお前の反応を私に見てもらいたかったんだろう。全く、余計なお世話だ」

 

「……あれらの内容は、全て真実なのか」

 

「そうだ」

 

 彼女はいとも簡単にそう断言してみせた。動揺する俺をよそに、テュポーンは話を続けていく。

 

「あいつは最初の印象でいい加減でひょうきんな奴だと思われがちだが、普段の彼女の言動は非常に実直で誠実だ。一応私も内容を一つ一つ内容を確認していったが、嘘は一つもしゃべっていない。今話せないことはあってもな」

 

「……じゃあ、あれも真実だっていうのか」

 

 額から頬に、そして首へと伝っていく汗粒の感触がする。口が上手く開かない。なんとか気を保って、相手に言葉が届くよう意識して言葉を紡ぎ直す。

 

「お前が……オレの実の妹だってこと……!」

 

 俺とテュポーン……姉妹の間に、思わずよろけそうになる程の強い風が通り抜ける。遠くの方で、ゲーム開発部の名前が静かに、だが確かに呼ばれたような気がした。

*1
アビドス編第二章終盤の、ホシノを取り返すためにカイザーと戦った一連の事件のこと。レイが勝手にそう名付けただけ。




レイ「色々明かされすぎて、頭がこんがらがってきたな……一応先生に相談してみるか」

 今回で一応、第三章は完結となります。次回後日談を挟んでから、物語は次のステージへ……。
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