聖都にあるハイターのおっちゃんの家で僕はとある新聞を叩きつけながら怒っていた。
「おいハイター……なんで僕が教科書に載るようになった説明しろ」
あの後聖都で解読した女神様の魔法を発表すると聞いていた人全員が驚愕し、色々と騒ぎになった。
その結果なぜか僕が教科書に載ることが新聞に書かれていた。
「呼び捨てとは悲しいですね、いつものようにハイターのおっちゃんとは呼んでくれないのですか?」
「わかった。クソメガネ、さっさと答えろ」
「ついに名前すらも呼ばれなくなりましたか……パパに向かってなんてことを!もう知りません、他の家の子にでもなってきなさい!」
「お前が僕を養子として紹介したからだろうが……」
「ですが私の紹介がないと発表すらもできませんよ」
「僕は発表する気なんてないよ、お前が脅してきたんだろ」
「それもそうでしたね、とりあえず話を戻して君が教科書に載った理由をお話ししましょうか。
君が聖典から解読して発見した魔法の中で1つだけ時巡りの鳥の章……別名空白の章と呼ばれていて、その中から魔法を見つけたことが教科書に載る原因ですね」
……もしかして僕がやらかしたパターン?
「女神様によってこの地上に聖典がもたらされてから千五百年の間に1つもその時巡りの鳥の章からは魔法が見つかっておりませんでしたから。
それがまさか自分の魔法で何度も自滅するようなポンコツな魔族によって見つけ出されるなんて面白い話ですね」
よし、1発殴ろう。何かの漫画なのかは忘れたけど「侮辱する」という行為に対しては命を賭ける殺人も神は許してくれるって言ってたし1発殴るくらいは許してくれると思うんだ。
「殴るのはダメですよ、その握った拳を抑えてくださいね」
このクソメガネめ…僕の考えを読んでやがったな。
クソ魔法でもかけてやるか。
『フタメガンテ』
「おや?魔法ですか……何も起きませんけど?」
「これからハイターのおっちゃんはテコでも開かないビン詰めのフタを、開ける事ができるようになったよ」
「素晴らしい魔法ですね、ジャムの瓶の蓋などが硬くて困ってましたから」
「……ただし、その代償として開けた瞬間に命を落とすことになるけどね」
「…………え?」
「ちなみに普通に開けれる瓶の蓋にも反応するから気をつけてね。僕は聖都を散歩してくるから。また後で」
そう言いながら放心状態のハイターのおっちゃんを無視して家を出た。
流石に聖都は初めてだからな…道とかよくわからないけど歩いてみることにする。
こうやって初めて来た街や都市を歩いて店を探すのはドラゴンクエストの主人公になったような気がして楽しい、流石に壺を割ったりタンスを開けたりなどはしないけどね。
そういえば勇者は壺を割ったりしたのかな?もし割ったのだとすればゲーム本編みたいにならなく勇者ヨシヒコみたいにブチギレられるのかな、ハイターのおっちゃんに聞くのは癪に触るしおじさんに聞こう。
ぶらぶら適当に歩いているとどこからかアップルパイの匂いがする。
匂いのする方向に向かうと綺麗な用水路が街中を流れており、その近くでパン屋を見つける。
アップルパイの匂いがしたのはここからだ……じゅるり…
突発的なルーラで移動したせいか人面樹リンゴを全て落としてしまい、あの日からリンゴが食べられない日々が続き僕の中に溜まっていった欲望が匂いにより爆発した。
僕はゆっくりとパン屋の扉を開けて女性の店員に声をかける。
「アップルパイをあるだけください」
「え?」
「そこにある分も今焼いている分も全てください」
「か、かしこまりました!」
女性の店員がそそくさと大量のアップルパイを紙袋に詰めて僕に渡してくる。
僕はハイターのおっちゃんから借りてきた(無断であり返す気もない)お金で支払い外の公園にあったベンチに座り食べることにした。
紙袋からワンホール取り出して、ゆっくりと口に運ぶ。
子供のように礼儀や作法なんかを気にしないでかぶりつく。
サクッとするパイに焼かれたリンゴの柔らかさによる食感のコントラスト。少し酸味の強いリンゴに合うように作られたカスタードクリームがパイとリンゴに新たなアクセントを加えている。
しかもリンゴには酸味だけでなく甘味を出すためにジャムも入れている。ジャムを入れることによって噛んだ時の断面にも違う彩りが加えられ楽しさも生まれる。
まるで勇者の剣の入った宝箱……魔族からすれば魔王城と言っていい聖都にあるのもドラクエのロトの剣を彷彿とさせる
……つまりめちゃくちゃ美味い。
というかこの世界にカスタードクリームがあったことに驚いた。
確かカスタードクリームって17世紀に創られたものじゃなかったけ?この世界が何世紀に近しいのかはわからないけどカスタードクリームがあるとは思わなかったな。もしかして探せば色々と見つかるのかな?
まあ、そんなことはどうでもいいとして今は目の前のアップルパイを食べ進める。
ホールを食べていると流石に視線を感じるな……子供の純粋な視線に、大人の変人を見る目に、聖職者が発見者の僕に興味を持って見ている目線…………そして明らかに人間じゃない目線を1つ感じるな。
なんというか興味に近しいけど興味だけでは無さそうな視線……あの東にある丘の方から感じるな。
とりあえず害は無さそうだし今のところは放置するか……もしもとなったらその時に対処すればいいしね。
とりあえず今日は帰るとするか、帰りに酒でも買っていってあげよう。
僕はアウラさんと一緒にお酒を飲んだ時に記憶はないのだが何かあったらしくアウラさんにもう酒を飲むのはやめろと忠告されたので飲む気はない。
ということで適当な安酒を買い、ハイターのおっちゃんの家へ帰っていった。
「ねえ、ハイターのおっちゃん」
「なんですか?」
「僕ってこれでも魔族じゃん?」
「そうですね」
「魔族って腐敗の賢老とか断頭台とかの称号というか二つ名みたいなものがあるじゃん?」
「ありますね、他にも全智や黄金卿、不死とかもありましたね」
「そういうのってさカッコいいじゃん、もしも僕に付けられるとしたらどんなのになると思う?」
「君に付けられるものですか………君のできることややったことを整理してみると自ずと見えてくるはずです」
「なるほど……炎、水、氷、爆発、風、重量、岩、光、闇、雷、死、回復、蘇生、眠り、混乱、目潰し、バフ、デバフ、魔力吸収、魔力消滅、看破、変化……魔法だとこのくらいで後は拳と斧で戦うことくらい?斧の方が得意かも」
「改めて聞くとすごい通り越して気持ち悪いほど万能ですね、後やはり蘇生を女神様の魔法ではなく自分の魔法で使えてしまうことが恐ろしいですね」
「じゃあやっぱり蘇生系の二つ名がいいのかな?」
「それだと不死と被りますね」
「そこはいろんな人を蘇生して聖女とか?」
「聖女はもういますよ、あと君に聖女は似合いません、出直してきてください」
「……殴られたいの?」
ハイターのおっちゃんとくだらない会話をして、ハイターのおっちゃんが酒で眠った後、僕は1人で丘に来ていた。
「そこにいるんだろう、出てこいとは言わないけど会話ぐらいは付き合ってあげるよ」
そう言うと木の後ろから声が聞こえた。
「あら、バレちゃったかしら……お話に付き合ってくれるのね、じゃあ聞きたいことがあるのだけど聞いてもいいかしら?」
すごくお姉さんボイスというかゆったりとした感じの声が聞こえてきた。
「大丈夫ですよ、今日は特に眠いわけでもないですし、いくらでも付き合ってあげましょう」
「じゃあ聞くわね、どうして貴方は魔族なのに人と一緒に暮らしているの?しかも隠しながらではなく魔族と教えていながら……やっぱり騙して殺すため?」
「……え?なんで暮らしているか?……特に理由もない成り行きかな」
うん、拾われて育てられたペットみたいな感じに特に理由もないな。
「じゃあ貴方は魔族と人間は共存できると思っている?」
「その辺はどうでもいいかな……僕が知り合いの魔族に殺しをさせなかったのは僕が人の死体を見たくないのと狙われる原因を少なくするためですし。魔族全員の反応を抑えての共存は流石に無理じゃないでしょうか?」
「じゃあ貴方はどうして人間のようになっているの?」
「それは僕が元人間の魔族だからとしか……」
「元人間?……フフフ、面白い話ね。ねえ、またこうして話に来てもいいかしら?」
「いいですよ、話をしたいならいくらでも付き合ってあげますから」
「ありがとう、じゃあ私は帰るわね。さようなら」
「さようなら、魔族のお嬢様」
「あらあら、バレていたのね」
そう言って姿の見えない彼女は消えていった。
魔法のカッコについて、どちらがいいですかね?下のやつなら今までのも修正してきます
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『』
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