透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、夏の終わりが見えないことに絶望しているHakone8510です。
 夏が終わらないからといって夏休みが伸びると言うのはないんですかね……あ、ない。そうですか……(泣)。というのはさておき、いまだにプールとかいけてないのでこれを機に行ってみようかなーと考えております。泳いだ後に食うアイスを食べに行っていると言っても過言ではない。

 さて、今回の主人公は、戦の神と戦うようです。


戦士と戦士は引かれ合うって話。

 開戦の合図も無しに、あちらの方々(美食研究会)からの一斉射撃が始まる。それを剣で受け流し、時には避けながら距離を徐々に詰めていくが、流石に4人がかりの弾幕を1人で受け切れるほど上達してはいない。

 しかし、俺だって何も1人で彼女たちに立ち向かおうとは最初から思っていない。

 

バシュウッ!

 

「うわっ、何これ急に生えてきたキモい鳥!?」

 

 テロリスト集団の中で一番真面目そうな赤髪ツインテールの子の近くにディスクのようなものが投げられたかと思うと、そこからキモい鳥ことペロロの形をしたデコイが急に出現した。

 前々から思っているんだが、ペロロって言うほどキモいんだろうか?

 

「キモくないです!ペロロ様は可愛いモモフレンズのキャラクターなんですぅーっ!」

 

 我慢できなかったのか、物陰からひょこっと顔だけ出して赤髪ツインテールの子に猛抗議するヒフミ。本来なら敵に位置を知らせてしまう危険行為だが、そこはナチュラルボーン狂人にして覆面水着団リーダー「ファウスト」。眉を顰めて困ったような顔をしていきなり定位置から飛び出したかと思えば、銃弾を華麗に避けつつ別の建物の後ろに移って行った。

 ヒフミとペロロデコイに注意を逸らされている隙に、彼女たちの傍で爆発が起こった。

 

「おやこれは……グレネード?」

 

「トリニティの街をこんなに荒らして……絶対許さないんだから!」

 

 金髪黒角少女の言葉に反応して文句を言いながら、次弾のグレネードを構えつつ小脇に抱えたM1917エンフィールドを構えるコハル。数発撃ってヒフミとは別方向の建物の方へと身を隠した。

 彼女も普段こそちょっと子供っぽいところのある愛すべき馬鹿といった印象だが、元々正義実現委員会に所属していたことを考えれば、今の彼女の身軽さも納得だ。

 さらに……。

 

ダアァン!

 

「うぎゃあ、頭痛ァッ!?」

 

「今のを『痛い』で済ませるとは……やはり相当な手練のようですね」

 

 巻き角で灰色髪の少女のおでこにはよく見ると微かに焦げたような跡がついており、その下には既に原型をとどめていない30口径弾が転がっていた。……いやハスミの言うとおり、なんで人差し指ほどの大きさがある銃弾を頭に受けて致命傷どころか痛いで済んでいるのか。神秘恐るべしである。 

 そして、万が一怪我をしても心配はいらない。

 

「ハアッ!」

 

「クッ、脇腹を掠めたか……」

 

 すると、後方から放物線を描きながら「何か」がこちらに降ってきたかと思うと、それはなぜかピンク色をした水たまりを形成した。その範囲内に入っていると、みるみるうちに傷が回復していく。

 

「快楽、いえ回復なら私にお任せください❤︎」

 

 どういう原理なのか、そもそもどうやってこのフィールドをつくり出したのか……それはあまり聞かない方がいいだろう。ただ一点、このピンク色の空間は非常に蒸し暑かったということだけは言っておく。

 ともかく、このような万全の布陣を構えている我々によって、テロリストたちの勢いは徐々に削がれていった。

 

「……フフフ」

 

 だが、そんな状況に反してその頭領は不敵に笑う。ここまできてもまだ何か「策」があるというのか?

 

「……ではそろそろ、失礼いたします〜」

 

 それを合図にテロリストの4人は、それぞれバラバラの方向へと駆け出した。つまりは戦略的撤退というヤツである。

 

「逃がすものですか……!」

 

 ハスミが堪らず追いかけようとしたところで、再び彼女の無線機に通信が入ってくる。その間に俺たちはハスミの元へと集まり、潜伏してすぐ後ろまで近づいていたアズサが、なんだか拍子抜けといった顔で人質の少女の縄を解いていている。

 

「どうしたのですか、イチカ?ツルギがまた何か建物を破壊でもしましたか?」

 

『あはは、それに関してはもはや手遅れというか……』

 

「……では、今しがた逃げていったテロリストの行方が掴めなくなってしまったとか?」

 

『そっちは既にドローンで追跡してるので問題ないっす。1人1人なら、こっちでも捕まえられるっすから』

 

「では、一体何が……?」

 

『実はっすね……どうやらもう1人、規則を破って自治区内に侵入してきたのがいるらしいんすよ。一応正義実現委員会(こっち)の子たちを向かわせているんですが、ことごとく返り討ちに遭っているみたいで……』

 

「なるほど……ではテロリストたちの方はそちらに任せるので、新しい侵入者の場所を送ってもらえますか?私と先生で対処します」

 

『了解っす〜』

 

 そうして無線が切れると、数秒もしないうちにハスミのスマホが鳴る。画面を確認した彼女はこちらに振り向くと、少々申し訳なさそうな表情をして口を開いた。

 

「申し訳ありません、皆さん。もう少し我々の仕事に付き合ったくださいますか?」

 

 その言葉に全員が頷く。せっかくここまで来たのだから、どうせなら最後までやってやろうという気持ちが皆強いのだろう。特に先ほどの戦闘で消化不良だったのか、ばにたす顔*1で何度も頷いている。気合いは十二分だ。

 

「分かりました、では私についてきてください」

 


 

 私は飢えている、戦場に漂う血肉と爆煙の匂いに。

 私は求めている、新たなる強者たちとの戦いを。

 

 私は任務という枷に、組織という檻に囚われ暇を持て余していた。

 自分の所属に不満があったわけではない。強者に囲まれ切磋琢磨し合うという環境は私がまさに望んだものであったし、任務自体も今の段階では簡単な討伐くらいでそこまで苦にもならなかった。

 

「か……はっ」

 

 掴んでいた黒制服の少女の首を離してやると、吊り糸の切れた人形のようにその場で崩れ落ちた。

 

「フン……殺すにも値しない」

 

 だが任務が厳しいものでないことが、かえって私を渇望させた。戦場でいくら殺したかを数えたところで、所詮は蹂躙されるだけの蟻共。塵がどれだけ積もったところで、獅子を討ち倒す快感には到底及ばない。 

 生物の本能は「闘争」にある。敵対種あるいは同族の中での生存競争によって生き物は進化してきた。特にそのヒエラルキーの中でも頂点に君臨するもの同士、そして実力の拮抗した戦いにこそ多くの学びと高揚をもたらす。

 

「さて……そろそろか」

 

 気配がする。

 先ほどの烏合の衆とは比べ物にもならない強い気配、それが数人。合算したとて私が求めている水準には遠く及ばないが、腹ごなしには丁度いい。

 特に元は我らが同胞たる「黎明のガイア」……現在は暁月レイと名乗っている少女。今はその記憶と力の大半を失ってはいるが、もし目覚めれば私の満たされることのない欲求を満たしてくれるかもしれない。

 

「殺すなどもったいない。狩人は機をじっくり待つものだ」

 

 石畳に響く足音に耳を澄ませながら、今宵も私は月夜に酔いしれる。

 


 

 ハスミや先生、補習授業部の面々と共に目標のある座標へ向かうと、そこには意図的に積み上げられた瓦礫の山の上で独り満月を見上げる少女の姿があった。その下には、対処にあたっていたと思われる正義実現委員会の生徒たちが地べたに転がっている。

 

「!?」

 

 補習授業部の皆は驚きと恐怖の入り混じった顔で  特にコハルは口を手のひらで覆い、青ざめた表情と開き切った瞳孔でその光景を眺めていた。対して俺を挟んで反対側にいるハスミは、普段の様子からは想像もつかないほどに眉間に皺が寄っており、さながら般若の形相を呈していた。

 俺も倒れた生徒たちを今すぐ救出したいところだったが、俺たちの様子を見て高らかに笑いだす彼女が、それを許してはくれない。

 

「待っていたよ……随分長く待たされた」

 

 彼女は寄りかかった瓦礫からふわっと降り、ゆったりとした丁寧な動作で立ち上がる。風を受けてポニーテールがふわりと舞い、紅葉のように赤い髪が月光に反射して、まるで髪そのものが燃えているかのようだった。

 

「私はO.A.S.I.S.所属、『戦禍のアレス』こと八剣(やつるぎ)イクサ。初めまして」

 

「……これは、どういうことだ?」

 

「何、私なりにお前たちをもてなそうと思ったのだ。これらはほんの装飾だ、雰囲気が出るだろう?」

 

「違う。彼女たちに一体何をした?」

 

「……ああ、彼女たちの安否を心配しているのか?安心しろ、()()()していない」

 

「何だと……?」

 

「私にとって彼女たちは私の道を阻む害虫だ。私の渇きを満たすわけでもなければ、私を強者へと導いてくれるわけでもない。だからせめて、戦場を彩る飾りとして役立ってもらった。どうだ?お前の心は満たされたか?」

 

「……」

 

 そう言葉を吐いて彼女の瞳を見れば、そこにはイクサに傷つけられた正実《ref》正義実現委員会の略。《/ ref》の生徒たちはおろか、目の前にいる俺たちの姿すら映ってはいなかった。ただあるのは彼女の眼前にのみ広がる戦場と、まだ見ぬ強者たちの影だけだ。彼女はもはや他人を「人」だと認識できていない、自身の望みを邪魔する障害物程度にしか思っていないのだ。

 その事実に気づいた瞬間、煮えたぎる怒りが沸々と、しかし急激に腹の底からせり上がってくるのを感じる。彼女の存在を「暁月レイ」として  いや俺個人として許すことはできなかった。

 フラガラッハの柄に自然と手が伸び、やがて人差し指がそこに触れる  

 

“レイ、待って“

 

 堪忍袋の緒が切れるその瀬戸際、先生が俺の右手を直接取ってそれを止める。ハッとなって我に帰ると視界が一気に開け、心配そうに覗き込む仲間と俺たちを取り囲む建物、そして不思議そうに首を傾げるイクサと床に倒れている痣だらけの少女たちの体を確認できた。

 そうだ。俺たちが今やるべきは怒りに任せて敵を排除することではない。

 

「……ありがとう、助かったよ先生」

 

“気にしないで。さ、()()()()()()()で続けよう“

 

 俺は姿勢を整え構えを解くと、イクサは心底残念そうにため息をつく。どうやら俺が突っ込んで来なかったのがお気に召さなかったらしい。すると彼女の視線はそれを止めた先生の方へ向く。

 

“イクサ、どうしても君と戦わなければいけないの?“

 

「貴方がシャーレの『先生』か。であれば覚えておくといい、何もかもお前の思うように物事は運ぶとは限らない、とな」

 

“それは分かっているつもりだよ。生徒が私と違う考えをもって、私と敵対していたとしても、私は決してその子を諦めたりはしない“

 

「フッ、お前の身一つで全ての生徒を泥沼からすくい上げるつもりか?傲慢甚だしい」

 

“例え私のエゴだとしても、子供に対し大人としての責務を果たす。それが私の役目だからね“

 

「……詭弁だな。これ以上話しても平行線だろう」

 

 そう言うと彼女は虚空から西洋の両刃剣と小さな円形の盾を取り出し、さながらRPGのキャラのようにそれぞれ右手と左手に装備する。

 

「さて、早く死合(しあ)おう。これ以上焦らされると、流石に我慢が効かなくなる」

 

「……先生」

 

 もはや交渉の余地はない。そもそも彼女は話し合いにではなく、俺たちと戦り合うためにここに来たのだから。

 

“……君が彼女たちを殺さないと約束してくれるのなら。その代わり、私たちも君の命を奪うようなことはしない“

 

「それがお前の最低条件なのなら、受け入れよう」

 

 イクサ……いやアレスは闘気を燃やし、嗤う。

 俺たちは再び陣形を取り、武器を構える。先ほど人質救出の担当だったアズサは俺の隣へ、ハスミがヒフミやコハルと同じ位置に来るといった違いはあれど、大まかには変わらない配置だ。

 

“レイ……分かってるよね?今()()絶対は言っちゃダメだからね?彼女とちゃんと約束したんだから守ってね?“

 

「何をそんなに心配してるんだ……大丈夫、分かってるさ」

 

 全く人を何だと思っているのか。そんな約束を保護にするような真似はしないさ。

 

「さぁ見せてくれ、お前たちの内に宿る炎を!」

 

「八剣イクサ、お前を殺す」

 

“一瞬で前言撤回した!?!?“

*1
ᓀ‸ᓂ




レ イ「こいつ暑苦しい上に粘着質とか、歩くマグマかよ」
作 者「何その絶妙によく分からない例え」
イクサ「おお、ここがアフタートークの空間か。ここも良い戦場になりそうだ」
レ イ「だからアフロディテといい急に入ってくるんじゃねぇ!」
作 者「……一応ここでは仲良くしてね」

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