透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
9月は自分にとって嬉しいイベントが結構あり、期待に胸を膨らませております。意外とこの時期ってイベントが多い印象を受けるのですが、皆様はどうでしょうか?コメントでぜひ教えてくださいね。
さて、今回の主人公は、久しぶりの人と再会するようです。
店内はその外から見た印象とは違って、貴族らしいラグジュアリーな雰囲気を呈していた。ウェイターに案内されて大人数用のテーブルに皆が座ると、早速注文をすることにした。
「いらっしゃいませ、ご注文はいかがいたしますか?」
「ええっと……限定パフェを頼みたいのですが、まだありますか?」
「ああ……申し訳ありません、先ほど別のお客様が三つ購入されたのが最後でして……」
パフェを三つも!?(発作)
にしてもパフェと一口に言っても色々な種類があるが、他のスイーツと比べて大量の生クリームが使われているおかげで一つ食べただけでも500キロカロリーが胃にダイレクトアタックしてくる。それを三つとなれば、少なくとも推奨される一日での摂取カロリーの大半がパフェだけでとれてしまう計算になる。なんか想像しただけで胃もたれしてきた……。
「既に奪われていたとは……って、ん?」
アズサが何かに気づいて、丁度向かいの席の方に視線を向ける。それに釣られて俺たちもその方向を見やる。
「あら……ってせ、先生?それに、補習授業部の皆さんまで……」
「は、ハスミ先輩!?」
そこには既に二つのパフェを平らげ、今まさに三つ目のパフェを食らわんとする正義実現委員会副部長、ハスミの姿があった。
「あらあらハスミさん、奇遇ですね❤︎。確かダイエット中だとお伺いしたのですが……欲望が抑えられなくなっちゃんたんですね❤︎」
「そ、それは違っ……こほん、それよりも補習授業部の皆さんは、合宿中は外出禁止のはずでは……?」
あ、確かに彼女はどちらかといえばティーパーティの味方だし、もしかしてまずいか?
「……いえ、ここはお互いに見なかったことにしましょう」
“ほっ……“
「場を悪くして申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが、この後しばらくお喋りでも……」
すると彼女の言葉を遮るかのようにヴヴヴヴ、という低いバイブ音が鳴る。どうやらハスミが持つ無線機から鳴っているようで、懐から取り出し通信をONにする。
「はい、どうかしましたか?」
『ハスミ先輩、ちょっと問題が発生しちゃいまして……今どちらに?』
明るさと暗さを兼ね備えたかのような声が通信機から聞こえる。名前はイチカといい、正義実現委員会の2年生らしい。
「問題?詳しく聞かせていただけますか?」
『学園の近郊で、ゲヘナと思われる生徒たちが無断侵入、加えて無差別銃撃しつつ周辺施設を襲撃している、との情報が……』
「襲撃!?……もしや、ゲヘナ風紀委員、あるいは万魔殿が……まさか、エデン条約を邪魔しようと……!?」
ハスミが焦りと怒りの入り混じったような声で言う。そういえばここに来る前、コハルが「ハスミ先輩がゲヘナ絡みの案件でストレスが溜まり切っている」って話していたっけ。
が、いつものことなのか慣れきった様子でイチカがすぐさま否定する。
『あ、いえ、別にそんな大層で大群ってわけじゃなくて……どうやら襲撃の犯人は「美食研究会」らしいっす』
美食研究会。
『ところでハスミ先輩、今どちらにいらっしゃるんすか?ツルギ先輩が今にも飛び出しちゃいそうで……あっちょっと待ってくださいツルギ先輩、そっちは壁で 』
ドンガラガッシャーン!!!
「……分かりました。すぐに現場に向かいます」
ハスミは無線機に耳を傾ける傍ら目にも止まらぬスプーン捌きで三個目のパフェを平らげると、そう言って通信を切った。その驚きの吸引力は、まさに歩くダ◯ソンのよう。
「すみません、お会計を」
「は、はい。承知いたしました」
そして店員側の協力もありスピーディに会計を済ませると、ハンカチで口周りの汚れや食べかすを拭いながら振り返った。
「……みなさん、ご協力お願いできますか?」
「えっ!?」
「我々正義実現委員会は元々数あるトリニティの派閥の一つであり、今もなおトリニティを代表する自治組織の一つです。あまり言いたくはないですが、言い換えれば我々はトリニティを象徴する存在でもあるということ。それがもし正攻法で、有名なゲヘナ所属の集団と対峙する……」
「!」
勘の良いハナコがすぐさまその事情に気づく。遅れて先生と俺、その次にアズサとヒフミもそれぞれどういうことなのかの答えを得ていた。*1
「平時ならまだしもエデン条約調印間近の今、万が一にも『トリニティとゲヘナの衝突』があったと噂されてしまうと、イメージの大幅なダウンにつながります。最悪の場合、調印式の中止なんてことも有り得る……そこで学園間の問題解決を担う部署としての信頼と実績を確立してきた『シャーレ』、そしてトリニティの象徴となり難い
要するに、今ゲヘナと交戦するのは外聞が悪いから、現在トリニティとは関係の薄い俺たちにその対応を任せたい、とのことだった。
“分かった。じゃあ引き受けるよ“
俺はともかく、生徒が困っているのを先生は放っておけない。彼がそう答えるのは容易に予想がついていた。
“みんな、準備は大丈夫?“
先生が皆に目配せをすると、ハナコとアズサは即座に、ヒフミとコハルはまごつきながらも深く頷く。無論俺も静かに肯首した。
“よし、じゃあ行こうか“
ドカアァァン、バコオォォン、ズドオォォン!
爆発音、爆発音、そこかしこから爆発音。現場は既に雅も風情もない花火会場と化していた。
「我らが美食の道を阻むものは、何人たりとて許しはしません!」
「トリニティのみなさ〜ん、ちょっとそこどいてくださいね〜⭐︎」
「ちょっと!本当に大丈夫なのコレ!?」
「うわっ、またマグロがビンタしてくるよ〜っ!?」
その騒動の中心には勇気を出して立ち向かってきたトリニティの生徒や雇われの警備隊員などを
「ゲヘナ風紀委員会に何度も捕まっている常囚犯らしいが、あの様子を見る限りかなり実力はあるようだな……」
“少人数なのが幸いだね。これなら、そこまで時間をかけずに制圧できると思うよ“
建物の陰から彼女たちの様子を観察しつつ、先生は手元の端末を起動して指示を送り始める。
“まずレイが前に出て場を乱しつつ、相手の注意を引きつける。コハルはグレネードで相手に追撃しながら、ヒフミはデコイで相手を撹乱しながら、同時に弾幕要員としてレイの数メートル後ろにポジショニング。ハナコとハスミはここで遠距離射撃と後方支援をお願い。そして一番重要なのが……“
そう切り出すと、先生は端末から顔を上げ、アズサと目線を合わせる。
“アズサ、君には私たちが彼女たちと交戦している間に彼女たちの後ろに回り込んでもらって、相手全員の注意が完全にレイの方に向いた瞬間に人質を救出してほしい。正直一番難しい役割かも知れないけど、頼めるかな“
「了解だ。実践は初めてだが、潜伏の訓練は幾度となく受けてきた。任せてほしい」
彼女は少しも考え込むことなくそう答えた。正義実現委員会を相手に一人で長時間耐え続けた実績に加え、これだけ自信があるのなら心配はいらないだろう。
“よし、それじゃあ皆《s》 《/》作戦開始だ“
それを合図に、各々がそれぞれの役割を果たすべく物陰を飛び出した。俺は一度建物の屋上へワイヤーを使って登り、テロリストの位置を確認する。そうした後フラガラッハを鞘から抜き、左でにハンドガンを携えると、鍛え上げた脚力でもって天高く跳躍する。
「!」
集団の先頭でスナイパーライフルを構える銀髪の少女が真っ先にこちらへ顔を向ける。あれがおそらく美食研究会のリーダーだろう。あえて目立つように爆煙を避けてこの身を晒したが、放物線の頂点に至る前に気づかれるとは、リーダーだけあって流石に勘がいい。
彼女はすぐさま銃口を俺の方へ向け、今にもその銃弾を放たんとしていた。いくら神秘があっても
(俺もただ自分の能力頼りってわけじゃない)
逆上がりの要領で両足を空中で振り上げ、頭を下にして急降下し、撃たれる前に地面に着地する。それに対応して彼女の方も三発ほどこちらに撃ってくるが、全て剣に弾かれた。
そこでようやく、テロリスト全員の視線がこちらへ向く。
「お前たちか、ここを荒らしまわっているというテロリストは」
「あら、新たなお客さんですね。もしかしてお一人で?」
まるでレストランに来店した客に人数を聞く店員のように、リーダーと思われる少女が答える。
「いや、俺も含めて4人だ。だが生憎食事している暇はない」
「おや残念です。あなたも美食の素晴らしさをわかっていただけないとは……」
彼女は心底残念そうに、その白磁の頬に手の平をそえる。
彼女と会話していると、話がややこしくなりそうだ。早速本題に入ろう。
「今すぐこのテロ行為をやめ、後ろの人質を開放しろ。そうすれば、今回に関しては見逃そう」
「それはできかねませんわ。それに後ろの彼女……愛清フウカさんは、非常に優れた料理人。それを腐らすゲヘナ給食部と言う箱庭から、彼女を救い出したに過ぎません」
「彼女は望んでそこから助け出されたと?猿轡と縄で縛られている今の様子を見る限りは、そうには思えないがな」
「あそこで低品質な料理を作り続けることが損失だと言っているのです。そのために我々美食研究会がいるのですから」
「彼女の意思は関係ない、ということか。ならば……」
剣を逆手に持ち、腕をクロスしてHEAVY-GUYSを彼女ら目掛け構える。
「俺がお前らと戦うには、十分な理由だ」
胸中に益々立ち込める不安をよそに、俺は眼前の敵を静かに見据えていた。
「何やら騒がしいな……祭りでもやっているのか?」
「ちょっとそこの人!」
「ん?」
「その見た目、この辺の人じゃないでしょう。自治区内への夜10時以降の部外者の立ち入りは禁じられているはずですが」
「……」
「はぁ、おそらく知らずに入ってしまったんでしょう。ついてきてください、外まで送りますから」
「いや、その必要はない。私は今夜用事があってここに来たのだ」
「では、その許可証は?」
「いや、持っていない」
「もーなんなんですか。それならここから一旦出て、関所の方で手続きしないと……」
「……親切なのだな、お主は」
「……いきなりなんなんですか、恥ずかしいこと言わないでくださいよ」
「だからこそ、今からすることは非常に心苦しい」
「え?っツ!?」
バタンッ
「黒のセーラー服にアサルトライフル……噂に聞く正義実現委員会の生徒だったか。じきに侵入者がいることが奴らに知れ渡ってしまうだろう、その前になんとか奴と接触せねば……」
「今宵は戦いの宴。待っておれ、暁月レイ」
レイ「何この人こわ……もしかして戦闘狂タイプ?」
作者「物語だとこーゆー人結構出てきたりするよねー」
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