透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、魔法少女に貯蓄石という名の怪人を退治されたHakone8510です。
 スズミとレイサに一天井分が消し飛びました……まぁ、今考えてみれば一天井で済んで良かったというべきでしょうが、それでも長い時間をかけて溜めていた石が数分で消えていく感覚は中々に……でも二人ともお迎えできてひじょーに満足であります。

 さて、今回の主人公は、面倒臭いやつに遭うようです。


真の裏切り者の話。

『こちらアズサ、桐藤ナギサの身柄は確保した。これより合流地点(ランデヴーポイント)に向かう』

 

「了解。こちらも作戦行動に移る」

 

 やたらにでかい古い無線機を切ると、今度はイヤフォン型の通信機に人差し指をあてる。

 

「アズサからの通信が入った。俺たちも行くぞ」

 

『“わかった。それじゃあ行こうか”』

 

 先生の号令と共に皆が動き出す。同時に、俺の方もペダルを踏み込み待機状態を解除する。

 

『“レイ。くれぐれもコックピットは狙わないように”』

 

「了解した」

 

 念の為に用意していたウイングゼロ、まさか使う機会がくるとは思わなかった。ただ校内ではバスターライフルやバルカン砲をぶっ放すわけにはいかないので、ビームサーベルのみで戦うことになるだろうが。それでも他のモビルスーツよりも使い慣れているし、いざとなれば切り札のゼロシステムがあるため、シャーレから秘密裏に運んできたのだ。試験日ギリギリに運んできたから、あちらさんは咎める時間もないだろう。

 早速独特の形状をしたレーダーを起動すると、トリニティ所属の信号を発するMSが数機確認できたが、索敵範囲を広げるとその外側……ちょうど学園を囲むかのように、所属不明のMSが30機以上確認できた。

 

(こいつらが例の……)

 

 そしてそれらの無数のMSは数秒後、何かにつつかれたアリの群れのように一斉に動き出したのである。動きと位置関係からして、彼女らはアズサたちを追っている。

 

「アリウスのMSたちがアズサたちを追い始めた、急ぐぞ!」

 

 ウイングゼロは上空へと一気に舞い上がる。その機動力をもってアリウスのMSに追いつくと、急降下しながらビームサーベルで斬りかかる。

 

ザシュッッ!!!

 

『な、何だ!?』

 

『トリニティのMSか!?』

 

 アリウスのMSは、翼のないウイングガンダムに酷似した黒いMSに乗っていた。早速1機の頭と胴を離してやり、周囲に混乱が広がる。

 流石というべきかすぐさまあちらもビームサーベルを起動して反撃にうって出てくる。が、その刃がこちらへ届く前に、次々と頭部(メインカメラ)をやられていく。

 

「なるだけ数を減らさなければ……!」

 

 ひとまず一団を借り終え一段落……といきたいところだが、敵MSは依然として残っている状況。休んでいる暇はない。再び地上から飛び立って空中へ舞い上がり、急降下して撃墜を何度も繰り返していく。

 だが何分数が多くバラけているため倒しきれず、合流地点である広場にまで追っ手が迫っていた。

 

「あちらの援護に回らなければ……!」

 

 これ以上個々小隊ごとに倒して行っても間に合わない。広場の手前まで行って、やって来た敵をまとめて倒していくしかない。

 

『既にMSが2機こちらを追ってきています……対処をお願いできますか』

 

「わかった。今行く」

 

 ちょうどハナコから応援要請があったので、最大速度まで上げて向かう。

 彼女たちは対MS戦用の装備を持たない。いくら関節部や頭部が弱点と言っても、人間サイズの大抵の銃火器では大したダメージを与えることができないからだ。よってすぐにやられてしまうことはないにせよ、一方的に蹂躙されてしまう可能性は大いにある。

 広場まで行くと、既に補習授業部が2機のモビルスーツと交戦していた。

 

「敵機から離れろ!」

 

 俺は通信を入れて皆に後退を促し、背後から一撃でメインカメラを切り落とす。

 

ザシュゴンッ!!!

 

 赤熱化した断面はすぐに外気に触れてぐちゃぐちゃに溶けた形のまま固まり、元の黒色へ変色していく。

 

『こ、このやろおッ!』

 

「!」

 

 ペアのもう1機がすぐさま赤い刃のビームサーベルを展開し、コックピットめがけ差し貫かんとしてくる。だがジャンプする要領で逆に前へと飛びかかり、敵機の真上まで来た瞬間に首を切り落とす。続けざまに踵おとしを背面に喰らわして、皆がいる方と反対方向に倒れさす。

 

「大丈夫か?」

 

『“助かった。でもあと10機ほどこちらに向かって来ているよ!“』

 

「MSはこっちに任せてくれ。いずれ来る地上部隊はそっちに任せる」

 

 三たび空中へと舞い上がると今度はビームサーベルをもう一本展開し、今しがたやってきたアリウスのMSを迎撃する。

 

「10機同時は流石にキツイな……だがッ」

 

   !!』

 

 ゼロシステムを起動し、その()()にほんの少し寄りかかる。主翼から剥離した装甲がより一層振り撒かれ、辺りが銀世界に包まれる。ビームサーベルの切先はより曲線的かつ流線的な軌跡を描き、より予測の難しい攻撃へと変わっていく。

 

(無力化するだけでいい……絶対に殺すなよッ……!)

 

 ゼロシステムの基本的な思考パターンは非常にシンプル。「()()()()が勝利する」こと、そこに敵味方の命や周囲への被害は一切考慮されていない。だからウイングゼロの乗り手は凄まじい精神力をもって非人道的な命令に抗い、その上で自分が望む未来を演算させる必要がある。

 

(使うのが久しぶりだからか、いつもよりキツいッ……!)

 

 10体のモビルスーツによる同時攻撃をすんでのところでかわしながら、あるべき「正解」への道筋を模索し続ける。

 

  ッ見えた!」

 

 操縦桿を前へと押し出し、主翼の片側を突き出すような形で指揮官機と思われるMSに体当たりを仕掛ける。

 

『何っ!?』

 

『隊長!ここは我らに……』

 

『いや、ここは私に任せておけ!』

 

『タイチョウミズカラガ!?!?』

 

 手の込んだコントかな?

 そう言うと隊長を乗せた指揮官機がこちらに対抗するかのように突っ込んできて、片手に持った巨大なサブマシンガンをぶっ放す。ビーム式でない実弾式の弾を連続して当てることでダメージを稼ぐとともに、あわよくば逆に押し返して体勢を崩さんとの判断だろう。こんな即席でよくこのような作戦を思いつくものだ、やはり彼女たちを取り巻く環境がそうさせているのだろうか。

 

『サスガダァ……!トリニティのMSなど、隊長にかかれば  

 

 隊員が感嘆の声を漏らす。っていうか俺に筒抜けなんですけど、わざとやってんのか?

 だが彼女の作戦には二つの誤算がある。一つは内部にバーニアを内蔵した天使の羽のような主翼は、その見た目に反してかなりの重量があるということ。それにこの羽全てが無数のガンダニュウムの粒子が特殊な機構によって折り重なったものであるため、たとえ羽に被弾したとしても大したダメージにはならないし、分散構造により機体本体にはそこまでの衝撃が響くことはない。

 よって、リーダーの目論見は外れ、最後までサブマシンガンを放ったままウイングゼロ渾身のタックルをモロに喰らうことになる。

 

『ぐおおおおおおわあああああ!?!?』

 

『『『『タイチョオォ!?!?』』』』

 

「いやロック◯ンエ◯ゼ*1かな」

 

 他のMSパイロットの悲鳴が公共回線を通じて聞こえてくる。宴会芸じゃねぇんだから。

 閑話休題(それはそれとして)、動揺が走って動きの鈍くなったのを見逃せるはずもなく、頭部や腕部などを破壊して次々と無力化していく。

 

「これで……10機目!」

 

 風とともに、最後の敵機が両腕を切り落とされた状態で落下していく。幸い全てのモビルスーツは建物のない場所に落とすことができた。

 ひとまずこっちの仕事は終わったので、地上組に通信を入れてみる。

 

「全機制圧完了。そちらの状況は?」

 

『あ、あれは一体……!?なぜ彼女が……?』

 

 しかし、こちらの通信は向こうには届かず、ただひたすらに困惑するハナコの声が一方的に聞こえてくるだけだ。ただ、何かやばいことが起こっているのは事実だ。

 

「待ってろ、今すぐそちらへ  

 

『行かせん』

 

 雷のように直上から降ってきた極太ビームを、咄嗟に旋回して間一髪で回避する。

 全天周囲モニターの天井を見上げれば、そこにいたのは1機のモビルスーツ。赤いマントを背に靡かせ、ランスと大きな丸盾を両手に持っている。そして黄金に輝くその装甲も相まって、ローマの剣闘士を想起させるデザインになっている。なんとも戦の神らしい装いだ。

 こんな格好のやつ、今まであった中で一人しか思い浮かばない。

 

「イクサか?」

 

 すると、公共回線を通じて聞き馴染みたくない声が聞こえてきた。

 

『そうとも。久方ぶりだな、レイ』

 

「二週間も経っていない気がするが」

 

『私にとっては久しぶりだ。その間、お前と戦いたくてウズウズしていたというのに』

 

「お前の事情など知ったことではない。それより、なぜ俺の邪魔をする」

 

『上からのお達しがあってな。お前とその機体を大破しない程度で無力化して回収せよ、とのことだそうだ』

 

「……あんまり無闇やたらに命令を口にするものじゃないと思うぞ」

 

『そうか?だが私にとってこれは好都合。先の戦いの続き、今ここで果たさせてもらうぞ!』

 

 そう言うと盾を正面に、ランスの先をこちらへ向け突進してくる。俺は先ほどアリウスの指揮官機にやったように主翼の片側を前面に展開しながら、ビームサーベルを突き出すように構えた。

 

「はぁ……仕方ない、付き合ってやる」

 

 地平線に日が昇り始める中、両雄の戦いのゴングが今鳴り響いた。

 


 

 レイとイクサが再び戦い合う数分前、補習授業部と先生がアリウスの地上舞台と交戦していた。

 

「数が多すぎる。おそらく、アリウスの半数近くが……」

 

 唯一近年のアリウスを知っているアズサがそう言う。

 実際敵兵一人一人はそれほど強くはないが、何せ数が多い。非戦闘員である先生を除けば、百人単位の人数をたった4人で相手している状況にあった。

 

「これほどの人数が平然とトリニティの敷地内に……一体どうやって?」

 

「それに、これほどの暴動が起きれば流石に正義実現委員会もその動きを察知してくれそうなものですが、一向にやってくる気配がないですね……妙な雰囲気です」

 

「それは仕方ないよ。だってこの人たちはこれから、トリニティの公的な武力組織になるんだから」

 

 その瞬間、敵兵の動きが一斉に止まる。

 

「あ、あれは一体……!?なぜ彼女が……?」

 

 白い外套に身を包むアリウスの生徒たちの群れ、その中から一歩づつゆっくり踏み締めて現れたのは  

 

“ミカ……?“

 

「やっほ、久しぶりだね先生。また会えて嬉しいな」

 

「ミカさん……()()はあなたの仕業なんですか……!?」

 

 それまで誰よりも冷静だったハナコが、珍しく誰よりも顔を青ざめて叫ぶ。

 

「そうだよ。正義実現委員会に待機命令を出し、シスターフッドや救護騎士団にも、圧力をかけて足止めした……ナギちゃんを排除する、そのためにね」

 

「それは、つまり……」

 

「そ、私が真の裏切り者だった、ってワケ」

 

 彼女の背に生えたメルヘンチックな白い羽が、夜の闇に染まっている。妖精の如き輝きをたたえていたその両目には、もはや何も映ってはいない。

 

「さて、それじゃあナギちゃんをどこにやったか教えてもらえるかな?」

 

「「「「……」」」」

 

「あれれぇおかしいなぁ、もしかえて聞こえなかったのかな?」

 

“ミカ……どうして、こんなことを?“

 

 先生が恐る恐るといった様子で聞く。

 

「えー聞きたい?先生が言うならしょうがないなぁ」

 

 それに対してミカは、まるで好きな人に秘密を聞かれたみたいな反応をするも、仕方ないなぁといった調子で次の言葉を口にする。

 

「ゲヘナが嫌いだからだよ。心の底からね」

 

“……!“

 

「……なるほど、それでエデン条約を取り消すために……」

 

「本当に物語の中の楽園みたいな話だよね。そんなみんな仲良しみたいな理想郷、現実にあるはずないのにさ」

 

 するとふと、遠くから何かが激しくぶつかり合う音がトリニティ一体に響き渡る。その音の源を探ろうとその場にいる全員の視線がその方へ集まる。

 そこには黄金色に輝く中世の騎士のようなMSと、翼を生やした月相的なMSが互いに剣を交わしている光景があった。

 

「……ああ、もう一つ言い忘れてる理由があった」

 

“……?“

 

「トリニティ総合学園の象徴……キヴォトスでも特に権威を持つ5機のガンダムのうちの一つ。それが、あの翼の生えたモビルスーツ」

 

“!?“

 

「『ウイングガンダムゼロ』……あのガンダムを取り戻して、その力とアリウスの軍事力をもって、ゲヘナに全面戦争を仕掛ける。それが私の目的だよ」

 

“なっ……!?“

 

「そんな……!?」

 

「……なるほど、そういうこと、でしたか」

 

 先生とヒフミとハナコ、それぞれ情勢に詳しい三人が合点する。その間に、ミカはやがて先生たちと十数歩手前まで近づいてくる。

 

「じゃ、あらかた喋り終わったし、そっちは喋ってくれなさそうだから、力づくでも聞くね♩」

 

「……みんな、気をつけて。彼女、かなり強い」

 

 アズサの目が、怪物を前にしているかのように鋭くなる。それに呼応するかのように補習授業部が武器を一斉に構えた。

 

「そうだよ?私、結構強いんだから」

 

 黒い翼が高く広がる。空で巨人たちの戦いが起こる中、地上では人と悪魔の戦いの火蓋が、今まさにきられようとしていた。

*1
ちなみに作者は一度も遊んだことはないです。何回目だよこれ言うの。




レイ「なんとなくトリニティの機体っぽかったけど、まさか本当だとは」
作者「近くにあっただろ、トリニティの校舎が」

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