透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
先週土曜日のブルアカらいぶみに京都編、みなさんはご覧になられたでしょうか。私は前回までの「みに」の情報量から流石に身構えざるを得なかったのですが、案の定想定以上の情報量でぶん殴られました。これでまた来月はコラボ情報だって?石と心がもたねぇ!!!(心の叫び)
さて、今回の主人公は、キヴォトスで一番純粋な子と会うようです。
背に生えた機械的な青い翼……というよりはバインダーに近いそれを扇状に広げ、背中とももの裏あたりにあるブースターを全開にしてイクサへ向かって全速力で突っ込む。腰の溝に嵌め込まれたビームサーベルの基部を掴むと、抜刀術かのように抜き放ちそのまま彼女に切り掛かった。
「姿が変わっても同じ戦法とは、芸がないな」
生身のよりも格段に速度が増しているはずだが、僕の攻撃は左手の盾で易々と受け止められる。だが生憎、そんなことは想定内だ。
腰の両端につけられた灰色のサイドアーマーのようなそれは、ガキンという音を立てて砲身を展開し、その砲門が光りだした。
「ッ!?」
イクサは咄嗟に反応して避けようとするが、至近距離のためそれも叶わない。砲弾は見事彼女に直撃し、爆発の光と爆煙が僕たちを包む。
風通しの良い道路のため煙はすぐに引いていくが、徐々に視界がはっきりしてくるとイクサがほんの少し体勢を崩し、腹部には焼け焦げているような痕が残っていた。
「フッ……面白くなってきたじゃないか」
だがそれでもなお、彼女は不適な笑みを浮かべ続けている。一応説明しておくが、今さっきイクサに撃ったのは俗に言うレールガンと呼ばれるもので、電磁力を用いて実体弾を高速で射出するものだ。僕の……いや、この機体のレールガンはマッハ6という並の銃器を超える速度に加え、ライフル弾を超える弾の重量による高い威力を誇るのだが、それをあの程度のダメージで済ませるとは……。
だが怯んではいられない。所定の時間まであと少し、
「フッ!」
「!」
アズサと前後の位置を入れ替え、今度は後衛に移る。手に持ったビームライフルと先ほどのレールガン、そして頭部に取り付けられた二門のバルカン砲を使った弾幕によってアズサを援護する。
イクサが先にその援護射撃に対応するために体の向きを変えたその瞬間、アズサがどこからか取り出した閃光弾を片手で起動し、イクサへ向かって投げつけた。
「ッ!」
彼女はすかさず顔を盾で覆い隠すことでスタンを免れたが、その隙を縫うように先ほど放った援護射撃が襲う。軽快なフットワークと盾による防御でそれすらも避けてみせるが、その間にアズサは彼女との距離を着実に詰めていた。
ダダダダッ!
個人的な見解ではあるが、アサルトライフルはハンドガンよりも長い距離で一定の距離を保って移動しながら戦うのに適していると考えていた。だがアズサはハンドガンとナイフでやるような近接格闘を、アサルトライフル一丁でやって見せている。
中世とかならともかく、こと銃火器などの遠距離武器が発達した現代戦で近接戦闘はなるべく避けるべきだ。だが……いや、だからこそ彼女は、あるいは彼女が元いたという学校はその意外性をついてARによる近接戦闘を確立したのかもしれない。
ともかく、敵の意表を突いて体勢的な優位に立ったアズサは、そのままの勢いで畳み掛ける。
「ハァッ!」
銃撃による集中砲火の後、蹴り上げざまにイクサが左手に持つ盾に足先を引っ掛け、そのまま上に持ち上げる。盾で守っていたところがガラ空きになり、そこにアサルトライフルのフルオート射撃を叩き込んだ。
「舐めるなッ!」
だがそれすらも見切っていたのか、イクサは
「ッ!」
上空で出方を探っていた僕は手元の実体の盾を投げ下ろすと、盾は二人の間に割り込むように突き刺さり、間一髪敵の攻撃を防いだ。そして投げた盾に隠れるように移動し、再びビームサーベルで彼女に斬りかかる。
「クウッ」
カウンターの直後で少し油断していたのか、イクサは僕が突っ込んだ勢いそのままに吹っ飛ばされ、空中へとその身を投げ出す。
「今だ!」
僕は両翼に隠された巨大な砲身二門と腰のレールガンを展開し、ビームライフルや頭のバルカンとも合わせて全ての砲門を彼女へ向ける。
「フルバースト!」
ビーム砲とレールガン、ビームライフルとバルカン砲……全ての射撃武器を用いた一斉射撃により高範囲かつ複数の敵を殲滅できる技である。今回目標は一人だけだが、この機体の銃火器はどれが当たっても無事では済まないほどの威力がある。特に両翼に挟み込まれた二門のビーム砲は、いくら強力な神秘を宿していたとしても戦闘不能にできてしまうだろう。
また、仮に当たらなかったとしても、この技の対応をしている間は時間稼ぎになる。約束の時までもう僅かだ。
「この程度の弾幕など……!」
なんとイクサは先ほど放った砲撃を一切避けることなく、こちらに向かって剣を振りかざしながら全速力で走ってくる。僕は盾を前方に構えつつ、彼女を迎え撃つため盾の覗き穴のような部分からビームライフルの銃口を突き出しておく。
「はあああっ!」
「オオオオッ!」
お互いがお互いの視界にお互いしか映らないほど接近し合い、互いに前へ突き出した盾が正面衝突する
バッコォン!!!
ことはなく、一瞬視界に
見間違いかな?なんか黒い翼の生えた人が頭からイクサに突っ込んでいったように見えたんだけど。
瞼を閉じ、鼻の付け根あたりを指で揉み込み、別に特段目が疲れていないことを確認してからもう一度それらが飛んでいった方を見やる。するとそこには珍しく苦悶の表情を浮かべながら仰向けにへたり込むイクサと、ハスミのしっかりとした鳥のような翼とは対照的な、およそ飛べるとは思えないヨレヨレの翼を生やし、至る所に血痕のついた黒いセーラー服を着た少女の姿だった。
「……ッ、ツルギ!」
「ひゃっはッハははハァッ!」
ハスミがその名前を呼ぶと、全身血まみれの彼女は返事の代わりに奇声をもって応えた。
剣先ツルギ。正義実現委員会の委員長を務める3年生であり、「歩く戦略兵器」の異名で恐れられる少女である。その噂や恐ろしさトリニティ内外を問わず広まっており、ミレニアムの美甘ネルと並ぶ実力を持つと噂されている。
実は先ほどまでの「時間稼ぎ」とは、彼女が到着するまでの時間を稼いでいたのだ。イクサとやりあう前の短い作戦会議で、戦う前から僕たちと彼女では相手を制圧することはできないだろうと既に予想がついていた。もし制圧できたとしてもそれは周囲への被害を顧みない想定であり、倒された正義実現委員会の生徒たちも救出できない。
そこで密かにツルギに連絡を取り、結局捕まったという美食研究会の事後処理が終わり次第、現場に来てもらう。ツルギが来るまでは現場にいるメンバーで耐久し、到着したら彼女とイクサが戦っている間に正実生徒を回収するという作戦だ。
「テメェの相手は“、このわ“た“し“だああぁぁああ!」
「なっ!?」
早速ツルギは狂気の形相をもってイクサに飛び掛かる。イクサはそれに反応して盾で防御したが、イクサが完全に身を固めるよりも早くツルギが彼女の首をガシッと掴むと、より遠くの方へ彼女の体を投げ飛ばしたのである。
それを見届けたハスミは、建物の陰に向かって大声で呼びかけた。
「今のうちにこの子達の回収を!」
正義実現委員会と救護騎士団の生徒たちがこちらに駆けつけ、担架や救護車を用いて気絶している生徒たちを校舎の方へと運んでいく。僕たちは念のため彼女たちの前に出て援護し、その遥か先で強烈な一撃をぶつけ合う怪物二人を見守る。二人の戦いは苛烈を極め、先ほどのような衝撃波が立て続けにここまで飛んでくるのを感じていた。
ふとハスミが隣に来たので、せっかくだから聞いてみることにした。
「正義実現委員会の委員長、初めて見たけどあんなに
「まぁ、
見ていてください、と言われて戦場に視線を戻すと、ツルギがイクサの持つ盾での突き出しにより勢いよくこちらへ吹っ飛ばされてきた。
ガッシャーン!
「う、うあ“あ“う“……」
レンガで敷かれた道が砕け、ツルギの体がそこにめり込んでいた。腕や足の関節がおよそ曲がってはいけない方向に曲がり、頭からは血を流して倒れ込んでいた。もはやそれを人間といえるかも怪しいレベルで、再起不能になってしまっていた。
イクサは余裕綽々といった様子でこちらにゆっくりと歩いてくる。
「フッ、正義実現委員会の委員長もこんなものか」
「ハスミさん、これ本当に大丈夫なんですか!?」
つい心配になって隣のハスミに聞くが、彼女は表情を一切崩さないままツルギの方を見続けていた。
「……まだです」
するとハスミの視線の先の何かがピクリ、と動き出した。それはやがて頻度を増し、ついには震動となって地面が揺れ始める。
「う“え“あ“っは“あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッ!」
やがて突き刺さっていた地面から飛び上がり、すっかり身体が元通りになったツルギが再びイクサの前に立ちはだかったのだ。
「な、なんで……!?」
「彼女が他の生徒たちとは異なる点……それは驚異的な自己治癒能力にあります」
なぜかハスミが誇らしげな顔でずいっと一歩前に出てくる。仲良いのかな。
「打ち身やかすり傷程度なら数秒とたたず、脱臼や骨折、果ては大量出血の大怪我でさえも数分で回復してしまうのです」
「骨折やそんなレベルの大怪我を数分で……!?」
「それだけではありません。人の筋肉というのは傷ついて修復することで増強していきますが、彼女の場合自身の治癒力によって傷ついた筋繊維が即回復するため、他の人よりも強靭な肉体を手に入れるに至りました」
確かに筋肉が損傷と修復を繰り返すことで頑強なものになっていくっていうのは、学校の授業でも習ったような気がする……彼女にあれだけのパワーが備わっているのも納得だ。
そんなことを考えているうちに負傷者の移送は完了し、
「ふむ……潮時か。私はこれで失礼させていただくとしよう」
「これほどの被害を出しておきながら、風向きが悪くなれば逃げるというのか?生憎こちらには逃すつもりは毛頭ない」
元に戻ったフラガラッハの切先をイクサに向け、俺は彼女を強く睨む。
「暁月レイ、君の言っていることは半分正しい……だが半分間違っている。君たち7人を相手するなら、私も
「何だと?」
「今、上からの命令により私は君の命を奪うことはできない。私が本気で戦えば、君たちは反撃の機会すらなく殺されてしまうだろう。それは命令に背くことになるし、何より味気ない」
やはりそうだ。彼女は俺たちとの戦いをほんの戯れだとしか考えていない。彼女にとって闘争とは、酒や煙草といった趣向品のようなものでしかないのだ。
歪んだ視界が徐々にはっきりとしてくるのを感じる。その目に映ったのは、享楽に溺れ、愉悦に浸かる悪魔そのものであった。
「君の今後の成長に期待し、ここらで退散する。それでは」
「ッ!?ま、待てっ!」
彼女は後ろに向かって地面を蹴ると、その背後に黒い巨大ななにかが降ってきた。
ドオオオォォォン!
「!?」
それはいつぞやか見た、アフロディテの乗る黒いモビルスーツだった。だが彼女のそれよりも刺々しく、より機械的な装甲で覆われていた。
「また会う日まで、だ。『黎明のガイア』よ」
悪魔はそう言って漆黒の悪魔に乗り込み、日の昇りかけた空に吸い込まれていった。俺たちはそれを、ただ見ていることしかできなかった。
レイ「うわ、お前とんでもなくだらしねぇ顔してるぞ」
作者「いや最推しだから許して……あんまり今回出番なかったけど」
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