透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話 作:Hakone8510
いやはや正月明けのゲームはどれも豊作揃いですなぁ。当方それなりに貯金してきたつもりではあったのですが、かなりのペースで急速に減っていっています。まぁ大部分の原因は最近行った旅行だと思っているのですが……またお金貯めないとなぁ……。
さて、今回の主人公は、一時休憩に入るようです。
神秘を吸収する性質を持つ樹木、黄昏の木。それを材質とする木刀による神秘を制限した修練は今なお続いている。しかし、この修行の意味を俺は未だに見出せずにいた。
(彼女曰く、
掴む、というのが何かしらを理解することなのか、物理的にその本質とやらを獲得するということなのか。それとも嘘を言って別の目的を隠しているのか。
師匠たるオカの真意に疑問を持ちながらも、彼女がいなければ自らの方向すら見失っていたのだから文句も言えず、ただ与えられたものをこなしていくことしかできなかったのだ。
そんなこんなで修行五日目を迎えた、ある朝のこと。
「ちょっと外の空気でも吸いにいきましょうか」
渡り廊下に腰掛けながら、朝のトレーニングを一通り終えた俺にオカはそう言う。俺と同じ顔立ちの少女は、眉間にしわを寄せ、まぶたを絶えずピクピクッと震わしている。呼吸はため息のように深く長く、声にはどこか艶やかさや潤いを感じられない。
「そうだな。
彼女の前に跪くと、紳士の誘い方をもって手を差し伸べる。
「供をお願いしても?」
「是非もなくってよ」
……連日の修練により、両者が心身ともに疲労の極致に達していたことは、再度告示しておくとしよう。
百鬼夜行自治区は、キヴォトス有数の観光名所として知られている。その理由として、年中何かしらの「祭り」が開かれていることにある。四季とその変わり目の度に祭りがあるだけでなく、桜祭り、盆祭り、紅葉祭り、雪まつり……ほぼ毎週につき一回のペースで祭りが開かれている。
本日は串焼き祭りとのことで、多くの飲食店が自慢の串焼きメニューをひっさげて会場に集まっている。
「見て見てレイ、あそこは味噌餅が売ってるみたい。早くいきましょ!」
「ああ」
ねぎまを左手に、今し方食べ終えた軟骨の串を口に咥えながら、右手で俺の手を引くオカ。俺はというと引かれる手の反対で使用済み串入れを持ちながら彼女を追いかける。オカの表情には数日前の病室で見た太陽のような笑顔が咲き、年相応の可憐さに思わず目を細める。
(これ、いわゆるデートというやつなのでは?)
いやいや、流石に自意識過剰だと邪念を振り払う。今考えるべきは、いかにして二人の疲れを効率的に取り払えるか。さすれば以降の修行にも身が入るというもの。
意識を表層に戻すと、いつの間にか彼女は俺の手を離れ、話のあった餅串屋で何本か買っている。お釣りを受け取って急足でこちらへ戻ってくると、件の味噌餅の串の先をこちらの方へ向ける。
「ほらレイ、あーん」
「!」
突如、俺の視界は彼女一人に集約される。
前屈みになることで元々良かったのがさらに強調される抜群のスタイル、同じくらいの身長だったのが自然と上から顔を見ることによる小顔効果、そして上目遣いにより生み出されるあどけなさ。一つの絵画として成立するほどの構図、しかしながらそれに負けない(むしろ勝っている)プロポーションとルックスの調和が生み出す「美」の極致。
それを前にして、◯貞(元)が取れる挙動はただ一つ。
「……」
混乱による静止。小っ恥ずかしさによる沈黙。キョどって気持ちがられるのを防ぐには、あえて自身の感情を利用して身を固める*1ことだった。
「あらら、あーんされるのそんなに恥ずかしかった?」
「……ああ」
(まぁ、そういうことにしておくとしよう)
それでは遠慮なく、と味噌だれ滴る餅を口に運ぼうとしたその時
ドカァーーン!!!
……毎度のこと思うのだが、キヴォトスというのは爆発が起こらなければならない法律でもあるのだろうか。視界の端から吹き込む爆風がお互いの髪を横へなびかせ、その姿は風に揺られる球場の旗の如く。幸い持っていた串は無事であったが、雰囲気は台無しである。
「我々は
爆発に紛れ颯爽と現れたのは、狐や天狗・般若の面をつけ黄色い
ただそれだけならキヴォトスでは日常茶飯事。一つ異様な光景があったとすれば。
「なんじゃあれは……なぜあんなに大勢のロボットが……!?」
「おいおい、いつもの魑魅一座のテロとは違うぞ」
「ママー、こわいよー!」
なんと、彼女たちには大量のPMCの兵士や十数台の戦車までが帯同していたのである。さながら軍の行進と見紛うほど統率の取れた、それだけ厄介そうな事案であった。
会場を占める人の多さに対して、場内には嫌な沈黙が漂い始める。俺とオカは咄嗟に屋台の物陰に姿を隠すと、勘付かれないよう声を潜めつつ隣の少女に問いかける。
「おい、あの連中は一体何者だ」
「さっき本人たちが言ってた通り、『魑魅一座』っていうこの自治領のチンピラよ。どうやら祭りに対して特別なこだわりがあって、それを訴える目的で活動してるみたい。でも……」
彼女も彼女で今まで経験したことのない事態らしく、やや言葉を詰まらせている。
「でも、いつもは小規模なテロ行為を繰り返すだけの集団だったから、民間の防衛組織だけでも対応には事足りたのよ。だけど、今回の場合は明らかに」
「それだけじゃ対処できない?」
「ええ」
「百鬼夜行の生徒会に頼る線は?」
「ここを取り仕切っている陰陽部はあくまでも百鬼夜行の行政機関。それも外交がメインだから、基本的には内部の騒乱に関してはあまり動いてくれないわ。前までは内の揉め事には百花繚乱っていう部活が対応してくれてたんだけど……」
「けど?」
「だいぶ前に解散しちゃったのよ、理由は分からないけど。だから他の組織を頼るのは難しそうね」
オカはグッと苦虫でも噛んだかのような渋い顔を見せる。せっかく疲れを癒しに来たっていうのに、これじゃあ何もかも台無しだ。
「オカ」
「何よ。まさか、
「そのまさかだ」
俺は物陰からこっそり顔を出して様子を伺う。彼らは会場の中心に行こうとしているようで、隊列を少しも乱すことなく進行を続けている。
視線を道の脇、出店の立ち並ぶ方へ向ける。店員や観光客と思しき人たちは行進を続ける魑魅一座に怯え、店の中に入ってほとぼりが冷めるのを待っている。
しかし、大人しく過ぎ去ってくれるほどあちらは寛容ではないようだ。一人の魑魅一座の一員がある店の前で立ち止まる。
「……おい、店主」
「は、はい。何かありましたか」
「なんだこの串焼きは、パイナップルピザ串だと!?」
「こ、これはピザ生地でパイナップルを巻いて串で焼く食べ物となっておりまして……モチモチ食感に果実の甘みがマリアージュして非常に……」
「ここぞとばかりに宣伝するなっ!それに美味いかどうかなどどうでもいい、伝統ある串焼き祭りでこんな冒涜的な食べ物を食べさせてたまるかっ!!!」
「ひ、ひいぃ。何卒、お許しを……」
「いいや許せないね。ここで一度痛い目を見ておかなくちゃ、伝統を汚すような奴が何度も出てくることになるからなぁ!!!」
魑魅一座というのはどうも、伝統を守ることを何よりも重視しているらしい。どれだけ美味しかろうとも、彼女たちにとってはそんなの関係ないようだ。
「もういい、こいつを連行しろ!」
「はっ」
「ひぃ、や、やめてくれぇ」
青い法被に白い鉢巻をした若犬が、PMC兵士に両手を掴まれて運ばれていく。
「いちいち喚くな!はぁ、もういい。いっそ、この場で殺してしまおうか……」
「いやだぁ、誰か、誰か助けてくれぇ!!!」
(このままでは危ない。今すぐ彼を助けなくては)
思わず飛び出しそうになるのを肩を強引に掴まれて止められた。引かれた方を振り向いて見れば、仁王立ちするオカがやや不満げに立っていた。
「待ちなさい、レイ」
「何だ。まさか、
「そのまさかよ。あなた、武器も持たずにあんな大量の物量相手に勝てると思う?思い上がりも甚だしいわ」
「……」
修行にあたって、武器の類は全てミレニアムに置いてきてしまっている。おいそれと手を出せば返り討ちに遭うことなど明らかであった。
「それに、まだ連れて行かれただけなら多少痛めつけられるかもしれないけど、殺されるってことはないでしょう。そう焦らなくても 」
「駄目だ」
彼女の言葉を遮る。
彼女の言葉は正しい。
彼女の言いたいことはすでに分かりきっている。
(それでも)
『一緒に帰ろ!◯◯◯◯◯!』
「見過ごせない」
前世の記憶にない いや、自分が失っていた記憶。何よりも、忘れてはならない記憶。それがまだぼんやりと、ふわっとではあるが思い出せた。
「きっと後悔するだろうから」
言葉と共に断片的に紡がれる過去。その一端ではあるものの、何かを得た感覚は確かにあった。
そうか、これが“掴む“というやつか。
(応えてくれ、最後の俺の可能性)
意識は、ゆっくりと混沌に沈んでいく。
目が覚める。
平らな荒野にポツンと聳える墓標が一つ。その向こうから登る太陽が、血まみれになった大地をあらわにする。それも水たまりのように液体然としたような赤い血ではなく、何かが破裂したかのような血飛沫が植物一つない野に一面の華畑を描き出している。
「自由に使って構わないよ、
彼は振り返る。日系特有の黒髪と無機質な瞳がこちらを向く。
「そう簡単に使いこなせると思わない方がいい。何せ、あれは
「そんなことは百も承知。あの鬼神の如き戦いぶりを見れば、そう容易じゃないことくらい誰の目からも明らかだ」
そう返すと、彼は俺との視線を切る。
「ま、アンタがその気なら俺はもう何も言わない。分かったらさっさと行け」
「……ああ」
彼は再び墓標の方を見つめる。
彼は相当この空間に邪魔が入ってほしくないらしい、終始不機嫌そうな態度で応対されてしまった。きっと誰であれここに来てほしくはないのだろう、ここは彼のために創られた心象世界だから。
言いつけの通り、俺はその世界を後にする。ひとまず了承は得られた。なれば後は使うだけ。
(一つ、懸念があるとすれば)
彼が言った通り暴走列車よりもタチの悪い暴れ馬を制御できるかどうか。何せ今までの機体と比べてもこの機体は非常に特異な存在だ。どこまでも機械的で、同時にどこまでも野生的と言えるそのシステム。俺に使えるかどうか。
「フッ」
そんなもの、やってみなければ分からない。俺は視界を埋めつくさんとする赤い線と共に、外側へ最初の一歩を踏み出す。
「GuGyaaaaAAAAaaaa!!!」
獣の咆哮が大地を揺るがす。その雄叫びは開戦の幕開けか、それとも敵に対する死刑宣告か。
機械的でありながら巨大かつ野生的な爪を
「これは……」
流石のオカも驚愕の表情を見せる。それまでの変身はまだ人の形を保ってたが、今回のそれは人型を大きく逸脱している。
火星の王、その
レイ「休憩って……なんだっけ……」
作者「残念でした⭐︎」
レイ「細切れになりてぇか?」
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