透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
2025年の元旦がつい先月みたいな感覚なのですが、そっか、もう2026年か……。かなり印象深い出来事の多かった一年だったと個人的には思っております。
さて、そろそろこのシリーズも2周年を迎えようとしています。何かやろうと思っていたのですが、1周年の時もなんかやろうといって放置していたので、あまり期待しないでもらえると助かります。努力は……努力はしますから……。
さてさて、今回の主人公は、修行に励むことにするそうです。
※閲覧前の注意※
今回の話では、ブルーアーカイブの世界観における根幹に関して、「独自の解釈」と「設定改変」を含んでいます。
無論、読者様の判断でお気に入り登録解除や最低評価をしていただいても構いません。ですが、これから先の内容を閲覧する場合は、上記の要素が含まれることを念頭に置いていただくようお願いいたします。
修行パートは誇張しすぎな部分がいいんだよねって話。
物思いに耽ると、銀河の中心のような場所にたどり着くことがある。
と言ってもそこには何もない。ただだだっ広い空間がそこにあり、金属同士がぶつかったときにでる震えに似た音が永遠に響き続けているだけだった。
ここは一体どこなのだろうか?その疑問を呈したところで、答える者はいない。あるのは自分と、この光景を忘れてはいけないという使命感のみ。
やがて永遠に変わり映えしない景色に退屈し、眠るようにその場所から離れることになる。
「ほれそこ、ボーッとしない!」
聴覚と痛覚が過剰に刺激されて目が覚めた。
頭に棒状のものが叩きつけられて、痺れるような痛みが全身を這い回る。思わず涙目で頭を抱えれば、頭頂に添えられんとした両の手すらもバシバシッと弾かれてしまう。
後ろを振り向けば髪をアップにして纏め、片手には竹刀を携えた極道の女将さんみたいな格好をしたオカが立っていた。
「今が何の修行かわかってるの?神秘を肌で感じられるようにするため、精神統一で集中力を高めようって話なのに」
「なぁ、本当にこんなので神秘の核心ってやつが掴めるのか?」
「うんまぁ……なるようになるさ!」
時々神秘的な文言とともに現れるミステリアスなお姉さんは、いつの間にか肝っ玉お母さんへと進化したらしい。それもテレビや新聞、ネットの情報の3割くらいを鵜呑みにして信じ込んでしまいそうなお母さんに。
「全く……ん?」
温もりのある風が、俺たちのいる庭園に吹き込んでくる。二人の間を通り過ぎざまに、風は乗せてきた桜の花びらを一つずつ降ろして行った。
(一年中咲き続ける桜……百鬼夜行の名にふさわしい光景だ)
百鬼夜行連合学院、自治区領内。俺はその一角を間借りさせてもらい、オカの師事のもと「神へと至る道」を実践している最中だ。
さて、なぜこんなことになったのだろうか?その理由を説明するには数週間前 トリニティの病室で療養していた時まで遡らなければならない。
初めて、決定的に敗北した。
MS戦でアレスと相討ちになり、満足に動ける状態ではなかったとはいえ、ゼウスと呼ばれていた少女の力は圧倒的だった。動きが目で追えない速さ、接近された気配すら感知できない気配遮断、そして俺の全力をもってしても敵わないと分かるほどのオーラを彼女は持っていた。俺の何もかもを彼女は超越していたのだ。
病室で目が覚めたときまず最初に胸の内に湧いた気持ちは先生や仲間に対する申し訳なさでも、絶対的な存在に対する恐怖でも、ましてや負けたことに対する悔しさでもなかった。
ただただ純粋な、自らに対する「絶望」だった。
(俺の存在価値は、どこにある……!?)
前世の記憶がほぼ消えてしまった今、「護衛として先生を守る」「キヴォトスの平和を守る」役割こそが俺の自我を支えていた。そしてそれを強く支えていたのは自らに宿った力と、それに対する自負にあった。
(どれだけ言葉を取り繕ったって、俺の自信がポッキリ折れているのが分かる。俺は自分の力に溺れ、驕っていたんだ)
ゆえに。
「神へと至る、過程だと……?」
オカからその話を聞いた時、どうもネガティブな気持ちが言葉に混ざってしまった。
「あら、そういうのワクワクしないタイプだった?」
「いや、その、そういうわけじゃない、が」
「そう、なんだかものすごく鬱陶しそうな声色だったから……」
以前は自分が強くなれるならどんな手段での興味を持っていた。だからゲーム開発部の子達と模擬戦したり、C&Cの任務について行ったり、自分の扱う武器について相談したりなどしていたわけで。
だが、今は……
「……」
「そ、まぁ安心なさい。なんと答えようと元から無理矢理にでも連れて行くつもりだったから」
“「え」“
「だって調印式まであと2週間を切ってるのよ?こんなところで悠長にしてられないわ」
彼女は視線を切り椅子から立ち上がると、ベットの真正面に仁王立ちして改めてこちらを見据えた。
「それともあなた、このまま黙って見てるつもりじゃあないでしょうね?」
釘を刺された、というより胸に矢を射られたような感覚だった。今までシャーレ所属としてやってきた以上目に見える危機は防ぎたいというのが正直なところで、そこはたとえ気持ちが落ち込んでいようが今の俺の指針であり、それは多分一生変わらない。
ゆえに、断る理由がない。
(……滑稽だな)
今まで迷いなくやってきた志に、初めてブレが生まれた。これを堕落の兆候とみるか、あるいは成長の始まりとみるか
(この迷いに、少しでも光明が見えるのなら )
俺は包帯でぐるぐる巻きになって指の全く動かせない手のひらを見つめ、その次に腕組みをしてこちらをただただ見つめてくるオカの方へ目線を向ける。
これが、おそらく最後のチャンスになるだろう。
「頼む、オレを連れていってくれ」
と、いうワケだ。
ちなみに今日は初日。てっきり肉体的な修行か何かをするのかと思っていたのだが、日の出ている間は備え付けの庭で瞑想するだけで終わった。ちなみにこれといった成果は感じられない。
「ほら、器かして」
そう言ってオカは二人で囲む鍋から肉団子と野菜、豆腐をすくって器に入れ、それをこちらへ渡してくれた。それを慎重に受け取って、箸で具を避け汁を一口啜る。きつけの生姜と味噌、そして出汁の香りが絶妙なバランスで口の中に広がっていき、暖かさが血液のように全身に巡って行くのを感じる。
「気になったんだが、お前の言う『修練』と言うのは、誰かから聞いたものなのか?」
「ええと、実はね、この修練は特定の誰かから教わったわけじゃないの」
「……どう言うことだ?」
「う〜ん、ちょっと説明するのが難しいけど……」
そうして話してくれたのは、今借りているこの家についてのことだった。なんでもかつてこの自治区に蔓延っていた怪異という魔物がいて、この家の祖先はそれを狩る仕事を生業にしていたという。彼女たちは神秘に関する技術に長けていたとも言い伝えられており、そのための修練の書物が色々とこの家に残っているらしい。今回実践してみたという瞑想はそれを習得するための最も初歩的な訓練ということだそうで。
「けど、今日の成果を鑑みるに、もう少し別の方向性から攻めた方が良いかもしれないわね」
「そうだな。調印式まであまり時間がないし、試せることはなんでも試してみるべきだ」
「オッケー。じゃ、明日は色々用意しておくわ」
「頼んだ」
囲炉裏の炭が弾ける音、風に揺れるススキの音、遠くで鳴く虫の音が、しばらく辺りを包み込む。静寂とは真の無音でないことを、秋の音色に耳を傾けることで知る夜だった。
翌日。
朝食と寝具の片付け・掃除を済ませ居間に戻ると、机の上に置かれていたのは……ノート、と鉛筆?そしてどこからともなくホワイトボードを持ってきたオカは、なぜか黒のスカートスーツに眼鏡をかけた姿だった。何故?
「女教師といえば、この格好でしょ?」
「いや、パンツスタイルとかもあるだろ別に」
そんな会話を交わしながらも、それとなく体裁を整えて彼女の話を聞く。
「まずは理論として知っておくべきだと思ってね。安心なさい、昼を過ぎたらきちんと実戦もやるから」
「何事も勉強だからな。納得のいく修練だ」
「よろしい。それじゃあ〜……」
背を向けヴン、ヴヴンとわざとらしく咳をした彼女は、振り返ると瞳に涙をいっぱい蓄えて、艶かしい
「オカ先生の特別♡補習、始まりよ〜♡」
キャピ⭐︎とお姉さんなのかギャルなのかようわからん解像度の低い女教師が目の前で爆誕した。
「さぁて……悪い子レイちゃんは、
「……」
「あらもう、そんなに照れちゃって。恥ずかしがり屋なんだからも〜♡……カハッ」
「自分のキャラ像に合わなくてダメージ受けるなら最初からやるなよ……」
「でも……こういうの雰囲気大事ってよく言われてるし……」
「何の雰囲気だ!?」
気を取り直して。
「コホン。さて、じゃあ今日は神秘のことについてゆっくり解説していくわね」
「気を取り直した直後からもう雲行きが怪しいんだが……」
「何よ。別に時間はあるんだからゆっくり解説したっていいじゃない魔◯沙」
「誰が魔◯沙だ」
「でもほら、口調が『〜だぜ』って言いそうだし」
……閑話休題。
「さて、今度こそきちんと教えてもらおうか」
「分かったわよ。じゃ、今から神秘についておさらいするわね」
そう言ってオカはホワイトボードに簡略化された生徒と銃、そしてその体を覆うオーラ的なものを絵として描き出していく。
「『生徒』と呼ばれる少女たちの体には神秘というものが宿っていて、普段私たちが銃で戦う時銃弾から身を守ってくれたり筋力を増強してくれている。それはもう知っているね?」
「そりゃ、もう」
生徒たちに「神秘」が宿っており、それが超人的身体能力を支えているというのはこの世界の常識である。
それに、ゲームのチュートリアルでさまざまと見せつけられる、頭にホローポイント弾を喰らっても死ぬどころか怪我一つしない少女たちを目の当たりにすれば、自ずと何かしらの不思議な力が宿っていると分かる。
「それが一体、どうしたっていうんだ?」
学校の先生に質問するみたいに聞く。それを待ってましたと言わんばかりに、うわずった声で彼女は新たに質問を投げかける。
「ではこの神秘、
「!」
(そういえば、そうだ)
あまりに当たり前にあるものすぎてその存在を疑いもしなかった。だが改めて考えてみれば、この体にみなぎる力の源泉はどこにあるのだろうか?
胸に手を当て、目を閉じ、意識を集中させ、神経を研ぎ澄ませる。己のルーツを辿るために。
「……感覚の話にはなるが、少なくとも体内から発されているようではないな」
「ふふっ」
そう正直に答えると、オカは心底嬉しそうに笑う。
「何だ?」
「いや?昨日の修行がちゃんと役に立ってるなー、と思って」
「あっ」
俺が自らの神秘を探る時、無意識に先日教わった瞑想のやり方を実践していた。効果に実感が持てず、役に立たないと投げていた技術が役に立ってしまった。
「おやおや〜無駄ではなかったようだね〜ニヤニヤ?」
「クッ……!」
熱が頭頂まで上って天まで突き抜けていきそうなくらいに恥ずかしい。と同時に、どこか懐かしさも感じていた。
「……と、とにかく、その根源をお前は知ってるのか?」
「ええ。少なくともその
なんと即答。ビックリする暇さえ与えてくれなかった。
「ま、前置きも長くなったし、そろそろ答え合わせといきましょうか」
横で屈んだ状態から立ち上がり、姿勢を整えると再び教鞭をとってホワイトボードの前に立つ。
「一応前置きしておくけど、はっきりしたことはわかっていないので、今から話すのは事実から逆算した推論ということになる。それに、決定的な証拠はいまだに見つかっていないから、推論としても可能性の低いもの、ということを念頭に聞いてね」
「それでも良い。俺は今、お前から答えを聞きたい」
彼女は小悪魔的な笑みから聖母のような穏やかな笑みに変え、慎重に口を開いた。
「
お知らせ
諸事情により、連載を来年の1月16日までお休みさせていただきます。
一話を挟んでの連続した長期休みとなってしまい大変申し訳ございません。
感想・評価お待ちしております。