【完結】泳者(プレイヤー)名「葦名一心」   作:ムーンフォックス

6 / 14
 先日ランキングに載っておりました。初めての経験でした。
 これも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。


仙台結界(コロニー)

 

 葦名一心が使用するこの刀は乙骨憂太が使用していたものだ。呪具では無く、故に竜骨や爛生刀のような特殊な効果はない。

 

 だからこそ、葦名一心にとってはこれが一番使いやすく、肌に馴染んだ。

 

 事態はジリ貧と呼べるようなものではあるが、強いて言うならば空の利がある烏鷺の方が優位であろう。一心には竜閃があるが、逆に言えば有効な手立てがそれしか無いのが事実であった。

 

「イヤな術式を見せてくれるじゃない!」

 

 故に一心は疑問だった、何故烏鷺は空の利を捨てて降りて来たのだろうかと。

 

 一心がそれを知る所以は無かったが、彼の飛ぶ斬撃は烏鷺にとってとあるものを想起させた。烏鷺の精神(ぷらいど)高潔(たかい)、だから彼女は降りてきた。直々にこの侍を嬲り殺しにするために。

 

 烏鷺亨子は藤氏直属暗殺部隊『日月星進隊』、その隊長。

 最後には同族殺しとしての汚名を着せられ処刑された過去を持つ。

 

 汚名を着せられた理由には、とある一つの敗北がある。

 かの相手もまた、飛ぶ斬撃を使用していた。

 

 その男、両面宿儺は。

 

 

 烏鷺は駆けない。相手と自分の間の空間を縮ませれば一歩で懐まで潜り込めるからだ。

 

 肘打ちが一心の腹を襲う。次に膝蹴り、首に直撃。

 よろけた隙を狙い叩かんとした拳──刀によって弾かれ、葦名一心が後ろに引く。

 

 追撃のために接近。

 そしてその隙間を縫うように襲う、一心の斬撃。

 

 それは簡易的な抜刀に過ぎない。

 げに恐ろしきは、それを一瞬で行える技量。付け加えるならば──一心の攻撃は終わっていない、抜刀時の勢いを利用し回転、さらなる下段の攻撃を叩き込んだ。足を斬られ血が吹き出る。

 

「やってくれたな!?」

 

 思わずうずくまるが闘志が消えたわけではない。

 反撃に出るため上を見上げた烏鷺が見たのは、綺麗なまでの上段で刀を振りかぶる一心の姿。

 

 葦名一文字。

 

 

 無骨に、正面から叩き斬る刀、咄嗟に空間を捻りその軌道を逸らす。

 

「そんな剣道で私を殺せると───」

 

 言葉を止めたのには相応の理由がある。先程の光景を再生したかのような、再びの上段の構え。

 

 葦名一文字・二連。

 

 その技は、二連で完全となる。

 

 肩にできた深い傷。思わず痛みで我を忘れそうになる。

 だがこれで良い。烏鷺は隙を作ることができた。傷は反転術式で治せば良い。

 敢えて命を捨てることによる縛りが、烏鷺亨子のその技の威力を上昇させる。

 

 大きく開いた手のひらを、一心の腹へとかざす。

 

 烏鷺の術式は空間を操る。空間を一つの面と捉えることで自在に操作でき、宙をこれまで飛んでいたのもその応用だ。

 そしてこれはその空間自体に衝撃を加え相手をも巻き込む彼女の必殺。

 

「お返しよ」

 

 名は、宇守羅弾(うすらび)

 

「ッ!?」

 

 葦名一心は驚愕する。二つの掌底による攻撃で己が後方のビル群まで吹き飛ばされたことに。

 

「なんだ、大したことないじゃない?」

 

 烏鷺の嘲りが、一心の傷に染みていく。

 そしてもう一つのイレギュラー。

 

 単為生殖を成し遂げた呪霊としての黒沐死が、葦名一心へと迫っていた。

 

 


 

 

「一心さん!」

 

 乙骨には石流に対してのアドバンテージがある。例えばそれはこれまでの勝負、彼は反転術式を使用していない。呪術とは情報の勝負。騙し合いを制したものに勝利の女神は微笑んでくれる。

 

「おいおい! 俺がそんなに甘ちゃんに見えるかよ乙骨!」

 

 つい先程まで拳を交わしてた石流龍は強者。鹿紫雲の亡き後の最強。腹八分目の不満な人生を満たしてくれる相手を探す砲台。

 乙骨は己の為に戦わない。常に己を損得の秤には取り入れない。助けるべき者は己の身を通し助ける。故に一心は乙骨にとって現在の最優先の存在。

 だから一心より事前に話されていた策のために

 

「……『リカ』」

 おいで。

 

 乙骨は、『リカ』完全顕現を許す。用意するべきは『リカ』の内部に収納された数多の呪具の宝庫。

 

 五分間、現代の異能は五条悟を除き、永劫の最強を得る。その五分で石流──あわよくば烏鷺を潰す。

 

「……ああ」

 

 石流の中に渦巻く何かがあった。言葉では言い表せ無い。甘美なるこの気持ち。それは両者の戦いを邪魔するがいなかった故、それを展開するのに躊躇いは無かった。

 

 形に出さねば、きっと一生満足できない。

 

「領ォ域展開!!!」

 

 彼の領域が、乙骨を掴んで離さない。

 

 

 領域が完全に乙骨を包むより早く、『リカ』から貰ったソレを投擲した。

 一心の方へと。

 

 


 

 

 泳者としての黒沐死が済ませた単体生殖はもしも仙台結界内にて己の身に何かが生じた際の保険であった。だが仙台結界から外れたことでその保険は意味を為さず、結果として存在意味を失った呪霊の黒沐死は解き放たれたのだ。

 

 それには恐怖が集約されてない、だからその等級は二級にも満たず、

 

(黒沐死!? 移動したんじゃなかったの!?)

 

 されどそれは仙台結界での相性が不利だった烏鷺が注意を引くのにはこれ以上無い存在だった。

 

(いや呪力が違う。あれは黒沐死であって黒沐死では無い)

 

 黒沐死に割かれた反応は数瞬。

 けれどもそれは先程乙骨憂太が投げた()()への反応を不可能にするには、充分すぎた。

 

 黒沐死が()()に貫かれ一瞬で祓われる。

 十文字槍によって。

 

「血が滾ってきたわい!」

 

 それは葦名一心が呪術を理解したことで、課していた縛り。

 

「行くぞッ!」

 

 槍を手にしたことで解放された、殺意と呪力の渦。

 

 葦名一心が、第二の形態へと突入した。





 明日は本当に更新できないです。申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。