透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
平地で35度越えって、一体日本はどうなってしまったんだ?おかげで外にいる時は常時体力が削られてって、目的地に着いた頃にはもうヘトヘトよ。読者の皆さんも水分と塩分を適宜に摂りつつ、夏を楽しまれますよう。
追加で連絡なのですが、この度体調を崩してしまったためまた一ヶ月ほど休むことになってしまいました。連載を楽しみにしていた方には大変申し訳ございません。次回更新は8月15日を予定しています。
さて、今回の主人公は、イカれたメンバーと邂逅するようです。
それから数十分後。運転席に先生、助手席に俺、そしてその後ろに今期の補習授業部メンバーを乗せた車は、指定された校舎へと向かっていた。
さて早速だが、今回の補習授業部のイカれたメンバーを紹介するゼ!
どんな状況においてもペロロ様を優先するペロロ愛好家にして、テロ組織「覆面水着団」のリーダーファウストこと、阿慈谷ヒフミ!
一見クールで真面目そうな顔して過激(テロ的な意味で)なこと考えてやがるしそれを実行しちゃうガスマスク少女こと、白洲アズサ!
ぱっと見純粋で清楚に見える顔して過酷(エロ的な意味で)なこと考えてるしそれを実行しちゃうスク水変態少女こと、浦和ハナコ!
そして、元正義実現委員会にしてエッチな言葉に超敏感、思春期真っ只中のシンプルに成績不振な少女こと、下江コハル!
以上の四人でお送りするゼ!!!
……脳内でパンクバンドの司会風にメンバーの紹介を軽くしたところで、車のバックミラーで後部座席に座る四人の様子を伺う。
まずヒフミは進行方向から見て一番後ろの右側の席にちょこんと座って、笑顔でありながら困ったような様子で他三人を観察している。続いてその隣に座るアズサはいまだにガスマスクを顔に装着したまま、小脇に愛用のアサルトライフルを抱え周囲を警戒している。アズサの前の席に座るハナコは指定の水着を着用したまま、なぜか若干頬を赤らめつつ隣に座るコハルに息を吹きかけたり、エッチに聞こえるエッチじゃない単語を言い合うゲーム(参加者一人)をしたりしている。そしてコハルはエッチな単語がハナコが発されるたびに猫目で「エッチなのは駄目!」「死刑!」と構わず叫び続けていた。
先生が運転している間、代わりに話しかけようかとも考えたが、あまりにも状況が煮詰まりすぎていて既にカオスな状態だ。とりあえず教室に着くまでは黙っておくとしよう。
着いた建物は、トリニティの主要な施設が集まるメインストリートから結構離れた場所にあった。明確に壊れたような部分は見受けられないが、窓のへりが少し汚れていたり僅かにレンガにヒビが入っていたりなど……多少年季の入った建物であることは一目で分かった。
ひとまず車から降りて指定された教室へ誘導し、車庫へ車を入れ終えた先生が帰ってきたところで、恒例の自己紹介タイム。所々で悶着がありつつも、なんとか四人分が終わると、では改めてという言葉に続けて先生が自己紹介を始めた。
“こんにちは、私は連邦捜査部「シャーレ」の先生だよ。今回はティーパーティの子たちからの依頼で、みんなの面倒を見ることになったんだ。よろしくね“
俺も彼に続いて、自分の身分と名前を明かす。
「オレはミレニアム所属のシャーレ直属生徒、暁月レイだ。よろしく頼む」
さて、それを聞いた四人の反応はというと。
ヒフミは前にアビドスの一件で会ったことがあるので「こちらこそ、短い間ですが今回もお世話になります」と親しみをもって挨拶を返してくれる。アズサは腰に着けたフラガラッハを見て「剣……?接近戦が得意なのか……?」と興味を示し、さすがに制服に着替えたハナコは「ボーイッシュタンクトップスキニー女子……こちらも負けられませんね❤︎」と謎の対抗意識を燃やし、コハルは頬を更に赤くして「なんで変態が二人もいるのよっ……!」とハナコと同類扱いをされていた。このタンクトップそんなに破廉恥か?
閑話休題。一通り互いの名前と人となりを知れたところで、補習授業部の概要についてメンバー全員で確認していく。
まず補習授業部の最終的な目標は、この部にのみ課される三回の特別な試験のうち、一回でも「全員同時に合格」することである。これを達成した場合、晴れて補習授業部は解散となり、通常の学園生活へと戻ることができるのだ。ただしもし一回目の試験で条件を満たせなかった場合、もはや何にも使われていない旧校舎に合宿することになるというのだから、一回目だからといって油断してはいけない。
次は活動内容についてだが、主に2種類存在する。一つ目は先程言及した補習授業部専用の補習試験。二つ目は、毎日の授業に加えて追加の授業が行われる、ということだ。個人的には、今まで自由な放課後を過ごしていたものにとってはかなりツラいもののように思えるが。
「まぁ授業といっても、この教室に来て各自自習するだけなんですけどね」
とヒフミは付け加えた。
それに、試験といっても通常の試験範囲と大差なく、しかも先日行われた定期テストの範囲と同じところから出題される。ペロログッズに振り回されているだけで普段の勉強は怠っていないヒフミ、「先生」としてある程度教えられる先生の助けを借りれば、そこまで難しい話でもないだろう。俺もどこか助けになれる部分があるかも知れないしな。
ちなみに俺のテストの点数は毎回平均点付近を上下しているだけなので、対して面白みもない。テストの面白みってなんだよ。
さてそんなわけで、互いに教え合いながら落第を免れるために頑張ろうと意気込んだのだが……。
「言っておくけど、私は認めないから!」
約1名、現状を受け入れられない少女がいた。コハルである。
「私は、正義実現委員会のエリートなの!あんたたちと馴れ合うつもりなんてないし、こんな部活さっさと抜けてやるんだからっ!」
……まぁ、彼女の言わんとしてることは分からんでもない。さっきの自己紹介の時も「私が試験に落ちたのは飛び級のために一つ上の試験を受けてただけだし……!」と弁明していたところからも、正実*1に所属しているというプライドがあるんだろう。そしてそれを守るために、必死に綻びを取り繕っていると言ったところか。横の先生も同じようなことを考えているようで、困ったような様子の笑顔を浮かべている。
口を出すべきかとも考えたが、数回にわたるノンデリ発言によって俺は学んだ*2。こういう相手に口を出してしまうと普通に嫌われるので、なるべく喋らない!もちろん激励する時やプライドをへし折るためには必要かも知れないが、今それをやるとかえって逆効果だ。ここは流れに身を任せるとしよう。
そうしているうちにコハルとハナコは言い合い……というよりはコハルが言ったのに対してハナコがやんわりと正論で返しているだけだったが、とうとう堪えきれなくなって教室を飛び出して行ってしまった。
早速の険悪ムードに一抹の不安を抱きながらも、 その日は一旦解散ということで三人は各々の寮へと戻っていった。
俺たちはシャーレに帰らず、近くのホテルに泊まることになった。バイクを隣に、先生をその反対側にして並んで歩く。
“なかなか個性的な生徒たちだったねぇ“
個性的で片付けるにはだいぶ尖った皆々様だったと思うが。と言う割には、これからの物語にワクワクしている様子だった。まぁ、そんぐらいの心持ちじゃなきゃ先生なんてやっていけないだろうから、つくづくこの人は先生向きな性格をしている。
そんなことより、俺には先生に聞かねばならないことがある。
「ところで、先生」
“どうしたの?“
「オレが離れている間……ティーパーティの奴らと、一体何を話していた?」
本当は後々先生から話してくれるのを待つつもりだったが、今後二人きりで話せる機会は当分訪れそうにない。二人でしか話せないことは、今のうちに共有しておいた方がいいと考えたからだ。そしてその最初の質問として、最も切り出しやすく自然なこれを選んだ。
“う〜ん。色々説明が難しいんだけど……“
そう言って先生が話しだしたのは、その忠告通り理解に苦しむものだった。
長年、といっても学園の創始レベルから抗争の続いていた三大学園のうちの二校、トリニティとゲヘナ。だが近々、これらの間を取り持つ「エデン条約」の調印がなされると言う。その内容は、両自治区の紛争解決を行う「エデン条約機構」、通称ETOを設立し、二校が互いに同機構の構成員を供出し合うことで二校の全面戦争を未然に回避するというもの。元々ゲヘナの前生徒会長に対抗するべく連邦生徒会長が打ち出したものだったらしいが、それを現ティーパーティホストの桐藤ナギサが受け継ぐ形で調印式の開催まで漕ぎ着けたのだそう。
それの何が関係あるのかというと、現在トリニティに条約締結の阻止を目論む「裏切り者」がいるのではないかという疑惑がナギサにはあるのだという。
そこでナギサは成績不振というのを理由にして、「裏切り者」の可能性がある、もしくはそれに対する措置の材料になりうる生徒*3を補習授業部に編入したのだ。そして表向きは落第間近の生徒たちを救うこと、その裏でその中にいるであろう「裏切り者」を見つけだして欲しい。それが、ナギサが秘密にして欲しかった理由なのだろう。
「なぜ、そんな依頼を受けた?」
“いや、それに関しては拒否したよ“
いつものように先生は言う。だが聞き飽きない、先生らしい回答だった。
“私はどんな生徒も見捨てたりはしない。例え、私たちの前に立ちはだかる敵となっても、ね“
「ならば、俺は先生についていくだけだ」
“ふふ。今回もよろしくね、レイ“
地平線とビル群の向こうに沈みかけた日の光が、星空の端を黄昏色に染め上げる。背後から吹くぬるい風が、夏の訪れを静かに告げていた。
翌日。
15時を回った補習授業部の仮教室では、四人の生徒が懸命に教科書と向き合っていた。それを俺と先生は並んで教室の端から見ている状況。たまに四人は互いに教え合って、昨日の雰囲気とは打って変わって今日のは意外にも和気藹々としている。
俺も俺とて貸し出されたトリニティ指定の単語帳を開きながら、その様子をじっと観察している。ってゆーか覚える単語数結構多くね?いやミレニアムが少ない(というより言語や歴史などよりも実践や論理の方が重視されている)だけかもしれないが、それにしたって多い。どうやら現代英単語や長文読解に加えて古語読解、リスニングなどもある複合的なテストのようだ。そんな厚みのある試験が国語・数学・理科・社会の合計五科目。加えてこれが毎期末にあるというのだから、俺だったら気が滅入ってしまうだろうなと他人事のように考える。
さっきも言ったように、四人の仲は結構良好だ。コハルがまだプライドの強さによる反発が目立っており、少し取り残されているようなふうに見える。だが勉強となれば真剣になるのか、ハナコは無視されても懸命に色々と教えようと奮闘している。アズサはハナコの言うことをよく聞いて勉強に励んでいる。勉強に対する意欲はあるので、今までの成績不振は元の環境が原因だったのだろうか。ヒフミは自分のペースでゆっくり問題を解いている。勉強しなれたものの勉強、どんなこともコツコツやってきたものが、勉強でも同じようにやってきたものの確かに力の表れといえよう。とにかくかなり集中している状態にあったのだ。
この調子なら、一発合格もそこまで難しくないのでは?そう思い始めていた俺は、先生と同じく傍観を決め込むことにする。ま、例えここで落ちてもあと二回チャンスがあるし、そこまで急がなくてもゆっくり点数を上げていければなーとふと思う。
だが、その安易な思案は致命的な油断でもあった。
時は流れ、一週間後。
第一回目のテストを終え、いまかいまかと結果を待つ補習授業部のメンバーたち。すると結果の入ったA4の封筒を受け取った先生が、教室内に入ってくる。
“きたきた、結果がきたよ“
「おお、ようやく……!」
「楽しみだ」
「ふふふ……❤︎」
「フン、結果なんて分かりきってるわっ!」
四人が四人各々のリアクションをとる。先生はその間に封を開けて、試験の結果が印刷された通知書を指で挟む。
今回の試験では、全教科の合計を100点換算した場合、60点……つまり全体で六割とれていれば合格なのだそう。聞いた限りではギリギリ行けそうな気配がしているが……?
“いくよっ!“
封筒から通知書の神が勢いよく抜き取られ、黒板にバァンと叩きつけられる。四人と俺が先生の背中からそれを覗き込む。そこには
第一次特別学力試験
・阿慈谷ヒフミ:72点(合格)
・白洲アズサ:32点(不合格)
・下江コハル:11点(不合格)
・浦和ハナコ:2点(不合格)
「……え」
それは、誰の悲鳴だったか。教室内に一瞬こだまする。
「ええええええええ〜〜〜〜〜〜!!!!????」
それは、現状を唯一受け入れられない、誰よりも真面目で、かつ誰よりも破天荒な少女の、悲痛な叫びだった。
レイ「俺も別に成績がいい方じゃあないが、さすがに赤点以下までは取ったことないぞ……」
作者「トリニティのテストってどんくらい難しいんだろうなぁ」
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