ド ス ケ ベ 大 学 性 理 学 研 究 室   作:マルキド佐藤

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モブから昇格したメスガキ先輩の画像です!

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不可逆性原理について

 

 

「竿〜竿屋〜竿だけ〜?竿屋〜、竿だけなのぉ〜?竿だけだよぉ〜?気持ちぃ気持ちぃ竿だけ〜」

「ぶ、ぶひっ、竿だけがいいんだぉ!竿屋だお!竿ぶひ〜竿だけ〜」

 

 研究棟の廊下で"メスガキ"先輩がほぼ全裸の織田を乗り物にして、商いに精を出していた。メスガキは精を吐き出させる方だろ。

 

「あ〜戸隠君だぁ〜、今日は竿屋さんだよぉ〜?寄ってくぅ〜?何センチの竿でもするよ〜?大きさ測るぅ〜?」

 

 指で輪っかを作ってニヤニヤとする金髪の幼女──に見えるメスガキ先輩は18歳以上だが、何処からどう見ても犯罪だった。

 

「……ふごっ!?と、戸隠きゅん!?」

 

 豚は織田だった。

 

「おはよう御座います先輩。そして豚も」

 

「と、戸隠きゅん……ぼ、ぼきゅの見、見たかお……?ぼ、ぼぼごごぼっ ごぼぼぼ!」

 

 急に十字のツメで天井や床を這い回っていそうな鳴き声を出した。……まあ現に床を這ってるしな……伝説の豚モンか……何の役割が持てるんだこいつは?ホルモン枠か?ギトギトしてんね君。

 

「比良坂先輩との動画?……あぁ、良かったな童貞捨てられて」

 

「えー、織田君、童貞捨てちゃったの〜?織田君の雑魚ちんぽじゃ無理に決まってるよねぇ〜?」

「……最後まで見てないんだお?」

 

「……やっぱり茶番だったか。織田。そしてメスガキ先輩も来て下さい」

 

「ご指名ありがと〜♡気持ちよくしてあげるぅ〜♡」

 

「……と、戸隠きゅん……♡よろしくだぉ♡」

 

「先輩は良い。豚はキモいからやめろ」

 

「ぶひっ!ありがとうございぶふぅ!!」

 

 本職は違うな……

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 研究室はコーヒーの香りが漂っていた。

 

「戸隠君。おはようございます」

 

 朝早くにも関わらず、先輩は完膚なきまでに美しい。朝如きが先輩の美しさをどうこうできるわけがないのだ。朝に勝てるなら夜に負けてんじゃねぇよ。夜に勝てるようになれ。

 

「おはようございます!先輩!」

 

「紗代ちゃんおはよぉ〜♡」

 

「お、お、おは、おぎゅ、グギュグバァ!!」

 

 何だこの豚!?急に威嚇しやがった!?

 

「あの戸隠君、お二人は……」

 

「先輩。この間の茶番の種明かしをしてもらいます」

 

「……というと?」

 

「先輩へのお仕置きで最後まで見れませんでしたが、研究の不備と同じく不自然なことがありました」

 

「……何でしょう……?」

 

「──織田君です。彼が童貞を捨てられる訳がないんです。何故なら彼は……」

 

「豚君は私か戸隠君じゃないと大っきくなれないもんねぇ〜?」

 

 メスガキ先輩は勝ち誇ったように笑う。

 

「情けない豚で申し訳ないでぶぅ……」

 

 僕で大きくなるのはやめて欲しいのだ。

 

「情けなくない豚がいるみたいな言い方やめろ!豚は全員情けないんだよ!」

 

「ぴぎぃ!!」

 

 豚がぴぎぃと鳴いた。僕は引いた。

 

「うわ〜本物の豚さんみた〜い!ぶひぶひ上手でゅね〜?焼豚のモノマネもできるかなぁ〜?」

 

「ジュワァァァ!!」

 

 リアルな焼肉の音がした。彼のどこから音が出てるのかは知らない。

 

「豚はともかく。如何ですか先輩?」

 

「……バレてしまいましたか」

 

 観念したように微笑む比良坂先輩。抵抗するなよ、僕は玄人の探偵だ。素人の童貞ではない。

 

「本当は、あの動画の後半でネタバラシを行い、戸隠君の執着具合と心拍の変化を計測するつもりではありました……研究そのものの不備を指摘されることになりましたが」

 

「一応聞きますけど、チャラ男との交尾は?」

 

「え……?本物ですが……?」

 

 期待させんじゃねぇよ。まあ、分かり切ったことだった。そんな夢は見させてくれない。夢でしか処女だった貴女には会えないのだよ。

 

「じゃあセフレになったのは本当ってことですね?」

 

「あれからお誘いは頂いてませんが……何故でしょうね?」

 

 はて、と首を傾げてコーヒーを飲む。僕は彼女の飲み物の中に溶けてしまいたいと思った。

 その気持ちをグッと堪え、体が液体にならないように耐えたのだ。強い子だから。

 そういえばいつの間にコーヒーを飲むようになったんだろうか。彼女が好きだった記憶はない。

 

「……えっと、実験のこと話しました?」

 

 まあ考えられるのはそのくらいだ。先輩を誘わない理由なんて何一つとしてない。性別問わずだ。

 

「当初から撮影して見せるとは言っていましたが……先日、戸隠君の意見をそのまま伝えたところ、"抜けないなら体を鍛え直す"と言って消息を断ちました」

 

 経済学部の筋肉イケメンが鍛える……?イケメンが消えて筋肉しか残らないんじゃないか……?そっちがバキバキになってもこっちは何も変わらないんだけどなぁ。先輩がバキバキになっても困るよ?……いや良いかも……力強い先輩……好き……。

 

「……なるほど、それで汚れた女面してたんですね。浅はかで可愛いです先輩」

 

「私が浅はか……?」

 

「先輩。豚は綺麗好きな生き物なんですよ。水浴びは欠かしませんし、食事も排泄も睡眠も全て別の決まった場所でするんです。彼らを汚いというのは、人間の主観でしかないのです」

 

「……織田君は人……ですよね?」

 

「豚だお!ぼきゅは豚なんだぉ!」

 

「え〜豚さんは自分のことを豚なんて言わないよね〜?なんていうのかな〜♡」

 

「ジュワァァァ!!」

 

「なんで焼けてるの〜♡」

 

「見て下さい、比良坂先輩。彼は豚です。服もほぼ着てません。撮影の時に彼は匂いましたか?」

 

「確かに焼肉のような香りはしましたが……」

 

「それだけ、ですよね?」

 

「え、ええ」

 

「彼は一日、5回以上シャワーを浴びます。それは匂いや汚れを相手に感じさせないためです」

 

「お風呂大好きだお!特に洗ってもらうのが好きだぉ!」

 

 なのに油断すると焼肉臭がするのは何故?焼かれてるのか?

 

「メスガキのお風呂屋さんも営業中だよ〜?雑魚の白い奴がお湯の中でいっぱい泳いでるの〜雑魚風呂〜」

 

 銭湯のことを"お風呂屋さん"とか、ドクターフィッシュを雑魚って呼ぶのやめようね。雑草という草がないように、雑魚という名の魚はいない。でも豚はいます。よろしくおねがいします。

 

「……そして、豚の体脂肪率は14%。これは男性の平均とそう変わらない。女性の平均よりも10%は低い。無論、織田の肉体は15%前後。この身体には筋肉が詰まっているのです」

 

「筋力がないと重いメスガキ先輩を背中に乗せて学内を歩き回れないお」

「私の軽ぅ〜い体重が重く感じるなんてだっさぁ〜♡雑魚筋肉ぅ〜雑魚ワン下等筋〜♡ふにゃふにゃ〜♡よわよわ〜♡」

「良いウェイトだお」

「え〜♡死にたいのかな〜♤」

「お、お、腕が折れるお……これが"肉体労働"で得た本物の筋肉……ナイスバルクだぉ……」

「はい私の勝ち〜♡力こそパワ〜♡ざ〜こ♡」

 

 メスガキ先輩は働き者なので力待ちだ。まるでお母さんだな。バブみってそういうことだろ?そう思うだろ?あんたも!!

 

「……ええと、つまり、彼は下等な存在ではなかったと……ですが、ことの発端は彼が私の動画に劣情を催し、私に行為を申し込んで来たことが始まりなのですが……」

 

「メスガキ先輩というご主人様がいるのに?」

 

「……ということは、メスガキさんが?」

 

「違うお、戸隠きゅんのためだお」

 

「……え?」

 

「戸隠きゅんが夢中になってる比良坂氏を僕よりも下の豚にしたかったんだお」

 

 豚は下から意味不明なことを言い出した。そんなこと不可能だろう。先輩を汚すのは僕ですら難題だ。一生掛けても無理かもしれない。

 

「うわ〜きも〜。同期に振り向いて欲しくて気に食わない女を貶めるとか、普通絶対にしないよね〜?」

 

「……僕は豚だお。戸隠きゅんの豚になるためなら何だってするお……!」

 

「あ〜♡ざんね〜ん♡異常でした〜♡性癖壊れた雑魚豚さんかわいそ〜♡紗代ちゃんでも大っきくなれなくてかわいそ〜♡」

 

「それに……僕の童貞は戸隠君の処女の為に使うんだお……!」

 

「いらんわそんな汚いもの」

 

「きゅううん!」

 

 せめて僕の知ってるモンスターの鳴き声出してくれないかな。喩えようがないだろ。

 

「──故に、この間の映像は茶番だった。ということです」

 

「……でしたら、ちゃんと最後まで見て頂ければきっと戸隠君も納得して頂けたかも知れませんね……」

 

 先輩の表情は全然変わっていないのに、僕の心には得体の知れない罪悪感が湧き上がってきた。だってほんの少しの違いでも僕には分かってしまうんだから。

 

 もしかしたら、これは暴く必要がなかった真実だったのかも知れない。

 研究の見直しと、格付けのために言ったことだけれど、何でこんな気分になるんだろうか。僕は何がしたかったんだ?

 

 先輩は汚されてきたから、僕がお仕置きして恋豚になった。それで良かったんじゃないか……?それで今日は何事もなく、恋豚らしく振る舞って、そう出来たんじゃないか?

 

「……なら、一応見ておきましょうか?」

 

「もう、消しました。戸隠君が喜んでくれない映像なんて要りません」

 

「……じゃあ、仕方ないですね」

 

「ええ、もう、良いんです。私は戸隠君の恋豚になれましたから。それでいいんです」

 

 何なんだろうこれ。泣きそう。何でだろう。何で今、先輩の作ったオランジェットのことを思い出すんだろう。

 

「戸隠君の恋豚!?そんな豚がいるぶひか!?僕もなりたいふご!」

「もう私の豚さんでしょ〜♡焼くぞ〜♡」

「ジュワワァァァ!!」

 

 僕は貰った。また食べずに飾った。先輩が焼いてくれたクッキーと同じように、包装ごと真空で保管して。

 

 でも何か間違ってたんじゃないか……?先輩は何のために作ったんだ?飾るためじゃなかったのか……?

 

 まあいっか。先輩が良いって言ってるんだからそれが全てだよ。文句なんてないだろ。静かにしてくれよ僕の心。苦しい?知るかよ。僕は何ともない。

 

「……それで戸隠君、本日も引き続き、私の失態や痴態を掘り返して遊びますか?」

 

「えっ、恋豚ってそんなことするんですか……?」

 

「ぼ、ぼきゅの痴態も見て欲しいお!」

「もう見えてるのに〜♡丸見えどころかスカスカ〜♡ホモ・サピエンスの末路〜♡こんちには人類〜♡」

 

「……戸隠君はそう言った行為がお好きなのだと思っていましたが……?」

 

 首を傾げる先輩も……何だろう。先輩が本当にそう思って言ってるのか分からない。

 でも僕は僕の信じる先輩を信じるよ。だから先輩は先輩の信じる僕を信じてくれ。

 

「まあ先輩を虐めるのは好きだけど……いや、そんなことより研究ですよ!研究!」

 

 そうだ。とにかくは研究だ。それが一番先輩のためになるんだ。

 だってそれが卒業研究で、先輩がやりたいことなんだから。逃がさないからな。死ぬ時は一緒に死ね。俺のために死ね。

 

「ええ、今日も……頑張りますね」

 

 何も不安はないさ。何にもない。





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