透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、夏と秋を行き来するような天候に翻弄されているHakone8510です。
 今年の秋は一体いつまで続くのでしょうか……なんだか秋が始まったら一週間もしないうちに冬が到来しそうで今から震えております。寒暖差により体調を崩すことがないよう、しっかり睡眠をとってこれからも頑張っていきましょう。

 さて、今回の主人公は、昔話を聞くようです。


昔話と降りかかる理不尽の話。

 事後処理をハスミたちに任せて寮に帰る頃には、すっかり朝日が昇ってしまっていた。結局話題にしていたパフェは食べられなかったし、むしろ美食研究会や思わぬ乱入者との戦いで皆疲弊しきっていた。しかし彼女たちの顔はどこかスッキリとでも言わんばかりの顔をしていた。きっと今までずっと勉強漬けだったから、久々に体を動かせてスッキリしたのだろう。

 特にコハルは戦いが終わってからここに帰るまでずーっとニコニコしていた。可愛い*1。ハナコもそれに気づいていたようで、不思議と彼女も嬉しそうにコハルの顔を覗き込む。

 

「あらあらコハルちゃん、さっきからすっごく嬉しそうですね。もしかしてハスミさんと一緒に戦えたのが嬉しかったんですか?」

 

「当たり前じゃない!」

 

 コハルは心底嬉しそうな笑顔になり、頭の小さい羽をパタパタとはためかせる。まじで可愛いなこの子*2

 

「あの憧れのハスミ先輩と初めて共闘できた……私、先輩の役に立てたんだ……えへ、えへへへっ……!

 

 もう何この子本っ当に可愛い*3

 

「それじゃあ、ハスミ先輩のためにも試験が貼らないとですね❤︎」

 

「当たり前よっ!エリートとして絶対に合格して、ハスミ先輩に認めてもらうんだからっ!」

 

 戦うことで吹っ切れたのか、気力も気合いも十分。段々と彼女たち4人の間柄もだいぶ深まってきており、これなら第二回特別試験の結果も期待できそうだ。

 

 

 

 とはいえ、肉体的な疲労には流石に抗えなかったのか彼女たちは半日仮眠を取り、その日の模擬試験が始まったのはお茶の時間を過ぎてからのことだった。

 しっかり睡眠を取り、脳も心も冴え切った状態で、彼女たちは目の前に置かれた試験用紙に向かう。

 

“はじめ!“

 

 先生の合図により、全員が一斉にペンを持って問題を解き始める。

 心なしかペン先が紙を叩き擦る音には、以前のような迷いはほとんど感じられない。実際試験監督ついでに彼女たちの様子を見回ってみても、多少つまづいたりする部分はあれど解答用紙に空欄がほぼなく、それでいて4人とも書いた答えに自信を持っているように感じられる。

 前回の模試まで長く感じられた60分という試験時間は、今回はあっという間に過ぎ去っていく。試験終了の合図をして先生と答案を回収し、その場で答え合わせをする。いつも丸つけを請け負っていたから、着実に正答率が伸びていることが分かってなんだかこっちまで嬉しくなってきた。

 点数が出揃うと答案を彼女たちに返し、結果の書かれた紙を黒板に貼り出した。

 

第三次補習授業部模擬試験

・阿慈谷ヒフミ:75点(合格)

・白洲アズサ:73点(合格)

・下江コハル:61点(合格)

・浦和ハナコ:69点(合格)

 

「やりました!ついに皆さんで60点を超えられましたよっ!」

 

「フッ、練習の成果が出たな」

 

「ほ、ほんとっ!?私、合格できたのね!」

 

「うふふ……❤︎よかったですね、コハルちゃん」

 

 全員合格という事実に喜びを隠しきれない補習授業部一同。それぞれおヒフミとアズサは抱き合ったり顔を擦り合わせたりなどして、ハナコは珍しく素直にコハルを褒め称えたりなどして喜びを分かち合っていた。

 過去問などを繋ぎ合わせただけとはいえ、全員の模試の成績はかなり良くなっていた。特にアズサとコハルは合宿を始めて一番最初に実施した模試と比べると、実に40点以上の大幅アップ。途中から本人らも積極的に対策講義に取り組んでくれたことで、スムーズに且つ想定よりもスピーディに勉強計画を進めることができたおかげだ。

 第二次特別学力試験まで残りわずか。ここでゴールというわけではないしギリギリまで勉強は続くが、ひとまずの区切りに到達したということで小さなパーティが開かれた。

 

 

 

 学力試験を翌日に控えた次の日。先生はナギサによってティーパーティの校舎に呼び出された。俺も護衛としてついていったのだが、案の定入り口で守衛に止められ、追い出されてしまった。

 というわけで、再び暇になってしまった。前は追い出されても他に用事があったからなんとか暇を潰せたが、今回は別段用事があるわけではない。非常に困った。

 ひとまず頭をぼーっとさせながら近くのベンチに座り、木に寄りかかって薄めで空を見上げる。高く聳える入道雲を浮かべた夏空を、旅客機が一直線に横切る。その窓が陽光を跳ね返したからなのか一瞬視界が白く染まり、両目の間を強く揉み込んでから目を開くと、そこには一週間と全く同じように一人の少女が歌い踊っていた。

 

「久しぶりね」

 

 前回と同じく、彼女から声をかけてくれた。

 

「そう言ってもあれから一、二週間くらいしか経ってないぞ」

 

「それでも()()()()なのよ。少なくとも、わたしにとってはね」

 

 彼女は静かに踊りをやめると、オカは少々勢いよくベンチに座ってきた。花と太陽の香りが右隣から香ってきて、一瞬心臓が高鳴る。血管を通って顔に集まってくる血液を感じて、俺はなるべく顔に出さないように努めた。

 

「あら、嫌だったかしら?」

 

「……いや、別に」

 

 本当のことである。ただ顔が赤くなるのを我慢するために強張らせていたら、眉間に皺が寄ってしまっていたようだ。この顔は難儀なことこの上ない。

 

「何の用だ」

 

「何か用がないと来ちゃいけないの?」

 

「そういうことじゃない。なんとなく、お前が俺に話したいことがありそうな顔をしていたから」

 

 珍しく自分にしては根拠のない確信だった。冷静になって、不思議そうにこちらを見つめるオカを今一度見つめてみるが、特に深く考えていなさそうな顔にしか見えない。

 勘違いだったのだろうか  しかし、何故かいまだにはっきりと、彼女がそう思っているという確信が心の中に残り続けている。

 これは何だ?

 

「まぁ、用があるのは事実だよ。前は時間が早く来てしまったから、詳しく話すことができなかった。でも今ならきっと、君に伝えたいことを伝えられる十分な時間がある」

 

「伝えたいこと?」

 

「O.A.S.I.S.のこと、モビルスーツのこと、神秘のこと……そしてあなたのこと。前回より長いとはいえ、今回も時間に限りがあるから一つしか教えられないけど……今日は一番最初  O.A.S.I.S.のことについて、話しましょうか」

 

 そう言うとオカは自身の太ももをポンポンと軽く叩く……俺はその行動の意味が即座に頭に浮かんだが、すぐさまその思考を消し去る。駄目だ、早とちりはいけない。言葉にされるまではまだ分からない。

 

「……一応聞くが、何だ、それは」

 

「何って……膝枕に決まってるでしょ。お話を読み聞かせるにはぴったりのシチューエーションだと思わない?」

 

 全然予想通りであったことに、俺は頭を抱える。漫画やアニメじゃねぇんだから、そんなに気軽に膝枕ってするものじゃないと思うんだが。てかこれって本当に行っていいヤツなのか?もしかしたらこれが罠の可能性も  

 

「さ、早く」

 

「……」

 

 上目遣いで催促してくる彼女の可憐さと、話を聞いてみたい好奇心に負け、大人しく彼女の太過ぎず細過ぎない太ももに自分の頭を預ける。

 

(おお、これは中々……)

 

 寝具として用いる枕は断然低反発派の俺だが、しっかりとしていながらも程よく頭が沈み込み、そこに彼女が纏う香りも合わさって野原に寝転がっているかのような感覚に陥る。

 

「じゃあ、いくわよ……」

 

 彼女は眠る我が子に絵本を読み聞かせるように、懇々と話し始めた。

 


 

 それは、今から約500年前のことである。

 当時のキヴォトスは技術こそ今とは比べ物にならないくらい低く、今よりも高い神秘を持つ者が跳梁跋扈していた時代だった。そのため神秘の高い者と低い者との差が開きすぎて、高い者はまるで神のように讃えられ、逆に低い者は高い者たちに蹂躙され、迫害されていた時代でもあった。

 そこで低い者たちは団結し、「オリュンポス」と呼ばれる組織となった。彼女らは古代の文明や最新の科学技術を使い、高い者に対抗するための「力」を求めた。その結果彼女たちは異界へと繋がる門を開き、ある一柱の神を呼び出すことに成功した。

 かの神は彼女たちに言う。

 

『汝らに巨人の力を与えよう』

 

 かの神は彼女たちに巨人の力……今におけるモビルスーツを異界より召喚し、彼女たちに与えた。喜ぶ彼女たちにその神は一言忠告した。

 

『だが忘れるな。巨人の力は所詮道具だ。使い方を誤れば、その恐ろしさはお前たちにも牙を向く』

 

 彼女たちはそれを肝に銘じ、迫害からの解放を求め戦った。モビルスーツはいくら強い神秘を持つ者たちであっても倒すのは容易ではなく、しかし「オリュンポス」の側もモビルスーツの力をもってしても迫害を無くすには至らなかった。戦いは膠着状態となり、「オリュンポス」の始めた小さな反抗は、キヴォトス全体を巻き込む大戦争に発展したのだ。

 かの神は嘆いた。自分の持ち込んだ技術のせいで、多くの血が流れてしまった。その責任を取らなければならないと奮起し、己が体を五つに分けた。分たれた五つの分神はそれぞれ争いを止めるためのモビルスーツ「ガンダム」を召喚し、その力をもって巨大な戦争に終止符をうった。

 その後五つの分神はキヴォトス全体をまとめ上げる組織  連邦生徒会の設立に貢献し、その中の外部組織となる「O.A.S.I.S.」を設立した。彼女たちは各地の争いをガンダムをもって鎮圧し、キヴォトスの治安を維持するべく尽力した。

 それから200年ほどの間、「O.A.S.I.S.」は代替わりしながらキヴォトスの平和を守り続けていた。だが200年の間に組織は腐敗し、いつしかキヴォトスの支配を目論むようになった。

 ある時ついに彼女たちは連邦生徒会に宣戦布告し、キヴォトス全ての学園を敵に回した。連邦生徒会はキヴォトス全ての学園を招集することでこれに対抗。かつて「オリュンポス」がしたような戦争の時代が再び訪れた。

 しかし神秘だけがものを言う時代はとうに過ぎ去っており、連邦生徒会によって「O.A.S.I.S.」はあえなく敗れ去った。彼女たちの持つ「ガンダム」は当時有力だった五つの学園にそれぞれ与えられ、今なおそれが使われ続けている。

 


 

「敗れ去った……?じゃあ、今『O.A.S.I.S.』を名乗っている奴らは……?」

 

「今の『ゲマトリア』と同じだと思ってる?あれは元ある組織の名を借りているだけだけど、『O.A.S.I.S.』は正真正銘あの頃(200年前)のままだよ」

 

「……まるで()()()を実際に見たかのような口ぶりだな」

 

「そりゃあそうでしょ。私たちはその時から存在してるんだから」

 

「!?」

 

 流石に驚いて彼女の膝からバッと頭を上げる。オカは少々寂しそうな目でこちらを見てくるが、そんなこと今はどうでもいい。

 

「サラッととんでもないこと言ったなお前!」

 

「……さて、今日はこれくらいにしておこうかしら」

 

「露骨に目を逸らすな!?どういうことかキチンと説明しろ!」

 

「まぁそれはまた後の機会ってことで。安心して、私たちは近いうちに再会するわ

 

「おい、それってどういう  

 

 するとちょうど彼女が太陽の出ている方向へ歩き出し、自然と視界に日光が入り込んでくる。眩しさに思わず目を細めると、次に司会が元に戻る頃には、彼女の姿は忽然と消えてしまっていた。

 

「……幽霊みたいなやつだな、ほんと」

 

 呆然とベンチの傍で立つ俺の耳には、ズボンのポケットで鳴るスマホのバイブ音だけが聞こえていた。

 

 

 

 さて、先生とティーパーティとの会合も終わり、少し目元の険しくなった先生と共に別校舎へ帰ってきた。夜はもうとっくに更けており、補習授業部の四人は試験前最後の勉強を終えて、就寝準備に入る前の雑談に興じているところだった。

 

「そういえば、明日の試験会場って前と同じとこだったっけ」

 

 ふとコハルがそんなことを言う。確かに彼女の言う通り、場所が変わっているの可能性もある。万一違う場所に行ってしまったとなれば洒落にならないからな。

 と言うわけでヒフミが確認のため、手元のスマホで補習授業部用のメールボックスを開く。

 

「ええっ!?」

 

 数秒後、普段の彼女からは想像もつかないほどの大声が教室中に響き渡る。何があったのか、ヒフミの心配より彼女の驚いた内容に対する気持ちが勝って、全員が彼女の端末を覗き込んだ。そこにはただ淡々と罪の記された判決条文のように、二次試験における変更内容が書かれていた。

 

『補習授業部の第二次特別学力試験における変更点に関して

 

・試験範囲の変更(長すぎてここには書ききれないが、大体本来の三倍くらいの範囲に膨れ上がっている)

・合格点を「60点以上」から「90点以上」とする

・試験会場を「ゲヘナ自治区第15エリア77番街1157棟1階」に変更する

・試験時間を「当日午前3時」に変更する』

 

「な……な……」

 

「何よこれえぇーーーーっ!?!?」

 

 ただただ理不尽なその内容に、コハルの恫喝が旧校舎を揺らした。

*1
現在彼女は可愛いの過剰摂取による急速な語彙力の低下のため、感想が「可愛い」しか出なくなっております。

*2
可愛いの過剰摂取(以下略)

*3
可愛い(以下略)




レイ「昔話なんてガキの頃ぶりだな」
作者「そんな呑気で大丈夫か?オチ大変なことになってるけど……」

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