【完結】泳者(プレイヤー)名「葦名一心」 作:ムーンフォックス
鹿紫雲とかは過去の回想だと葦名一心みたいな喋り方してたのに現代では青年みたいな口調と化しているのは受肉した肉体の記憶も少し関係しているのでしょうかね。
でも万は変わってないですね イメチェンかな?
先に攻撃を仕掛けたのは一心の方であったが、攻撃を先に命中させたのは鹿紫雲の方だった。それは武器を持つか持たないかの重量差が多少なりとも関係している。
死滅回遊開始より一時間、ありあわせの槍を持つ一心に対し鹿紫雲は手持ち無沙汰。握るものといえば相手の喉笛だけだった。
しかし死滅回遊が開始してからの戦闘経験で軍配が上がるのは鹿紫雲の方だ。故に一心の攻撃に対応できたのも、彼であった。
槍による突貫攻撃に対しカウンターのように放たれた正拳突きが胸を撃った。よろめく一心に向ける情は無い。間髪など入れない連撃の嵐でどんどんと追い詰めていく。
「少しは老人を労らんかッ!」
「
軽薄な掛け合い。だが鹿紫雲は気づく、攻撃の一挙一動、そのすべてが槍で弾かれてることに。
鹿紫雲の呪力は電気の性質を帯びている。攻撃が当たれば雷に打たれたような衝撃が襲う。それは防御不能の一撃の筈。
そして何より一心は──。
「呪力を使えよ! ジジイ!」
これまでの戦いで呪力を用いた防御をしていない。
呪力をあるかないかでは勝負には大きな差がつく。だが結果は依然とした膠着。
それも当然、葦名一心にとっては呪力よりも
それはなんてことの無い。彼の死闘の歴史が培った技術。
ありふれた流儀であり、それは葦名一心の技術の粋。
名を、葦名流という。
襲い来る拳のすべてを一心が弾く、さながら滝を登る鯉のように。
だがこの一撃は防げない! 鹿紫雲がそう確信した上段蹴りは、一心が後方に大きく飛ぶことで回避された。
追撃はしない。後方に飛ぶと同時に槍が横薙ぎに振り払われていたからだった。当たれば致命傷は免れなかっただろう。
取られた距離を再び詰める。一心は攻撃をしてこない。また防御に徹するのか──
違う。
あれは構えだ。
鹿紫雲の理性が急ブレーキをかける。
一閃。
辺り一面、その軌道上にあったものの全てが斬られていた。もしあのまま愚直に突っ込んでいれば、鹿紫雲の上半身は今頃無い。
「ようやく血が滾ってきたわ!」
「全部蒸発させてやるよ!」
須臾、鹿紫雲の前から一心の姿が消えた。時刻は午前一時頃、辺りは暗く視界は不明瞭。
鹿紫雲が辺りを見渡すがそこには深淵が広がるのみだ。
逃げた? 違う。あんなことを言っておいて逃げる訳が無い。
右か? 左か?
──否。その一撃は上からだった。
だがこの行動は予測済みだった。咄嗟に後方に飛び回避、即座に拳を叩きこまんと鹿紫雲が顔を真正面に向け──。
そこで一心の姿が目の前にいないことに気づいた。
一度のみならず、二度の空からの一撃。
上空から降りてきた槍が、鹿紫雲の左足を貫通する。
「グッ……!」
「まだじゃ!」
不思議な感覚だった。追い詰めていたのは鹿紫雲だというのに、今や状況は逆転し窮地に陥ってる。
それも呪力を用いず戦う未知の敵に、だ。
鹿紫雲の結論は一つ。
「面白い……!」
ならばこれはどうだ。この必中の一撃を喰らっても尚目の前の存在は生き残れるのか。
孤独を、満たしてくれるのか?
パリッ……、と。
一心の耳が異音を捉える。
この音はなんだ? 疑問に対し、肉体が呼び起こす未知の異音への正体。
それは───
葦名一心は、無意識下の内に高く跳躍した。
雷神の一撃が爆ぜる。
鹿紫雲の呪力は電気の性質を帯びている。
幾十もの間で交わされた拳と槍の交差により鹿紫雲は一心の方へプラス電荷の電子を移動させた。鹿紫雲にはマイナス電荷の電子が残る状態となる。
その状態で雷撃を発生させればどうなるのか? 電流とは常に電子の移動でありその方向は電流とは逆方向となる。
その矛先はプラス電荷の電子を持つ存在。
つまるところ、一心である。
それは避けれぬ絶対の一撃。鹿紫雲一を江戸の時代に最強たらしめ、雷神の名を欲しいがままにする理由。
その筈だった。
──かつて葦名に、あやかしきたり
あやかしの雷は、源の神鳴り
神業無くば、弾き返せぬ
「ああ、やはり面白い」
食らった筈の雷を返す、一心の姿。
──即ち、地に足つけぬ、雷返しなり
『打雷』──鹿紫雲は電撃に耐性があるが、それでも一秒間は動けない。
鹿紫雲は強者、故にその一秒が死合にどのような結果を齎すのなど、とっくのとうに理解している。
一心が遠間より構えた──だがこの距離ではいかなる攻撃も鹿紫雲には当たらない筈──。
秘伝・竜閃
それが鹿紫雲の最後に見た光景。
そして最初に見ることとなる、飛ぶ斬撃。
脳裏に浮かんだのは何故か、まだ見ぬ宿儺の姿だった。
相手が雷を扱う敵ということは、幾度のぶつかり合いの中で理解していた。
幸運なことに、一心にとって雷を扱う敵と対峙した回数は少なくない。術師ならば翻弄される筈の電気の呪力に対応できたのはそれが影響しているからだろう。
雷は炎や怖気と違い弾いても体内に雷撃が蓄積される──巴と剣閃を交わした際にそれは理解していた。蓄積する雷撃が一定の基準まで達すればさしもの葦名一心とて数秒間、行動が制限される。
故に葦名一心は待った。焦って攻め入れば負けることはかつての死闘が教えてくれる。
蓄積する雷撃に焦燥感を覚えはすれど、それを表面に出すことはしない。表に出せば相手がそれを悟るからだ。
何も変わらない。
為すべきことを、為すだけだ。
そしてその時は来た。勝負をつけるために使用してくる膨大な雷の一撃。雷撃を槍で弾くことで衝撃を緩和し、そのまま相手にその一撃を返す。
名を、『雷返し』と言う。
鹿紫雲、そう名乗る強者は単純な雷の威力ならば、恐らくはかの者と引けを取らないだろう。
そう、貴き宮の山頂に住む、かの揺蕩いし竜に。
うな胆が欲しかったと独り言ち、葦名一心は改めて目の前の者の処遇をどうするか決めかねていた。弱者ならば殺す。だが強者ならば──
「さっさと殺せよ。なんで殺らねぇんだ」
「……儂には、為さなければならないことがある。しかしそれは恐らく、儂一人の力では叶わぬ。故に、協力してもらいたい」
「お前にも、倒さなきゃなんねぇ奴がいるのか?」
「ああ。時に鹿紫雲よ、お主──」
鹿紫雲の問いかけ、返す言葉の裏に潜むのは羂索が彼に残した、一つの
『あ、そうだった 君には一つ言っておかないといけないことがあったね』
羂索が自身の身体を指差す。
『私の今の体……呪霊操術っていう術式の持ち主でね、取り込んだ呪霊を自由に使役できるんだけど、一人だけ厄介な奴がいてさ、使役したはずなんだけどたまに制御を離れて暴れちゃうんだ』
その回想の中で、何故羂索がそんなことを一心に話すのかと疑問に思っていたのを覚えている。
『だから置いてきちゃった。北の何処かに行っちゃったよ、ソイツ』
『北』。かつて葦名のあった地だ。懐かしさに浸ったのを覚えている。
『名前は……そう』
「──狼狩りに、興味は湧かんか? その狼は、こういう名前をしているらしくてな」
「『特級呪霊 怨嗟の鬼』」
かつての名は狼。
──或いは隻狼と呼ぶ者も、いたのだとか。
ああ、なんたる因果。
一心は意識の内で狼を憎み──無意識の内に喜んでいた。
当然だ。一心は最期まで死闘を求めた。
歴史が移ろおうと、それが変わるものか
己を斬った者とまた戦えるなど、まこと血がたぎる
色がつきました。本当にありがとうございます。
いつ更新が途切れるのかわかりませんが、尽力いたします。
物理の解説は間違ってると思います。
鹿紫雲は宿儺戦だと神武解の雷攻撃を喰らってもピンピンしていたのですが、現時点だと他に神武解をつかってる描写が無いので単純に威力が足らなかったからピンピンしてるという解釈にしちゃいました。すみません。