透き通った世界でヒイロ・ユイを目指す話   作:Hakone8510

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はじめてのもびるすーつせんとう。
漫画とかも大概ですけど小説での戦闘描写まじでムズカシイ……


初めてのMS戦闘が存外あっけなかった話。

 施設から出撃した俺がまず目にしたのは、幾重にも連なるビルの群れだった。

 

「ここは…もしかしてD.U.か?」

 

 あたりを見回してみると、ビル群の中心部に天高く(そび)えるオベリスク、サンクトゥムタワーを発見した。確定である。

 出口がどこにつながっているかどうかが不安の種だったが、どうやら杞憂だったようだ。これがゲヘナとかだったら速攻で撃ち落とされていたかもしれなかったので、内心ほっとしていた。

 

「さてと、まずは適当なところに降りて情報収集と洒落込もうかな  ん?」

 

 今後の予定をなんとなーく立てていたところで、コンソールからビーッという警報音が鳴った。

 

「モビルスーツの反応…?」

 

 なんとなくウイングゼロを見つけた時点で察していたが、やっぱりこの世界にはモビルスーツが普及しているのか。

 

「ともかく、その場所に行ってみるか」

 

 操縦桿を前へと押し出して、反応があった座標へと向かう。

 

「…見つけた」

 

 街の中心からかなり離れた外縁。そんな街中に立つのは、A.C.(アフターコロニー)史上初にして最もポピュラーな量産型MS「リーオー」だった。

 105mm口径のドラムマガジン式実弾ライフルを両手に持ち、両肩部には誘導式ミサイル、そして予備なのかは知らないがミニガンを2挺背中に下げている。装弾数こそ大幅に劣るものの、そのシルエットは「歩く火薬庫」と呼ばれたガンダムを彷彿とさせた。

 

「ん、勘づかれたか」

 

 不意にリーオーが体をのけぞらせた。どうやら敵機のレーダーに引っかかったらしい。まぁ、勘づかせたのはわざとだが。

 

「モビルスーツ同士の戦闘……操作方法は教わったが、慣れておくに越したことはない」

 

 敵機が体の向きをこちらに向け、手持ちのドラムガンをが火を吹く。もし当たってもガンダニュウム合金の装甲には傷一つつかないだろうが、回避行動の練習にちょうど良さそうなので折角だし避けてみる。

 スラスターのON/OFFやシステム周りのメンテナンスは操縦桿の押し引きだったりキーボード*1で行うが、機体操作のほとんどはグリップのボタンでコマンドを入力する。大まかな操作はシンプルな、細やかな調整などは複雑なコマンドの入力が必要になる。それにそのコマンドを組み合わせてさらに複雑な動きを機体に課すこともできる……って格ゲーみたいだな、ボタンの数には圧倒的な差があるが。

 とりあえずスラスターの方向を変え左に逸れる。まぁ当然のことながら、敵機はそれに追従して方向転換をしてくるので、弾丸の数発が機体をかすった。

 

「う〜ん。もう少し上手く避けれんものか…」

 

 するとリーオーは肩部ミサイルポッドのカバーを開放し、発射した。

 

「流石に直撃したらまずいな」

 

 こちらも素早くコマンドを入力して肩部にあるハッチを開放し、グリップのトリガーを引く。

 

ダダダダダダダッ!!!

 

ドオオオォォォォン!!!

 

「一度に撃てる量を全部撃つからだ」

 

 発射されたミサイルの全弾は一度に撃てる量を撃ち切ってしまったため、ミサイル同士の距離が近く一番此方に近かったミサイルがウイングゼロのマシンキャノンで爆発したことで、全て誘爆してしまった。

 

「さて、そろそろ反撃するか」

 

 武装チェックの確認画面を開く。

 

【挿絵表示】

 

 

 見たところ武装にも異常は無し、残弾もまだ潤沢にある。

 

「問題なさそうだな。よし」

 

 副翼から荷電粒子ブレードであるビームサーベルを抜き、基部からビーム刃を展開。そして一気に敵機との距離を詰める。リーオーは焦ってとりあえず武装を片っ端からこちらに発射しているが、先ほどの練習で慣れたこともあってほとんど被弾せずに地上近くの高度まで降り立つことに成功した。

 もはやドラムガンもミニガンも誘導ミサイルも効果がないと判断したのか、相手はそれらの一切を解放(パージ)し、左腕についていたビームサーベルをこちらに構えた。俺は上空から相手へ急接近し、構えていたビームサーベルを大きく振りかぶり  

 

ギュオオオォォォン!!!

 

 ウイングゼロの緑の刃と、リーオーの赤の刃が交錯する。

 

ジジジジジジ……!

 

 2色の線の交差点からエネルギーがぶつかり合う音と共に大量の火花を撒き散らされる。ただ、ウイングゼロの圧倒的な推進力によって、リーオーは徐々に後退りしていた。よし、このまま押し切れば……!

 

 

 

「きゃああああぁぁぁぁッッ!?!?」

 

 ん?今外で誰かの声がしたような……。

 モビルスーツに乗った以上相手の命を奪うくらいの覚悟は持ち合わせていたが、一般人を巻き込むつもりはない。急いで救助するためリーオーとの鍔迫り合いにも注力しつつ、声の主を必死に探した。

 すると自分の足元辺りに、紺色の髪の端を横に結んだ少女が、尻餅をついてこちらの方を見ているのを見つけた。

 

 どうにも見覚えのある彼女の名は早瀬ユウカ。一部のネット民の間ではその異常に発達した太ももが執拗にいじられていたが、その一見そっけなくも世話焼きな性格が好感を呼び数多の先生から人気の生徒の1人である。

 というか彼女がここにいるってことは、もうメインストーリーが始まっている…?

 

 ともかく、このまま戦い続ければ命の危機とまでは言わないが、彼女が大きな怪我を負う可能性がある。すぐさま戦闘領域外へ逃さなくてはと外部マイク機能をオンにする。

 

『おい』

 

 あ、やべ。緊張しすぎてぶっきらぼうでドスのきいた言い方になっちゃった。

 いいですか、落ち着いて聞いてください。先ほどまでいかにもつらつらと現状を解説しているように見えるかもしれませんが、実は内心めちゃくちゃ緊張しています。

 

 画面の前の先生方も考えてみてほしい。三次元の世界で生きていてまみえることがほぼない程の美少女を、機械眼(カメラアイ)越しとはいえ目の前にいるのだ。そして女性経験皆無のオタクがそのような状態になったら、どうなるだろうか?

 そう答えは簡単、スタンす(キョド)。それ故自分の意図していない行動を取ってしまうのだ*2

 

 ほら、ユウカも動かないまま顔青くしちゃってるじゃん!!えーとえーと、早く次の言葉を紡がないと  !!!

 

『この場は危ない。今すぐこの場から離脱しろ』

 

 ふう、一呼吸おいたおかげで優しく話しかけることができたぞ*3

 

 彼女は俺の言葉に肯首した後、駆け足でその場を離れていった。

 

「さぁ、安全も確保できたところだし……再開だ」

 

 操縦桿を一気に押し込み、バーニアの出力を最大まで上げる。敵も負けじと踏ん張ろうと機体各部のバーニアを点火するが、自力では軽いジャンプすらままならないリーオーとの推力差は比べるまでもなく、ビームサーベルを持ったまま仰け反り、そのまま地面に倒れ込んだ。

 

「あっ」

 

 思わず間抜けな声が出る。こうなってしまえば格闘戦も何もない、そこにあるのは倒した方の一方的な蹂躙だけだ。

 そのまま胸部に突き刺すことも考えたが、判断する前に仰向けになってほぼ数秒後にコックピットハッチが開き、パイロットと思しき不良生徒が両手を挙げて降参の構えをとった。そのため無益に殺す必要もないと俺はビームサーベルの電源を切った。

 

「ふぅ…」

 

 初戦闘にしては案外あっけなく終わってしまい、俺は拍子抜けしたまま溜息をひとつついた。

 

 


 

 

「はぁ、はぁ……」

 

「ユウカ、無事でしたか」

 

 気付いたらいなくなって、そうかと思えば息をあげて帰ってきた私に対して、ハスミや味方のみんな、そして先生が出迎えてくれた。

 

"大丈夫だった?急にいなくなるもんだから心配したよ"

 

「ご迷惑をおかけしました……。なんとか作戦を遂行しようと頭が混濁していて…」

 

 いつもの冷静な私であれば、あのような突飛な行動はしなかっただろう。

 しかし今日に限っては大量の事件報告がセミナーに舞い込んでいたことで自覚なしに気が立っていたのに加え、あのいちいち腹が立つ言い回ししかできない主席行政官に面倒な任務をいきなり押し付けられて内心焦っていた。それが結果的に皆に迷惑をかけてしまったのだ。

 

「謝罪は後にしましょう。ひとまずはシャーレの建物に到達しなくては」

 

「なら、このまま進んで迂回するルートはどうでしょう」

 

 スズミさんの場の切り替えに感謝しながら、ようやく落ち着いてきた私はそう提案した。

 

「了解です。では先生、引き続き指示を」

 

"OK。みんな、行くよ"

 

 その掛け声に合わせて、全員が再び走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 その後度々現れる脱走した不良生徒たちと交戦しながらも建物の裏口まで到達。後で行政官と落ち合う手筈のため、私たちはその場で待機し中へ進む先生を見送った。

 そして、4人でその場所を守る傍ら、先ほど起きたことを皆んなに伝えていた。

 

「ガンダム……ですか」

 

 チナツさんが顎に手を当てながらそう呟く。

 

 ガンダム。それは最近、突如キヴォトス各地で発見され始めた原理不明のシロモノ(オーパーツ)的モビルスーツの類である。現在我がミレニアムが率先して最新鋭機の開発に着手しているけれど、ガンダムの総合スペックはその最新鋭機の約8倍。相手が量産機ともなればその性能差は更に浮き彫りとなり、もはや数で圧倒することも難しい。そのためガンダムを保有する各学園はその力を恐れて、その生徒会にあたる部活が管理、少し悪辣に表現すれば独占していた。だが……

 

「見間違いではありませんか?アレが動く姿など今の今まで見たことがありませんが」

 

 そう、ガンダムが実際に使われたことは最初のガンダムが発見されてから一度もない。その理由は簡単で、使う意味がないから。

 モビルスーツは、量産機で更にどんな型落ち品であっても1機1000万円は下らない。そんな高級品を1機2機ならまだしも、10機以上を購入し、更には地味に高い維持コストも負担し続けるなんてことは一介の生徒には到底できない芸当なのだ。

 それにモビルスーツは確かに殲滅能力に長けた兵器だけど、別に対人に対して特別適性があるわけでもない。バズーカや大砲、戦車などを上手く運用すれば、簡単に破壊できてしまうのだ。

 

 ハスミの嫌味みたいな疑問に肯首しつつ、話を続ける。

 

「だから私も最初は自分の目を疑ったわよ。でも何度見直してもあのV字アンテナとツインアイカメラ、そしてフェイスアーマーの溝が特徴的なあの頭部だったの!」

 

 つい語気が強くなってしまうが、こればかりは仕方がない。

 

「それに、あの機体は今まで発見されたどのガンダムとも違った」

 

 ハスミとチナツさんが、驚いたように目を見開く。

 

「学園はガンダムを保有する場合、必ず連邦生徒会に報告する義務があったはずです。もしユウカさんの言う通り連邦生徒会のデータベース上に存在しない機体だとしたら……」

 

 スズミさんはその先の言葉を紡ごうとして、咄嗟に止める。

 もし本当に未確認のガンダムであり、尚且つ連邦生徒会への報告がない場合考えられるのは……

 

「学園による不法運用、もしくは学園に所属していない一個人が持っているとみて間違いないでしょう」

 

 顔を青くしながら、チナツさんが少し震えた声で言った。

 

 敵か味方かわからない存在が一番怖い。それは組織、それも学園全体を率いる者にとっては当然の感情。それがわからなければ、戦闘の勝率も不確定要素が絡んで計算が困難になる。この先の未来がより読みづらくなってしまうのだ。

 

「だから、先生が任務を完遂したらすぐに表の方へ向かって、あの機体の操縦者(パイロット)と交渉しましょう」

 

 我ながら酷い提案だ。端的にいえば交渉の余地もわからぬ相手に直接話し合いに行こうと言っているのだ。最悪の場合命を落とすかもしれない。これほどまでにデメリットまみれの提案はないだろう。

 でも私は、あの時逃がしてくれたガンダムのパイロットが一瞬垣間見せた優しさを信じたいのだ。

 

  ユウカの言うことです、私たちにはわからない確信(証拠)があるのでしょう。ならば今回ばかりはその提案を受け入れましょう」

 

「トリニティ自警団として、この状況をみすみす無視するわけにはいきません」

 

「ゲヘナ学園、ひいてはキヴォトスの危機です。風紀委員会の名代として、私も交渉に努めましょう」

 

「……みんな、ありがとう」

 

 彼女たちには本当に感謝でしかない。いくらあの時助けてくれたと言っても、まだ相手の顔と名前も知らない。それを1人で相手するのは少し心細かったので、提案を受け入れてくれて内心ほっとしていた。

 

 …あれ?何か大事なことを忘れているような……

 

「そういえばユウカ」

 

「はいッ!?」

 

 ハスミの声で思考の海から引き上げられ、私は彼女の方へ振り向く。

 

「どうしたの?」

 

「……いえ、杞憂だったら良いのですが」

 

「?」

 

 

 

 

「あなたが先程呼んだMS部隊は、結局どうなったんですか?」

 

「あっ」

 

 

 

 

 …………もしかして、またやっちゃった?

 

 


 

 

(……ん?)

 

 降参した敵パイロットにマシンキャノンを向けて脅しながら、彼女をどうしようか悩んでいると、半球型レーダーに新たな機影が映し出されるのが見えた。

 

「数は9体……小隊規模ってトコか」

 

 まさか彼女が呼んだのか?

 

『おい』

 

「ヒエッ!?!?」

 

 随分怯えていたのか、素っ頓狂な声が入ってきた。

 と言うかやっぱり語気強くなっちゃうな……低音ボイスが原因なのだろうか。

 

『今新たに9機のモビルスーツがこちらに向かってきているが、お前が呼んだのか?』

 

「ち、違いマスウウウウゥゥゥ、だからこ、殺さないデエエエエ!!!」

 

 ……よく真偽がわからんな。まぁいい。今来てる奴らに聞けばいいことだ。

 

 数分後見えてきたのは、飛行する先鋭的なデザインが特徴の機体トーラス*4の群れ。そしてそいつらを先導しているのは……

 

「ん?なんだあれ」

 

 左腕に装備された大型ガトリング砲とゴツい肩、そして脚部のミサイルポッドはウイングゼロと同じく「ガンダムW」に登場した機体「ガンダムヘビーアームズ」をどことなく連想させる。が、頭部がジムのような形状に変わっていることに加え、右腕にはショットガンらしきものを装備している。それに背中には大型のブースターユニットが装備されていて、機動力を上げているのが見て取れる。

 

 ヘビーアームズの面影を感じながらも全く異なるモビルスーツがトーラスたちを引き連れて俺の目の前に着地するなり、ヘビーアームズ……いや偽ヘビアはすぐさまショットガンを此方に構えた。

 

『そこのガンダム、聞こえてる?』

 

「……!」

 

 開放型通信(オープンチャンネル)で入電してきたのは少しゆったりとして気だるそうな声。俺の記憶が正しければ、この声の主は  

 

『ま、いいや。私はミレニアム学園セミナー直属、特異現象捜査部の和泉元エイミ。戦り合うの面倒だから大人しく降参して』

 

 神名十文字(デカグラマトン)及びその預言者を調査する、ミレニアムの生徒会「セミナー」直属の部活「特異現象捜査部」。その数少ないメンバーの1人が、眼前に立ちはだかった。

*1
実は設定上、ウイングゼロの全ての操縦はグリップのボタンだけで行える。

*2
庇いようのない言い訳である。

*3
当社比。

*4
「新機動戦記ガンダムW」にて登場した敵方の量産機。機動性と飛行性能に優れた可変機で、多少の調整で宇宙空間にも対応できる汎用性も併せ持つ。その性能は量産機としては非常に高い仕上がりを見せ、本編終了後もしばらくスペースコロニーの防衛等に運用されたという。




○ちょこっと機体解説「ガンダムヘビーアームズ」
 「新機動戦記ガンダムW」に登場する、多彩な火器を装備した砲撃戦用モビルスーツ。
 「ヘビーアームズ(Heavy Arms)」の名の通り本編内における戦艦五隻分に相当する火力の重火器を多数内蔵し、その様は正に移動弾薬庫。特に1対多数戦では圧倒的な制圧力を遺憾無く発揮する。またその重量感ながら機体各部の大出力スラスターにより機動性は並一通りではない。
 ただ格闘戦能力に乏しく、弾切れした場合右腕の折りたたみ式アーミーナイフ以外使用できる武装がない。一応予備としてビームサーベルを装備できるよう途中で臨時改修されたことはあったが、それ以降使われたことは一度もない。ただ決して弱いわけではなく、それなりの技量があれば全弾発射後の接近戦でも十分な戦闘能力を維持できる。

 本話執筆にあたり、「外伝機体」「オリジナル派生機体」タグを追加しました。さすがに本編に出てくるやつだけだと間が持たないので許してクレメンスm(_ _)m
 もしよろしければ感想・評価もどうぞよろしくお願いします。
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