ド ス ケ ベ 大 学 性 理 学 研 究 室 作:マルキド佐藤
『雑魚ワンちゃんが勝てるわけないじゃない』
『分かった、お前らメスガキは化け物だ、容赦なく犯してやる』
『
『んほぉぉお!!魔力でりゅぅぅ!!』
今日も今日とて、研究室の外でゼミ生が外で実験に明け暮れている。何してるのかは知らないが、勿論連中は18歳以上だ。基本的には法律に問われない。
研究室に入ると、相変わらず無表情でも美しい先輩が僕を待っていた。銀髪に紅の瞳が映える。何だその現実離れした美しさ。そして研究者らしく、今日はブラウスの上に白衣まで着ている。知を司る女神の彫像が今ここにあった。しかも動く。
数日ぶりの再会である。僕に何も言わず、一体何処で何をして来たというのだろうか。
「戸隠君。少し空けていましたが、私がいない間、何もありませんでしたか?」
自分のことよりも先に僕を心配するなんて。好き。
「寂しすぎて1000年くらい過ぎたのかと思いました」
「……!」
また先輩は目を見開いて黙ってしまう。心なしか、わなわなと震えているように見えるのは気のせいだろうか。好き。
「ハグしていいですか?僕の百年の孤独はそうしないと癒えません」
「それは……その」
「いやなら大丈夫です!僕は先輩が嫌なことは絶対にしないので!」
「えっ」
「もう二度と僕から触れないので安心して下さい!」
くっ!僕の接触が比良坂先輩をほんの僅かにでも不快にさせていたなんて……!
「……戸隠君は私に好意があるんですよね?」
何か少しだけ悲しそうな顔で僕に聞いてくる。一体誰が先輩を悲しませるような真似をしたんだ……?絶対に許せねぇ!
でも眉が僅かに下がった先輩も憂いを帯びた美しさがある。もっと悲壮な顔も見てみたい。
なんて罪な女だこいつ、表情一つで僕の性格を歪めるなんて……
「はい!嘘偽りなく!」
「……本当ですか?」
「はい!嘘偽りなく!」
「……本当の本当に?」
「偽りねぇって言ってんだろ!」
「ひっ」
「あ、間違えました」
「そ、そうですか。……ああ、そうですお見上げを持って来たんです。貴方の好きな──」
「僕の好きな先輩が出演したAVですか?」
「えっ」
「だって、僕に報告するために出かけてたんですよね?じゃあ、もっと頑張ったのを見せて、聞かせてくれるんですよね?」
「落ち着いて下さい、それはまた後で、その、コーヒーも用意しましたし……」
「先輩が用意するものなら毒でも飲みますよ」
「……」
また黙ってしまった。どう言う感情なんだうかこれは。
「少し待ってて下さい」
先輩がスッと静かに珈琲の準備のために立ち上がった。実に美しい所作だった。
立てば先輩、座れば先輩、歩く姿も先輩だ。
花じゃない?比良坂先輩が花に喩えられるかよ。花が先輩に喩えられてろ。
しかし何故か前よりも部屋の豆の香りが強い気が──よく見ると部屋の隅にコーヒーミルが置いてあった。わざわざ挽くところからやったのか。健気過ぎんだろ。泣いた。
比良坂コーヒーショップ開店なのか?もう店ごと買い占め確定です。僕はもう破産してもいい。
僕はもう挽いた豆からそのまま食べたいマンだった。コーヒーは別に好きじゃないし銘柄も何も知らないけど、今この時だけは無限にコーヒーを飲み干す永久機関マンと化すのだ。
「どうぞ」
氷がカランとガラスコップに鳴って、涼やかな音を響かせた。空調の効いた暖かい室内だと却って冷たい物が飲みたくなるものだ。
真冬に炬燵でアイス食ってんのと同じだ。分かってやがるなこの女。誘ってんのか?お茶会によぉ!
出て来たのは勿論アイスコーヒーだ。コースターはコルクの簡素な物で、いかにも機能美や効率を愛する比良坂先輩らしい。
お分かりいただけただろうか?
アイスコーヒーである。
僕が先輩に出されたものを一秒でも我慢出来ないことを、彼女も理解してくれているのだ。
「これなら火傷もしませんよね」
愛だ。ここにあった。皆さん。ここに愛がありました。天地開闢からこの現世に失われていたという、夢、希望、そして愛の全てが。
何なんだよお前、そのパンパンのお胸に楽園でもぎゅっと詰めてんのか?そこに向かって昇天するからな僕は。修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!
「頂きま──ご馳走様で──げぷう」
「……お砂糖とか、ガムシロとかもご用意したのですけれど」
「はぁ?先輩が淹れてくれただけで甘さなんて、天上より下されし甘露でしょう?むしろこれだけで生きていけます!」
「……ちゃんとご飯、食べて下さいね?」
「先輩が作ってくれるんですか?」
「……戸隠君が食べたい料理をお教え頂ければ、いつでも調理致しますが……何か食べたい物はありますか?」
「先輩」
「何ですか?戸隠君」
きょとんとした顔も可愛い。好き。
「だから、比良坂先輩」
「少々距離が近くありませんか?」
「聞こえなかったのかと思って」
「……え?」
「だから比良坂紗代、お前のことを言ってんだよ」
耳元でよく聞こえるように無声音でお話ししてあげた。名前もつければちゃんと意味が通じるだろう。
「……」
比良坂先輩は完全に停止してしまった。もしかして僕、1割しかいない本当の時間停止能力者だった……?
「先輩?」
返事がないな。ちょっとイタズラしてみるか。何か丁度いいものは──おっと、何か包みがあるぞ?
開いてみると……オランジェットか。包装や形状から見ても、明らかに手作りだ。
作るのには早くても7日も掛かる。オレンジのシロップ漬けを焼いたり乾燥させたりしてチョコを掛けるだけだが、オレンジの下準備にはやたらと手間が掛かるのだ。勿論、僕が好きなお菓子である。
……しかし逆算するとこの間の一件からすぐに作り始めないと間に合わないな。というか、いない間ずっと作ってた事になる。
は?なんだそれ。仮に他の場所でどんな行為をやってたにしろ、僕のためにオランジェットを作り続けてた事にならないか?
いや、僕なんかのためにそんな手間を掛けるのか……?本当に?
「……食べないのですか?」
先輩が"止まった時の世界"に"入門"して来た……?いや、全て理解した。時を止められていたのは──"僕"だったんだ。
先輩のお見上げというのは、オランジェットじゃあ、ない……!
時間停止AVだ……!時間を止めればオランジェットをいくらでも作ることが出来る……!
僕は1000年間くらい過ごしていたと感じたのは、それだけ時間を止められ──僕が歩みを止めていただけだったんだッッ──!!
これほど犬になりたいと思ったことはないッッ!!時間停止は犬には効かないんだ!!僕は見た!!AVで見たぞッ──!!
『雑魚、ざ〜こ!雑魚ワンちゃんじゃ、アヘらせられないんだよぉ?後は直々にイかせてあ、げ、る♡』
『……僕の魔法の杖に触れたねメスガキ。お前は見誤った。僕は勃起を制限していたんだ』
『馬鹿なのぉ?そんなの意味ないじゃん!』
『でもお前に勝てる』
『勝てるわけないもん!私は500人のワンちゃんをイかせたオトナだもん!』
『メスガキ──お前の前に立っているのは』
『──30年イきた、んほぉ使いだ』
『"自慰"しろ、メスガキ』
『あへぇぇぇあへりゅぅぅぜぇぇぇ♡』
外の実験も決着が付き、格付けが済んだらしい。扉を開いて様子を見ると、んほぉ使いが静かに凱旋するように、去っていった。
泣きながらアヘっている18歳以上のメスガキを残して。歩みを止めてメスガキであり続けたのが敗因だろう。僕と同じように。
犬の時間は止まらない。例えそれが雑魚ワンちゃんでも──。
敗者に掛ける言葉はない。僕はそっと扉を閉じて研究室へ戻った。
「……これ、ちゃんと飾っておきますね」
「食べ物ですよ……?」
しかし、オランジェットは愛のアリバイ工作か?トリックは割れたな、心の怪盗団。
あたかもそれだけの愛があるように見せかけたのだ。でも騙されたりしない。僕は強い子だから勘違いしたりしないのだ。
「で、"お見上げ"の準備出来てるんですよね?」
「……はい。それでは……コーヒーでも飲みながら、楽しんで下さい」
アイスコーヒーがコップに注がれる。
「今回は、戸隠君の提案通りに心拍数の計器を装着して検証します……あの、お胸元をはだけて頂けませんか?」
ワイシャツのボタン、お前はもう用済みだ。消えろ。
「どうぞ!」
「では……失礼して。ちょっと冷たいですよ」
弾け飛んで言ったボタンを比良坂先輩は冷静に回避すると、僕の起伏のない平らな胸板に薬剤が塗られ、正確な心拍数や状態を測るために心電図用のコードや機器類が取り付けられた。
先輩の指はひんやりとしていて気持ちが良い。もっと触って欲しい。鎖骨の下とか。
「……準備、出来ました。機材を借りるのに少々手間取りましたが、これがあればかなり有意義なデータが取れるでしょう。これはこちらのモニターから、リアルタイムで心拍の様子を観測できます」
PCのモニターに映っているグラフを指差して、事務的に説明する比良坂先輩もいい。心なしか知的好奇心に目が輝いている気がする。
「勿論、先輩もつけるんですよね?」
「えっ」
「機材、まだ余裕あるじゃないですか!安心して下さい!余計なところには触りませんから!」
「あっ……戸隠君……」
先輩のブラウスのボタンをサッと外し、フロントホックの拘束を片手で解除すると、色白な肌とたわわに実った乳房が露わになる。
「うおっ眩しっ」
何の光ィィ!?
僕の視界では、謎の十字の激しい光が差し、先輩の見えてはいけない場所は見えなかった。
「……戸隠君」
僕の名前を呼ぶだけでまるで比良坂先輩は抵抗しない。
だが、気をつけなければならない。僕は先ほどの約束によって、先輩には直接触れられないのだ。
薬剤を直接は塗れない。ならば、機器に薬剤を塗って直接──
「……ん……その……そこではなくて……もう少し……下です……」
先輩に手を握られ、僕の手が彼女の体に押し付けられる。薬剤でぬめりを持った計器の吸盤がきめ細やかな肌の上を滑っていく。
「そんな……ぼ、僕は触らないって……約束したのに……!」
死のう。
「……戸隠君からではありませんよね」
「そっか!」
やはり天才だったか。まだ生きてていんだ。好き。
「もう少し……」
先輩の指がその場所に近づくと、謎の光は徐々に小さくなっていった。
「……こちらで……す」
これは……あと少しで──
《これは実験の正当な手続きに基づく計器の取り付け行為であり、断じて性行為にはあたりません》
何だこの注意書きは!?僕にしか見えないのか!?文字のせいで先輩の先輩が全く見えないんですが!?
「おや……?うまく、貼り付きません……ね」
先輩の吐息が耳に掛かった。いつのまにか、抱き抱えられるような体勢に変わっている。あ、先輩、背ぇ高い……肌が当たって……あ、やば。
「もっと、強く押し付けたり……ぐりぐりと擦ったりすれば良いでしょうか……」
吸盤は《注意書き》の下で見えない何処かを弄っては弾かれる。
何なんだこの無礼なモチ肌!?饅頭みてぇで怖ぇぇよ!!お茶が欲しくなってくるな!!
「……♡」
心なしか、僕を見つめている先輩の目が妖艶な雰囲気を帯び出したような気がした。
ほんの何日か前まで、処女だった筈の彼女が見せるはずもない……堕落した女の目だ。
は?何勝手に堕ちてんだ?誰が許可したよ?
……ったく、立派な雌豚になりやがって。そのうちハメ殺してやるからな。
「ん……やっと、つきましたね?」
僕の右耳にゾクゾクする声でそう告げると、先輩は僕を抱き抱えたまま、プロジェクターの電源を入れた。
「……それじゃあ、一緒に見ましょうか?」
……僕は指摘しなかったけれど、心拍数の表記は比良坂の方が余程凄いことになっていたし、指から伝わってくる心音は普段の様子からは全く想像もつかない程、早鐘を打っていた。
興奮してるんだよ、このメス豚は。自分が犯されたことを、僕に報告するだけで。
……僕は何か選択を間違ったかも知れませんね。
ブックマーク、高評価、感想お待ちしてます!!
嬉しくなって続きます!!