妖精の尻尾と酒呑童子   作:月詠朧

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第13話 萃香と呪われた島 終編

 

「・・・・・・それで、あの後デリオラをぶん殴って粉砕したら、その衝撃で限界が来た遺跡は崩落したと?」

「そーそー。ちゃんと零帝くんも拾ってきたからあんまし怒らないでよね」

 

 現在、遺跡跡地の真ん前で中で何があったかの報告会。

 怒っているというよりは呆れてしまって物が言えないって言うのが正解かね?

 

「ていうかあんたたち、あたしが戦うって流れになったら早々に撤退してたじゃんか。こうなることは予想してたんだろう?」

「「「「そりゃあまぁ。あなた(萃香殿)の無茶苦茶っぷりはよく知っているので(ますからなぁ)」」」」

 

 それなら吹き飛ばされて気絶した、零帝くんも一緒に連れて行って欲しかったもんだ。

 私が拾いに行ったとき、ちょうど崩壊し始めた遺跡の残骸が零帝くんに降り注いでいた所だった。

 もう少し見つけるのが遅ければ、零帝くんは今頃瓦礫の下敷きでこの場におらず、生きちゃいないだろう。

 そう言って、中での状況を教えてやったら、ザルディはほぼ棒読みの謝罪、ラミアの子たちは顔を真っ青にして感謝してきた。

 思った以上に慕われているな、零帝くんは。ふむ。

 本人の意思次第になるが、このままフラフラしているよりも、ギルドに入ったほうが今後のためにもなるだろう。ラミアの子たちもギルドを抜けてきたと言っていたし、渡りに船だとラミアの子たちの方を向き、口を開く。

 

「そういえばあんたら、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)を抜けてここに居るんだろう?この一件はこれで終わりだし、あんたらラミアに戻っちゃいなよ」

「ですが、何も言わずに抜けてきてしまったので、私達は破門されているでしょうし、オババ様が怖いんですよ」

「おおーん、ジュラさんも怖い」

 

 私の言葉を聞いて、顔に恐怖を浮かべている。

 そんなに怖いんなら黙って出てこなきゃよかったのに。完璧な自業自得さね。

 

「あーあー情けない。自分たちで決めたことだろう、それっくらいで怖がるんじゃないよ。オババさん達にゃあたしから連絡しといてやるから、大人しく戻って怒られてこい」

「し、しかし、手ぶらで帰る訳には」

「それでだ。零帝くんの返答次第だが、あの子も一緒に連れて行くといい」

「零帝様を?」

「うむ。今のあの子に必要なのは、お互いに切磋琢磨しあう仲間だと思うんだよね。それに、あの子もそこそこやるから、つれて帰ればオババさんは多少小言を言うだけぐらいで許してくれるさね」

 

 そういう事だと話を切り上げ、村へと引き上げ休むことにした。

 デリオラの件も片付いたんだ、村の奴らに影響を出してる月の魔力(依頼)の件は、今日は遅いし疲れたし、明日でもいいだろう。

 

 とりあえず念のためだと思って島全体に霧散する。

 すると、村から近い海岸付近に気絶して倒れている3人と1匹を見つけた。

 なぜここにいるんだ、こいつ等は?そしてグレイよ、なぜ紐でグルグル巻きにされてるんだ?

 まぁ、島に用事があるのならば村にやってくるだろうし、その時にでも何でいるのか聞くとしよう。

 そのまま3人と1匹をを無視し、初日に月見酒をした屋根の上に萃まって、軽く寝ることにした。

 村の人たちから借りた家に寝かせている(萃めた)友達(あの子)も明日には起きられるだろうし、明日は忙しくなりそうなのだから。

 

 

 

 

 

 

 翌日の昼過ぎごろ。

 月の破壊はまだかと五月蝿い村長に、今日の夜にやるからと軽く説明をしてから、友達(あの子)の様子を見に借りたい家へとやってきた。

 ちょっとだけ霧散して部屋の中の様子を伺うと、丁度目を覚ましたところのようで、「知らない天井だ……」などと言っている。

 霧散した分を上半身を起こした彼女の肩の上に集めて声をかける。

 

「よっと……やぁやぁ、体の調子はどうだい、ウル?」

「ん?お前は……小さい萃香?なんだ、ここは死後の世界か?」

「おいおい、ここはあの世じゃないぞ。っていうかなんで小さいあたしを見て死後の世界だと思ったんだよ」

「なんとなくだな」

「オイ」

 

 冗談を言えるくらいには大丈夫らしい。

 そこまでやり取りをしたところで、扉を開けて部屋の中へと入る。

 

「さて、久しぶりだねぇウル。さっきも聞いたが体の調子のおかしい所は無いかい?」

「久しいな、萃香。体調におかしなところは無い。というかなぜ私は生きて、さらには体がある?」

 

 もっともな疑問だね。

 彼女がデリオラを封印する際に使った魔法「絶対氷結(アイスドシェル)」は自身を生きた氷に変える魔法だ。

 その話を聞いた私が考えたことは簡単。

 生きているなら肉体を元に戻してやればいい。氷自体が彼女そのものならば出来るはずだ、と。

 後は散らした氷を私の記憶にある彼女の肉体になるように、調整しながら萃めただけ。

 まぁ、ただ集めたわけではなく氷を血肉に変えながら、だが。

 結果は見てのとおりである。

 

「っとまぁそんな訳で、もともと死んでいたわけじゃあないんだ、活動できる肉体があれば動けるようになるんじゃないかと思ってね。できたらいいなぁ程度のつもりでやったんだが、思いのほかうまくいってくれてねぇ」

「おいおい、出来ると思ってやったんじゃないのか。まったく相変わらずだ、お前は適当すぎるぞ」

「何をいまさら、初めて会った時もあたしは適当だっただろうに」

「そうだったが……だがな、何年経ったのかは分からんが、結構経ってはいるんだろう?それで変化がないって言うのもどうかと思うが」

「そう言いなさんな。これがあたしだ、性分だ。早々変わるものでもないさ。ちなみに今は、あんたと別れてからちょうど20年ぐらいってとこだね」

 

 よくよく考えてみれば、この世界で過ごした年月は20年以上経ってるって事だね。ずいぶん長い時間が経った事で。

 

「そんなに経っているのか、そりゃ懐かしいと思う訳だ」

「そうそう、懐かしついでに今のうちに言っておくが、今のお前さんの見た目だが、私の記憶を元に肉体の構成をしたからね、あたしと出会ったぐらいの頃の見た目だよ」

 

 そりゃそうだ、20年も前の姿なのだから。

 そのせいで、ぱっと見15~6の少女にしか見えん。

 

「つまり、若返った様な物だと?」

「そうなるねぇ。だがまぁ、別に問題ないだろうさ。たかが20年程若返った程度、どうということはない」

「ありすぎだ、馬鹿」

 

 そうかね?若返りなんぞ全ての女達の夢だろうに。

 そんなことを話していたら、不意に彼女の体が揺れた。

 

「……おっと、少ししゃべり過ぎたかね。少し眠るといい、目が覚める頃にご飯を持って来よう」

「だが……いや分かった、少し休む」

 

 まだまだ彼女はしゃべり足りなさそうだったが、しぶしぶといった感じに横になった。

 そのまま横になった彼女の上に毛布をかけ、「また後で」っと軽く手を振り部屋を出た。

 

 村の中に出ると、既に日は落ち始めていた。

 ずいぶん時間が経ったもんだと思いながら、なにやら騒がしい村の門のほうへと進んでいく。

 どうやら海岸で気絶していた3人と1匹が村に来て、村長から村に起こっている事について事情を聞いているようだね。

 様子を伺い話が終わる頃を見計らって会いに行くとするかねぇ。

 

「――――を破壊するしかないのです!」

 

 お、終わったみたいだね。んじゃぁ行きますか。

 

「さて、とりあえずギルドの方々を空いている家へと」

「ハイ、ストーップ!」

「んぁ?萃香!?何でここに!!まさかお前が連れ戻しに来たのか!!」

 

 ナツが突っかかって来た。てか連れ戻すってなによ?

 

「俺は帰らねーぞ!俺達はS級クエストをやるんだからな!」

「お、俺はナツ達に無理やりつれてこられただけだ!俺はこいつらを捕まえに来ただけなんだ!無実だ!!」

「お、おいらはナツとルーシィに無理やり……」

「また裏切るのか!この駄猫ォ!!」

 

 なんか勘違いしてないかね、こいつら。

 

「いったいどういう事?ていうかお前らS級クエスト受けれないだろうに。とりあえず落ち着いて、ゆっくり説明して。事と次第によっちゃだが、見なかったことにしても構わんから」

「いやだ!絶対話したら連れ戻されるからな!俺はS級クエストをやるんだぁぁぁぁぁ!」

「五月蝿い、寝てろ」

 

 やかましいったらありゃしない。

 話が進まないのが一番困るんだ、黙ってもらうためにナツの意識を散らして気絶してもらった。

 

「さて、やかましいのも黙ったことだ。しっかりと説明してもらうよ?……あぁ、別に説明しなくても構わないが、その場合は問答無用で確保でギルド送還ね」

「ナツゥ!?何で突然倒れたの?どうやったのぉぉ??」

「うるさいよ、ルーシィ。あんたも寝るかい?」

 

 顔を真っ青にして顔を横に振るルーシィ。

 寝たくないのは分かったからさっさと説明してほしいんだがね。

 

 

 

 聞いた話を纏めると、

 ナツとハッピーがS級クエストをやろうとルーシィに話をした。

 最初は断ったルーシィだけど、報酬に黄道十二門の鍵が貰えると分かってついていく事に。

 んでそれを連れ戻しに追っかけて来たグレイを、ぐるぐる巻きに縛って船で来た。っと

 

「ふぅん?で、あたしが連れ戻しに来たと思った訳だ」

「あぁ。でもなんでこの島に萃香がいるんだ」

「なんでも何も仕事に決まってんじゃん。仕事内容も同じようだし、たぶんあたしが依頼を受けてここに来るまでの間に、報酬を上げた依頼をだしたんだと思うよ?んで、それをあんたらが勝手に受けて来たって所かね」

 

 珍しいこともあるもんだ。こんなこと滅多に起こることじゃないね。

 しかし、S級クエストを勝手にやりに来たってのはいただけないねぇ。ま、放って置いても誰か別のやつ……まぁ、エルザだろうけど。が迎えにくるだろ。

 

「さて、ね。結論だけ言うなら、あたしは知らんよ。たぶん誰かが追っかけてくるだろうから、それにおとなしくつかまるんだね」

「まぁしかたねぇよな。それはそうと、依頼のほうはどうなってるんだ?」

「あぁ、元凶は消した。後は村人達に影響を与えてる月の魔力をどうにかするだけだね。これからそれをやるつもりさね」

 

 そういうと、その場にいた全員が驚いた顔をした。

 

「なにを驚いてるんだい?」

「萃香は月を壊すのー?」

「月を壊す?あぁ、原因は過剰に溜まった月の魔力であって、月は関係ないよ。過剰に溜まり過ぎた月の魔力がガス状の膜に覆われていてね、その膜を壊せばおしまいさね」

 

 説明をしながら野球ボール程度の大きさの石を拾う。

 それを振りかぶって、月に向かって思いっきり投げた。

 数秒で石は見えなくなり、そのまた数秒後に空に亀裂が走った。

 

「こんなふうに、ねぇ」

 

 パリンというあっけない音とともに、島を覆っていた膜が砕け散る。

 村人達は呆然とそのさまを見つめている。と、島全体が輝きだした。

 

「きれいだねぇ、これがこの島本来の輝きさ。もう少しもしない内に彼らは『元』に戻るよ」

 

 しかし村人達のすがたは一向に変わらず。

 

「元に……もどらねぇ?」

「そんな……」

 

「いやいや、これで元通り。彼らは月の魔力に「記憶」を歪められてたのさ。つまり、もともと彼らは悪魔だったのさ!」

 

 その後はてんやわんや。死んだとされていた村長の息子さんが出てきたり、ナツが起きてまた騒いだり誤解したり、村人達と宴会をしたりと夜通し騒ぎ、次の日も一日騒ぎ続けることになる。

 その途中でウルがいつの間にか宴会に参加していたり、それを見たグレイが泣き出したり騒いだりなぜいるのかと問い詰めてきたり。さらに、ひっそりと参加していたザルディの驚いた顔も見れて満足。

 二日目の夜には、私の予想通りエルザがやってきて3人と1匹を簀巻きにしたり、それを見て村人達と大爆笑したりと大変楽しい宴会の時間をすごすことで今回の依頼は幕を閉じることとなった。

 

 

 

 

 

 

次回へ続く。




はい。
という訳でガルナ島編はこれにて終局でございます。

ウルについては原作を読んでいた頃から考えていたことで、
生きているなら氷を血肉に変えて肉体にしてしまえば復活できるよね!
っていう妄想の産物です。
宴会にて遭遇したグレイとのやり取り(+ウルティアさんの胸の内)はそのうち番外編でもあげるかもしれません。

誤字脱字等ありましたら、ご報告ください。
ご意見ご感想も大歓迎です。くれるとやる気だします、多分。

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