妖精の尻尾と酒呑童子   作:月詠朧

3 / 14
第3話です。

お気に入り登録数が45を超えました。
登録してくださった皆様に多大なる感謝を。

これからも頑張って書いていきますので、お付き合いよろしくお願いします。

それでは本編です。どうぞ!


第3話  萃香とラクサス坊やの鬼ごっこ

 早いものでギルド加入から6年半ほど経った。

 

 ここ数年は仕事にいけと言われることもなく、気が向いたらふらっと仕事に行くようになった。

 依頼が終わると依頼を受けた街で報酬を使い、材料を揃えてからその街で毎回宴会を開く。この世界の住人は、とってもノリがいい。能力をすこししか使わなくても毎度毎度、規模の大きな宴になる。

 そのたびに、評議会から苦情が来るらしいが。

 依頼が終わり帰ってくると、今度はギルドの酒場で能力を使い宴会を開く。

 ただ、フェアリーテイルの面々は血の気の多い奴が多く30分もすると乱闘が始まってしまい、そのたびにマカロフが止めていた。

 余談だが、喧嘩を煽ったらマカロフに怒られた。喧嘩は宴の華だというのに。解せぬ。

 何度目かの宴会を開いた時にマカロフが、私のひょうたんの酒を飲みたいと言ってきたので振る舞った所、一口で目を回して倒れてしまった。やはりただの人間にはこの酒は飲めないらしい。

 こんなに美味しいのに、飲めないなんて残念だね!

 

 依頼を受けてない時に何をしているかというと、

 ギルドの酒場で騒ぎを肴に酒を飲んでいるか、能力を使ってマグノリア全体に霧散して街の様子を確認している。

 

 

 

 

 ある日のこと。

 いつものようにギルドで酒を飲んでいると、突然横から怒鳴り込まれた。

 

「おい、そこの幼女!酒ばっか飲んでないで仕事にいきやがれ!」

 

 そこに居たのは、マカロフの孫のおじいちゃん大好きっ子、ラクサス坊やだった。

 フェアリーテイルのことが大好きであり、ほとんど働かない私によく突っかかってくるのだ。

 どう見ても、自分の大好きなおじいちゃんのギルドであるフェアリーテイルでぐーたらしてる私が気に喰わないのが見え見えである。

 

「ん?お、ラクサス坊y「坊やじゃねぇ!!」おぉう・・・そんな固いこと言わないでおくれよ。あたしが仕事に行くたびにマスターが評議会から怒られちゃうんだからさぁ。後、酒は私の命だよ!」

 

 私からすれば、気に入らない奴に喧嘩を売るだけの坊やなんだがねぇ。

 

「そんなわけねぇだろうが!苦情が来るのは、お前が仕事の後に宴会を開くからだろうが!!」

「そう言いなさんなってば。あたしは酒と宴会と喧嘩が大好きなんだから。宴会するのをやめろって言われたら、あたしの3分の1は死んでるも同然だよ?」

「ここは毎日宴会やってるようなもんなんだから、帰ってきてやりゃいいじゃねぇか!!」

「そんなにあたしを働かせたいのかい?」

「あ゛?そんなの、「じーじの」ギルドに所属してるんだから働くのが当たり前だろう!って、言葉を被せんじゃねぇ!!」

「あひゃひゃひゃ、からかいがいがあるねぇ」

「ふざけんてんじゃねぇよ!!」

 

 そこまで私を働かせたいのだろうか?うーむ・・・あ、そうだ!

 

「・・・そこまで言うならあたしと軽く勝負しようじゃないか♪」

「勝負だぁ?何だ、戦闘でもしようってのか?」

「それでも良いんだけどねぇ、今はそんな気分じゃないからね」

「じゃあなんだよ!?」

「いやなに、あたしがこの街で逃げるからラクサス坊y「坊やじゃねえって言ってんだろうがァァァァァァ!!」スマンスマン、あたしが逃げるからお前さんが私を捕まえるって勝負をしようじゃない」

「いいぜ!すぐにとっ捕まえてやるよ!!」

「まぁ待ちなって。せっかちな奴は嫌われるよ?ルールはあたしが今から逃げるから、三十秒たったらあたしを追ってきな。んでな、あたしを捕まえられればあんたの勝ち。今から1時間以内に捕まえられなけりゃあたしの勝ちさ。あと、勝ったほうが負けた方に一つ命令ができるってのはどうだい?」

「いいのか?そんな約束して。この街は俺の庭だぞ?」

「自信満々だね?負けるわけないってか?」

「お前こそ自信満々だな。余裕ってか?」

 

 い、言うねぇ……

 

「……いいだろう。本気で逃げてやる。もし捕まえられたら何でも言うことを聞いてやろうじゃないか!だが、あたしが勝ったなら。これから先何時までも坊やって呼んでやるよ!!」

「ハッ!!いいぜ!!俺が勝ったら、仕事先での宴会と、金輪際飲酒の禁止だ!」

「なん…だと…?」

「なんだよ、怖気づいたか?」

「んなわけあるかい!」

 

 そう言ってから、私は机の上においてあったコインを持った。

 

「それじゃぁスタートはこのコインが床についたらだ!時間はこの砂時計の砂が全部落ちきったら終了。そいじゃスタートだよ!」

 

 コインを床に落とす。床にコインが落ちると同時にギルドの外へと飛び出しトビラを閉じる。

 

「フフフ、まぁ頑張ってもらうとしようかねぇ。捕まってやんないけどね」

 

 その言葉と同時に私は霧散した。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 幼女(あいつ)がギルドの外に出てから30秒が経ったので俺は動き出した。

 

「あの野郎、絶対とっ捕まえていうことを聞かしてやる!!」

 

 あいつは何時もギルドの隅の机で自前の酒を飲んでいるだけの情けないやつだ。

 メンバー同士の喧嘩を煽ることしかせず、ニヤニヤと笑いながら、酒を飲んでいるだけ。

 たまに仕事に行ったかと思えば、仕事先の街で宴会を開いているらしい。しかもその宴会の材料代の半分がフェアリーテイル(うち)に回って来るのだ。

 ジジィはあいつの言葉を真に受けて、しぶしぶ払っている。

 なぜジジィはあんな情けない奴を、フェアリーテイルに入れたのだろうか。あんな奴がいるからフェアリーテイル(うち)の評価が下がるのだ。

 

「・・・チッ!とりあえずいい機会だ。必ずとっ捕まえる!」

 

 思考を打ち切り、あいつの後を追う。

 外にでると、街にはうっすらと霧がかかっていた。

 

「最近霧が多いな。っとアイツはどこだ!?」

 

 きょろきょろとあたりを見渡すと、大聖堂の脇の裏道に進んでいくアイツらしき人影が見えたので急いで追いかける。

 

「ハッ!この街で、この俺から逃げられると思うなよ!!」

 

 裏道を進んでいくと三叉の分かれ道に出た。

 

「確か右に曲がっていったな。」

 

 と言いながら、一応すべての道の先を見ていく。

 そこには驚きの光景が広がっていた。

 

「「「鬼さんこっちら~手のなる方へ~」」」

「!?どうなってやがる!!全部の道にアイツがいるぞ!?」

 

 なんと、すべての道にアイツが手を叩きながら立っていた。

 

「チッ!アイツの魔法かッ!?だったら全部捕まえればいいだけだ!!」

 

 そう言いながら、一番近くにいた奴を追っていく。

 やっとの思いで追いついた。

 

「これで、一匹目ェ!」

 

 手を伸ばし、掴みかかろうとしたその時。アイツの姿がブレた。次の瞬間、アイツの体が空気に溶けるように霧になって消えてしまった。

 

「霧になって消えた!?厄介な魔法を使いやがって!」

 

 そして俺は、本体を探すために大通りまで戻ることにする。

 

 戻ってきた俺は、大通りで信じられない光景を見、唖然とした。

 そこら中に大小様々なサイズのアイツがいるのだ。

 ざっと数えただけでも20体はいる。

 よく見ると建物の屋根の上にも、水路の小舟の上にも、建物の窓からもその姿が見えた。

 

「この中からアイツの本体を探すのか……?ク、ククク……いいぜぇ!やってやるよぉぉ!!」

 

 こうして、俺の終わらない鬼ごっこが始まるのだった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「おーおー、頑張ってるねぇ。」

 

 私は今ギルドの屋根に腰掛け、ラクサス坊やが私の分身体達を追い回すのを肴に酒を飲んでいる。

 

「この手の鬼ごっこでわたしが負ける訳無いじゃないか……ってそういえばギルドメンバーには私の能力(まほう)を教えてなかったね。」

 

 私は誰とも組まずに仕事に行くし、ギルドの連中とも騒ぎはすれども一緒に暴れることはしない。

 故に私の能力を知っている者はギルドにはいなかった。

 

「お、一匹捕まりそうだね、散れ散れ」

 

 捕まりそうになった一体を霧にする。

 

「捕まえようとすればするほど霧が濃くなってここが見えなくなるからねぇ♪」

 

 すでに、街は20m先が見えなくなっている。

 

「まぁ、これ以上霧を濃くすると他の奴らが危ないからね。このぐらいで止めておこう」

 

 そう呟いてから酒を煽る。

 

 

 

 しばらくラクサス坊やの追いかけっこを鑑賞していると、誰かが近づいてくる気配がした。

 

「おや?ラクサス坊や以外でここに来る物好きがいるとはね」

「何言っとるんじゃお前さんは」

 

 近づいてきたのはマカロフだった。

 

「まったく、何をやっとるんじゃ。街中にあんなに分身を出しおってからに。ギルドの中にも3体ほどおったし」

 

 そう言いながらマカロフは隣に座り、街を見る。

 

「アハハハ♪ラクサス坊やとの勝負でね。鬼ごっこをしてるのさ」

 

 そう、鬼ごっこ。私が追われる側だけどね。

 

「まったく、この霧もお前さんが出しとるのか?」

「そうだよ。あたしの魔法さね!それで、要件は?」

「なに、前々から少し気になっておったことがあっての」

「お前さんがギルドに入って、もうすぐ7年経つじゃろ?なのにお前さんは入った時のままの姿じゃ。それが気になっての」

 

 なるほど、その件か。

 

「そりゃそうさ。あたしは人間じゃあないからね。」

「ほう?それじゃあ、人間じゃなければお主は何なのじゃ?」

「あたしは妖怪・・・鬼って呼ばれる種族さ。」

 

 そう言いながら、散らしていた角を萃めて出す。

 

「角が生えおった……本当に人間じゃないのじゃな」

「そうさ……人間じゃないあたしをギルドから追い出すかい?」

 

 少しの沈黙。私は酒をそそぎながらゆっくりと待つ。

 

「…………いや、追いださんよ。フェアリーテイルに入ったものはみんなワシの家族じゃ。たとえ人でなくともな」

「いいのかい?人を襲うかもしれないよ?」

「お前さんをギルドに入れてから何年経ってると思っとる。入ってから仕事以外では一度も人を襲ってなかろう。それに信じておるしの。」

 

 嬉しい事を言ってくれるねぇ。

 

「そうかい、そりゃ嬉しいね」

 そう言いながら笑い、そそいだ酒を一気に飲み干す。

「相変わらずよく飲めるのぉ」

「ただの酒さ」

「一口飲むだけでぶっ倒れてしまう物が酒の訳あるかい!!」

「むぅ」

 

「さて、そろそろ時間だね。」

 

 かれこれ2時間ほどここにいたことになるのかな?

 

「時間?何かあったかの?」

「いや、ラクサス坊やとの勝負さ。制限時間はとっくに過ぎてるんだよ。だから分身を消してやろうと思ってね」

「なるほどのぉ」

 

 そんな話をしながら分身を散らし、霧を私に萃めていく。

 

「それじゃああたしは下に戻るよ」

 

 そう言い、盃に残っていた酒を飲み干しつつ立ち上がる。

 

「そうか……萃香よ。今日は話せてよかったと思うわい。」

 

 その言葉に、背を向けつつ手を振り、屋根から飛び降りた。

 ギルドの中に入り砂時計を片付け、いつもの定位置へ向かう。

 そしていつもの様に騒ぎを肴に酒を飲みだすのだった。

 

 

「おい、てめぇ!街の中の分身はどういうことだおい!」

 

 しばらくするとラクサス坊やがやってきた。

 

「ゴクッゴクッ……ぷはぁ……どういうことも何も、あたしの魔法さ。楽しめただろう?」

「あれは反則だろう!?」

「魔法を使っちゃダメ何てルールは決めてないよ。だから問題なしさ!」

「グッ……」

「アッハハハ♪だから勝負はあたしの勝ちさ、ラクサスボ・ウ・ヤ!」

「クッソォォォ!覚えてろよ!!」

 

 負け犬臭漂う叫び声を上げつつラクサス坊やが走り去る。

 

「いやぁ楽しかったねぇ♪たまにはこういうのもいいね!」

 

 そう言いながら私は引き続き酒を飲み続けるのだった。

 

 

 

 

 

 次回へ続く。

 




っというわけで、ラクサスとの絡みでした。

原作開始前11年前なのでこの時点でのラクサスの年齢は12歳です。
この時点だと原作主要メンバーのほとんどがいないんですよね~
主人公のラクサスに対する呼び方は今後もこのままになります。
ラクサス坊やェ・・・

ギルダーツですが、この頃からすでに長期間ギルドを開けるような難易度のクエストに行っている、っということにしています。
なので、原作メンバーのS級昇格試験までは出しません!名前は出ると思うけど。

それではご意見ご感想、誤字脱字報告、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。