透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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 どうも、5月病ならぬ2月病により投稿を休んでいたHakone8510です。
 前回の更新から一ヶ月以上休んでしまい申し訳ありません。言い訳といたしましては単純に気分が乗らないだけでした……。もー先ほどまでの自分を引っ叩いてやりたい気分(冗談です)。
 2月ももう終わりますね。もう一年のうち6分の1が終わったってマジ……?嘘だ……僕を騙そうとしてる(ry

 さて、今回の主人公は、プ◯ティラになりきれないオ◯ズになるようです。


男の子はみんな特撮とかの暴走形態が大好きだよねって話。

 思考と視界が赤色に染まる。邪魔者を排除せよと魂が叫ぶ。

 

(くっ……この……!)

 

 今にも動き出しそうな身体を根性で止める。鋭利な爪のある指を握りしめ、歯茎が痛むまで噛み締めることで何とか堪える。

 

(コイツ……あまりにも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!)

 

 野生生物というのはその環境を生きていくのに実に合理的なカタチをとっている。例えばチーターであれば驚異的な瞬発力と持続力を可能にする四つの脚、獲物を確実に仕留める爪と牙、そして夜間でも対象を見分ける眼。環境の変化とともに進化してきた生物たちは皆、それぞれの生存方法に適合した特徴を強いられる。ゆえに合理的、ゆえに洗練されたカタチをしている。

 同様に、この姿は人を喰い殺すことを生きる糧としているかのようなカタチをしている。いや、生存優位性を遥かに上回る、過剰なまでの殺意が込められている、と言った方がいい。自然界的な形状を持ちながらも、自然界ではかえって持て余すほどのカタチ。致命的な矛盾がそこにはあった。

 

(制御を少しでも怠れば……コイツは容易く人を殺す)

 

 この姿を選んだ理由は単純。他の三つの形態は周囲に被害が及すぎるため、肉弾戦を主体とするこの形態ならばスマートに敵を狩れると考えたから。

 だが、その考えは根本的に間違っていることを、変身後数秒で理解させられた。後ろめたい気持ちが背中を伝っていく。

 

(理性が残ってる分、まだマシか)

 

 成ってしまったからにはもはや後には引けない。敵を見据えるべく鉄の行列の方へ視線を向ける。

 

「あん……なんだ?」

 

 PMCのうちの一人がこちらに気づく。手に持ったアサルトライフルの銃口がこちらに向く前に  

 

グシャアッ!!!

 

「ぎゃああああぁぁぁぁアアアア!?!?」

 

 ロボット兵の右腕ごとアサルトライフルは落とされた。トリガーが引かれるよりも早く、手刀をもって切断されたのだ。

 

「お前、何者だ!?」

 

「こいつぅ!」

 

 敵兵たちによる一斉射撃が始まる。雨というよりは壁という方が正しい弾幕が目の前に現れる。この程度の銃弾であれば数発当たったところで体を覆う装甲に弾かれるだろうから、避けずに突っ込んでも良いのだが……。

 

(遅い  !?)

 

 一般的なライフル弾は最大で時速600m、音速に直すとマッハ2に相当する弾速をもっている。普通の人間はともかくとして、神秘によって肉体が強化された生徒でもこれを視認して避けるのは至難の技。俺も意図して最小限の動きで避けられる領域まではいまだに到達できずにいた。

 しかし今の俺の視界では、弾が一斉に発射された瞬間、時間が何倍にも引き延ばされたみたいに世界がスローモーションで動き始めた。こちらへまっすぐ向かってくる銃弾はもちろん、飛び立つ小鳥の羽ばたきも、ひらひらと落ちてくる桜の花びらも、大人数の移動によって立った砂埃も、全てがゆっくりに見える。

 

(だがこれは……くっ)

 

 ズキン、と若干の頭痛が俺を襲う。確かに強力な力ではあるものの、制御が効かないばかりか何かしらデメリットもありそうだ。あまり長くは変身していられないだろう。

 

(手早く決めよう)

 

 先ほどは力の加減が分からなかい上咄嗟の判断だったため腕ごといってしまったが、今度はうまくやれるはずだ。

 

ザシュッ!

 

 雨粒の隙間を掻い潜るように彼らに近づき、手刀をもって銃口部分を切り落とす。おまけに顔面に軽く一発殴打を入れることも忘れない。

 世界が元の速度に戻る。ロボットたちの間を風が通り過ぎる。彼らは前から順に、暴風にでも吹かれたみたいに姿勢を投げ出して全員吹っ飛ばされた。

 

「ぐああああアアアア!?!?」

 

「がはッ!?」

 

「何が……起こった?」

 

 衝撃ののち、叫び声やうめき声が方々から聞こえる。むしろ、それ以外の音はさざなみのようなものに遮られて全く聞こえない。そのさざなみから、()()がこちらに囁いてくる。

 

(獲物が、まだ残っている)

 

 違う、無理な深追いはしないと決めたはずだ。

 

(まだ、仕留め切れていない)

 

 もういい、彼らは既に無力化した。

 

(命を、絶たなくては)

 

「Fざ、ケrな……!」

 

 視界が真っ赤に染まるのは、目が充血しているからか、それとも  

 思案が別の方へ傾きそうになったところで、彼の言っていたことを思い出す。

 

『そう簡単に使いこなせると思わない方がいい。何せ、あれは狐狼の王(ルプスレクス)だから』

 

 この形態の基となった機体、その最後の乗り手である(とある少年兵)。彼の最期はなんとも残酷で、しかし華々しい最後であった。仲間を逃し、心情的にも「行くべき処へ辿り着いた」。少なくとも、彼に心残りは無かったように思う。

 だが、その半生を共にしたその機体(バルバトス)は違ったようだ。その身死せどもその魂までは死なず、とでも言えば良いのか。血に飢え勢力に抗い続けるその魂は、時空を越えてなおその悔恨を果たそうとしている。

 

「彼は、このことを危惧していたのか  ?」

 

 彼と意志を一つとしてしまった今、もはやその真意を聞くことはできない。そもそももし聞けたとしても、彼の性格的に答えてはくれなさそうだが。

 しかし。

 

「フ」

 

 狂気の沙汰ほど面白い、とは誰かの言。今は無き彼の挑戦状を受けてやるというのも、また一興であろう。

 

「いいだろう。お前の猟犬、使いこなしてみせる  !」

 

 足を曲げ、大腿部に力を込める。グググ、という音を立てて膝裏の角度は鋭角を極め、ついにその境目が閉じるほどに太く膨張する。

 過剰なまでに溜められた力は、地面につくなり一瞬で解放される。地面を蹴り、地面がめくれる。そのおかげでエネルギーの半分くらいは抉れた大地に持ってかれてしまっていたが、そーゆーのは今関係ない。何事も勢いというのは大事である。

 先ほどの銃弾とほぼ同じ速度で、今度は戦車めがけ突っ込んでいく。

 

ガシュウン!!!

 

 空き缶にハサミを刺したみたいに、金属同士のぶつかる音と空気が抜ける音と共に巨大な前腕部が戦車の装甲に突き刺さった。

 

「うお、なんか止まった?」

 

「それよりも、なんかすっごい音しなかった?」

 

「ちょっと、火!後ろから火が出てる!!」

 

「脱出!即座に脱出だぁ〜!」

 

 やがて乗組員の全てが出たのを見計らったかのように、次の瞬間視界が爆ぜた。

 

ドカアアアアァァァァン!!!

 

 車体の後部、エンジンのあるところから煙が上がる。装甲は火に包まれ、薄ら暗い空に一筋の明かりが(とも)る。

 

「な、なんだ一体……」

 

 先ほど犬の店員を恫喝して連れて行こうとしていた、組員の一人がこちらを向く。眼前に広がる状況を見て流石にそのままではいられなかったらしく、掴んでいた店員の腕を放って銃を構える。

 

「テメェ、魑魅(すだま)組の行進を邪魔するたぁ、いい度胸じゃねぇか!その面見せやがれ!」

 

 警戒を怠らぬまま、一歩づつこちらに近づいてくる。そこまでお望みとあらば、と煙の柱から身を乗り出す。

 

「!?」

 

 前傾姿勢でこそ、異質ではあったが辛うじて自然に溶け込んでいたその姿。それが今度は、直立で眼下の敵を見下ろしている。その異形さたるや、和風の街並みの間を進んでいく戦車よりも場違いな雰囲気を纏っていた。

 

「お、お前、前は、い、一体……!?」

 

 先ほどまで生き生きとしていた彼女の声は、今ではすっかり萎んでいる。足は震え、銃口はブレブレ、視線は泳ぎ、額は青ざめている。ただこの世ならざる異形を見た時の底知れぬ恐怖が今の彼女を支配していた。

 その様子を見ても、もはや優位に立ったという嬉しさは微塵も得られない。あるのはただ哀れみの感情だけだ。

 

「……」

 

 腕が動く。伸ばした手が、伸びた爪が敵の顔に近づいていく。

 

「ちょっと、私のこと忘れてないでしょうね?」

 

 春の香りと共に、右の肩が強く引かれるのを感じる。既に自分のと俺の残していた分を平らげ、何もなくなった串を肩に置いているのと反対の方で持つオカは、漫画で見るような見事な膨れっ面を見せていた。

 

「まさか」

 

 俺は手を下げる。自分の内にある熱が急激に冷めていくのを感じる。

 

「というか、あの剣(フラガラッハ)使わなくても変身できたのね。武器取り上げた意味がないじゃない」

 

「フラガラッハなしに変身できたのはこれが初めてだ。次回もできる保証はない」

 

「どうだか。事実としてあなたの神秘は修行を通してより強まっているから、触媒を介さずに変身ができた」

 

 彼女は串を手持ちのゴミ袋に捨てると、出来合の手提げバッグに仕舞う。

 

「それで?アンタは俺を止めたいのか?そろそろこっちの理性も限界なのだが」

 

「いいえ?むしろあなたを補助しようと思って」

 

 彼女の右手は、今度は脊髄のあたりに置かれる。そこがじんわりあったかくなっていったかと思うと、凝りを感じていた関節や疲労が幾分かマシになっていく。

 

「暴走を抑えるのに大分消耗してたみたいだから。私の神性エネルギーをちょっとだけ分けてあげる」

 

「神性エネルギー?」

 

「神秘を行使するための燃料……イメージ的には血液だとか、ファンタジーなら魔力とかが近いんじゃないかしら。ま、名前は私が勝手にそう呼んでるだけだけど」

 

(なるほど、これは……)

 

 神性エネルギーを体に流されているとふと、先日までの木刀による修行が頭をよぎる。あの時吸収されていたモノと今自分に流れ込んでくるモノが、なんとなく同質のモノだと気づいた。

 

(吸収されていたのは神秘そのものじゃなくて、それを行使するエネルギーだったってわけか)

 

 そうこうしている内に騒ぎはどんどん大きくなっていき、ついには俺たちの眼前までその喧騒がやってくる。

 

「テメェら、よくも私たちの行進を邪魔してくれたな!」

 

「ぜってぇ許さねぇ!」

 

「一度とっちめて、立場ってもんをわからせてやる!」

 

 最後の喧嘩文句が聞こえたところで、懐かしささえ感じる温もりがゆっくり消える。ふと振り返ると、いつの間にか彼女はその腰に一振りの刀を提げていた。

 

「さっきも言ったけど、今回はあなたの援護に留めるわ。もし今後修行期間中にこういう場面に遭ったら、基本は私が対処するからね」

 

「承知した」

 

 師匠のお許しが出たとあらば、もはや何も怖いものはない。俺は全身を使って大きく息を吸い、吐き出す。

 次に目を開けると、周りの景色は既に先ほどまでオカといた脇道ではなく大通りに出ており、早速戦車をもう一台潰していたところだった。

 

(……やっぱり暴走フォームが一番怖いかも)

 

 フラガラッハ無しで変身した影響か、本来持っているはずの大型メイスを所持していない状態ですらコレである。ライフル弾程度なら弾ける装甲を備えているとどこかで聞いたことがあるのだが、ここまで容易く破壊できるとは。

 

「過ぎた力だ、全く」

 

 幸い言葉を発話できる程度の理性はまだ残っている。そのうちになんとか敵勢力を制圧できればいいが……。

 なんてことを考えている間も目の前に立ち塞がる敵を薙ぎ倒していく。そのかたわらオカの方へ視線を向けると、彼女は天井や店といった細々とした場所にいる敵を制圧している。銃身を切ることで戦闘不能にしているようだが、それをなんでもないかのように容易く行なっていることに恐怖を覚える。

 そのうち敵の本拠地となっている大きな広場まで進むことができた。祭りの中心として設営された広場には人質として集められた住民が円形にズラリと並んでおり、その端や中央に魑魅組のメンバーが立っていて監視している。そしていかにもリーダー然とした態度の少女が、即席の玉座に腰を下ろしていた。

 

「お前たちか、先ほどまでの騒ぎの原因は」

 

「その言葉、そっくりそのまま返していい?」

 

 刀を納刀しつつオカは聞く。華美な服装に隈取のあるお面を身につけた奇抜なその少女はゆっくり立ち上がると、小学生の持っている色鉛筆セットぐらいカラフルな髪をかき上げてニヒルに笑った。

 

「アタシの()()を荒らす奴は誰であろうと許さねぇ。それだけの覚悟があって来たんだろうな?」

 

「それを言うなら、ここは元々百鬼夜行連合学院の土地だろう。シマを荒らしているのは一体どちらだ」

 

 俺は反論する。魑魅組の頭領は「言うじゃねぇか」と受け止めつつも、それでも尚偉そうな態度を変えようとはしない。

 

「アタシがやる分にゃ自分だから許す、だが他人にやられるのは気に入らねぇ。単純なことだろ?」

 

(格好からなんとなく想像はついていたが……相当自己中心的な性格をしているな)

 

「……もういいよ。君とは話が通じないことはよく分かったから、もうさっさと始めるよ」

 

「待て!」

 

「……?」

 

「戦いの前には互いに名乗りをあげなければ!」

 

 これを呼んでいる君も、この時の俺たち二人も同じことを思っただろう。

 ……面倒くせぇ〜〜(ため息)。

 

「では、アタシから名乗らせてもらう!」

 

(こっちの話も聞かずに勝手に始めやがった……)

 

「我が名は  

 

「ただいま参上ぉーっ!!!」

 

 自己中ヤンキーの名乗りが、可愛らしい声に遮られる。同時に煙幕が広場の中心から舞い上がり、敵味方問わず広場が騒然となる。煙が徐々に晴れていくと、いつの間にやら三つのシルエットが浮かんできた。

 

「や、闇夜に潜む悪人どもから、人々を守る百鬼夜行の陰の番人!」

 

「どんな場所にも潜入し、巧みな術を駆使して敵を翻弄する隠密のエリート!」

 

「「「そう、我ら  」」」

 

「「「忍術研究部!」」で、ありますっ!」

 

 完璧な決めポーズによる完璧な名乗りが、会場全体に響き渡った。




レイ「どっからツッコんだらいいのやら……」
作者「愉快なもんだな」

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