ド ス ケ ベ 大 学 性 理 学 研 究 室   作:マルキド佐藤

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寝取られ性癖について 

 研究室の扉を開いた時、僕は女神が座っているのかと錯覚した。

 

「後輩君。折行って君に相談があります」

 

 我らが性理学研究室に所属する学生の中で最も美しい比良坂先輩が、いつものように抑揚のあまりない静かな声で告げた。

 

「分かりました、何でも言ってください!」

 

「待って下さい。先ずは何をするか聞いて慎重に検討して頂きたいのです」

 

 楚々とした顔が僅かに慌てたのを僕は見逃さなかった。可愛い人だ。僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

「何でもしますが?」

 

 何でもしますが?

 

「分かりました、分かりましたので、あー、そうです。貴方の為に買っておいたものがあるんです、コーヒーお好きでしょう?」

 

 スッと立ち上がる姿も、静かにコーヒーを淹れる時の横顔も、垂れる長い銀髪も美しい。あらかじめ僕が来る時間に合わせて、準備していたのだろう。

 

 比良坂先輩の僕への好感度が実感できる。

 

「以前飲んでいたのを見たので、お口に合えばよろしいのですが……」

 

「ありがとうございます!」

 

 まあ、別にそこまで好きではないが、先輩が用意したのなら好物と言っても過言ではない。

 よし、今好物になった。ああ、辛抱できない、一気に飲んでしまおう。

 

 うわ熱っっっっっっっつ!!!!!!

 

「えっ」

 

 これが先輩の好感度……スパイシーだ。

 先輩は驚いているが、僕は苦痛を顔には出さない。

 

「ご馳走さまです!」

 

「……熱くありませんでしたか?」

 

「安心して下さい、火傷で済みました!」

 

「大丈夫なら……え?」

 

「それで、相談というのは」

 

「……戸隠君、貴方は私に好意を持っていますね?」

 

「はい、好きです」

 

 あっ僕の苗字呼んでくれた。好き。

 

「……」

 

 しかし先輩は何故か、僕を見つめて黙ってしまった。

 

「続けます、私は大変見目麗しく、胸も大きく、スタイルも良いと評判です。友人やゼミ生にもそう言われています」

 

「僕もそう思います」

 

「……!」

 

 また黙ってしまった。

 

「……そして、これまで私は戸隠君に幾度も関わり、時として貴方の好物を調べ、そして贈り物をして来ました」

 

「はい!部屋に飾ってあります!この間貰ったクッキーも!」

 

「食べて下さい」

 

「気持ちだけで十分幸せです!」

 

「……えぇ?……いえ、ですので、私に大変魅力があり、そちらは私に好意があるというのは容易に推測が出来ます」

 

「はい、大好きです」

 

「……私はそれを慎重に検討し、疑いようもないと考えています。どういうことか分かりますか?」

 

「先輩の子供が産みたいです!」

 

「!?」

 

「あ、間違えました!」

 

「え、ああ、そうですよね」

 

「僕と先輩の子供を産みたいです!」

 

「……ともかく。そこで戸隠君にしか出来ないことがあります」

 

「……出産ですか?」

 

「いいえ。私の寝取られ性癖に関する論文の為に、寝取られを体験する被験者になって頂きたいのです」

 

「????????」

 

 はぁ?何言ってんだこの女?

 

「私に好意のある戸隠君にしか出来ないことです。それに……戸隠君はお好きでしょう?そういうの。スマホの検索履歴や同人サイトの購入履歴から丸分かりです」

 

 何勝手に見てんだよ。言ってくれれば見せてやるのに。

 

 いや、そりゃそういう変態漫画は読むし、音声は聞くし、ゲームとかはするけどさぁ。

 嫌いじゃないけど別に好きじゃないんだよなぁ。そりゃ純愛モノよりは百万倍は良いけどさぁ!!

 

「これを卒業論文にするつもりなので──」

 

「はい。分かりました!!」

 

 だが、先輩がそうすると言うのだから、僕は何でもなれるのだ。強い子だから。

 

「……本当に良いのですか?」

 

「はい!」

 

「即決して大丈夫なのですか?精神的に苦しいかも知れませんよ?嫌ではないのですか?」

 

「良いって言ってんだろ!」

 

 大丈夫です!何があっても!

 

「ひっ」

 

「あ、間違えました」

 

「えっ」

 

「大丈夫です!先輩が望むのなら僕は何にでもなりますよ!寝取られマゾにだって!マルキド・サドにだって!」

 

「あの……それじゃ、本当に他の人に」

 

「え、逃げんの?僕が覚悟決めたのに?逃げんの?」

 

「……分かりました。ご協力感謝します。必ずや戸隠君が望む寝取られ報告が出来るように、努力致します」

 

「頑張ってね!先輩!」

 

 ……僕が望む?何を言ってるんだ本当に。

 

 こうして先輩の卒業研究が始まった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『もっとだ!もっと輝け!!俺のマラァァァ!!』

『やめて!!んほぉぉ!!これ以上やったら!!』

『女は黙ってろ!!これは男の戦いだ!!』

『劉んほぉぉぉぉぉ!!』

 

 

 研究室の外は盛っている学生の声で、常夏の雑木林みたいにうるさかった。少年の頃を思い出す。

 

「という訳で、戸隠君。私はあの後、私立文系で経済学科の筋骨隆々イケメン陽気キャとハメて来ました。勿論、初めてだったので私の処女を捧げて」

 

 研究室のデスクで先輩は告げた。運命の日である。

 

「へぇ。で、感想は?」

 

「えっ、ああ、はい。動画に収めています」

 

 比良坂先輩が処女を喪失する貴重な映像が収められていた。大変心が苦しいが、記念すべきことだ。

 

 僕はプロジェクターで流れる映像を、唇から大量出血するほど噛み締めながら視聴した。

 

『んっ……あっ……ぁぁ』

 

 控えめな喘ぎ声である。それもまた良い。これからどうなるのかと期待が高まる。

 

 白く柔らかそうな肌が汗で濡れ、しっとりとしているのが映像だけでわかる。

 頬が薄く朱に染まっていて、先輩も行為に興奮しているのだろう。

 

 水音を立てて、ゆっくりと異物が出入りする局部がしっかりと映し出され、先輩が嘘偽りなく処女を失った事実が僕に突きつけられる。

 

 ああ、それでも尚、僕の先輩は変わらず美しく──

 

『やべぇ、やべぇよ、これ、マジやべえ、限界効用が逓減しねぇよ、無限に俺の信用が創造されてイく……!こんなんじゃ俺、ハイパーインフレ起こしちまうよ!で、で、デフォルトぉぉ!!』

 

 男優がうるせえ。ダメだろ、お前が目立っちゃ。まだ始まったばかりだろ。

 

「どうですか?私の処女が奪われましたよ?」

 

 耳に心地よい、無声音の響き。囁かれるだけで僕は何でも言うことを聞いてしまいそうだ。

 

「あ、先輩の為に、赤飯炊いて来たんです」

 

「え」

 

 三段重ねの重箱を取り出す。無論、全部赤飯だ。

 

「この赤さが僕の流した心の血や、先輩の破瓜のそれだと思って食べて下さい」

 

「えぇ……」

 

「味わえますよね?ねぇ?先輩?全部食べてくれますよね?」

 

「え、その」

 

 僕を性的に煽り立てる先輩の口に赤飯をねじ込みながら、仲良く視聴した。僕が多少興奮しているのに気を良くしたのか、先輩は当時の気分を聞いてもいないのにペラペラと宣っていた。

 

「見て下さい、私は……むぐ、んく。口での……んぐ、奉仕を……あの喋ってる時に赤飯を」

 

「食べながら喋るとか上の口も下品ですね先輩。閉じたらどうですか?その可愛いお口」

 

「!?」

 

 だが分かりきってる感想なんざ聞いても何の価値もねぇのである。

 僕が聞きたいのは、研究や価値観を共有できるであろう僕を裏切ってまで、どこにでもいる量産型寝取りイケメンとハメたことによる意義のある知見だ。

 

「それで。先輩はどう考えたんですか?」

 

「その……最初は……んぐ。あまり快感を感じませんでしたが……次第に心地良くなり、性行為が楽しいことであることを教えて頂きました……」

 

 ほんの少し俯く。今更なに恥ずかしがってんだ?アバズレがよ。

 

「それで?」

 

「え……ああ、そうですね。今日の昼までハメていましたし、今後も私と行為をしていただけるように、セフレ、というものになって頂きました」

 

「なるほど。セフレ」

 

「如何でしょうか、私は今後も彼と性行為をします、悔しくありませんか?」

 

 悔しいか?何言ってんだこいつ。あーあ、僕を怒らせちゃったね。

 

「……では僕から端的に感想を述べると、先輩が女優であることを除けば、ムキムキのイケメン男優と超絶美人による処女ものAVでしかないっすね。何というか、リアリティに欠けて、股間に響かない。一般的な洋物で抜けないのと同じです。寝取られたと言う感じがしないんですよね。堕落した感じもしませんし。なんか健全です。先輩が報告してくれるって点だけは評価しますが、そもそも先輩からハメにいったらヤられてる感じも薄いんですよね」

 

「え……」

 

 お美しいお顔が傷ついた感じを醸しててウケる。僕の痛みはその何倍だと思ってんだ?殺すぞ。

 

「というか、寝取られに求めるものっていうのは、要は堕落でしょう。なら陵辱でいいじゃないかって意見が出るでしょうが、陵辱だと自分の手を汚すことになるじゃないですか。自分達の手を汚さず、なんなら性交渉もせずに女を堕落させたい。汚れますからね自分が。下らない存在だと貶めたいわけです。それをなんか自分よりも優れた相手に取られるだとか、劣等感を快感に変えるだとかマゾだとか誤魔化してますけど、欺瞞です。それで本当に快感なら毎日歩いてるだけ、SNSでマウントされるだけで絶頂垂れ流し、尻尾振りまくりのワンちゃん生活ですよ。でも現実はそうじゃない」

 

「……ですが、興奮しましたよね?私が囁いて耳を赤くしましたよね?」

 

「はぁ?比良坂先輩に囁かれて興奮しねぇ不能が何処にいるんですかぁ?先輩の声なら日本国憲法の朗読でも絶頂しますよ?」

 

「……」

 

 先輩は黙ってしまった。なんか気まずいな。なんかテキトーに喋ろう。

 

「あー。そうだ!"多少エロいのならば内容がしょうもなくても頑張れば抜けてしまう"というのは最近の研究ではメジャーな意見ですよね!」

 

 よし、上手く話せたな!

 

「……」

 

 しかし、先輩はお話し出来ない子になってしまった。黙るとこっちが困るとでも思ってるのか?

 無視が罰になるのは原始時代の名残りだ、女性同士が協力できないことが死につながる原始共同生活の。勿論、これも研究による説である。このくらいは先輩も知っていて当然だ。

 

 つまり我々からすれば、本能に刻まれた習性から逃れられない雑魚だと言っているようなものだ。性欲に支配されたクソにはお似合いだな。

 

 そして、こっちからすればクソみたいな言葉が聞こえなくなって助かるだけだ。クソが、イくときも黙ってろよ。気に食わねえな、僕も黙っちゃお。

 

 会話がなくなると映像の音声だけが研究室に虚しく響いていた。

 

『あっ……あっあっ……!んぁぁあ!!』

 

『何だこの名器はぁ!?ぬめりの需要に愛液の供給で応えやがるっ!!神の見えざる手でも入ってんのかぁぁ!?見えざる神の手コキなのかぁぁ!?すっげえなアダム・スミス!!』

 

 経済学科ってベッドでもそんなふうに盛り上げるのか。大変だな。先輩もこういうのが良いのか?

 

「……でも、興奮しましたよね」

 

 暫くして、やっと先輩が薄汚えお口を開いた。何が興奮だ。その口でしゃぶったくせによぉ。僕のスマホでもしゃぶってろよ、僕の手垢と細菌まみれで嬉しいだろ。

 

「勿論。応援してますよ!」

 

 しかし、映像の中では僕に見せることを意識してアレのサイズがどうだか多少煽るようなことを抜かしていた。

 僕の裸を見たこともないなら大きいのも、小さいのもどっちもあり得るだろうがよ。シュレディンガーの粗チンだろ。

 

「あーでも、僕の知らねえイケメンとハメたら、悔しがると思ったんですね?」

 

「……ええ。好意がある相手が、見知らぬデカマラの陽キャにハメ倒されたら悔しいだろうかと……そう考えたのですが」

 

 何がデカマラだ。デカけりゃ何でも良いとかアメリカかよ。ならバットでも突っ込んでろよ、メジャーリーガー。

 

『すごっ、奥まで、奥までぇぇ、またおっきくなったっ……あっ、あぁぁ!』

 

『うおっ、億っ!億っ!!万!!俺の経済が億万単位で急速に成長していく!!すげえキャピタル・ゲインだ!!成長し過ぎて崩壊するっ!バブル経済!!!』

 

 勝手に崩壊してろ。

 

 映像では先輩が僕の見たことない痴態を見せ、陽キャが唸っている。

 

 ……女性器は突っ込んで暫く待ってりゃ、"その形"になんだよ。何が奥だ、デカくなっただ。男のは最大から更に大きくなったりしねぇよ。穴が狭くなってんだよ。保健体育からやり直せボケ。一人で成長に感謝してろ。

 

「一つ思ったのは、僕が先輩の知らない美人とハメたら、先輩は悔しがるんですかね」

 

「え、そんな相手がいるんですか……?」

 

 戸惑いを隠せないらしい。いつものクール気取りの顔に綻びが見える。

 この大学が何だと思ってんだ。適当に声掛けりゃ"実験"なんざいくらでも出来んだろが。

 だが、そうだろうな。下だと思ってる相手が実はそうじゃなかったというのは何となく嫌な気持ちになるよな。

 無自覚だったとしても、自分が見下していたことを自覚することになるからな。見下しやがって。死ねよクソ女。

 

「まあ、そんな予定はないっすよ!安心して下さい!」

 

 今の所はな。

 

「……そうですか」

 

 表情はあまり変わらないが可愛い人だ。そんなことで悔しがると思うなんて、貞操観念がまだ割とあるんじゃないか?マジかよこいつ。

 

 まあ、四六時中、真夏のセミのようにパンパンパンパンと、嬌声を上げている他のゼミ生に比べたら断然良いが。

 

『劉んほぉぉぉぉぉ!!』

『カズまあぁぁぁぁぁぁんん!!』

 

「うるせぇよ!!」

 

 外で騒いでいたゼミ生の"ボール"を研究室から出て蹴飛ばす。

 

『僕のタマがぁぁぁぁ!!』

 

 そして沈黙した。ヨシ!静かになったな!

 

「先輩、気を落とさないで下さい。とっても興奮しましたし、多分抜けると思います。3回に一回くらいは」

 

 研究室に戻って比良坂先輩を慰めておく。何を僕に慰めさせてんだ、自分で慰めろよ。その手は何のために付いてんだ?一人で抜くためじゃねえのかよ。

 

「では3回に2回くらいは……?」

 

「頑張ります!」

 

「……私の……私の処女をかけた撮影が低レベルのモノだと思われるなんて納得行きません。何のためにここまで守って来たと……」

 

 なんて可哀想なんだろうか。可哀想なものは好きだ。もっと悲惨な目に遭ってほしい。

 

「はぁ。仕方ないっすね」

 

 なんとなく気落ちしてそうなクソ女を抱き寄せる。可愛すぎて、ぶん殴りたい気持ちを抑えて。

 

「えっ」

 

「安心して下さい──守り続けていた処女をそこらへんのav程度の価値にした馬鹿女でも、僕は先輩のことが好きですよ」

 

「…………え?」

 

「大丈夫です。よく頑張りました。先輩はとってもよく頑張ったので、僕が撫でてあげます」

 

 彼女のサラサラした銀髪からは、柑橘類のようなとても良い香りがした。映像の中ではイカ臭い液体に塗れている汚物のような姿なのに。

 ここに来るために入念に洗ったのだろうか。健気だな。だからなんだよ。知らねえよボケ。腹の中にはまだ入ってんだろどうせ。

 

「……そうですか」

 

「だから、もっと頑張って下さいね!」

 

「え……」

 

「だって、先輩の卒業がかかってますから!!先輩の為なら僕、なんだってやりますよ!!」

 

 僕も苦しんでるんだからさぁ!もっと苦しむべきだよねぇ?

 

「……そうですね。卒業がかかっているんですから……戸隠君が協力してくれないと困ります……」

 

「次はもっと頑張って下さいね!先輩!」

 

「え、ええ……もっと頑張って……戸隠君の好きな物を用意するようにします……今後ともよろしくお願いします」

 

「期待してます!」

 

 パーフェクトコミュニケーション。

 

 次の報告が楽しみだ。精々頑張れよクソ女。






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