透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
さて、彼にとっての第一村人は果たして?
前世で広範囲オタクだった俺はある時、友人に勧められて「ガンダム」シリーズにも手を出した。見始る前は敷居が高いのではないかと内心疑っていたが、一度見たらあら不思議。他のロボットものでは味わえないような「戦争」というテーマに重点を置いた世界観、徹底したリアリティーとそれに相反せずに存在するロマン溢れる設定、そして何よりそこに絡む人間ドラマが自分の
そして一番好きだった機体だったのが今目の前にある「ウイングガンダムゼロ」なのだ。
「新機動戦記ガンダムW」作中において、圧倒的な性能を持った5機のガンダム。本機はそれらの原型であり破格の性能と人道を無視した危険性を孕む、いわゆる「超強い欠陥機」というロマンに満ち満ちた設定を持つ。具体的には代名詞的武装であり最大出力時には月の形すら変えるほどの威力*1を持つツインバスターライフル、あまりにも人の心がなさすぎて脳破壊システムと名高いゼロシステムなどがその実例として挙げられる。あと単にビジュアルがいい。
最終決戦であるイブ・ウォーにおいてはヒイロ・ユイが本機に搭乗し、ゼクス・マーキス改めミリアルド・ピースクラフトが駆る「ガンダムエピオン」*2と激戦を繰り広げた。
長々と話してしまったが、とにかく「ウイングガンダムゼロ」は俺の推し機体なのである。そして人モノに関わらず、モノホンの「推し」に相対した時、オタクはどうなるのか。
「ウッヒョえっひえええェェェェぇぇぇぇ!?!?!?」
発狂である。いや興奮と言った方が正しいのか。ともかく人ならざる声が口から飛び出た。
「なんでこんな場所に…いやそもそもこの世界にガンダムはおろか、モビルスーツなんて…」
そう、そもそもおかしいのだ。
この世界が「ブルーアーカイブ」の世界だということは、自分の頭上に浮かぶヘイローやトリニティの校舎を確認したため確定している。が、その世界に「ガンダム」はもとより「モビルスーツ」という兵器の概念すら登場しない。
そりゃそうである。「ブルーアーカイブ」と「ガンダム」は作品、つまり
「そもそも、動くのか?こいつ」
ご丁寧にコックピットへ続くタラップがあるのでそこを渡り、機体の胸部あたりに降りる。
「えーっと、ハッチの開閉はどうすんだろ…」
降りた場所の付近を調べると、首の付け根あたりに扉のようなマークがついたボタンがある。押してみると、ゴオォンという重い音と共にハッチが前へ開き、設定画で何度も見たコックピットが
中に誰もいないことを確認した上で中へ入ってコックピットに座ってシートベルトを装着し、操縦桿の横にある扉のボタンを押してハッチを閉める。すると自動でディスプレイの電源が点き、次のような画面を映し出した。
それはすなわち、パスワードの入力画面を示していた。
「………そりゃそうだよなぁ」
普通に考えてみればモビルスーツは乗り手や性能にもよるが単機であっても戦艦一隻に匹敵するレベルの機動兵器である。そしてその中でも最高峰の性能を持つガンダムともなれば、いくら原作でパイロットがたくさんいたとて、最低限の盗難防止のためになんらかのセキュリティシステムがはたらいていてもおかしくはない。
そして当然のことながらアニメでパスワードが存在するという描写がなかったので、当然俺がそのパスワードを知るはずがない、ということだ。
「ミレニアムあたりに持ってって、解析してもらうしかないか……いやでもこいつをどうやってミレニアムまで持っていけば……」
なんとか
『 !!』
「んグッ!?」
急に頭を殴られたような衝撃が脳を襲う。
「……今のは?」
どうにか意識を保とうと耐えながら、
透明な半球に緯線経線のような縦横の線が引かれ、淡い檸檬色に点滅する装置。最も合理的にして、最も非人道的な操縦インターフェース「ゼロシステム」の中枢がそこで鼓動していた。
「今のが、ゼロシステム、なのか…」
先の未来を見せる代償に、パイロットに尋常ならざる精神力を要求する機能。原作ではキャラクターの数々が悪魔的なこのシステムの犠牲者となり、最終的に完全に使いこなせたのはヒイロとゼクスの2人だけだった。
作中でもその外でも散々言及されていたその危険性を、今その身をもって理解したのである。
「一瞬だけでも、これとは…」
正直、舐めてかかっていた。だが今システムの
「たしか、声は 」
おぼつかない手で、一文字ずつ入力していく。
「『飛べ、敗者達の栄光を掴むために』か…あの世界らしい」
まだあやふやな意識の中で、俺は妙に安堵していた。
動力が回る音がコックピットの両端から聞こえてくるにつれて、前面に取り付けらた用途不明の装置に光が灯って
『 !!!!』
「ああああアアアアぁぁぁグッッ!!!!」
また
「グ……あ……ぎゅ…」
締め付けられるような頭痛と吐き気に悶えながらも、なんとかコンソールに手をかける。
今さっき伝えられたのはウイングゼロの操縦方法の一切。先ほどのパスワードはたった一文程度だったのでまだ軽い方だったが、操縦方法となれば話は変わってくる。自分の情報処理能力はたかが知れているので、与えられたものを一つ一つ整理するのに小一時間を要した。
にしても、今までに与えられた情報から考えるに……ゼロシステムは、どうも俺に
「だが、一体何の為に…?」
まぁいい。
少なくとも
パネルを操作して機体の各装置を起動させてゆく。
「
機能に異常がないことを確認した上で、機体を固定する安全装置を解除する。すると、機体を載せたハンガーが90度回転し、幾重ものシャッターで隠されたカタパルトデッキと射出口が姿を現す。
その出口がどこへつながっているのかはわからないが、ここ以外に出口らしいモノがないことだけはわかっている。故に機体を発進させるほかない。
「ウイングゼロ、出撃する!」
操縦桿を一気に前へ押し出す。加速による反動が全身を襲うが、ゼロシステムによるあの不快感や痛みに比べれば大したことはない。いや、システムがあるからこそ*3か?
射出口に機体が到達した瞬間にバーニアを点火し、神秘の青空へと飛び立つ。そしてその目下に広がっていたのは…
「よし、建物の入り口まで到達!」
キヴォトスの中央組織である連邦生徒会、それが管轄する自治区DU。高層ビルが立ち並び、いつもは多くの人々で賑わう都市にて、今飛び交っているのは笑い声ではなく銃弾であった。
連邦生徒会の行政の要たるサンクトゥムタワー、その主たる連邦生徒会長が失踪したことにより、その制御権は空白となった。連邦生徒会主席行政官である七神リンはこの事態及びそれに伴う混乱収束のため、キヴォトス外より来訪した「先生」にサンクトゥムタワーの権限確保を依頼する。先生はこれを受諾し、たまたまその場に居合わせた4人の生徒と共にその権限のありかとされる建物へ向かうことになった。
途中、連邦生徒会に私怨を抱く不良生徒に行く手を阻まれるも、4人の協力と先生の指揮能力によりこれを鎮圧。無事その建物へと足を進めようとしていた。
しかし、その時
ズン、ズン、ズン
「……うん?この音は……」
巨人が大地を踏み締めるような音と共に突如彼女たちの前に現れたのは、大量の武装を各部に備えた万能量産機、「リーオー」の姿であった。
「モビルスーツ…!?量産型とはいえ、不良が持ち出せるような兵器では !」
ピンクブラウンの髪をたなびかせ「風紀」の二文字が記された腕章を身につけた眼鏡少女、火宮チナツが驚愕を隠そうともせずにそう言う。
"モビ…?あの大きなロボットのこと?"
理外の存在にして本件の立役者である先生は、チナツに疑問を呈する。
「有人式の人型機動兵器…その総称がモビルスーツです。戦術効果は非常に高いですがそれに伴い高価であるため、金銭的に余裕のないであろう不良が保有しているのは不自然です」
「……見たところ中期型リーオー、といったところでしょうか。確かに比較的安価ではありますが……」
大きな黒翼を背に携え、豊かなプロポーションを持つ黒髪ロングヘアー少女、羽川ハスミはそう推察した。
「十中八九、不当に流通されたものね。でも困ったわね、今の私たちだとあれに対抗できる武器はないわ」
"えっ"
「モビルスーツは特殊な合金をその装甲材としているので、並の銃火器では傷ひとつつきません。私のライフル弾ならダメージを与えられるでしょうが…」
ハスミがそう苦々しそうに口を噤んだ。するとその横から顔を出した銀髪の少女、守月スズミが続ける。
「ハスミ先輩の弾はそう易々と何発も撃てるようなものではありませんし、何より時間がかかります。一刻を争うこの状況では、あまり相応しくない手段かと」
"……なるほどね"
少し眉を顰め、困ったような表情になる先生。多くは語らなかったが、その表情から4人は彼の胸中を容易に察することができた。
そんなやりとりをしているうちに、目の前のリーオーはその手に持つガトリングをこちらへ向けようとしていた。
「ッ!先生、ここは一旦退避しましょう。ユウカ、モビルスーツを送るようミレニアムに連絡を……」
「もう入れたわ!でも退避ってどこに 」
そう言いかけてハッとなる。振り向くと、巨大なガトリングの銃口が完全に自分達に狙いを定め、今まさに鉛弾を吐こうかというところであった。
ユウカの頬に、一筋の冷や汗が流れた。いくら神秘があるといっても、モビルスーツによる銃撃を受ければ大怪我は免れない。一目散に逃げるのがユウカ本人にとっては最善といえよう。
だが今は事件解決の鍵である先生の護衛中である。もしその弾が先生に直撃してしまえば、永遠にこの混迷は収まらない。ならばとユウカが考えたのは
(少しでも時間を稼がなきゃ!!)
時間稼ぎであった。最悪自分がどうなったとしても、数分後にはミレニアムの誇る技術を搭載したモビルスーツで撃退すれば、事件は解決できる。なら今できることは一度退避する先生たちの露払いだと思い至ったのだ。
この思考を経た上で、ユウカは意を決して先生のもとを離れ、両脇のSMGを構えようとする。
しかし、リーオーはユウカの方に
「……?何かあったのかしら」
次の瞬間、リーオーは即座にガトリングを上空に向けて構え、すぐさま連射し始めた。
「!?」
もう呼んだ援軍が来たのかと、思わずユウカは上を見上げる。
「あれは……」
鳥のもののような翼をはためかせ、ひどく澄んだ青空を優雅に羽ばたく機械の巨人。巨人は、今なお自身に対しガトリングを放ち続けるリーオーをその両眼でまっすぐ見据えていた。
「ガン、ダム……!!」
裁きを下す無慈悲な天使がこの日、キヴォトスの青空に舞い降りた。
一方その頃。
「は?何これどういう状況?」
無慈悲な天使の乗り手は、ただただこの状況に困惑していた。
○ちょこっと機体解説「ウイングガンダムゼロ」
「新機動戦記ガンダムW」及びその続編「Endless Walts」に登場する作中最強格のモビルスーツ。
「ゼロシステム」と呼ばれる、簡単に言えば未来を予測する機能が搭載されており、システム発動中はその情報が毎秒パイロットの脳に直接伝達される。
ただこのシステムは単独での勝利を第一に優先するため、そのためならば人道を無視したものや仲間あるいは自身の犠牲さえも厭わない戦術も方法の一つとして提示する。また毎秒伝達される多大なまでの情報量もあって、システムに精神が耐えきれなかった場合システムが提示するままに暴走、もしくは精神を破壊し尽くされてパイロットを死に至らしめる可能性があり、非常に危険な機体である。
執筆にあたり、プロローグ読み直してモビルスーツの突っ込み処を模索してました。
ちなみに先生はモビルスーツを知らないですが、ロボットと聞いてちょっとだけわくわくしています。
「新機動戦記ガンダムW」及び「Endless Walts」以外のMSを登場…
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させた方がいい。
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させない方がいい。
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どちらでも良い。