透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
この一ヶ月の連載休止期間中に、GQuuuuuuXの放送が終わってしまいましたね。いやぁ怒涛の展開でしたねー(ネタバレ配慮コメント)。まだ見てないよって方は、色々気にせず見てみると良いかもしれません。
さてはて今回からいよいよ新たな章、いわゆるエデン条約編に突入します。本章では物語が大きく動き、主人公のレイも大きく変わっていくこととなります。是非お楽しみください。
さて、今回の主人公は、新たな人々と出会うようです。
そういえばそんな始まり方だったなって話。
神の存在証明
それは古来より人々によって議論され続けてきた永久の命題であり、同時に人々が避けたがる禁忌の問いでもある
神はこの世の全てをつくりたもうた
絶対にして全知全能、完璧にして唯一
だが全てをつくりだしたというのなら、神は神自身をつくったのか?
究極の存在であるから、一人でに、自然発生的に生まれたとでもいうのか?
だとしても、神はどこから来たのか?
もし母なる存在から神が生まれたのであれば、その時点で神ではないのではないか?
これらの疑問に対する答えはたった一つだ
考えるな
ただ何も考えず主に仕え、主を崇め、主を讃えよ
聖書を開き、ミサへ赴き、賛歌を高らかに歌え
主がある限り我らはある
我らある限り主もまたある
ただ、拝み祈れよ
さすれば救われん
トリニティ総合学園ティーパーティ初代ホスト、須藤キリエ著『我が主』より一部抜粋
「ここがトリニティ総合学園か……大きいな」
久々に車庫から引っ張り出してきたバイクに跨り、正門をくぐってゆっくりと校内を進む中、俺 暁月レイはそう溢す。
周りからは奇異の目で見られているような気がするがが気にしない。だってミレニアムからトリニティってだいぶ遠いし、公共交通機関を使うと大分遠回りで時間がかかってしまう。となれば、バイクで行ったほうが早いし、交通費も浮くってもんよ。
トリニティ総合学園は俺の所属している科学技術のミレニアム、ヒナやアルなどが所属する自由と混沌を掲げるゲヘナと並ぶほどの規模で、それら三つの学校はまとめて3大学園と呼ばれることもある。中でもトリニティは規律と教義を重んじ、キヴォトスの中でもとりわけ貴族や豪農の家系の者、言ってしまえばお金持ちの子供たちが多く通っている。
そんなことを考えているうちに駐車場へ辿り着き、指定の場所でバイク停めて鍵をかける。車体から降りて鍵をしまい、駐車場の外へと歩いていくと、出入り口付近できっちりスーツを着た先生が待っていた。
「すまない、待たせたか?」
“いやいや。私もさっき来たところだから“
「そうか……ならば早速向かうとしよう」
俺が先生のやや斜め後ろに並ぶと、俺らはそのままある校舎の方へ歩き始める。先生を害するものがいないか周りをぐるっと見てみるが、通り過ぎていく皆が皆頬を赤らめ、とろけた表情で先生を見つめている。……別の方の心配をしたほうがよさそうか?
気を紛らわせるため、気になったことを話題に振ってみる。
「……そういえば先生、今回はどのような件で呼ばれたんだ」
“それが届けられた手紙には書いてなくてね。行ってみないことには分からないみたい“
そう言って先生が懐から取り出したのは、パール色の綺麗で整然とした封筒と、その中に入っていた同じくパール色の手紙。宛名には「ティーパーティ現ホスト 桐藤ナギサ」と書かれている。
ティーパーティ……一般的な学校における生徒会に相当する組織であり、三人の各派閥の代表がそのトップに君臨している。そしてさらにその三人の中から「ホスト」を決め、ホストとなった代表は強大な発言権と決定権を持つようになる。ゆえに毎日が派閥同士の勢力争いで、中には相当な過激思想を持つものもいるようだ。
そんな組織から送られている手紙だ、どんな依頼がされるかわかったもんではない。慎重に行かねば。
そんなこんなで話している間に、話で出ていたティーパーティのある建物前に辿り着く。先生は依頼人に取り次いでもらうため門前で立っている門番の一人に手紙を渡す。手紙を受け取り内容をくまなく確認すると、手紙を返し閉ざされていた門を開く。
キイィィィイ……
門が完全に開き切ったタイミングで、先生が足を踏み出す。俺も彼に続く形で敷地内に入ろうとする。
だが俺が門をくぐろうかという瞬間、立っていた門番がすぐさま抱えていた銃を構えると、俺の顔面目がけ銃口を突きつけた。
「本日お呼ばれしているのは『シャーレの先生』のみです」
「部外者は速やかにお立ち去り下さい」
二人は嫌味ったらしい感情をマシマシに乗せた声で脅す。
それほどまでに邪魔なのかい?一体何が話されるんだろうねぇ……もしかして
“ちょっと待って。彼女は私の信頼できる仲間なんだ、だから……“
「いかにシャーレの先生といえども、そのご意向には沿えません」
「もし従わない場合は、即刻発砲させていただきます」
にしても、客人迎えるだけでもこの騒ぎとは……どれだけ疑心暗鬼になってんだ、あの
しゃーない。こんなことに時間を使ってもどうしようもないし、素直に引き下がってやるとするか。
「……そちらの主は随分と気を張り詰めていらっしゃるらしい。先生、オレは適当に外を回ってるから、終わったらモモトークで知らせてくれ」
“……分かった”
先生の苦虫を噛み潰したような複雑な表情を尻目に、じゃ、と言って踵を返し、その場を離れる。しばらく行って振り返ってみれば、先生はすでに建物内に入ってしまっており、その姿を見ることはできなかった。
というわけで思わぬ暇に喜ぶにも喜べない、絶妙な心象を抱えながらどこへ行こうか思案すると、そういえばトリニティには古代図書館があって、そこなら何か自分の出生やあの事について何かわかるかもしれないと先生が話していた。思い立ったが吉日ということで、早速俺は図書館を探し始めるのだった。
それから1時間後。
近くのトリニティ生に場所を聞いたはいいものの、どれだけ歩いてもその図書館に辿り着かない。聞いた人の話ではティーパーティの建物から見ると、その図書館はちょうど敷地の真反対に位置しているそう。校内バスを使った方がいいと勧められたものの、学校についてからは先生についていくつもりだったためICカードはもってきておらず、財布にもそこまでお金が入っているわけではない。運賃結構高かったし、なるべく使いたくはない。
というわけで、せっかくだし運動にちょうど良いだろうと歩いてみたものの、10分くらい経ってからその決断を後悔経過しいてからは矛先のない恨みを心の中で持て余すまでになった。
「あー……まじで1時間前のオレをぶん殴ってやりたい」
それに加えて、今日という日は春と梅雨の中間、少し暑くなり始めたばかりの季節+例年よりも強い日差し+さっきまでの徒歩による運動のため汗と疲れで気分は最悪。手頃なベンチでも見つけて休もうかなーと考え始めていると
「〜♩」
「……?」
いつの間にか周りにあったはずの人々の気配が悉く消え去り、代わりに眼前で歌い踊る少女が一人。制服のまま、そして炎天下とまでは言わないまでも決して優しくない日差しの下で、優雅に、可憐に、貞淑に舞うその姿は、ルネサンス期の宗教画を思わせる。人が集まらないのが不思議なくらいだったが、彼女が、あるいはその空間がどこか人を寄せ付けないオーラを纏っていた。
しばらくその様子をぼぅっと見とれていると、不意に歌と踊りをやめてあちらから話しかけてきた。
「あなた、お名前は?」
「……レイ、暁月レイだ」
「ありがとう。観客が誰もいなくて寂しかったの」
儚げで声の高い、しかし全く不快でない綺麗な声が耳に響く。同時ににこやかに微笑む彼女の顔に、どこか見覚えがあるような感覚を覚えた。……テュポーンと、顔のパーツとかが所々似ている、のか?
俺は彼女に自然と誘導され、近くにあったベンチに二人で座る。彼女は俺の顔をにこやかに覗き込んで言う。
「レイ、あなたはどうしてここに来たの?」
「ああ、この先にある図書館に行こうと……」
「そこに、あなたの求めるものはないわ」
「えっ?」
まだ名前しか教えていないにも関わらず、俺が何を欲しているの知っているというのか?だが彼女の声色には自信の感情が乗っていたし、その整った顔にはどこか確信のようなものが見えた。
「一体、何を根拠に……」
だが、そんな自信をもって言われてもなお、言い返さずにはいられない。
「知ってるわ。なぜなら彼らとは知り合いだったもの……
「なぜその名を……!」
「あの子たちのことは昔から知ってるけど、これだけ規模の大きい学校にわざわざ自分たちの手がかりを残しておくなんて、そんな手抜かりはしないわ」
それよりも、あいつらの知り合いがこんなところにいるという事実が衝撃的すぎて、話の内容が頭に入ってこない。首を振って強引に頭を整理し、なんとか質問を捻り出す。
「……もしかしてお前も、タイタンなのか?」
「そう、あなたと同類。わたしも人によって造られた存在」
やはりか。踊っていた時に纏っていたあのオーラには、俺やアフロディテが能力を使っている時に感じるものと似ていたので、そこは納得である。
聞きたいことが山ほどあって、再度何から聞けばいいのかわからなくなる。目の前のスタイル抜群美女に見守られながら、しばらくまごついていると
プルルルルッ!!!
着信音と共に、ズボンの前ポケットが微かに振動するのに気づく。そこに入っていたスマホを取り出して待受を見れば、一件のモモトークの通知が。『“こっちは終わったから、言われた場所に集合しよう“』というメッセージと共に敷地の全体図を写したマップが添付されており、集合場所に赤いマルが書き足されている。幸いここから徒歩5分くらいの場所にある。あまり待たせなさそうでよかった。
「ふふふっ、時間切れね」
そう優しく笑うと、彼女はベンチから勢いよく立ち上がって、その場から離れるように数歩ほど歩いたところで俺も立ち上がって、彼女の歩みが止まる。そういえば、重要なことを聞き忘れていた。
「あんた、名前は?」
するとやけに大人びた少女は、絵画のように美しく半身こちらに振り向いてそれに答える。
「
オカと別れ、先生の指定した集合場所に向かうと、そこは正義実現委員会の教室がある建物だった。その入り口には、二人の人影が立っている。
「あっ、お久しぶりですレイさん!」
「ヒフミか」
ブラックマーケットを牛耳る真のアウトローにして、覆面水着団のリーダーファウスト……じゃなかった、自称一般通過生徒こと阿慈谷ヒフミさんじゃあないか。モモフレンズの厄介ファン……というかペロキチのイメージが強いが、多少ペロロ様に傾倒しすぎなところを除けば自己認識通りの良い意味で「普通」の女子高生だ。
「それで先生、結局ティパーティからの依頼内容は?」
“う〜ん、ちょっと説明が難しいんだけど……“
そうして説明されたのは、まぁ少々頭を抱えるものであった。
昔から「文武両道」を掲げるトリニティでは成績の振るわない落第生徒が出た場合、臨時的に「補習授業部」を設け、文字通り補習授業を受けさせてなんとか成績を向上させることになっているという。本来は学園の生徒会を担うティーパーティが運営すべきなのだが、差し迫る「エデン条約」の件もあって手一杯になっており、その代行を先生に頼んだと言うわけだ。まぁ、それは表面上の理由で、真の目的があるのだが……今言うのは野暮ってもんだろう。
して、不憫にも補習授業部に入れられることになってしまった四人の生徒を迎えにいくべく、先生はこの正義実現委員会のいわゆる派出所のような場所に来たわけなのだが……。
「お前が補習授業部入りとはな……」
「定期テストがある日に限定ペロロ様グッズの発売がありまして、どうしても外せず……あはは」
……うん、まぁそんなところだと思ったよ。
ただどれだけペロロに脳を焼かれていても、根は真面目な少女だ。このチャンスで必ず挽回できるだろう。
“さて、時間も押してるし、早速残りの三人に会いに行こうか“
先生は新たな生徒との出会いに若干わくわくした様子で、俺たち二人を引き連れ建物の扉を勢いよく開ける。すると、中に広がっていたその光景は
「 ッ何だ、まだ新たな敵がいたか」
「あらあら……また個性的な方々が……❤︎」
「ちょっと、アンタいつまで指定の水着だけ着てんのよ!?公序良俗ってモンを考えなさいよ!!!」
ガスマスクを装着し、アサルトライフルにバズーカやハンドグレネードなど、いつでも戦闘体制に入れるような格好の翼を持つ白髪の少女。
プールでないにも関わらず学園指定の水着……つまりはスク水のみを着て、若干頬を赤く染めて微笑むプロポーションバッツグンなピンク髪少女。
そして、その隣で猫目になり頬を真っ赤に染めながら至極真っ当なことを声高に叫ぶ、身長の低い正義実現委員会の生徒。
……そこはまさしく、地獄と呼ぶにふさわしい景色だった。
レイ「やっぱおかしいよこれ……掴みとしては十二分だけどさ」
作者「エデン条約編が愛される理由がわかるプロローグだよなー」
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